……い……
……なさい……
…ごめんなさい……
「…ん?」
どうやら寝てしまったようだ。
誰かに謝られてるような気がしたが…気のせいか?
「PISCO様、間もなく着陸態勢に入ります。シートベルトを着用して下さい」
「あぁ、わかった。」
僕が乗る飛行機が間もなく目的地に到着するようだ。
飛行機は段々高度を下げていき、北京首都国際空港への着陸態勢に入る。
そう、今僕は、いや、我々は中国へ向かっている。
今回は組織としてではなく、烏丸グループの中核企業の烏丸商事、烏丸証券としてである。
烏丸グループ経営陣がやらかしてくれたお蔭で、世界中でのタックスヘイブン(納税回避)を利用したマネーロンダリング*1の疑惑をかけられてしまったのだ。
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まだ情報機関の内部でしか共有されていない事案なので、すぐに組織の活動が明るみになることはないだろうが、これを引き合いに中国の傀儡へと成り下がる可能性が十分にある。
何としてもそれは避けたいという上の方針で、この僕が烏丸グループの経営陣代表として選ばれた。
中国の狙いはおそらくバックにいる我々の支援。
我々の存在を日の下に晒さない代わりに資金提供の増額、兵器、特殊武器の横流しと行った具合に、いいように使われる可能性は目に見えている。これに対抗するため、あらゆる算段を準備した。
しかし、そのような準備は無駄に終わった。
もちろんいい意味で。
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烏丸グループは今、世界中で疑惑をかけられている。
それは、タックスヘイブンを利用した経営陣の汚職疑惑だ。
経済的にも政治的にも、その影響は大きく、世界中の情報機関が動き始めていた。
だが、表向きにはまだ情報は機密として扱われ、すぐに組織の全貌が明らかになることはなかった。
その背後には中国が暗躍していた。
中国国家安全部は、烏丸グループの疑惑をつかみ、これを脅迫材料として手に入れた。だが、単なる脅しにとどまらず、彼らの目的はもっと深遠なものであった。
烏丸グループの背後にいる存在にまで迫り、これを中国の支配下に置こうとしていた。
中国からの接触
中国国家安全部はすぐに烏丸グループと接触を図った。
意外にも先方からの回答はすぐに返ってきた。
交渉の場は、中国北京の高層ビルの一室で行われることとなった。
交渉の場には中国国家安全部だけでなく、共産党員の上層メンバーも出席した。
黒いスーツを着て、彼らを嘲笑うような目でみる。
一方、烏丸グループ陣営には、スーツを着た9人のメンバー(おそらく烏丸証券の投資家と烏丸商事の社員)が座っており、センターの男はとても高級そうなスーツを着、整然とこちらを眺めていた。
彼らの言い分が本気で通るとでも思っているのだろうか。
彼らは、烏丸グループが抱える問題を武器に、交渉を進めようとしていた。
「それでは全員集まったので始めましょうか」
共産党員の男がそういうと、交渉が始まった
「今世間で話題になっている烏丸グループの不祥事は、経営陣の汚職とだけ言われているが、関わっているタックスヘイブン疑惑の情報は、まだ公にはされていない。これは我々がまだマスコミに情報を流していないからだ。」
国家安全部の人が冷徹に続ける
「まさか、決してあり得ないと信じてはいるが、もしこの交渉を飲まなければきっとすぐに公になるだろう。その算段は既に整いつつある。君たちの隠している資金フローや秘密口座が、すべて暴露されることになるだろう。」
共産党員は先方の顔を見ながら嘲笑うように続ける。
「私たちもこういうことはあまりしたくはないのだが、国家の利益になることは必ず成し遂げなければならないのが我が中国の義務だ。どうか許してくれ。」
そういうと、中国の高官は資料を提示した
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机上には、中国が握ったとされる烏丸グループのタックスヘイブン疑惑に関する資料が並んでいる。その資料には、複雑に絡み合った資金の流れ、秘密口座の所在、そしてそれを裏付ける電子メールや内部書類が含まれていた。
中国国家安全部の高官がまず口を開いた。
「これらの資料は、貴社が世界中でタックスヘイブンを利用して得た不正な利益を示すものです。これが公になれば、烏丸グループの信頼は地に落ち、世界経済における貴社の立場は著しく危うくなるでしょう。」
「で、あなた方の要求を飲まなければそれらを公にすると?」
仙水はそういうと、中国高官は続ける
「それを理解しているのであれば話は早い。」
「では要求を飲むとして、今後は我々とどのようなお付き合いを検討しているのでしょうか」
それを聞いた共産党員はにやりと口角を上げた。
「そんなに悪いようにするつもりはないよ?ただ、国の発展には資金が必ず必要となってくる。ですから我々への投資の増額を求めます。そして我々への献金も…あ、これはオフレコでお願いします(笑)。あとは、そうだなぁ〜…君たちの裏側にいる人たちとの優先交渉権を希望したいかな??」
「優先交渉権?」
「いるんだろう?君たちのバックに。君たちの会社が大きくなったのもそっちの人たちのお蔭だったりして…しかし、我々は、あなた方お対立しようなんて思っていません。我々が求めるのは、平和的な協力関係です。例えば、このような条件を提示させていただきます。」
そして中国高官らは契約書を机上に並べた
これが今回の取引内容のようだ。
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【極秘】
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烏丸グループ及びその背後の存在(以下、黒の組織)に対する優先交渉権に関する合意事項
1. 優先交渉権の付与
**乙(中華人民共和国国家安全部)**は、**甲(烏丸グループ)**との協議において、他の交渉者が存在する場合でも、最優先で交渉を進める権利を有する。
これは、量子コンピュータ技術や新薬開発支援、技術提供に関連する事業分野に適用される。
2. 交渉の対象
乙は、以下の分野において、他国や他団体と同時に交渉している場合でも、甲と最初に交渉を進める権利を持つ。
・量子コンピュータ技術に関連する研究開発
・新薬開発のための技術提供や共同研究
・その他、甲と乙が合意する事業分野
3. 対価と報酬
乙は、この優先交渉権に対して以下を提供する。
・必要な技術支援や研究資金
・研究施設や技術者の派遣
詳細な支払い条件や報酬については、別途合意される。
4. 情報の機密性
両者は、この交渉の過程で得た情報を第三者に漏らさないよう、機密保持を守る。
5. 他国との調整
乙は、甲が他国と進めている交渉や契約に影響を与えないよう、十分に配慮する。
6. 期間と解除
この優先交渉権は、契約開始から5年の間有効とする。
甲または乙が契約違反を行った場合、相手は書面で通知し、契約を解除できる。
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「これらを受け入れるならば、我々は資料の存在を隠し通し、貴社の名誉を守るとお約束します。」
高官は微笑みながら、資料の束を軽く叩いた。
こんなのビジネスでも何でもない。ただの脅しではないか。
これに無理に応じようとすれば、それだけでわが社に不利益が生じる
「それと、どういう意図かは存じ上げませんが、あなた方の一連の動きはこちらで把握しております。あなた方が本国に来られてから何をしていたのか…どちらにせよあなたたちに勝ち目はない…」
共産党の高官はそういうと口角を上げ、信じられないようなニヤケ顔でこちらをみた。
やはりこちらの動きは把握済みだったか…
どうする…
どうすれば……