異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!? 作:火星で1,000往復
グレード3のユニットであるエーディンにライドし魔法の矢を発射して超大型醜鬼の咆哮を阻止した僕は、ルゴスをコールして戦力を補充し、カロンの仇でもある銀髪オッドアイへきついの1発叩き込むために、蹴り飛ばされて出来た道を逆走して再び郊外に戻ってきました。
「耐久、想定値を上回る。対象の評価を更新」
戻ってきた僕たちに対して、銀髪オッドアイは相変わらずの可愛らしい外見に似合わないロボットみたいな無表情を向けるのみ。言っているセリフにも予想外とか言っているくせに驚いている感情は全くない。
けれどもライドとコールによって、マーハとカロンのペアからエーディンとルゴスのペアになって戻ってきた僕たちに対して、ルゴスはともかくエーディンにライドしたことで外見が変わっている僕の方は蹴り飛ばした乙女と同じであると認識しているみたい。
対象の評価──この場合は耐久だから打たれ強さのことでも言っているのかな──を更新とかほざいているし。
やっぱりあの銀髪オッドアイの目的は僕で確定かな。
ライドを予め見たりして知っているなら姿形が変わって戻ってきたのにあまり驚かないのにも納得できます。
こっちの世界に来てから何度かライドしてるので。
醜鬼をけしかけたり解き放ったりできるなら、今までの醜鬼の襲撃──例えばイベント会場における魔都災害とか──もこの銀髪オッドアイが黒幕的なこともありあるしね。
「迎撃しろ」
ルゴスに前衛へ出てもらって戻ってきた僕に対して、銀髪オッドアイが適当な木の上に飛び乗ると超大型醜鬼へ迎撃の指示を出してきます。
デカブツは3分待ってくれる某大佐のように魔法の矢による目眩しを受けて目を押さえていたけど、命令を受けるとさっきまで目を押さえていた手を振り上げてきました。
視界が回復してなくても、主君の命令には従うって? 向こうの職場は随分とブラックのようです。
そして配下を酷使している銀髪のショタ上司くんの方は、木の上に立って醜鬼に任せ自分は高みの見物を決め込むつもり様子です。
舐められてるようでムカつく対応だけど、このデカブツの咆哮は危険なので放置することはできません。とりあえずこっちを崩してからじゃないと、あの蹴りを打ち込んでくる銀髪オッドアイにはまともなグーパンもできないだろうし。
ルゴスに咆哮をさせないよう目などを狙う嫌がらせ攻撃で牽制するように指示を出し、咆哮の前兆などの注意事項も伝えて超大型醜鬼の対応を頼みます。
「ルゴス、そこのデカブツに目とか狙って嫌がらせして牽制して! 特に咆哮だけは絶対にさせちゃダメ! 大きく息吸い込んだら要注意! 動きは遅いけど1発でも喰らえばアウトだから気をつけて!」
『了解した』
僕たちのこと這いずり回る虫とでも思っているのか、それともモグラ叩きのつもりなのか。
駆け回る僕たちを一撃でペシャンコにできるだろうその巨大な手で叩き潰そうとする超大型醜鬼の攻撃が振り下ろされる中、前衛を走るルゴスが攻撃を引きつけてその手を回避し走り抜けて超大型醜鬼の顔面に一気に距離を詰めていった。
僕を置いていく俊足で肉薄したルゴスは早速一太刀、指示通りに超大型醜鬼の顔面に切りつけて──やっぱり刃が通りませんでした。
『遅い──くっ!』
「そいつら攻撃効かない理不尽仕様だよ! でも目への攻撃とかは普通に嫌がるから、無理に倒そうとせず牽制に徹すること! 目的はあくまで魔防隊到着まで時間を稼いで被害を減らすことだから!」
『面倒だが……了解!』
刃が通らず苦戦するルゴスに、醜鬼に攻撃は通らないため咆哮を阻止することに集中するように伝えます。
無闇に攻撃してもどうせ効かないし、ムキになって大振りの攻撃などしようものならこちらが隙を作るなんてことにもなりかねないので、無理に倒そうとするのはかえって危険です。
どうせ小ぶりでも大ぶりでも必殺技でも通用しない理不尽仕様なのだから、何したって結果同じなら隙ができやすい強力な一撃よりも相手の反撃をしっかりと回避し確実に嫌がらせになる細かい攻撃をチクチクする方が効果的でローリスクになるので。
醜鬼たちの理不尽にルゴスは面倒だとぼやきつつも、咆哮による無差別破壊攻撃を止めることを優先して咆えることに集中できないようにデカブツに対して目を狙った斬撃を繰り出したりして嫌がらせを仕掛ける方針に転換してくれました。
ルゴスの方は適度にサポートすれば、基本的に任せて大丈夫みたい。
その俊足があれば、デカいとはいえ2本しかない手でモグラ叩きするデカブツのノロい攻撃くらいは余裕を持って回避しつつ牽制もできているので。
僕の方はルゴスが大半の攻撃を引きつけてくれているので、たまに来るこっちを狙って振り下ろされる手を回避しつつ、ルゴスが一度距離を取るために跳躍して着地するときなど回避が困難になるところを狙われないように、ルゴスが避けきれなくなるタイミングでデカブツの鼻や目などに向かって魔法で作る光の矢を飛ばしこちらからも嫌がらせを仕掛けていきます。
「ルゴス!」
『了解!』
銀髪オッドアイはルゴスの着地の瞬間を狙おうとしていたけど、援護で飛ばした魔法の矢が着弾と同時に花火のように目の前で光ったことで目眩しを受けた超大型醜鬼はルゴスを見失う。
その隙に着地に成功しデカブツの視界から外れたルゴスが再び向かっていきます。
「高みの見物と洒落込むなら……!」
『その可愛い顔に風穴開けてあげる!』
「…………」
そしてルゴスの位置をデカブツに教える前に、高みの見物と洒落込んでいるムカつく銀髪オッドアイに向けても魔法の矢を飛ばします。
狙いはもちろん、その綺麗だけど人形みたいに無感情な顔の真ん中一択!
デカブツの指揮を取る銀髪オッドアイが出す指示を妨害して、視界から外れている隙に向かっていくルゴスを援護するのが目的だけど、さっき蹴ってくれた借りを返すのもあります。
けど、無傷。
エーディンの魔法を借りて飛ばした1発は、銀髪オッドアイの顔面にたどり着く前にこちらの狙いに気づいた銀髪の顔面に当たると霧散して消えてしまいました。
そして銀髪の綺麗な顔は無傷のまま。表情ひとつ変わらない。
「目標からの攻撃、効果認めず。桃による異能力に該当せず」
「いいじゃん桃食べてなくても!」
いちいち効果無しとか言わなくてもわかってるってのこっちの攻撃が何ひとつ効いてないのくらい!
と言いますか桃桃桃桃って、そんなに桃が偉いのかよ! ……そうですね、桃食べた女性の力が強い世界でしたねこの異世界日本は! そうだよ僕は無知だよ恥晒しだよ(ペンを投げつけるように)ちくしょーめ!
銀髪オッドアイの方は真面目に冷静に分析しているだけだろうけど、煽りに聞こえてくることを言われたのでムカっときました。
カロンに雷落とされた時には蹴ってきたのに、今回は木の上から動かず反撃してこないのが舐められているようでなおムカつく!
「せめて降りてこんかいワレェ!」
『私が言えたことじゃないけど、淑女らしさを失わないように』
「ど間抜けヴァーカ!」
『幼稚な罵声は尚やめなさい』
「目標からの罵声、想定以下。対象の推測年齢に再検証の必要性を認める」
「認めるなぁ!」
挑発したらさらに煽りで返されました。
当人に煽る意図がなくても“推測年齢に再検証の必要性あり”は煽っているようにしか聞こえないですよ!
ムカつくからもう一度魔法の矢を飛ばすけど、効かないことが分かっているからか銀髪オッドアイは矢の直撃を防がずに無視して受けました。
そして無傷でした。
「咆哮しろ」
そして僕の攻撃を無視して受けておきながら無傷の銀髪オッドアイは、ルゴスに全然攻撃を当てられずにいる超大型醜鬼に対して範囲攻撃でまとめて吹き飛ばすべく再度の咆哮を指示しました。
命令を受けてデカブツがモグラ叩きをやめて息を吸い込みます。
「ルゴス!」
『了解!』
郊外なのでモグラ叩きくらいはいいけど、咆哮を許すわけにはいきません。
ルゴスに咆哮を阻止するように指示して、僕の方も魔法の矢を作りデカブツの目に狙いを定めて発射します。
「吼えさせないから──!」
傷つけることはできないけど、さっきのと同様にこの魔法の矢は着弾した瞬間に閃光を放つので目眩しになります。
そしてモグラ叩きも中断しているので、障害のなくなったルゴスが瞬く間に距離を詰めていきます。
「目を守れ」
けれどもそうは問屋が卸しませんでした。
銀髪オッドアイがいちいち狙いを定めなくても一掃できる範囲攻撃である咆哮を使わせるために、オッドアイのやつが超巨大醜鬼に目を両手で守りその上で咆哮させよう命令を出したからです。
すると目がああぁぁぁよりも上司の命令を優先するスーパー社畜超大型醜鬼がすかさず目を両手で守り、閃光を放つ魔法の矢の目眩し対策をしてきました。
おかげで目眩しによる咆哮阻止ができず、吸い込みチャージが続いています。
「目隠しだけで僕たちが許すとでも? ルゴス、耳に狙いを変更!」
『了解!』
だがしかし、僕の方も対策されるくらい想定済み。
目がダメなら耳を狙えばいいのです。嫌な音攻撃も嫌がって咆哮を中止させることができるのは実証済みなので。
というわけで、デカブツが自ら視界を閉ざして見失っているルゴスに耳を狙うように伝えます。
「そいつの耳元で金属引っ掻き音だして! 魔法で増幅するから!」
『ガラ空きだ!』
両手で目を守っているため、超大型醜鬼の耳は丸裸。
そこに取りついたルゴスが鎧と剣をこすり合わせる嫌な金属音を耳元で鳴らして、それを僕がエーディンの魔法にて増幅して、嫌な音による妨害をします。
やはりデカブツ醜鬼も金属音が敏感みたい。
耳元で増幅した嫌な音を受けた超大型醜鬼は、堪らないと言った様子で咆哮を中止しルゴスを追い払うために再び耳ビンタによる自爆をしました。
咆哮は阻止したけど、現状あの超大型醜鬼に通しているダメージは自爆ばかり。
何度も切りつけたというのに刃は一度たりとも通らず、まともに効いたのが剣を楽器まがいに用いた金属音という理不尽仕様に苦戦しながら耳ビンタを躱して僕の隣に着地したルゴスに、労いの声をかけます。
「こっちの攻撃は何一つ通らないくせに範囲攻撃持ちって、ムカつく仕様でしょ」
『ヒューマンの坊やと一緒にしないでくれる? デリーターたちのほうがもっと酷かった』
『誰が坊やだ! 主よ、我ら影の騎士団を舐めてもらっては困る!』
「まあ確かに、今は楽しい思い出だけどブラントとやり合った時も無理ゲーだったよね」
こっちの攻撃は通らないのに、向こうの攻撃は一方的に通る。
そんな理不尽仕様を前にしても、エーディンもルゴスも戦意を失うことはなく、むしろそんな苦難は乗り越えてきたと自信を見せました。
エーディンの言葉に、そういえばと送還ミスで異世界日本に来る前に救世主として活躍していた向こうの世界であった似た理不尽を思い出します。
今でこそ盟友だけど、ブラントは邪教以外にあの世界を侵略しようとやってきた遊星の王であり、僕はブラントとも何度も戦いました。
今は無力なぬいぐるみになっちゃっているブラントだけど、こっちもこっちで率いる
確かにブラントの扱うあの遊星骸王の特権に比べれば、エーディンの言葉通り一方的なダメージが通らない仕様くらいそこまで酷くないかもしれないって思えます。
「まだまだこっから!」
『応ッ!』
『ええ』
共に戦ってくれる仲間達と自分を鼓舞して、仕切り直しと杖を振る。
対する超大型醜鬼の方も、咆哮のたびに妨害してくることへの苛立ちを乗せているかのような目で睨みつけて、手を振り上げてきます。
「迎撃しろ」
「前衛お願い、ルゴス!」
『了解!』
再開されるモグラ叩き。
ルゴスが前衛を走ってその攻撃を引きつけ、それを僕が援護しながらついて行く陣形で、再度超大型醜鬼に対して接近戦を仕掛けていきます。
叩きつけられる巨大な手を回避しながら距離を詰めていきます。
銀髪オッドアイはやはり高みの見物を決め込み、木の上で僕の様子を観察しながら命令を出すのみ。
「敵前衛に集中しろ」
『遅い!』
そして、ルゴスが剣の間合いに超大型醜鬼を再び収め、その顔に切り掛かろうとした時──
『まずは一撃だ──があァッ!?』
──その背中を突如として飛来した横に吹く竜巻のような、風の槍とも呼ぶべきものが貫いて、超大型醜鬼の左目まで貫通していきました。
「ルゴス!?」
『何という、不覚を……』
甲冑を容易く貫くその攻撃で胴体に風穴を開けられたルゴスは消滅。
さらに僕たちの攻撃では傷ひとつつけられなかった超大型醜鬼はその攻撃で目の部分を破壊され、悲鳴を上げながら崩れ落ちました。
「今のは──」
「…………」
そして、先ほどルゴスもろとも超大型醜鬼を貫いた攻撃。
それはこの異世界日本に来て最初に醜鬼に襲われた時に、それを蹴散らし僕を助けてくれた命の恩人であるあの人の能力によるものだとすぐに気づきました。
「やっほー、ミナトちゃん! 夜雲さんが助けに来たぞ☆」
僕と銀髪オッドアイが目を向けた、先程の攻撃が飛んできた方向。
そこには能力により発生させている風を纏って空を飛ぶ魔防隊五番組組長、蝦夷夜雲さんがいました。