異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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オリ主目線になります。


13話

 

 盟友の言う通りきしめん頭に救世主に選ばれ、仕事を果たしたのに誤送還される時点で、確かに僕は不運な方だと思う。

 だからもう、この異世界日本に来て1週間で醜鬼に3度も遭遇することになるというのにはまあ、そういう星の元に生まれたのだと納得します。

 二度あることは三度あるともいいますし。

 

 だから魔都と現世を繋ぐ門であるクナドが出現した時、ああもうまた醜鬼ですか……とため息を吐き、夜勤明けの疲れた体にもう一仕事だと心の中で自分に檄を入れてからシャドウパラディンのカードを取り出しライドしようとしました。

 

「スタンドアップ、ヴァンガード! 我、先導者──って、何それええぇぇぇ!?」

 

 ライドしようとしたところまでは、これまで出会ってきたオーガもどきの醜鬼を想像していたけど、クナドから出てきた顔だけでもビルくらいはあるとんでもなく大きな醜鬼を見て、ライド口上を思わず中断してしまうほどに驚く。

 

 さらに突如として出現したクナドから出てきたのは、いつものオーガもどきではない。

 あのありすすらも頭部ほどの大きさしかない、もはや怪獣のような巨体の醜鬼であり、他の醜鬼とは明らかに違う雰囲気を纏っている。

 そして異世界で邪教相手に救世主やっているうちに身についた危機察知の勘みたいなのが、あの怪獣みたいな醜鬼がただでかいだけじゃなくて何か恐ろしい隠し球があるという警告を出していた。

 

 どんな奥の手を持っているのかわからないけど、とにかくライドしないと夜雲さんたちがくる前にペシャンコにされそうだし、シャドウパラディンのみんなの力を借ります。

 

「絆に応え、来れクレイの友! 闇の騎士団、シャドウパラディン!」

 

『我らの剣は、名誉も栄光もなく、ただ勝利を求めるのみ。それでも使うと言うならば、この闇の騎士団は先導者の盾となり剣となろう』

 

「ライド! “秘められし才気(ドラグプリンス)ルート”!」

 

 ファーストヴァンガード、グレード0のユニット“秘められし才気(ドラグプリンス)ルート”にライドし、すぐにグレード1のユニットへとライドを試みる。

 怪獣のような超巨大醜鬼は頭に見合う巨大な両腕をクナドより出しており、何かを仕掛けるつもりなのか大きく息を吸い込んでいる。

 

 ただの深呼吸──そんなはずがない。

 何かを仕掛けてくる前兆の動き。

 

「ライド! “アビス・ルーター”! 来て、“暗黒の盾マクリール”!」

 

 それだけは何が何でも対応しなければ、死ぬ。

 それが何かはわからなかったけど、これだけは何が何でも身を守らなければ殺されるという、直感が鳴らす強烈な危険信号を受けて急いでライドした僕は、続けてユニットをコールした。

 

『私たちのことしっかり守ってよね、マクリール!」

『我が暗黒の盾を貫けるものなし! 来るなら来い!』

 

 あらゆる攻撃を阻むシャドウパラディンの誇る暗黒の盾。

 アビス・ルーターにライドして、コールしたマクリールが前に出て盾を構える。

 

 その直後、超巨大醜鬼はその大きな口から咆哮を発する。

 

 その巨大な口から放たれた咆哮はただの音では収まらず、まるで巨大な爆発が起きたかのような衝撃波を放ち、朝の寝静まっている街を一瞬で地獄絵図に変える破壊をもたらした。

 

 咆哮に乗せた超音波が繰り出す衝撃波により、一帯に無差別に破壊をもたらす攻撃。

 超大型醜鬼が持つ咆哮は、都市に大きな被害を与える危険なものである。

 

「街が……!」

 

 僕の方はマクリールが身を挺して守ってくれたおかげでなんとか吹っ飛ばされただけで済んだものの、醜鬼の咆哮は街に甚大な被害をもたらしていた。

 

 時刻が日の出前の早朝ということもあり、クナドの出現に気づくことなく屋内で寝て過ごしている人も多かったことも、被害を大きくしている要因になっているはず。

 起き上がって背後を見た時目に映ったのは、醜鬼の咆哮によってついさっきまで何事もなく平和で静かな朝を迎えようてしていたはずが一瞬で地震に見舞われたような破壊された姿に変貌した街の光景だった。

 

 さらに追い打ちをかけるように、超巨大醜鬼の出てきたクナドから続々とオーガもどきの醜鬼たちが出てくる。

 その数は先日イベント会場で見た時とは桁違いの規模の100体はいるだろう大群の醜鬼たちであり、その醜鬼たちは破壊と混乱の中にある街に向かって降りると手当たり次第に人々を襲い始めた。

 

「なんでこんなことに……」

 

 魔防隊はまだ来ていない。

 対抗する術を持たない無力な人々は一方的な蹂躙にあい、醜鬼に襲われる悲鳴がここまで聞こえてきている。

 

 僕はもともと帰還までの5年をできる限り異世界日本に干渉せず過ごすつもりだった。醜鬼と戦うのも降りかかる火の粉を払うだけで、自分から醜鬼と異世界日本の争いに介入するつもりはなかった。

 だからこれが自然現象による災害だというなら、精々自分の手が届くところで人助けをして基本的には魔防隊に任せるつもりだった。

 

 でも、今回は違う。

 マクリールの構えた盾。その隙間に見えた、こちらを見下ろす銀髪と左右の色が違う目が特徴の10歳くらいの少年の姿。

 どこか神秘的な雰囲気があるその少年は、僕を見てこう唇を動かしていた。

 

 ──目標発見……破壊しろ。

 

 目標というのは僕のことだろう。

 そして、破壊しろという命令を出したところ、超大型醜鬼が咆哮を発した。

 その後に出現した醜鬼にも街を襲えと、市民を襲撃せよと、確かにそう口にした。

 

 その少年は僕に用があり、そしてそのついでのように街を襲ったのだろう。

 

 少年が何者かはわからない。

 それでも、少年の目的が僕という異物なら、この街が破壊された原因の一端は──

 

「どこの誰か知らないけど……」

 

 気に入らない。腹が立つ。

 どうせこの世界から立ち去る僕という異物に興味を持つ奴らも、その異物のためにこの世界に大きな被害をもたらすのも、無関係な人たちを巻き込んで惨劇を起こすのも。

 

 僕が狙いなら、なんで街を巻き込む? なんで市民を襲わせる? 

 1人でいることは多い。用があるなら人気のないところ、誰の迷惑にもならないところに呼びつけて襲えばいいじゃないか。

 

 無力な人たちを手前勝手な目的のために巻き込む。

 どんだけ崇高な大義を唱えようと、所詮は手前勝手な動機。そんなくだらないことのために、人に多大な迷惑を与えるなんて子供でも悪いと判断できることを平然と犯してくる。

 

 あの教祖を思い出す。

 あの邪教を思い出す。

 人々を虐げ、操り、巻き込み、切り捨て、ささやかな平穏を砕くことに躊躇ないあいつらと、醜鬼を呼び込み市民を襲わせる銀髪の少年が重なった。

 

「ライド! “漆黒の乙女マーハ”!」

 

 見下ろす緑と紫の瞳を真っ向から睨み返しながら、グレード2のユニットにライド。

 さらにマーハのスキルを使い、グレード1のユニットである“黒の賢者カロン”をコールする。

 

『力を貸すわマイヴァンガード。無辜の民を傷つけるこの外道に、我らシャドウパラディンが鉄槌を下す!』

『その鉄槌、僕も一枚噛ませてもらいますよ!』

 

 どこの誰か知らないけど、僕に喧嘩を売るのに他人をこれだけ大々的に巻き込むのは許すつもりはない。

 

「コール、“虚空の撃退者(リベンジャー)マスカレード”、“髑髏の魔女ネヴァン”」

 

『着陣しましたマイヴァンガード。ご命令を』

『うふふ……久しぶりに燃えているわね。なら私も応えようかしら』

 

『“威令の騎士デムナ”、魔女の召集により推参した。以後は先導者の指示に従おうぞ!』

 

 可能な限り大人しく過ごすつもりだったけど、むかつく邪教の連中と重なって見えたこともありちょっとこの銀髪の少年は1発ぶん殴らなきゃ気が済まなくなったので、シャドウパラディンのユニットたちを展開する。

 

「行け」

 

 銀髪の少年が命令し、超巨大醜鬼が向かってくる。

 

 あの肉体を傷つける手段はないので、僕に勝ち目なんてない。そんな戦いに挑むなんて馬鹿げている。

 この5年、クソガムさんに今度こそ送還してもらうまで出来る限り波風立てずに過ごそうとも思っていた。

 

「どこの誰か知らないけどさ……」

 

 それでも、僕は人様巻き込んで売られた喧嘩から逃げるほど、利口でもなければ臆病でもないんだよ! 

 

「朝帰りするような不良に喧嘩売るなら、その落とし前きっちりつけさせるから覚悟しろよクソガキ!」

 

 マスカレードと共に超大型醜鬼と、それを駆使して仕掛けてきた少年に向かって剣を手に立ち向かう。

 

 平和な街の早朝を突如として襲った大規模な醜鬼による襲撃。

 その魔都災害の中心地にて、醜鬼と戦う術を持たない異世界の少女は、特殊個体に分類される超大型醜鬼に対峙した。

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