異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!? 作:火星で1,000往復
イベント会場にて魔都災害が発生した翌日。
翌日の新聞で早速この魔都災害のニュースが掲載されている。
被害が大きかったこともあり、今回の魔都災害の件は大きな話題となっていた。
そして新聞には載らないが、その傍らネットでは自身を突き飛ばした相手を助け醜鬼から逃げ切ってみせた謎の変身コスプレ女の話題も盛り上がっていた。
魔都に存在する魔防隊の拠点の一つ、魔防隊五番組寮にて。
行方不明者4名の安否が確認を終え、今回のイベント会場にて発生した魔都災害の事後処理を終えた魔防隊五番組組長の蝦夷夜雲は、公的機関の発表にはなく真偽の不確かな情報が溢れるネットの海で盛り上がっていたその謎のコスプレ女に関する話題を見つけ、その動画に映るスタッフの顔に見覚えがあることに気づいた。
「うーん……? この顔、この髪、そしてあのカード……もしかして──いや、もしかしなくてもミナトちゃんだよね?」
こちらの異世界日本では、トレーディングカードゲームは存在するがヴァンガードというカードゲームは存在しない。
ミナトと仲良くなりたかった夜雲は共通の趣味を持とうとカードゲームに詳しい妹にヴァンガードについて尋ねたが、当然この世界に存在しないヴァンガードを彼女は知らない。
ミナトと仲良くなりあわよくば自らの欲望のハーレムの一員に迎えたい夜雲は諦めずそのきっかけになるだろうカードゲームについて調べたのだが、ヴァンガードというカードゲームは存在しないことを知り、ふとミナトを保護した時の状況とその時の不自然な点を思い出す。
ミナトを保護した時、周囲に魔都災害の兆候である突発的に発生するクナドは観測されていなかった。
観測精度の問題などで見つからなかったと言えばそこまでだが、ミナトを保護した地点では醜鬼が暴れていた痕跡が多く見られた。
桃を摂取している人間ならば一般人でも通常の醜鬼から逃げることは難しくない。能力次第では追い払ったり、雑魚程度ならば倒すこともできる。
だが桃を摂取していない普通の何の訓練も受けていない一般人があの数の醜鬼が暴れる場所から一定時間逃げ続けるのは困難である。
もしかしたらすでに桃を摂取していたのではないかと思い調べるも、ミナトには桃を摂取した記録がなかった。
それどころか、あの時確認した免許証の名前などから身元を詳しく調べたところ彼女は日本に存在しない人間だった。
免許証にあった住所は中学校の敷地内であり、ミナト本人はもちろんなことながら、彼女が異母兄として紹介したレドなる銀髪の人物も、朱霧という苗字も近辺には見つからなかった。
そしてネットの海で拾い上げた映像。
桃を摂取した記録どころかこの日本に戸籍を持っていない謎の人物であるミナトが、存在しない謎のカードを駆使して動画で見てもわかるほどに明らかに中身の骨格や体格からして全く違う姿に変身し、何もない場所から同じく人間とは思えない力を持つ存在を2人も出現させ、大人1人を抱えて複数の醜鬼から逃げるという桃を摂取していなければ説明のつかないような能力を見せた。
レドを名乗るあの外国人の存在もあり、夜雲はミナトを魔都の資源を狙う海外のテロリストの一員ではないかと推測した。
最近では魔防隊三番組にてこれまで発見事例の無い未確認の人型醜鬼の襲撃を受け組員の半数が戦闘不能に追い込まれたという事件や、七番組の組長が山形県で発生した最大の被害をもたらした魔都災害を起こした醜鬼の中で唯一討伐できていない特殊な個体である“一本角”に酷似した醜鬼を使役する未確認の人型醜鬼と交戦したという事例もある。
今までに無い新種の人型醜鬼の出現から今までに無い事件が多発しており、彼女を保護した時期が近かったことからもしかしたらミナトを名乗ったあの少女たちも人型醜鬼の事件と繋がりがあるのでは無いかという推測が頭に浮かんでいた。
「なら、なおさらあの兄妹を見つけないとね」
組長たちが集う組長会議が近い。
それまでにあの随分と容姿の違う異母兄妹を見つけるべく、魔防隊五番組が動く。
一方、蝦夷夜雲から海外のテロリスト疑惑を持たれていた少女はそんなこと知る由もなく、お菓子工場のバイトを終わらせて朝帰りの道中にいた。
まだ薄暗い道をリュックを背負いながら歩く姿には、最近発生した魔都災害にてネットを騒がせている謎の変身ヒーローの面影など無い、別段珍しいものでは無い朝帰りの素行不良な少女にしか見えない。
遊び歩いてではなく、年齢を偽って未成年にも関わらず勤めている時給のいい深夜勤務のバイト帰りなのだが。
……どちらにせよ素行不良に変わりはない。
そしてその姿を少し離れた場所から観察する、紫と緑の異なる色の瞳を持つ小柄な少年の姿があった。
「目標発見。……接触を開始」
10歳前後に見えるその少年は、ミナトの姿を確認すると小さく無機質な声で何かを呟く。
するとその少年の声に応えるように間も無く日の出を迎える空に突如として巨大なクナドが出現し、その奥から巨大な頭部をもつ超大型の醜鬼が出現した。
「破壊しろ」
少年が感情がこもっていない無機質な声で命令する。
その声に従い突然出現した超大型醜鬼は大きく息を吸い込むと、突然の醜鬼の襲来に慌ててカードを取り出しライドを行うミナトに──否、一帯の全てに対して無差別の破壊をもたらす巨大な咆哮を轟かせた。
巨大な咆哮に乗せる超音波により、周囲一体に無差別の破壊を撒き散らす。
通称の醜鬼にはない、この個体特有の能力を持つ超巨大醜鬼の襲来。
これにより静かだが平和な朝を迎えるはずだった街は、一瞬にして巨大な地震に見舞われたかのような破壊がもたらされた。
「後続を展開。超大型を除く各醜鬼に命令──市民を襲撃せよ」
超大型醜鬼のもたらした破壊の中、至近距離にいたにも関わらず無傷でその場に立っていた少年が再び無機質な声で指示を出す。
するとそれに従い、超大型醜鬼が出てきた空の巨大なクナドより、先日のイベント会場で発生した魔都災害とは比べ物にならない100体を超える醜鬼たちが街中に降りてきた。
これにより日の出の静かだった街は、途端に凄惨な災害の舞台に変わる。
街に降りた醜鬼たちは手当たり次第に人々を襲い始め、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
その地獄を作り出した醜鬼たちを街に招き寄せた少年は、その惨状に何の関心も持っていないかのような冷たい色の異なる二つの瞳で、この世界の者たちにとって未知の能力であるクレイのユニットと絆を結ぶ能力によってシャドウパラディンのユニットにライドし超大型醜鬼に対峙するミナトの姿だけを見ていた。
「対象の能力解析を開始。行け」
少年の命令に従い、超大型醜鬼がミナトに対して攻撃を開始した。
超大型醜鬼は、横浜決戦に登場し2話で退場した特殊醜鬼と同種です。