補足
ありふれ、ようじつの続きを書かないで大変申し訳ございません。
きっかけ
ギラギラとした太陽が体を突き刺す。
真夏の日差しが学生の遊びたい衝動をくすぐり机上の日差しの眩しさを手で抑えながら補習を受けている。それは学生だけではなく先生も同じだ。いくら非常勤とはいえテストを作った教授たちが補習を受け持つべきなのに、全部自分に投げてきた。休暇になったら自分の研究やら学会やらで忙しいというのに、これが5日間続くとは…。そんなことを考えながら真夏の昼下がりにぼんやりと聞いている学生に数学を講義する。
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俺の名前は仙水悠。
東都大学で非常勤講師をする傍らで非正規雇用の研究者として物性物理学の研究をしている。具体的には量子コンピュータについてだけど、詳しいことはMikipediaで調べるほうがわかるから取敢えず省略しよう。
今年でアラサーにジョブチェンジするからそろそろ安定した職に付きたいものの、雇ってくれる企業がどこにもないため、だらだらととアカデミックの世界に身を置いている。
大学からの友達からも心配の声が絶えない。
だってしょうがないだろう。
成果が出にくい界隈なんだから。
てか年収1000万の友達に心配される俺って…。
コンピュータ関連の研究をしているのもあり、昔からIT関係も得意だったりする。
そのお陰でバイトでIT関係の仕事を請け負ったりしているが、一回一回の報酬は大きいが、不定期にしか依頼が来ないからあまり宛にできない。
とにかく今は研究の成果を世間に認められることが最優先。
研究成果としては十分なはずなんだけど、学会に出るたびに、実現不可能だとか、狂ってるだとか言われ認めてもらう以前の話だからなぁ。今やってる研究テーマはひとまず置いといてより現実的な研究をやっていくべきなのかもしれん。
この夏は忙しくなるな。
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5日後
やっと最後の補習が終了し教室を出る。なんだか体が随分と軽くなった気がする。このあとは学生の成績をつけなければならないから、とりあえず今午後の1時だから夜の12時にはおわるだろう。
そんなことをブツブツと呟きながら研究室に向かった。
午前12時
ぐあ〜〜〜〜!やっとおわった!たったの12時間で300人分できれば十分でしょ!さあさあ終わったことだし家帰って風呂入って寝よ!もう疲れた!とりあえず明日は家でダラダラして明後日から気持ち切り替えよ!
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家路につき風呂に入ったあと冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを飲み一服する。
「くあぁぁ〜!最高だ!」
頑張ったあとのご褒美を堪能していると、ノートpcからピコンと音がなった。
開いて通知を確認すると1件のメールが届いていた。
「なんだこれ」
メールは次のような内容だった。
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件名: 烏丸テクノロジーズカンパニー特殊採用の件について
東都大学
量子技術研究室
仙水 悠様
初めまして、株式会社烏丸テクノロジーズカンパニー事務局の春上です。
お忙しい中での突然のご連絡申し訳ございません。
つきましては,我が社の, 量子テクノロジー部門の相談役になっていただき,世界に先駆けて量子テクノロジーを,発展にきさせていただきたく存じます。
先日の, 応用物理学会にて講演を聞かせていただいたのですが,
Majorana 粒子を組み込んだQuantum computerの
量子誤り訂正技術のaccuracyが大変素晴らしく, 仙水様の研究は,将来, 我が社だけでなく,世界にとっても, technology revolutionとなり得ると確信いたしました。
もしご興味がお有りでしたら下記のメールアドレスに返信していただけると幸いです。
以上、よろしくお願い致します。
株式会社
烏丸テクノロジーズカンパニー事務局
人事部特殊採用係
担当 春上衿衣
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もう一度言う
「なんだこれ」
キンキンに冷えたビールがに一気に体温を奪い鳥肌が立った。
それは、世界に誇る日本の巨大財閥、烏丸グループの中核企業、烏丸テクノロジーズカンパニーからのヘッドハンティングだった。
アカデミックの界隈では妄想垂れ流しの浮世離れした研究者たちが流刑のごとく行き着く孤島である。その後音信不通となって彼らがどんな成果を上げているのかすら不明のままとなっている。
その最たるものが宮野厚司だ。彼は創薬研究の第一人者であったが、ある論文を発表してから学会から信用をなくし、やがて追放された。そしてある日を境に行方をくらましたとされているが、噂によるとどうやらこの企業にヘッドハンティングされたらしい。
正直言って気味が悪い。俺にこの話が来たということはつまりその運命をたどることになるのだ。安定した収入がほしいのは確かだが自分の成果が日の目を見ることがないと考えると堪えるものがある。しかしこの生活も続けるのは限界がある。
しばらく葛藤が続いたが、やがてこのオファーを受けることにした。
早速メールアドレスにアクセスしようと思ったその時、なにか違和感に気づいた。
このメールの文章、何かおかしい。
句読点の数が異様だ。
そして何故かその全ては半角で
途中からやけに英語を酷使している
大企業のスカウトという大事なメールに誤りがあっては困るはず。それなのにこのあからさまな目立ったミス…
おそらくこれにはなにか根拠があるのではないか?
それこそ……暗号とか?
さすがに企業が試すようなことはしないかとは思いながらも
暗号を解読することにした。
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おかしいのは挨拶からではなくメインの内容からなのでそこから解読していくことにする。
とりあえず全角を0、半角を1として2進数を作っていき、その後10進数に変換しこれを素因数分解する。
メインの文章の前後に隠れた半角のスペースが16ずつあることが判明したため、さらにこれを16進数に変換する。
この文章から読み取れるのはここまでなので、とりあえず添付されたメールアドレスにこの結果を記載し送信することにした。
コンピュータで自動的にメールを送受信しているのか、結果はすぐに来た。
しかしメールアドレスは先程のものではない、一度しか使えないような意味不明の文字の羅列であり、本文にはこう書かれていた。
『組織へようこそ』