激戦となったキョウスケ対ハルカの一戦の決着は呆気ないものとなった。ハルカのジバコイルはバクーダ対策をしていないためジャイロボールしか攻撃の手段が無くその手を取ったジバコイルに対してキョウスケのバクーダがだいちのちからでトドメを刺したという物。
たった一撃だった。物の数秒。ハルカの決意を込めた一戦は最後は数秒で終わる結末となった。両者がボールを戻しハルカが視線を一切キョウスケの方に向けずに下を向く。そんなキョウスケにリナとヒガナが歩いて近づいて行く。
「ナイスバトル。良くかわし切ったわね」
「ああ…一歩間違えれば逆の展開に持ってかれてもおかしくないぐらいに難しいバトルだった」
「相当鍛えてきたんだね向こう」
「…向こうは納得していないみたいだがな」
このバトルを乗り切ったキョウスケに笑みは無かった。寧ろハルカの方を見据えるかのようにその方角をジッとただ見ている。キョウスケの一言を聞いたヒガナとリナはハルカの方を向くと彼女の拳は血でも出るんじゃないかってぐらいに強く握りしめられている。
こちらにまで握りしめる音が聞こえてくるほどだ。ハルカはそのまま歯を食いしばった後に上空を見上げながら…
(重い…全力でやっても届かないところには届かない。向こうはまだ2体も残していた…!)
「お見事でしたキョウスケさん。完敗です」
「心に思ってないだろ。一歩間違えれば逆の展開に持っていけていたというのはお前も分かっている筈だ」
「お見通しですか。でもそれが出来なかった。トレーナーとしてまだ私が未熟という証。逆にもっともっと私含めてポケモンが強くなれるという証拠」
ハルカの言葉を見透かしたかのように発言したキョウスケ。一瞬ヒガナが間に入ろうとしたが軽く笑ったハルカに悔しさの色は消えていた。その目はただ純粋に自分に対して闘志を燃やしている、そしてただ見せ付けた牙が折れていないと言わんばかりの真っすぐな目と笑み。
一言言い切ったハルカはキョウスケに近づいて行き手を差し伸べる。
「次は必ず勝ちます。リーグチャンピオンという高みに上ったその時に…!」
「負けなんなよ」
「そちらこそ…!」
ハルカが差し伸べてきた手をがっしりキョウスケも掴み握手を交わす。両者バトル中の厳しい表情は消え笑みに変わっていた。それを見て安心したのはその二人のやり取りを見ていたヒガナとリナ。そしてその周りをゴニョニョのシガナが元気よく走り回る。ハルカはシガナを軽く撫でるともう一度キョウスケとハイタッチをかましその場を立ち去っていく。
言葉はなかったがそのタッチだけでお互いを理解していたような感じだった。その去り行く背中をキョウスケはじっと見つめていたのだが…
大きく息を吐くと…
「この番組はご覧のスポンサーの…」
「終わらん終わらん。何で終わると思ったんだよ」
「うるせえな。本来これはギャグ小説だろうが多少ふざけないとキョウスケが真面目路線に変えたと思われるだろうが」
「あ、雨降ってきた」
「何でこのタイミングやねん!」
ハルカとキョウスケのやり取りに神様が満足してしまったのか降り出した雨。キョウスケ達はそのまま傘を差しながらヒマワキシティに向かって行く。色々遠回りはしてしまったがようやくたどり着いたヒマワキシティ。119番道路腕は警報級の雨が降っていたのにも関わらずヒマワキシティに入った瞬間に雨は止んだ。
途中でキョウスケが119番道路とヒマワキシティの境界を探すようなそんな歩き方をしていたがヒガナに頬をつねられながら一行はヒマワキシティに到着。
勿論やることはまずはポケモンセンターに立ち寄ってポケモンを回復させることと進路の確認だ。ポケモンの回復を待っている間にポケモンセンターのカフェエリアにてリナが大々的に地図を広げ方向を確認する。
「今がヒマワキシティそしてこの先がミナモシティ。そこから124番水道とかを通ってキナギタウンに向かう感じになるかな」
「じゃあレックウザに乗り込めばイチコロだな!」
「いや怪しく見えるから駄目だよ?」
「………」
「小説だから別にいいじゃんみたいな顔すんなアンタ。ミナモにまで行けば船出してくれる人がいるから耐えろ」
元気よく言い放ったキョウスケに対してリナが普通に否定するとキョウスケはまるで「え?ダメなの?」と訴えんばかりにキョトンとした表情を浮かべたがそこからヒガナを見つめると露骨にめんどくさいと言わんばかりの表情を浮かべる。流石にキナギタウンは船着き場のような場所がないので知り合いの船長に船を出してもらう予定でいる。
キナギタウンを抜けた先にアスフィアが待つ空の柱が待ち受ける。
「今の所レックウザは?」
「特に何も。時々どこか見据えるようなそんな顔つきはしているがまあ大丈夫だろう」
「薄々は感じているのかもしれないわね。故郷が若干近くなっているもんね」
「俺と一緒にいるのが故郷じゃないって言うのか!」
「あんたは故郷ではないでしょ」
時々空の柱を見据えるように遠い方を見つめるというレックウザ。特にキンセツシティに泊まっているときなどはキョウスケは強く感じたという。そしてフエンタウンでもその予兆は確かにあったらしい。ヒガナはその話を聞き頷いたがキョウスケの謎の反論にヒガナはコーヒーを飲みながら冷静に返答した。そんな3人の元に一人の男性が近づいてくる。
リナが目を凝らして見つめたがカウボーイハットに西部劇に出てきそうな服。どこか見たことがあるような人物だが…
「ヘイ!君たち!ヒマワキシティにようこそ!よく来てくれたね!」
「……ヒガナ。警察に通報。警備員がいるはずだ」
「オッケー」
「オッケーじゃない!忘れたのか秘密基地で泊まっただろ君たち!」
「すいませんオレオレ詐欺は間に合っているんで」
「どんだけ無礼なの!」
キョウスケ達の前に姿を見せたのがここに来る前に出くわした変…ではなく秘密基地を設計していたギリー。キョウスケ達にとって彼とは会うのは久々なので記憶がないように振舞っていたがギリーの必死の訴えの中でキョウスケが突如として立ち上がり…
「誰が無礼じゃこの無礼者!」
「無礼に無礼が重なった…」
「後三つ無礼重ねてご無礼にしてやるわこの野郎!」
「そのご無礼のごは数字じゃないからね!?」
ヒガナとリナが思わず軽く息を吐いた様子でキョウスケを見つめる中でアラームが鳴りキョウスケがポケモン達を回収しに行っている間にヒガナがギリーに語り掛ける。
「アナタこないだ111番道路で…」
「そうとも!秘密基地は色々なところにあるからね。そしてこのヒマワキシティにあるのが俺たちの本拠地というわけさ!来ていると聞いてね。ちょっと顔を出したくなったんだよ」
「良かったら案内してくれない?ヒマワキシティってあのバカにはすっごく大変そうだからさ」
「誰が馬鹿だ!ぶっ飛ばすぞ!」
「oh…何という地獄耳…」
ギリーが折角顔を見せてくれたという事で彼にヒマワキシティを案内してもらう形に。ヒガナが軽くキョウスケについて馬鹿にしたのだが聞こえていたのか遠くの所から大声で反論。これにはギリーもかなり驚いた様子だった。
今にでも殴り掛かりそうな勢いでキョウスケはポケモン回収後にヒガナの方に向かおうとしたのだが、ボールから突如として出てきたヨクバリスにパンチを喰らいその場に叩きつけられる。
「ぐは!な、何をするだー!許さん!」
「いつになったら出番をよこすつもりだ!このマヌケ!」
「何!?マヌケだと!?トレーナーに対してデカい態度だぜ」
「何かまた言い合っているよ…」
ヨクバリスに地面に叩きつけられた後にすぐにキョウスケが立ち上がると顎を突き出した煽るかのような表情でヨクバリスの方を見つめたのだがヨクバリスは全然気にすることなくキョウスケに言い返す。キョウスケが若干呆れた表情を浮かべるとヨクバリスとキョウスケの取っ組み合いとなりその様子を見たリナが思わず呆れた表情を浮かべる。
ヒガナも目を背けながらため息を吐くような感じだったがギリーの方を見つめると…
「ひとまずアンタらがやっているという秘密基地の本拠地?みたいなところに案内してくれる?」
「オッケー!」
「おいまだこっちの話はついてないぞ!」
「あんまりやり合っていると置いて行くよ」
「この人でなし!」
ホウエン地方屈指の豪雨地帯を抜けた先にあるヒマワキシティ。町中に草木が生い茂り人々はツリーハウスにて生活をしている。その中でも今キョウスケ達がいたポケモンセンターやフレンドリィショップそしてポケモンジムはこの町の中でも唯一と言ってもいいほどに地上に構えている建物。
ポケモンセンターのすぐ隣にある梯子を上り一行は秘密基地ギルドに向かって行く。
「目的はジムリーダーナギへの挑戦か?」
「私達ジムは一切経由してないのよ」
「俺ジムリーダーより強いから」
「そこまで言うんだったらいつか手合わせしてみたいね」
「リアルファイトか?」
ギリーの問いかけに淡々と答えていくヒガナに対してキョウスケは明らかに調子に乗ったようなどや顔で言い切るとギリーは若干驚いたようなそんな様子で軽く返答をする。
だがその次に返ってきたキョウスケの返答と拳を握りしめたようなそんなポーズを見てギリーが首を横に振る中でヨクバリスが軽くしばきその一撃がよほど強かったのかツリーハウス付近が少しばかり揺れた。
「そんな揺らすほどか馬鹿たれ!」
「お、俺は揺らすつもりはなかった!何を言っているか分からねえと思うが俺にも分からなかった!」
「揺らす…つもりではなかったのかヨクバリス」
「おい!ツリーハウスを唯一繋ぐ場所なんだからな!もう少し慎重にやってくれよ!?」
ギリーからの必死の言葉にヨクバリスとキョウスケは何言ってんの?と言わんばかりに耳付近に手を当てて聞き直すようなそんなジェスチャー。
ギリーは思わず拳を握りしめたが先ほどの揺れを考慮しその怒りを抑えきった。二人は代わりにヒガナとリナが拳骨で叩くことによってその場にうずくまることとなった。
そうしている間に秘密基地ギルドに到着。当然ギルド自体にはキョウスケ達は入っていないので経由するだけとなるのだが…
「ようこそ秘密基地ギルドへ!ひとまずヒマワキに来たんだ。まあ見るだけでも見ていってくれ」
「いーや有名人だなぁはっはっは!」
「悪い意味では有名人だぞブサイク」
「んだとクソリス!」
「ずっと争ってんなあアンタら!」
相変わらず口を開けば言い争うキョウスケとヨクバリスを見て思わずヒガナがツッコミを入れる中でリナは小さく気にしないでとギリーに言葉を送りギリーは苦笑いを浮かべながらも了承。そして折角ここまで良くしてくれるギリーに対してヒマワキシティに寄った目的を話す。
「本来の目的はミナモシティで…船を借りる為と?船を借りてどうしようってんだい?」
「ちょっと私用でキナギタウンに寄る用事があるんだよ。うちのポケモンの一体が故郷に帰りたい帰りたいってやかましくてな」
「へえ…キナギタウン出身のポケモン…珍しいな。確かにキナギに行くならこっちのルートからの方が行きやすいよな」
事情を説明していく中でギリーの返答に一瞬キョウスケは顔を背けつつ「キナギタウン出身じゃないけどな」と思いながらギリーの方に普通の顔として戻す。その際にヒガナに少し頬をつねられたが何ともないと言わんばかりの顔だった。
「さっきここにナギに挑みに来た少女を見たもんだからてっきりその目的だと思ってな」
「さっき119番道路で会ってバトルしたよキョウスケが」
「本当か?あの子とんでもなく強いよな!で結果はどうだった!」
「俺の勝ち!何で負けたか明日まで考えといてください!」
「何で普通に言えないのかなぁ…」
呆れるヒガナとその場にこだまする笑い声。キョウスケは馬鹿にされた気分となったのだがトドメとなったのがヨクバリスの方に見た際の明らかに馬鹿にしたかのようなニヤリとした笑み。キョウスケとヨクバリスが再び睨み合っているその時。その上空では小さいながらどす黒い雲が発生。
特にその現象が強く起きたのが天気研究所がある119番道路。何かしらの咆哮のような鳴き声を耳にしたその場にいた人物が密かに警戒心を抱いていた。
密かに出てき始めたアスフィアの行動。それはまるでキョウスケ達が空の柱に向かって行く同時のタイミングで起きているようにも見えたのだが、キョウスケ達がその予兆を知りえるはもう少し後の話だ…
みてくださりありがとうございます。またよろしくお願いします。