しかし仙水悠は微動だにせず、冷静な声で答えた。
「なるほど…これは興味深い提案ですね。しかし、あなた方は一つ、重大な事実を見落としている。」
高官が眉をひそめる。
「…事実、とは?」
仙水はゆっくりと机の上に指を置きながら続けた。
「この交渉が、必ずしもあなた方の利益になるとは限らない、という事実です。」
部屋の空気が一瞬にして緊張感を帯びる。仙水は続ける。
「仮にあなた方がこの情報を公開したとしましょう。結果、当然のように烏丸グループの信頼は揺らぎます。しかし、その余波がどこに及ぶかを考えたことはありますか?」
「なんだと…?」
「現在、我々は中国市場に莫大な資本を投じています。ですから、我々の株価が急落し、マネジメントに関わるような事態となれば、我々はあなた方の市場から手を引くことで資金を確保することでしょう。仮に我々が中国市場から一斉に資金を引き上げた場合、どのような事態が起こるか、想像できますか?貴国の株式市場が揺らぎ、不動産バブルが崩壊し、経済的な混乱が生じる可能性が極めて高い。 さらに、あなた方の行動が世界の投資家たちにどのようなメッセージを送るか。
『中国は信用ならない取引相手である』
という認識が広がれば、外国資本は逃げ出すでしょう。結果、得をするのは他の市場、つまり我々です。」
仙水はにこりとしながら話を続ける。
「また、仮に我々が技術を供与したとしても、それが長期的に中国の発展に寄与するとは限りません。むしろ、それを利用して競争力を高められるのは我々のほうです。」
高官と共産党員たちは、仙水の指摘に表情を曇らせた。
机上に広がる資料は、いつしか交渉の武器ではなく、ただの紙の束に見え始めていた。
「…では、貴殿のお考えは?」
高官が沈黙を破るように尋ねた。
こで言葉を切り、部屋を見渡す。彼の目は鋭く、まるで中国そのものを見下すような威圧感を放っていた。
「貴国の未来がどうなるか、保証はできません。」
その最後の言葉で会議室が一気に冷え切り、ざわつき始める。
「た、立場がよく分かってないようですなぁ…よくこんな若造を経営陣は交渉人として選んだものだ。」
それを仙水は物ともせず、静かな笑みを浮かべながら応じた。
「先ほどあなた方がおっしゃった、裏の人たちというのは存じませんが、それは本当に公にすることができるなら、の話ですよね?あなた方がその情報を使って圧力をかけたとしても、逆に痛い目を見るだけだと思いますが。我々に協力的になったほうが賢明な判断だと思いますよ?」
中国側は思わず顔色を変え、共産党員は憤りを見せる。
「この若造が!我々の一声であなた方の国内でもっと大きな問題を起こすことができるとも知らなんで…!我々が持っている情報は、貴様らの汚職や腐敗をも暴くだけでなく、日本経済を衰退させることだってできるんだぞ?おたくらが株を売却した所で揺らぐ中国ではない。」
「ほう、それはあなた自身の言葉ですか?それとも、国家主席のお言葉ですか?」
「もちろん、元帥閣下のお言葉である。」
「ふむ、ではその元帥閣下のお言葉を信じるとしようか?」
「な、何をするつもりだ!」
「この取引には我々にとって有益な材料がないのでね。そろそろ引き上げさせてもらうよ。」
「おい待て!貴様、こんなことしたら貴様は…」
「"我々"を馬鹿にするのも大概にしろよ?」
「なっ……!?」
中国国家安全部は、初めて本当に焦りを見せた。
経済の動揺を避けるため、交渉という名の脅しを続けていたが、先ほどの言葉で、われわれが相対していたのはただの一企業ではないことを思い知らされた。
「中国市場を崩壊させることは、私たちにとって造作も無いことです。あなた方がその影響をどう受けるか、よく考えてください。それではこれで失礼します。」
「わ、わかった、なら全ての不祥事は不問にする!だから、献金はストップしないでくれ!頼む!」
「そういえばおたくの党内戦略白書、我々の技術を奪うだけじゃ飽き足らず、いずれは潰そうとか書いてるそうですね。そんな人たちと組むわけにもいかないしなぁ。ま、資本撤退だけで済ませてやるよ。」
「そんな……」
そう言って仙水一行は会議室を退出した。
交渉が決裂した部屋には中国陣営のみがただ立ち尽くしていた
「……くそっ…くそおおおお…!」
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「またか……。」
烏丸グループの経営陣とともに、仙水悠は机に置かれた書類の山を見下ろした。そこには、あれから毎日のように中国政府から送りつけられた圧力とも取れる警告書が並んでいた。「汚職疑惑の解明に協力せよ。」との名目だが、実際には烏丸グループに不利な情報を引き出し、交渉材料として使う魂胆が透けて見えた。
「本当にこりない奴らだ」
仙水は席を立ち、ホワイトボードに複雑な図を描き始めた。それは、中国株の動向、世界経済への影響、そして烏丸グループが持つ資産の分布を示すものだった。
「やつらは俺たちがまだ三下だと思い込んでいるようだ。揺さぶっているつもりだろうが、これ以上関与を続ける理由もない。」
そう呟くと、彼は部下たちを招集し、静かに指示を出した。
「…中国株を売却する。」
「本気ですか??」
「いや、だが、少しずつだ。まずは市場の様子を探れ。」
「……しかし、それでは、株価の暴落は避けられないかと。」
「構わない。」仙水は即答した。
まずは奴らの弱みをメディアに暴露する。奴らにこんなひどい仕打ちをされたとな?そして我々の傘下の企業に、中国株を一部売却していく。それで市場の動向を見極めるのだ。
これで名のある大企業らが次々と売却していけばやつらは完全に失墜し、我々も多少は名誉回復するだろう。
「奴らが我々を潰そうとしている以上、こちらも徹底的にやるまでだ。」
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数日後、烏丸グループは段階的に中国株を売却し始めた。最初は市場の反応は薄かったが、次第に不穏な空気が漂い始めた。
しかし、やはり仙水の予想していた通り、他の日本企業もそれに追随するように中国市場から資金を引き上げ、上海証券取引所の株価指数は急落を始めた。
その様子をモニター越しに見つめる仙水は、確信していた。
「これが奴らの弱点だ。自分たちの市場を過信しすぎたな。」
同時に、烏丸グループは世界各地で進めていた新事業の投資を強化し、失った利益の埋め合わせを始めた。汚職疑惑も、これによる経営再建の成功が強調されることで徐々に風化していった。
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「全て計画通りだ。」
上海市場が混乱する中、仙水は次の一手を考え始めていた。中国の経済衰退はもはや避けられない。
交渉は決裂し、汚職事件が明るみとなり、経営陣は株主臨時総会にて退陣を余儀なくされたが、われわれの目標は達成できた。
そして、我々が準備していた
確かに彼らが忠告していた通り、我々が中国へ降り立ってからその動向は監視されていたが、それは入国してからだ。
入国前に事前に現地の者に工作を働きかければ何の問題もない。
「彼らとの交渉もまあ悪くはないんだが、それは数年前のお話。これから中国は衰退し、少子化によりさらに加速するだろう。どっちにしろ衰退するんなら売却して小遣い稼ぎしたほうが得だよなぁ〜」
「ふう、これで、しばらくは静かにしていられる。」
仙水は心の中でつぶやきながら、次なる戦いに備える。中国の思惑を逆手に取ることができた今、次は他国の動きに注意を払わねばならない。
よく見ろ世界。
これが烏丸グループだ
これが
規模が大きくなりすぎて収拾がつかなくなってる気がする…
GAFAと並ぶ規模ならしょうがないよね!
中国は組織によって完全に潰されたわけですが、これだけじゃ終わらせないのが組織です。
我らが黒の組織は無敵です!
というわけで、そんな化け物を射抜くシルバーブレッドが遂に動きます。
お楽しみに