異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!? 作:火星で1,000往復
マーハにライドし、展開に優れるシャドウパラディンの特性を活かしてマスカレードを始めとする4体をコール。
戦力を揃えて謎の銀髪オッドアイの子供が嗾けてきた超巨大醜鬼と対峙します。
しかし、オーガもどきの通常醜鬼たちが超巨大醜鬼が破壊した街中に降りています。
咆哮1発で辺り一帯吹き飛ばす超大型醜鬼の対応が最優先だけど、流石にあれを放置するわけにもいかないです。魔防隊もまだ来てないし。
「デムナ、ネヴァン、マスカレードは街に向かって街の人たちを出来る限り助けて! ネヴァンは必要に応じてもう一騎呼んでもOK! あんな咆哮もう1発でも撃たせるわけにいかない、カロンはこっちの援護! 僕がデカブツに隙を作るから、チャンスがあればあのガキ1発ぶん殴って頂戴! マーハ、悪いけど今回は一番危険な場所に付き合ってもらうよ!」
『イエス、マイヴァンガード』
『承知した!』
『うふふ、任されたわ』
『お任せください、全力でサポートを!』
『私も影の騎士の一員、死地に飛び込む覚悟はいつでもできている!』
「行くぞ、みんな!」
マスカレード、ネヴァン、デムナを街の方に向かわせ魔防隊が来るまで可能な限り街の人たちを助けてもらい、僕はカロンと共に超大型醜鬼に向かいます。
魔防隊が来るまでの時間稼ぎだけど街の方が人手が必要だからネヴァンには必要に応じて残りひと枠のリアガードに展開するユニットを召喚させるので、こっちはマーハとカロンでどうにかしなきゃいけないです。
作戦はカロンに支援してもらいデカブツの超大型醜鬼を切って張ってして隙を作り、そこでカロンからあの銀髪オッドアイの少年にキツい一発をぶち込んでもらいます。
あの──人間じゃないだろう──銀髪の少年、この世界の異物である僕が狙いだろうけど、それにしたって人様をこれだけ巻き込むやり方で喧嘩売ってきたのには異世界に召喚されて散々やりあってきたあの邪教の連中のやり方に重なるところがあり、流石に気の長い方の僕も怒りを覚えました。
1発殴らせてもらわないと気が済まない──いや、この際迷惑をかけられた人たちみんなの拳を受けてもらうくらいはしないと。
そのためにはまず、
というわけで、本職は軍師のマーハですが今回は剣を手に切り掛かっていきます。
もう明らかに操っているだろうオッドアイが手のひらをこちらに向けると、それに従うように腕を振り回してくる超巨大醜鬼。
そんなデカブツが振り回す攻撃、巨体に見合う遅さなので気をつけていれば避けるのは難しくない。そう、人の手を軽々避けて飛び回るハエのように!
「当たらないってそんな攻撃!」
強烈だけど当たらなきゃ意味ないでしょうよ。
回避して大ぶりの攻撃を仕掛けた隙をつき超巨大醜鬼に肉薄。そのまま顔──正確には左目──に対して切り掛かる。
「これで──って効かないよねやっぱり!」
そしてまあ、わかってたことですがやっぱり効いてません。
切りつけても薄皮一枚切り裂くことすらできませんでした。
「眼球も硬いって反則もいいところじゃないかな!?」
眼球を狙えども、返ってくるのは岩壁に包丁を切りつけたような絶対に切り裂くことできないだろうという反発と、無傷の醜鬼の目という結果だけ。
もはや縛りというより一方的な理不尽だよこんなの。こんな理不尽な化け物がうじゃうじゃいる世界に手違いで飛ばしたあのきしめん頭はやはりぶん殴らなければ。
まあ、その前にオッドアイを殴りますけどね。
鬱陶しがる超巨大醜鬼が自分の顔面に張り付く僕を潰そうと手を振り回してきたので、切りつけても傷ひとつつかない顔に居座るのはさっさとやめて下ります。
直後に醜鬼は自分の顔面に強烈な平手を叩き込みました。
マーハの剣よりあの一撃の方がずっと効果ありそう。実際、マーハと超巨大醜鬼はそれこそ人間とハエくらいの大きさの違いあるしね。
「じゃあ僕は羽虫って? 残念、羽虫でも顔に飛び回られると鬱陶しいよ。それがハエならともかく、血を吸ったりしてくる蚊なら尚更ね!」
『足場をつくります!』
「お願いカロン!」
でも羽虫もたかられたら鬱陶しいでしょ。少なくても、
「迎撃せよ」
「遅いっての!」
というわけで、カロンにお得意の魔法で足場を作ってもらい、それを使って再度超巨大醜鬼の顔に接近します。
オッドアイが僕の動きを見て超大型醜鬼に指示を出すけど腕を振り回そうとする頃にはもう鼻先に辿り着いているので遅いですよ。
「効かないにしても、目をやられるのは嫌でしょ!」
オーガもどきと同様に、このデカブツも目を攻撃されるのは嫌がっていたので、狙いは当然その大きすぎて狙いやすい目です。
再び左目を切りつけてきた僕に対し、超巨大醜鬼は眼球を守るように顔を背けようとしました。
さらに振り払うように顔の前に手を振り回してきます。
目に対する攻撃を中断して、頬を足場に飛び退きその手を回避。
顔を背けたせいで出来た死角を使ってもう一度超大型醜鬼に接近を試みます。
「カロン、足場!」
『お任せ下さい!』
「咆哮しろ」
「そんな余裕あげないから!」
それを見たオッドアイがあの咆哮をするようにデカブツに指示を出すけど、そうは行くかとカロンが作った足場を使って接近しとりついた耳元にて、剣の刃に石を擦りつけて嫌な音を耳の穴の前で鳴らしました。
「カロン、音拡大して!」
『はい!』
ついでにカロンの魔法で嫌な音増大。
それを聞いたデカブツはよっぽど嫌なのか、咆哮をあげようと吸い込んでいた息を途中で切り上げて慌てるように耳に手を伸ばしてきました。
「倒せなくても戦い方はあるから、クレイのみんなを舐めないでよね!」
手が来る前に飛び退くと、直後に超巨大醜鬼の手が耳を叩いて自爆しました。
蚊が飛び回る音が鬱陶しくて叩いたら、耳をやっちゃってキーンとなるあれですよ。目への攻撃を嫌がることといい、結構人間みたいなところあるんだね醜鬼って。
それはともかく、耳キーンはかなり効いたみたい。自爆だけど。
デカブツは耳を抑えて痛がり、もう咆哮どころではなくなった様子。
タメが長いので耳がダメだったら目に攻撃して嫌がらせて妨害するつもりだったけど、咄嗟の作戦がうまくいって大技封じには成功したようです。
そして傷つける手段もないのにデカブツの咆哮を止めた上に、自爆とはいえきっと手駒の中では強い部類にいるだろうデカブツにダメージを与えた僕に、オッドアイは怒るわけでもなく興味深そうな目を向けます。
……ちょっと気持ち悪い。
「……成程」
『そこだ!』
そして、超大型醜鬼に隙ができて、オッドアイの意識も完全に僕に向いた時。
ここぞのタイミングでカロンが魔導書を開いて、隙を見せたオッドアイに魔法で雷を撃ち落としました。
『やったか!?』
「ちょっ、それフラグ!」
そしてすかさずフラグを立てるカロン。
醜鬼を手駒にしている時点で醜鬼たちと同様クレイのみんなの力が通じないだろうかとは予想していたけど、フラグが立ったせいもあるのかオッドアイは雷を受けても一切の無傷でした。ついでに服も無傷。
「…………」
『くっ、ならばこれで──』
「カロン危ない!」
そして、オッドアイの目が僕から雷を落としてきたカロンの方に向けられた。
標的がカロンに移ったことを察知した僕は、すぐさまカロンの前に出て剣を構える。
直後。
一瞬にして目の前に移動してきたオッドアイが、その小柄な身体からは想像もつかないような、まるで車が激突したような重たい衝撃を伴う蹴りを咄嗟に前に出して構えたマーハの剣に叩き込んできました。
「────ッ!?」
『マ──』
鎧を着ていたマーハの胴体に刀身をまるでベニヤのように砕いた蹴りが打ち込まれ、その衝撃に踏ん張ることもできずカロンを巻き込んで街の方まで吹っ飛ばされてしまう。
お腹と背中を貫く激痛とともに今日食べたもの全てを吐き出しそうになった感覚が走り抜けて、気づけば咆哮で破壊され醜鬼が暴れている街中の建物をいくつか破壊して吹き飛ばされて駅の中に倒れていた。
「うっ……」
『マイヴァンガード……ご無事で、なにより……』
「ゴメン、カロン……」
『お気になさらず……』
街に突き飛ばされて建物に背中から激突し破壊した時、巻き込まれたカロンが結果的に盾になってくれたおかげでいくらかダメージを緩和できたけど、その代償にカロンがやられて消えてしまいました。
カロンがクッションがわりになっていなければ、耐えきれなかったマーハのライドは解除されて展開したシャドウパラディンのみんなも消えていたから、僕はカロンを助けるつもりが助けられたということになります。
僕があの攻撃をしっかりと止めていれば……いや、今はそんなこと考えている余裕はない。
生かしてもらったなら、それを無駄にしないためにもウジウジするのは後回しに動かないと……!
「うっ……ライド、“呪札の魔女エーディン”!」
グレード3のユニットへのライド。
鎧も剣もボロボロになったマーハの姿から、エナンを被った桃色の髪が特徴のエルフの魔女にライドする。
『か弱いお嬢さんと思った?』
「残念、泥臭い救世主だよ! こんなんで膝つくと思ったか!」
再度咆哮を飛ばそうとしている超大型醜鬼に狙いを定め、杖を構える。
そこから魔法の光線を2本発射して、超大型醜鬼の両目を撃ち抜く──ことはできなかったけど、目への攻撃を嫌がる醜鬼への嫌がらせ攻撃により咆哮を阻止することには成功しました。
阻止してやったぞざまあみろ銀髪オッドアイめ!
これでカロンをやられた溜飲が少しは下がりました。
ネヴァンが既に別のユニットを一体コールしているけど、カロンが抜けた穴があるのでそこに新たなユニットをコールします。
「コール、“暗闇の騎士ルゴス”」
『仕事か、主』
「うん。あのデカブツを足止めして、その親玉してる人様に迷惑かけまくる銀髪オッドアイをぶん殴るから援護よろしく」
『……了解』
コールしたのはグレード1のユニット“暗闇の騎士ルゴス”。
状況に応じて時に盾役に、時にブースト要員に、時にはアタッカーにもなる器用貧乏──じゃなかった、オールマイティな頼りになる名前の通り黒い甲冑(?)に身を包む暗黒騎士です。
……特撮ヒーローブラック担当とか言っちゃダメだよ。
ルゴスを連れて、魔防隊が来るまでデカブツが咆哮するのを阻止するためにとあわよくば銀髪オッドアイをぶん殴るために、クナドの開かれた郊外に向かって蹴り飛ばされたルートを逆戻りしていきます。
カロンのこともあるし、マーハを痛めつけたこともあるし、レディのお腹蹴り飛ばしたこともあるし、そもそも性根が気に食わないし、あのオッドアイはやっぱり殴らないと気が済まない!
「カロンの仇、取らせてもらうから!」
マクリール『あ、あの……自分は……?』