異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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11話

 

 このまま北海道にいたら──というか、この異世界日本にいたらまた醜鬼に襲われる気がする。

 イベント会場で発生したクナドより現世に出てきた醜鬼の襲来に遭遇する不運と、助けた中年のスタッフさんにご飯を奢ってもらうことになった幸運な出会いがあった日。

 あの後、避難所までおじさんに肩を貸して歩き、お礼と共に連絡先を交換してネットカフェに戻った僕は、わずか数日で醜鬼の襲来を2度も経験したことを受け、今後の安全を考えて北海道から移動するべきか悩んでいた。

 

 イベント会場にて発生した魔都災害は、早速ニュースになっています。

 被害は死者18名、負傷者51名、行方不明者4名と、ここ最近では最大の被害を出す惨事と報道されています。

 この被害の大きさは早急に現場に駆けつけられなかった魔防隊五番組の対応が遅かったからだと非難する声がある一方、彼女達の活躍のおかげで最小限の被害を抑えられたと擁護する声も多く見られているとのこと。

 現世側に襲来してきた10体の醜鬼は殲滅され、出現した2つのクナドものちに消失が確認されたことで、ひとまずの収束を迎えたと発表されています。

 

「それは大変難儀だったが、しかしそれを容易に乗り越えてこその我が盟友よ。見るがいい、我はこうした盟友へ向けられる賛美の声が誇らしい」

 

 そして、この魔都災害にてジャイロスリンガーの姿でおじさんを抱えて醜鬼から逃げる姿が会場のカメラ機器に偶然映されたデータが残っており、ライドしたりコールしたりおじさんを抱えて醜鬼から逃げたりボールを投げつけたりしていた僕の姿がネットで出回るという珍事も起きてしました。

 

 踏みつけ突き飛ばしたおじさんを救った正義のヒロインと称賛する声がある一方、ステージの方で多数の人々が醜鬼に襲われている中助けなかった冷血コスプレ女だと非難する声がネットでぶつかっており、大きく報じられる魔都災害の横で小さな騒ぎになっています。

 

「やめて恥ずかしいんだよ……」

 

 僕としては非難の声以上に、ライド口上をバッチリ映されていたのが恥ずかしくてたまらないです。

 ステージの方に逃げた人を助けられなかったのは事実だから非難されてもしょうがないけど、このライド口上をカッコいいだの、イタいだの、変身後の露出が少なくてつまらないだの、いろいろいじくりまわされるのが本当に耐えられないのでやめて欲しいです。

 

「何を言うか。これこそ我と共にかの星に安寧をもたらした救世主の姿。称賛に囲まれるべきポートちゃんの勇姿よ。バッチリ記録したぞ」

 

「やめてええええぇぇぇ!」

 

「うるせえぞ!」

 

「ごめんなさい!」

 

 僕としては恥ずかしさで悶えて穴があったら入りたくなる事態だけど、これが恥ずかしいと思っていないブラントは公開されている動画をお気に入り登録した上にダウンロードして保存しやがりました。

 これに抗議したら、隣の部屋からうるさいぞと抗議が飛んできて、反射的に謝ります。

 こう言うのを踏んだり蹴ったりというんだよね、きっと。

 ……ため息が出る。

 

「……はぁ」

 

「ネットではポートちゃんの正体を探る動きも起きているな。助けた男も早速取材を受けている」

 

「おじさん勘弁してよ!」

 

「うるせえぞ!」

 

「ごめんなさい!」

 

 ネット上では僕が何者かと探る動きがあり、おじさんはテレビの取材を受けて当時のことを振り返り僕を救世主と褒め称えるなど、恥ずかしさ上塗りの情報をブラントがネットの海から拾ってくる。

 もうやめてと届きもしない抗議の声を上げると、おじさんには届かなかったけど隣の部屋の人には届いたらしく、また壁を叩かれました。

 騒いで本当にごめんなさい……。

 

「もうやだ、決めた。ここ出て別の場所に移る。とりあえず本州に行ってから、醜鬼にあわないように海外に移って5年を安穏と過ごすんだ」

 

「資金もないのにか?」

 

「うぐっ……! ば、バイトで何とか稼ぐよ。そうと決まれば、お菓子工場と新聞配達のほかに昼間の働き口を探さないと」

 

 こうも醜鬼に襲われる北海道からはさっさと離れる意向をブラントに告げるも、資金不足を突っ込まれ言葉に詰まってしまう。

 確かに、海外は難しいかも……やっぱり日本にいるしかないのかな? 

 

 でもまあ、本州に移るくらいなら働き詰めすれば多分資金は貯まるでしょ。

 楽観的だと突っ込まれるかもしれないけど、資金を貯めるためには一日中働くくらいしかできないからしょうがない。

 

「働き詰めは美容にも良くない。ほどほどにな」

 

「ただでさえお金ない中でそんなこと気にしてられないよ」

 

 寝不足と働きすぎは美容に良くないと言われた。

 確かにそうだけど、食い繋いで安全な場所を探すためなら美容は後回しにするしかない。あまり気分のいいものではないけど、外見は命を天秤にかけたら安い価値しかないことなんて、泥まみれとか毒沼に落とされたりとかした邪教と戦った異世界で散々経験したので。

 だいたい可愛いかどうかで言えば、僕は可愛くない方だし。異世界飛ばされる前は、クラスメイトに僕よりずっと可愛い子たくさんいたし。何だったら面と向かってブスって同級生の男子に言われたこと一度や二度じゃないし。今更あれこれ飾ってもモテないこと知ってるもん! だからヴァンガードに逃げたところもあるから! 

 ……自分で言って悲しくなってきた。

 

「突然涙を流すな。何があったのだ?」

 

「何でもないよ。もう寝るよ、疲れた」

 

「あ、ああ。ゆっくり休むのだ」

 

 毛布を被ると、ブラントが頭をポンポンしてくれた。

 ちょっとだけ気分が良くなり、その後疲れもあってすぐ眠ることができました。

 ありがとう盟友。

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