名探偵コナン外伝〜殉黒の抹消記録(Raven's Report )〜旧闇黒秘儀の機密文書 作:Yunice
今回のお話に対応する本編は、
黒の組織との接触
です!
本編との繋がりを意識しながら見て頂けると嬉しいです!
〜あらすじ〜
黒の組織との関わりがあったシステムエンジニアの板倉卓の殺人事件をコナンが眠りの小五郎で解決した。
コナンは推理ショーで目暮警部にわざと作らせた板倉の日記のMOのコピーを入手することができた。
そのMOを片手に板倉卓の別荘があった栃木県の山荘にいくと、
突如ウォッカからの電話が鳴り響く。
コナンは蝶ネクタイ型変声期を駆使して板倉の声でウォッカとの謎のプログラムの引き渡しに関する取引交渉で、なんとかコナン側の要望する時間を指定することに成功した。
予定より早くプログラムが手に入ることに満足しているウォッカであった…
しかしその裏で、ベルモットはウォッカを盗聴していた。
交渉内容を把握した彼女だったが、
その交渉にどことなく違和感を覚えていた…。
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東都大学
物理学教室にて
仙水はいつものように学生達に向けて授業を行っていた。
「さっきも言った通り、量子力学によれば、この世のあらゆるものは波の性質を持っていて、この波の性質が原因で起こる不思議な現象が「トンネル効果」です。」
学生が必死になって自分が書いた黒板の板書を写している。それを横目に方程式を解いていく。静まり返った教室にはチョークの音だけが鳴り響く。すると教室の扉の外に何やら黒い影が見えた。
ヤツだ。
あれ程大学には来るなと言ったんだが…。
だが今はこっちだ。取り敢えず授業の続きをするか。
「皆さんの目の前に高さhの壁があり、壁の向こう側にボールを投げ込むことを考えてみます。つまり、最低でも壁の頂上まで届く速さでボールを投げなくてはいけません。高校物理で既に学んでいる方はご存知のように、力学的エネルギー保存則にしたがって、速度vが必要です。ここで重要なことは、mghを下回るエネルギーではボールは壁に跳ね返されてしまい、絶対に向こう側には行けないということです。
一方で、量子力学によれば、ボールが波のように振る舞うことで、壁のエネルギーに満たない場合でも壁の向こう側に「すり抜ける」ことができます。これは、まるでボールが壁に穴を開けて向こう側に行ったように見えることから、「トンネル効果」と呼ばれるのです。」
キーンコーンカーンコーン
授業終わりのチャイムが鳴る
「では、課題として、トンネル効果における電子のエネルギーとその波動関数について、シュレディンガー方程式を使って求めてきて下さい。基本的にノートを見れば解けるとは思いますが、かなりの計算量になると思います。紙で提出する場合は事前にホチキスで止めておいて下さい。次回は、トンネル効果を利用したデバイスなど、量子力学を応用した技術について解説します。」
学生が一斉に立ち上がり教室からでて行く。
これが時間割最終の授業だからみんな外でご飯を食べに行ったりサークルに励んだりする。授業が終われば、その間の時間を使って学生の質問を受けたり、事務作業を行ったりする。
そしてその後、ようやく自分の時間ができるので、僕の研究の時間は19時以降になったりする。
学生からの質問もまああるので、事務仕事にはなかなか時間が取れないんだけどね。
「仙水先生、質問よろしいでしょうか。」
「どうぞ」
「ここなんですけど…」
「お、もうそこまでやったのか〜!だけどこれはまだ先にやる内容だからな。今度うちの研究室に来な。その時にじっくり話そう」
「ありがとうございます!先生のめっちゃ紳士なとこ、とても良いなって思います!」
「それは私が君らに対して紳士なのではなく、物理に対して紳士なだけ」
「先生ったら素直じゃないですね!じゃ、またね先生!」
女学生はそういうとテニスコートへ向かって行った。
テニスサークルなのだろうか。
深夜2時すぎ
「……よし、今日はここまで」
最後の計算結果を保存し、仙水は椅子の背もたれに体を預けた。両腕を頭上に伸ばすと、凝り固まった肩がじわりと痛む。
授業と学生の質問対応を終え、ようやく自分の研究に取りかかれたと思ったら、もうこの時間だ。
机の隅のコーヒーを口に運び、顔をしかめる。
「冷た……」
時計は午前零時半を回っていた。
明日も朝から授業がある。今から帰って風呂に入れば、まだ少しは眠れるだろう。
パソコンを閉じかけたところで、研究室の扉がノックされた。
「……はい?」
こんな時間に誰だ。
返事を待つこともなく、扉が開く。
「ハァイ〜。随分と熱心なのね」
聞き覚えのある声に、仙水は伸ばしかけた手を止めた。
「……なるべく大学には来るなと言っただろ、ベルモット」
「あら、真夜中に大学に閉じこもってるあなたに言われたくないわ〜。それに、あなたのお目付け役である私にとって当然のことよ?それに、表社会を観察するいい機会でもあるし。あなたの表の顔も見ておきたかったし」
「お前も随分と物好きになったもんだ」
「私は最初からあなたに興味はあるんだけど?2代目ピスコさん?」
「…勝手にしろ」
「つれないわねぇ。昔は敬語でペコペコしてたくせに…あの時が懐かしいわぁ」
「こんな立ち話をするためにわざわざ来たのなら今すぐ帰ってくれ」
「あなたも本当せっかちね。本当誰に似たんだか…。立ち話もなんだし、あなたの部屋、入れてくれない?」
「これだから自由人は」
「それ、あなただけには言われたくないんだけど?」
「ふん…」
そう言うと仙水はベルモットを部屋に招いたのだった。
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研究室
コポポポポ
ポットに水を入れポットを温める。
沸騰するまでの間にコーヒーの粉を濾紙を入れた漏斗に2杯入れる
「こんな時間に飲んだら夜眠れなくなるぞ?」
「私は夜に仕事だからいいのよ。いいからさっさと用意してくれないかしら。」
「…」
「あと、粉は少し多めにしてもらえるかしら。私濃いのしか飲まないの」
さも自分の家かのように当たり前にソファに座り足を組みながらコーヒーの注文をするベルモット
「こいつ…遠慮という言葉を知らないのか…!」
コポポポポ……ピッ
ポットが湯の沸騰を告げる。
仙水は無言でお湯を注ぎ始めた。蒸らしの一滴、二滴……香りがふわりと研究室に広がる。
「あらいい香り」
「チィッ…!」
相変わらずの高飛車な態度に腹が立ちつつも、平静を取り戻し本題に入る。
「それで?今日は何しに来た?ただうちでコーヒーが飲みたかったわけでもないだろう。」
そういうとベルモットはある男の名を口にした。
「板倉卓。あなたも知ってるでしょ?」
「ん?あぁ、そういえば爆死したテキーラの任務がその板倉卓ってやつのソフトの取引をしてたな。その後はあんたが引き継いでるんだったか」
「ええそう。で、その板倉卓のソフトの取引が、早朝4時」
時間を見る
「早いな…。とはいえあとといったところか。ウォッカたちはもう動いてるのか?」
「ええ、予定よりもずっと早く」
「…どういうことだ?」
「それがよくわからないのよねぇ」
ベルモットは自分の知る情報を仙水に伝えた。
「わかってることは、当初板倉との取引は翌日に行われるはずだった。ついさっきウォッカが板倉卓と連絡を取り、なぜか急に予定が早まって午前4時とのことよ。」
「…ほう」
「気のせいかもしれないけど、板倉が急遽予定を変更するような性格ではないのよね〜」
「なんでそんなこと言えんだよ?」
「同業者なのよ。元、だけどね」
「なるほど?感ってわけか。とはいえ、予定を変更したこと以外なんらおかしな点は見られないけどな」
「そこが不気味…なのよ」
「それで?なぜそんなことになっているのかを調べてほしい…と?」
「そういうこと。」
仙水は無言でコーヒーを一口啜った。
湯気の向こうでベルモットが猫のように目を細めている。
「悪いが、今回はその“妙な予感”とやらを信じてやるほど、暇じゃない」
「……そう?でもあなた、こういう勘だけは案外信じる方だったと思ってたけど?」
「気のせいだろ。だが俺は嫌だぞ」
「報酬は弾むわ」
そのひと言に仙水はベルモットに顔を見やり、顔をしかめ、数秒してから軽くため息をついた。
「はぁ……あんたの勘が的中したのは何割だったか、あとで統計とってみるとしよう」
「ふふっ、そう言ってくれると思った!やっぱ優しいわね、2代目のピスコさんは!」
「お前な…」
「なんだかんだ言って、私のこと大好きなんだから」
「おい僕はそんなこと一言も…!!」
ガタッ
「痛っ!」
唐突なベルモットの発言に立ち上がったものの、机に膝をぶつける。
そんな仙水にものともせずベルモットはコーヒーを飲み干すと、まるで最初から居なかったかのように軽やかに立ち上がる。
「じゃあ、私はそろそろ戻るわ。ウォッカたちにも、くれぐれも気を抜かないよう伝えておいて」
「俺に伝えるより、自分でやれ」
「だって、あなたの方が怖いんだもの♡」
「…やっぱお前嫌いだわ」
「ありがとう」
そう言って、彼女は研究室のドアを音もなく開け、闇の中に消えていったのだった。
組織のこんなどうでもいい会話するのが好き