俺はどうしてここにいるんだ……ここは何処なんだ……確か俺はあの時死んで……なんで死んだんだ?死んだのになんで生きているんだ?俺は誰なんだ……?分からない……分からない……
『変な力を感じて来てみたら……亡者が何故ここに?』
『分からない……なんで死んだのか……どうしてここにいるのか……分かんないんだ』
『なるほど……死んだ理由も前世で何をしていたのかの記憶がないから天国にも地獄にも行けなくなったのですかね……』
『どうします四季様?この亡者、普通の亡者とは違いなんかヤバい力を持っていますし……力が覚醒する前にここで狩り取っちゃいます?』
『辞めなさい。罪人でもない亡者の魂を狩り取るなど閻魔として許せません』
大きな鎌のようなものを持っている女性にそういうと四季と呼ばれる女性は俺に手を差し伸べた。
『貴方、私の元で働いてみるのはどうですか?』
.『ちょっ!四季様!?』
『どうせ死神に魂を狩り取られるぐらいなら私の元で働いた方が身の安全も守れますし、何より失っている記憶を思い出す可能性がありますよ?』
『記憶を取り戻す………』
『どうします?強制ではありません。私は貴方の意見を尊重しますよ』
微笑みながらそういう閻魔に俺は差し伸べられた手を掴んだ……
地獄。
それは死後、人が落ちる場所。閻魔によって裁かれ現世での罪の、その罰を受ける場所。そんな場所に生きている人間など存在する筈も居らず大半は死神や獄卒の鬼たちだけなのである。そんな地獄に閻魔の使いとして働いている人間が存在した。
「あ〜……ようやく着いた」
時の列車『ネガデンライナー』から降りた黒色のボサボサ髪の青年は背を伸ばしながらそう呟いた。この人間こそが地獄で閻魔の使いとして働いている人間である『黒影 侑也』である。
侑也が降りたと同時にネガデンライナーは粒子状に変化し消滅した。侑也はそれを確認すると自身の上司である閻魔がいるところに向かって歩きだした。
「やれやれ……最近、転生者の数が多くなったな」
「あれ〜侑也さんじゃないですか〜」
最近、仕事が多いことに愚痴を言っていると後ろから声が掛かり振り向くと、赤髪のツインテールにロングスカートの着物のようなものを着用し大きな鎌を持った女性が駆け寄ってきた。
「小町じゃんかサボり?」
「違いますよ!死者の霊を三途の川を渡らせ終えたので今は休憩中ですよ!」
「ふーん……休憩中ね〜」
「あ!信じてないですねその顔!」
この女性の名は『小野塚小町』俺と同じ閻魔の部下であり死神だ。死者の魂を迎えに行き刈り取ったり、死者の霊を船に乗せて三途の川を渡らせるたり、地獄の雑務一切を請け負う事務係をしている。しかし、サボり癖があり、閻魔様に見つかっては説教を喰らっている。
「侑也さんは仕事の報告ですか?」
「まぁな。転生者の魂も渡さないといけないから」
「そうでしか〜それじゃアタイはサボr……休憩中なのでこれで失礼しますね!」
そう言って小町は何処かに走り去って行った。やっぱりアイツ、仕事をサボってねぇか?また閻魔様に叱られるな〜と思いながら俺は閻魔様が待つ場所に向かった。すれ違う獄卒の鬼達に挨拶をしながら閻魔様がいる是非曲直庁にやってくると丁度判決が終わるところだった。
「判決!あなたは黒です!」
「そんな!閻魔様!もう一度審議を!審議を!」
「いいえ、判決は覆りません」
罪人である魂はそう告げられると獄卒の鬼達によって連れていかれてしまった。相変わらず裁判の時は圧が強いな……俺は一息吐いている閻魔様に声をかける。
「お疲れ様です四季様」
「ん?侑也ですか。少し遅かったですね」
「いや〜小町と途中で話していて少し遅れました」
「……小町には三途の川の仕事を任せていたのですが……またサボっていましたね」
あ〜やっぱりサボっていたな小町の奴。この厳かな帽子に紅白のリボンを付け笏を持つ緑髪の女性こそ俺と小町の上司であり死者を裁く地獄の閻魔『四季映姫・ヤマザナドゥ』だ。そして、記憶がない俺を拾ってくれた恩人である。
「どうぞ、回収した転生者の魂と特典です」
「ありがとうございます。あなたが戻った後に無事に世界を修正させ、転生者が催眠した彼女らや追いやられた原作主人公は元通りになりました」
「そりゃ良かったです」
俺の仕事は四季様に指示により転生先で悪さをする転生者の魂を回収することで、これまでに様々な転生者の魂を回収をしては世界の修正をしている。戻って回収した転生者の魂を四季様に渡しては次の転生者の魂を回収を頼まれているので……そろそろ休みが欲しいんだけど……。
「……そういえば侑也。貴方、休みが欲しいっていつも呟いているそうですね」
「え?あ、あぁそうですね……流石に休みたいですね」
「そうですね……流石に休みなしで仕事をこなすのは無理がありましたね」
お、これはもしかしてだけど休暇が貰える感じじゃねぇか?よしゃ!これでゆっくり寝れる!休めれる!流石、四季様部下のことをちゃんと見ていることで。
「ですので侑也、あなたに休暇を与え現世で学生として通ってもらいます」
「え?」
「ですから現世の学校に通ってもらうって言っているのです」
「いやいやいや!なんで学校に通わないといけないんですか!」
なんで俺が現世に行って学生として通わないと行けないんだ?普通の休暇が欲しいんですけど!
「実は日本神話の天照大神様から少し頼まれ事をされましてね。その内容がはぐれ悪魔の出没率が増えており、被害も出てるため使いを頼まれたんですよ」
「は、はぁ……なら、俺じゃなくても小町や他の獄卒の人に頼めば」
「小町はアレでも忙しい方ですし、他の獄卒の方達では少し不安なところがありますからね。私の直属の部下で実力のある侑也なら不安もありません」
満面の笑顔を浮かべながら期待の眼差しを俺に向けながらそういう四季様。すんげぇいい笑顔なんだけど何処か圧を感じさせる笑顔なんだよな〜このまま断り続けるのも面倒だし……やるか。
「はぁ〜わかりましたよ。やりますよ」
「ありがとうございます侑也……貴方が通ってもらう高校は駒王学園に通ってもらいます。入試手続きもこちらで済ませておきましたので入試の日程を確認しておいてください」
「え、入試から頑張る感じなんですか……」
「丁度、来月に駒王学園の入試があるそうなので侑也にはその入試を受けてもらいます」
マジかよ〜……勉強なんて俺、苦手なんですけど〜入試でミスったら四季様にとてつもない雷が落ちそうだし、死にものぐるいで頑張るしかないな。
「わかりましたよ。頑張って勉強します」
「貴方なら余裕で合格出来ると思いますが、頑張ってください。応援しておりますよ」
「ありがとうございます……では、俺はこれで」
四季様に対し俺は一例をし是非曲直庁から出ていく。とりあえず獄卒の人に頼って勉強を教えてもらうしかないな。
「はぁ〜……やっぱり行かせたくないです〜……」
「だから言ったじゃないですか〜四季様」
侑也が是非曲直庁を去ったのを確認した四季はそう嘆きながら机に突っ伏する。四季に部下である小町が報告書を片手にそういう。
「そんなに嘆くなら侑也に頼まなければ良かったじゃないですか」
「上級のはぐれ悪魔等に瞬時に対応出来るのは侑也しか居ませんからね……私の私情で天照大神様の頼みよ無下にすることは出来ません」
「おー流石四季様、かっこいいですね〜」
「でも〜四季が現世で他の女性と仲良くなって恋人になるのは嫌なのですよ〜!」
この上司は侑也が絡むとてんでダメになるな〜いつも完璧で地獄の最高裁判長と呼ばれ獄卒達から尊敬されている人が一人の男にこんな姿になっているところを見られたらどう思うか……正直ギャップ萌えなのかめちゃくちゃ可愛いけど……。
「大丈夫ですよ四季様、侑也は鈍感なのでそう簡単に恋人は出来ませんよ!」
「……確かにそうですね」
小町の励ましにより突っ伏していた顔を起き上がらせるが、その顔は若干不服そうだった。そんな四季を見ながらホッとした小町は報告書を置くとその場から立ち去ろうとする。
「お待ちなさい小町」
「?なんですか四季様?」
「侑也からの報告で貴女、私が言った仕事をせずにサボっていましたね?」
「ギクッあ〜いや〜ちょっと休憩をしてからやろうかなと思いまして〜」
「問答無用です。そこに正座しなさい!」
「ひぇ〜〜!」
サボっていた事がバレた小町は四季により3時間の説教を喰らうことになったのであった。