魔法少女あさひ/つきのマギカ   作:あららい@

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第九節

第九節

《結加里あさひ》

 

 

 

 コツリコツリと先生と転校生が階段を降りてくる。

 ゆっくりと、一段ずつ。

 転校生───繰輪月乃ちゃんの凛とした雰囲気にわずかだけどみんなの声のボリュームが下がったように感じた。夜明先生と月乃ちゃんのオーラ?威圧感がすごかったのかもしれない。

 二人は中央の壇上に上がる。

「みんな、そろそろ集会を始めようではないか」

 夜明先生がマイクでそう言うと、話し声のボリュームが下がっていった。

「静かになってくれてありがとう。それではMBの集会を始めようか。まずは……辛い報告から始めるとするよ。昨日の九時頃Dの六地点で魔女が確認された。我々は便宜上それを『バーベキューの魔女』と呼称した。それを皮切りに各ポイントで同じ魔女の発生が報告された訳だね」

 ……昨日のあの出来事であってるよね。私とついりちゃんと月乃が居合わせた出来事だ。

 夜明先生はそのまま話を続ける。

「昨日確認された『魔女』の特筆すべき点は『結界を持たず我々の世界に現れる』という点だね。普通魔女というのは結界を持ちその中で活動して人々を誘い込む形で襲う。我々MBはそう認識している。確かに結界を持たない魔女は資料では存在する。が、それらは強大すぎる力故に普通の人々にも災害という形で見えてしまってるだけで、ここまで小規模のものは他に例はないんだ。そのイレギュラーな事態に翻弄されてしまったのだろう。グループAの永井美菜子クン、伊島葵クン。グループBの檜山美琴クン。彼女たち三人の魔法少女は尽力の末……亡くなってしまった。彼女たちの活躍を悼むとする。他にも逃げきれなかった者、巻き込まれた市民や仲間を逃がすために囮を買って出た者も数名負傷してしまった。これは我々魔法少女の指揮を担当したワタシの責任である。本当に申し訳ないと思っている」

 夜明先生は瞳を閉じてゆっくりと、深々と頭を下げた。

「昨日のようなことをワタシはもう起こしたくはない。この街を守るために再びキミたち優秀なMBの魔法少女とその候補生の力を貸してはくれないかい?」

 ポツリポツリ……と小さな拍手が室内で

やがて大きくなる。

「賛成の意を示してくれてどうもありがとう。さて、MBの魔法少女は一つの街に七人が原則だ。現在MBの魔法少女は四名。あと三人枠がある」

 その瞬間、空気が変わった。張りついたという表現が正しいのかな。大半の生徒が獲物を狙う目になったような気がした。

「残りのメンバーは三人……そしてその中の一人が彼女だ」

 夜明先生は手を月乃ちゃんに向ける。

「改めて紹介しようか。壇上に立つ彼女は繰輪月乃クン。今日朝垣高校に転校してきた……と言ってもみんな知っているだろう。才色兼備の転校生がやってきたとここまで噂が広がることになるとは思わなかったよ。彼女がこの街に来た理由は彼女が新しい『魔法少女』の一人になることだったのさ」

 ざわざわ……と囁きが始まり、増えていき、話し声へと昇華される。

「嘘……」「わたし達じゃなくて……?」「何で今日来たばかりのあの人が……?」という話し声が私の耳に届く。

「(ねぇ……ついりちゃん。どうしてみんなはあんなに魔法少女になりたがってるの?みんなそんなにもお金が欲しい?)」

 私は小声でついりちゃんに聞いてみた。会議が始まる前にMBの魔法少女とその候補生は魔女と戦う対価としてお金を貰ってるというのはさっきついりちゃんから説明された。そして、魔法少女の方がより多くの報酬を受け取れるということも。

「(うーん……もちろんそういう人もいるとは思うけどあたしが思うに努力を無駄にされたことが大きいんじゃないかしら)」

「(努力?)」

「(ええ、そうよ。この街の魔法少女はみんな魔法少女になるために訓練をしたり検査を受けているわ。それをぽっと出の転校生が魔法少女の座を得たとしたら……自分達のやってきた努力が報われないと考えるのが自然じゃないかしら?)」

 そうなのかな?コツコツと積み上げたものを一振りで崩される。もしくは立場が危うくなれば誰だって焦るものなのかもしれない。

「(弓貫さんもそうだったわ。持ち前の運動神経と高い魔法少女の素質で一年生にもかかわらず魔法少女になれたのよ。けど、最初は僻まれたわ。でもあの子の人懐っこい人柄のおかげで今は誰とでも仲良しなのよね。ってそんなことは今は関係ないわね。少なくともあの女はダメよ、剣引さんを襲った奴よ。絶対に裏がある)」

 銀髪縦ロールの女の子───皇アキノちゃんが堂々と挙手をしていた。

「あの!先生!」

 皇アキノちゃんが声を上げ、夜明先生に目を向ける

「どうしたのかな?皇アキノクン?」

「まずメンバーにするなら繰輪月乃さんよりも、結加里あさひさんが先だと思いますわ!

なぜなら彼女は正式なMBのメンバーでないのにも関わらず、数多の救助活動を行っていますわ。それもわたくし達チームAに限らずチームB……と零細のチームCにまで救援をしてくださる慈愛に満ちた方ですわ!なぜ彼女がMBに在籍してなかったが今まで不思議でなりませんが、今はそれは置いておくとして彼女を最優先でチームに入れることが重要だとわたくしは考えますわ!」

 アキノちゃん大袈裟に大胆に演劇のセリフかの如く熱弁する。

「ちょっ!アキノ!!!何が零細のチームCよ!!」

 『零細』と言われたことが気に食わなかったのかついりちゃんがアキノちゃんに突っかかった。

「あら、わざわざ付け加えたのに不服みたいですわね。わたくしとしては省いてあげても構わなかったのだけど」

 ぐぐぐ……。と二人は睨み合っている。

「二人ともそろそろいいかな?会話に花をいや、火花を散らしているところ悪いのだけどねぇ?」

 と、そこに夜明先生がそう言って二人を静かにさせる。

「「はい……」」

「実はねぇ……結加里あさひクンはもう今までのようには戦えないんだ」

「「!!!」」

「その反応はどうやら知らなかったみたいだねぇ。実は結加里あさひクンは昨日の結界を持たない魔女との交戦後、何者かに狙撃された。いや、正確には森咲ついりクンへ向けられた狙撃を庇いダメージを受けてしまった。それが関連しているかどうか不明だが、ソウルジェムの色を失い魔法少女としての力を大幅に失っているんだ。とてもじゃないが魔法少女としての戦力に数えられない。今は原因究明と魔法少女としての復帰をどうやって成し遂げるかMB研究チームと相談しているよ。これが理由さ、理解してくれたかな?」

 二人、いや他の子たちも唖然としてしまっているようだった。

「あさひ!そんな大事なこと何で言わなかったのよ!!」

 ついりちゃんが私のほうを向いて問いただそうとする。

「うーんと……聞かれなかったから?」

「アンっタってば…………いいえ、何でもないわ。元はといえばあたしのせいなんだから……」

 首を傾げる私についりちゃんは言葉を失ってしまったみたいだった。でもあの時ついりちゃんが無事で本当に良かったと思う。

 だってもし死んじゃってたら……。

「そうですかわかりましたわ。であるならば先生!質問が二つありますわ。まず一つ、追加のメンバーである繰輪月乃さん。彼女はどのグループに入りますの?当然わたくしのチームAなのでしょう?」

「いやいや!!!皇さん!こっちのBグループには魔法少女がいないんですけど!入るならこっちに決まってると思うんですけど!?大体、あなたのグループには魔法少女があなた含めて二人いるじゃない!!こっちにはもういないのよ!大体!永井さんはこっちのグループで戦う予定だったのにいつの間にかグループAで戦う流れになってた!どうせあなたが何か仕組んだんじゃないの!?」

 と、Bグループであろう生徒がアキノちゃんに反発する。

「さぁ?何のことでしょう?言いがかりはよしてくださいませ。それに、グループ変更を申し上げてきたのは永井さんからですわ。あの方が『どうしてもこちらで戦いたい』と申したから仕方なくですわ」

「それもどうせ言わせたに決まってる!」

 Bグループの子とアキノちゃんの言い合い。その感情は個人と個人という枠を飛び越えていた。AグループとBグループの人たちそれぞれがお互いに睨み合っている。

 一触即発。この場を表現するのにはその言葉で十分だ。

「みんな落ち着きたまえ。皇アキノクン。その質問に答えよう。繰輪月乃クンには───」

 と、夜明先生が質問に答えようとした時だった。

「先生、私はどのグループに入るつもりもありません。一人で勝手にやらせてもらいます。それでは、失礼します」

 それだけ言うと月乃ちゃんはこの場を後にしてしまった。

「ハァ?何よあの態度……?」「本当に魔法少女なの?」「戦う気あるのかしら……」などの声が私の耳で聞き取れる。

「みんな静粛にしようか。それと……皇アキノクン。君のもう一つの質問にお答えしよう」

 パチパチと手叩きで場の空気をリセットした夜明先生は続けて言い放つ。

「もう一つの質問です。繰輪月乃さんが新たな魔法少女になる。であれば残りの追加メンバーはもう決まっていますの?有耶無耶になっていたので改めて聞き直しますわ」

「ん〜そうだねぇ。こちらも候補は挙がっているが、まだ決めあぐねていてね。申し訳ないが追加のメンバーの発表は追ってするとしよう。本日の会議は以上だ。みんな、今日も街の平和維持に尽力してくれたまえ」

「待ってください!」

 夜明先生に誰かがくってかかる。そんな声は意外にも私の近くで放たれたのだ。

「剣引さん!?」

「わ、わたしは納得がいってません!他のMBの子ならわかります、でも繰輪先輩は……」

 剣引さんは口ごもる。

「彼女は『魔法少女』……ということになっている。この街を守ってくれる……はずさ。それとも彼女が『魔法少女』であるにふさわしくない理由があると言うのかい?剣引実沙クン?」

「それはあ……ッ!!」

 剣引さんは何かを言いたそうにしたが、目を伏せて出口へと駆けて行ってしまった。

「ちょっ!剣引さん!?」

 ついりちゃんも剣引さんを慌てて追いかける。

 居ても立っても居られなくなった。

私も後を追いかけた。

 

 

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