思いっきし決死編です
ではどうぞ!
午前四時
取引時間
コナンは、ウォッカに指定されたロッカーに、小切手を挟んだ。
板倉が返すはずだったものだ。外から、はっきり見える位置に。
続いて、システムソフトのケースを中に入れる。
テープで、ロッカーの内側に固定した。
そのうえ、ケースの内側には発信機を仕込んである。
狙いは、アジトだ。
――完璧なはずだった。
「おい、なんの真似だ」
チャキ
「あ、兄貴…?」
ジンがウォッカの額に銃を突きつける
「取引は明日0時のはずだぞ?」
「明日はまずいって板倉の野郎がゴネたから…」
「このディスクがどうしてテープで固定されていたと思う?」
「えっ…!?」
「お前の指紋を取るためだ!」
「あ、兄貴…」
「ふん、とんだ狐がいたもんだ」
ジンに、すべて見抜かれた。
取引相手が板倉ではないこと。
この取引の狙いがソフトではないこと。
ジンは、そこまで把握していた。
だが、それで終わりではなかった。
「一応指紋は拭き取ったようだが……まだ生暖かい」
ケースに残った温度。
それだけで、十分だった。
「ってことは…」
「つまりこの近辺にまだいるということだ」
ジンとウォッカは板倉に雇われたであろう探偵を追い詰めるべく、コインロッカー中を探し始めた。
まだ、逃げきれていない。
コナンは、息を殺した。
*********
結局ジンたちは板倉の背後にいる黒幕を突き止めることはできなかった。
ジンとウォッカは地下コインロッカーの階段から引き上げる。
近くで宝石強盗事件が発生し警察が出てきたため、早めに切り上げるよう、
ピスコが、ジンたちに連絡を入れたのだ。
階段を出る直前、黒ずくめの服装だったジンらは姿を変え、ポルシェ356Aに乗り込むと、そのまま走り去った。
その背を見送りながら、ピスコは車を動かさなかった。
――あの子ども。
結局考えに考えた結果、おそらく家に帰ろうにも帰れない訳ありの子だと結論づけた。
だが、気になっていた。
一体どうやってジン、ウォッカに見つからずにやり過ごしたのかと。
だから誰も出てくるまで、少し様子を見ることにする。
ピピピピピピ
ウォッカからの着信。
ピスコは短く息を吐いてから、通話に出た。
「おい、何寝ぼけてんだ。早くずらかれ」
「いや、少し気になることがあってな。先に行っててくれ」
「は?」
「車からは出ない。警察に怪しまれることもないだろ」
「……ふん。なら勝手にしやがれ」
「ああ、勝手にする。だが、それよりもだ」
「あぁ?」
「板倉卓、昨日のうちに別件で殺害されたらしい」
一拍、間が空いた。
「ああ。さっきジンの兄貴ともその話をしてたとこだ。板倉の野郎、取引に別の野郎を差し向けやがって!」
「おそらく電話の相手も、その何者かだろうな」
「けどよ、あれは確かに板倉の声だったぜ?」
「……ならそいつは相当手ごわいだろうな」
「は?おいまさか、ベルモットみてーに声色を変えられる奴がいるってーのかよ?」
ピスコは前を見たまま続ける。
「板倉が雇った探偵X。俺はそいつを探す。お前らも、気をつけろよ、余裕ぶっこいてると痛い目に遭う。必ずな」
「俺と兄貴が、そんな狐野郎にやられるってのか?」
「ハッ!やられなきゃいいんだよ。じゃーな」
「おい、待――」
ブチッ
通話を切る。
「……うっせえ」
ピスコは背もたれを少し倒した。
コインロッカーの入口には、まだ動きがない。
午前八時。
結局、あの子どもは姿を見せなかった。
こんな時間だ。
やはりジンとウォッカに怯えてどこかに隠れて、そのまま寝てしまったんだろう。
所詮ただの子どもだったというわけだ。
これ以上待ってあの子が出てきたところで
何も意味をなさないだろう。
ピスコは缶コーヒーを一本開けた。
眠気を払うため、というより、区切りをつけるためだ。
これを一気に飲み干す
エンジンをかけ、
カラス色の車は、ゆっくりと動き出した。
*******
2時間後
一台の車が、ゆっくりと前に停まる。
黄色い、どこか古めかしい車。
中から、少女が一人降りてくる。
そのまま、地下コインロッカーへ。
ガチャ
「は、灰原!?」
「何してんのよ、こんなとこで」
今回はほぼ決死編のまま進行していきました。
これから仙水(ピスコ)は探偵Xが誰かを調査することになります
いろいろな繋がりを考えて描いていきますんで、どうぞこれからもよろしくお願いします。