魔法少女あさひ/つきのマギカ   作:あららい@

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第八節

第八節

《結加里あさひ》

 

 

 掃除を終えた私はついりちゃんに連れられて向かった先は体育で使う用具を入れる倉庫の前だった。

「ついりちゃん、こんなところで何をするの?」

「いいから、ついてきなさい」

 なぜか裏手に回るついりちゃん。そして、ソウルジェムを取り出すと壁の前へと突き出す。

 すると、さっきまでただの壁だったのに突如として扉が現れた!

「ええええ!!!!」

「いちいち驚きすぎよ。それに大声出さないの!」

 いや!だって急に現れる扉なんてそんなのお話の中でしか見たことないんだよ!

「これは魔女の結界を分析して私たちが使えるようにしたMBの技術なのよ。いいから入るわよ」

 私たちは不思議な扉を通り薄暗い廊下を歩いて行く。

「学校の中にこんな秘密基地があるなんて……」

「やっぱりアナタ不思議よ。朝垣市の魔法少女ならMBの存在を絶対知ってるのよ?」

「物事にはイレギュラーはつきものだよついりちゃん」

「知らないのを威張って言うことじゃないのよ!おばか!」

 私とついりちゃんは長めの廊下を歩いていく。コツ、コツと二人分の足音が響いている。

「ここよ」

 ついりちゃんが部屋の扉を開ける。そこには 教壇を中心に鉢状になってる部屋。まるで大学の講義室みたいな感じ?いつもの学校とは違う雰囲気を持った部屋だ。扉を開けた時、その音に反応して何人かがこちらを見たけどすぐにグループどうしの会話に戻る。

「あ、センパイこっちですよ〜」

 気楽な声で手を振って私たち───いや、ついりちゃんを呼んでいる金髪が派手な女の子は……弓貫さんだ、ね。彼女の隣には黒髪を肩口まで伸ばした子……剣引さんもいた。

 ついりちゃんの左隣の席に私は座る。

「あ、今日は結加里センパイもいるんですね〜昨日ぶりですね!間近で見るのって初めてかも〜!」

 お肌きれーいと弓貫さんはニコニコとした笑みを浮かべている。ちなみに特別なスキンケアはしていない。強いて言うなら魔法を使って体を維持しているくらいかな。

「そうよ、やっと捕まえられたんだから今までのらりくらりとかわされてきたんだから……」

「アハハ!森咲センパイ結加里センパイにごしゅーしんでしたからね!まあ、そー思う気持ちもわかりますけど」

「???それってどういうこと?」

首を傾げた私に剣引さんが説明をしてくれるみたい。

「そ、それはですね……結加里先輩がとても強いからだと思います。そうですよね?」

「そうよ、アナタ自分じゃわかってないみたいだけど強いのよ。自覚してる?」

「そうなの?」

 私がそう聞いたその時だった。

「当然でしょう?結加里あさひさん。貴女は強いのよ」

 その声の主はついりちゃんでも弓貫さんでも剣引さんでもなかった。全く別の所から割り込んできた声があった。私は声の方向へ向き直ると、そこには銀の縦ロールを二つ備えた女の子が後ろにゾロゾロとお仲間(?)を侍らせながら優雅そうに存在していた。

「げっ……アキノ……何?何の用よ」

「別に貴女のような弱小グループには用なんてありませんわ」

「何ですって!」

 ついりちゃんは目の前のお嬢様みたいな人を思い切り睨みつける。が、そんなことは全く気にも留めてなかったようで

「結加里あさひさん。わたくしのことはもちろんご存じよね?」

「えーと……どちら様だったっけ?」

 私がそう聞くと取り巻きの女の子たちがざわついた。「あの人(すめらき)アキノさんを知らないんだ……」「言っちゃ悪いけど無知だよね」などといった囁きが聴こえてしまった。申し訳ないけど知らないものは知らないんだ。

「そう、ですが良いでしょう。赦します。結加里さん、貴女は幸運よ。なぜならいずれこのMBのトップになるかもしれない私の名前を記憶できるのですからね!」

「んー?よくわからないけど名前は忘れるまで覚えておくね。よろしくねアキノちゃん!」

「アキノちゃん!?貴女なんなのその呼び方!?」

 女の子───アキノちゃんの手を両手で取ってにっこりと微笑む。そしてそのままアキノちゃんの手を上下に勢いよく振る。不意を突かれたようでアキノちゃんはちょっと驚いていた。

「ッ……!貴女何を……!?」

「名前を教えたから友達になったのかなーって?友達になったんだから呼び方とかもこんな感じかなって思ったけど迷惑だったかな?」

「……いいえ、いいでしょう。今日のわたくしは機嫌がいいので」

 アキノちゃんは私の手をゆっくりと剥がすと

「結加里あさひさん。貴女、わたくしたちのチームに入らない?」

 なんかこんな感じのことをついりちゃんにも言われた気がする。

「ハァァァァァ!!!??誰がアンタのところに行くのよ!?」

 なぜかついりちゃんが声を荒げる。

「別に貴女には言ってないわ疫病神。わたくしはあさひさんに聞いているの。貴女の魔法少女としての強さ、MBの支援を受けずに魔女を探知できる力、そして何より貴女が参加した戦闘での犠牲者は今まで出たことがないと来れば誰だって貴女を欲しがるわ。そこの弱小チームだって貴女一人いれば簡単にわたくしたちに匹敵する。それくらいの力を秘めてるの、であるならばわたくしも狙うのは必然でしょう?」

 オーッホホホとテンプレ高飛車お嬢様みたいな高笑いをする。もしかして流行ってるの?その笑い方。

「わたくしのチームに入れば高待遇は保証しましょう。MBの手当て金に加えて報酬を追加いたしましょう!」

「手当て金?魔法少女ってみんなお金もらってやってるの?」

 私は心から疑問に感じた。そんな私の疑問に答えたのはついりちゃんだ。

「そうね。命を賭けて魔女たちと戦っているからそれ相応の報酬を受け取るのは当然の権利よ。それに魔法少女だけじゃなくて魔法少女になってない子たちも受け取ってるのよ」

 魔法少女の方が貰える額は多いけどと、ついりちゃんはそう付け足す。

「と、に、か、く!MBのチームに入るならわたくしたちのところ以外ありえませんわ。そこの疫病神弱小貧弱零細グループなんかに入ったら間違いなく不幸せになるわ!」

「言わせておけばアンタねぇ!!あたしのことをいうのは百歩譲って許せる。けどねチームってことは弓貫さんや剣引さんのことも侮辱しているってことよね???それは絶対に許せない」

 ついりちゃんは机を叩いて立ち上がる。

 二人の間にはまるで火花が飛び散っているようだった。

「ふん、当たり前です。弓貫さんはこの街の魔法少女の一人、剣引さんは身体的にも優秀で時期魔法少女だろう声が強く素晴らしい人材だと感じてます。そこは評価してますの」

「なら……ッ!」

 そう答えようとしたついりちゃんを制してアキノちゃんが口を開く。

「彼女らがどれだけ強くても出来損ないの班長の下に就くのがわたくしとしては解せない、愚かで評価できませんの。そうですわ、弓貫さんと剣引さんもわたくしたちの仲間にして差し上げましょうか?わたくしが責任を持って面倒見て差し上げますわ。そして、居場所を無くした貴女はさっさとMBから出ていってくれると嬉しいのですけど?」

 アキノの冷ややかな声。

「お断りです!森咲センパイはいい人なんですよぉ!」

「皇先輩。申し訳ないのですが、わたしも慧子ちゃんと同じ意見です。それに皇先輩は森咲先輩の力を見くびりすぎです。森咲先輩は勇猛果敢に先陣を切って魔女と対峙して慧子ちゃんの弓の援護の隙を作ってくれますそれにわたしはこのチームが好きなんです」

「弓貫さん……剣引さん……」

 後輩二人の言葉にアキノ怯まずにやりと微笑む。

「あらあら、かわいいお仲間も大変ご立腹のようで。でも、結局のところ、数の多さがすべてを左右するの」

 二人に優しく諭す様にアキノちゃん。ついりちゃんは怒りっぽくなりながらも冷静を装い、反論の言葉を探る。

「数の多さがすべてじゃない。少ない仲間のことを理解して、その特性を適材適所で活かすことが大切なのよ!貴女のような数に頼った考えでは、関係性が希薄になってしまうとあたしは思うんだけど」

 アキノは苦笑しながらついりちゃんに近づいた。

「あなたの可愛らしい理想論ね。でも、現実は厳しいものですわ。わたくしのチームは量も質も高水準。今までの実績で実感できることでしょう?関係性の希薄?なら総勢六十四の大所帯を適切に動かして、朝垣市の七区画あるうちの五区画を守ることなんて不可能だと思いますわ。たかが一区画いいえ、その半分を守るのがやっとの弱小チームは粋がらない方が身のためよ」

 すると、流石に周囲の生徒たちも興味津々で二人のやりとりを見守っています。言い争いの様子に興奮が走る。

 が、そんな拮抗状態を打破してしまう音がする。それはガチャリと会議室の扉が開かれた音だった。

「やあやあ!魔法少女とその候補生諸君!待たせたね!」

 と、会議室の扉が勢いよく開かれる。そこから現れた人は……。

「物描夜明先生!?」

 白衣を纏った女性は私の担任の先生である物描夜明先生。そして後ろに立っているのは

「繰輪月乃ちゃん!?」

 今朝、転校してきたばかりの繰輪月乃ちゃんだった。

 

 

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