異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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16話

 

 札幌市南区にてクナドが出現。

 過去確認された醜鬼何れにも類さない新種の醜鬼が1体、人型二足歩行の通常の醜鬼が多数出現。以後、新種の醜鬼を通常種を遥かに上回る大きさより“超大型醜鬼”と仮称する。

 南区の郊外に出現した超大型醜鬼の咆哮により巨大な衝撃波が発生。家屋、道路など市街地に多大な被害が発生。死者、負傷者数は不明だが、出現時刻が4:20ごろと早朝であること、出現場所が郊外であることから醜鬼の出現の発覚が遅れ、早朝により家屋内で就寝している市民が多く、倒壊した建物の下敷きになっている可能性が高い。被害範囲より、推定で3,000人以上の被災者がいるものと推測される。

 出現した通常個体の醜鬼はその多くが市街地に侵入。逃げ遅れた市民に被害が発生している。

 通報を受けた札幌市警は当件を大規模魔都災害と認定し、魔防隊五番組および魔防隊本部に対して出動を要請。

 札幌市庁に災害対策本部を設置し、魔防隊の醜鬼討伐と並行して消防庁、札幌市警など各局と連携し、被災者の救援及び民間人の避難を行う為に、札幌市全域に対し緊急事態宣言を発令する。

 

 この直近では最大規模と思われる魔都災害の発生を受け、魔防隊五番組は札幌市からの出動要請に基づき組長の蝦夷夜雲が先発して現場へ急行し、残る組員達も総員に出動命令が出された。

 

 魔都災害の多くは、魔都における一番組管轄区域を北とした場合に鬼門と裏鬼門の方角に来る二番組と七番組、そして管轄区域が広い十番組にて発生することが多い。

 とはいえそれはあくまで醜鬼の出現数であり、突発的に発生するクナドはいまだにその法則性も見つけられないなど不明な点が多く、クナドが発生しても醜鬼が近辺にいなければ何事もなく消滅する、醜鬼が集まった場所に突如としてクナドが発生するなど、様々な事例があった。

 

 しかし、今回発生した魔都災害はこれまでの事例とは明らかに違う。

 超大型醜鬼の発生直後にクナドも開き、さらには通常醜鬼もまるで何者かによって呼び出されたかのようにそのクナド周辺に突発的な群れとして発生して迷うことなくクナドに殺到するという異常な事態が魔都側でも起きたのである。

 

 これにより魔防隊の管轄である魔都側でも醜鬼の群れの発見が遅れ、現世側への大規模な侵入を防ぎきれなかった。

 

 蝦夷夜雲が現場に到着した時、被災地はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 

 超大型醜鬼の咆哮に乗せた超音波がもたらす周囲一帯への無差別範囲攻撃。

 それによって破壊された建物に取り残された人々を、街に侵攻してきた醜鬼達が襲っており、空から一目見るだけでも多くの死傷者が確認でき、まるで戦場のような光景が広がっていたのである。

 

 札幌市から災害状況を聞いた魔防隊は、政府に要請し市民の避難と救援を迅速に行うため札幌市全域へ緊急事態宣言を発令させ、今回の規模の魔都災害を五番組だけでは対応困難であると判断して十番組を中心に複数の組から人員を募った増援の派遣を決定した。

 

「……ッ」

 

 普段は陽気な夜雲も、今回の魔都災害の光景には表情から笑みが消え思わず息を呑む。

 

「……2人とも急いで。現着次第カイコは負傷者の治療、サキは市民の救出」

 

 すぐに表情を引き締めると、超絶マイペースな普段の彼女とは別人のような魔防隊組長としての顔つきとなり、通信で後続として向かっている2人の隊員へ真面目な口調で指示を出す。

 

「さーて、こっからは夜雲さんに任せなさい!」

 

 そしてまるで己の緊張をほぐすかのように軽く舌なめずりをしてから、多数の醜鬼が暴れる市街地に倒壊した建物や逃げる市民は決して巻き込まず、暴れ回る醜鬼を的確に狙う竜巻を多数発生させて、雑魚醜鬼達をまとめて吹き飛ばした。

 

 まずは市民の安全確保と、消防などが救助活動に従事できる環境を作る。

 そのためにミナトがコールしていたデムナを何気に巻き込みながら醜鬼を倒すことよりも郊外の人がいない場所へ吹き飛ばすことを重視する竜巻によって、市街地から多くの醜鬼が吹き飛ばされた。

 

「あとは──」

 

 市街地の醜鬼のほとんどを吹き飛ばした夜雲は、次にかなりの距離がある街中からでもしっかりと視認できる位置にいる超巨大醜鬼に狙いを定める。

 あの距離から発生させた衝撃波でこれほどの被害を出す特殊個体の醜鬼である。最優先で討伐しなければならない目標だった。

 

「狙いを定めて──おやおや、ひょっとして誰か戦ってる?」

 

 狙いを定めて旋風を発射しようとした夜雲は、その時超大型醜鬼が何者かと交戦している様子に気づく。

 非番の魔防隊員が偶然いたのだろうか? 

 ならば巻き込まないようにしなければとその人物へと目を凝らしたところで、夜雲は容姿や髪色が変わっているが彼女特有の勝手に決めたハーレム候補を見分ける勘がその人物の正体を見抜いた。

 

「あれは……ミナトちゃんじゃん!」

 

 それは以前に夜雲が魔都で巡回中に保護し、そしてイベント会場で変身能力らしきものを見せて醜鬼から人を守る姿を映した動画があった、魔都の桃を不正に入手したテロ組織の構成員かもしれないと疑っている正体不明の人物、朱霧ミナトだった。

 

「ふっふっふっ。こんなところで出会えるなんて、やはり夜雲さんのハーレムメンバーに入るべき運命の赤い糸で結ばれているんじゃないかな!」

 

 今度は魔女のコスプレで黒い甲冑を纏う謎の人物と共に超大型醜鬼に立ち向かっているミナト。

 夜雲はこれこそ運命じゃないかと言いながら、旋風を発射して超大型醜鬼の目に風穴を開ける一撃を叩き込んだ。

 

「やっほー、ミナトちゃん! 夜雲さんが助けに来たぞ☆」

 

 誤って黒甲冑の謎の人物も巻き込んでしまったが、ミナトの能力らしく致命傷を受けたその黒騎士は死体も残さず煙のように消えてしまう。

 驚くミナトの元に飛んで駆けつけた夜雲は、木の上に立つオッドアイの少年らしき謎の人物よりも先にミナトへ声をかけた。

 

 

 

 

 えーと、魔都災害の現場よりみなさんこんにちは。クソガムさんの雑な仕事による誤送還により醜鬼とかいう化け物が闊歩する異世界日本に落とされた元救世主の朱霧ミナトと申します。

 醜鬼と相対するのはこれで3度目となった僕は、銀髪オッドアイの嗾けてきた超大型醜鬼と戦っていたのですが、そこにかつて僕を醜鬼から助けてくれた魔防隊五番組組長の蝦夷夜雲さんが飛んできました。

 北海道を担当するのが魔防隊五番組なので、そりゃこんな状況になれば駆けつけるのは夜雲さんですよね。

 

 さりげなくルゴスが夜雲さんの旋風で倒されて消えちゃったのは、抗議したいところですが……

 

「…………」

 

「五番組組長、蝦夷夜雲。想定よりも早い到着。解析結果の更新が必要と判断」

 

 銀髪オッドアイが冷静に夜雲さんのことを分析している一方、この命の恩人と再会した僕は、魔防隊も到着したというのもありすぐに行動に出ました。

 

「三十六計逃げるに如かず!」

「交戦のリスク高。足止めせよ」

 

「ありゃりゃ?」

 

 銀髪オッドアイが超大型醜鬼に足止めを命令し、目を破壊された超大型醜鬼が夜雲さんに手を伸ばす中、僕は不法入国者を疑われて逮捕される前に逃げるが勝ちだと逃亡の一手を即決し踵を返して逃げ出しました。

 逃げる先はオッドアイとは別方向、朝の森へと飛び込みます。

 

「……逃げられちゃったかぁ〜。今回は仕方ないかな、まずはこっちを片付けないとね!」

 

 取り残された夜雲さんは普段ならば僕を追うこともできたでしょうが、流石に超大型醜鬼を放置はできなかったと判断したらしく、追跡を早々に諦めてデカブツの方へと向き直ります。

 

「魔防隊が到着したからみんな撤収急いで──ってデムナ!?」

 

 銀髪オッドアイのことを殴りたかったけど、元々あの醜鬼達と戦うことを決めたのは魔防隊が到着するまでの時間稼ぎ。

 自衛以外に醜鬼達と戦わなければならない理由はない僕は、魔防隊が来るなら専門家である彼女達にお任せして素人は引き下がります。どうせ邪魔になるだけだし。……あと不法入国者とバレたくないので。

 

 何故かデムナがいつのまにかやられていたけど、マスカレードやネヴァンたちとともに無事に逃れることには成功しました。

 

「そーれっと! 夜雲さんの力思い知ったか!」

 

 僕では咆哮を妨害するのが精一杯で自爆の誘発以外にまともなダメージを通さなかった超大型醜鬼は、夜雲さんが3分で穴だらけにして片付けてしまいました。いやぁ、ほんとに強いですよあの人。

 

 でも3分もあれば僕もオッドアイも逃げるくらいはできてしまうので、追跡は振り切りました。

 

 ……多分、またあのオッドアイは僕に仕掛けてくる気がする。

 帰還の準備が整うまであまり異世界日本に関わらず穏やかに過ごしたかったのですが、どうやらそうはいかない様子。

 これからいろんな面倒ごとに巻き込まれるだろう、そんな予感がします。

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