異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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22話

 

 魔防隊の寮は、醜鬼の侵入を防ぐための結界に守られているはず。

 なのにそいつは、いつの間にか寮の内部に侵入しており、そして僕たちの真後ろにたち声を発するまでその存在を勘付かせなかった。

 

 もし、銀髪オッドアイにその気があったなら、寮に侵入して暗殺することなんて容易くできる。

 結界の内側にこうして立っているという光景が、その危険な可能性を気づかせる。

 

 外見に惑わされてはいけない。

 それは人間ではない。

 

「下がって、ミナトちゃん!」

 

 すぐさま戦闘態勢をとったカイコさんが僕に下がるように言って、魔都の研究機関である陰陽寮にて改造された醜鬼にも有効な拳銃を取り出して銀髪オッドアイに向けて発砲します。

 

 問答無用の銃撃。

 それを受けた銀髪オッドアイは、銃弾を額に受けながらも無傷。

 

 銀髪オッドアイの目が僕からカイコさんに移る。

 いや、正確にはその背後に。まるで、そこにいる何かに合図を送るかのように。

 

「擬態しているぞ!」

 

「後ろに──うっ……!?」

 

 僕たちには見えないものも見える目を持つブラントがその存在に気づき警告の声を上げます。

 それを聞いたカイコさんがオッドアイの目線から背後に何かがあることに気づきそちらに攻撃しようとしたけど、相手側の方が早かった。

 

「カイコさん!」

 

「きちゃ、ダメ……!」

 

「何、あいつ……!?」

 

 首筋に何か鋭いものが刺さったような傷が浮かんだ直後、カイコさんが急に倒れ込む。

 しかしまるで何かが巻き付いているかのように──いや、そこにはいつの間にか姿を現した巨大な四肢のないトカゲのような化物がおり、カイコさんの体に大蛇のように巻き付いていました。

 

「……何か、あった?」

 

 異変に気付いたのか、まだ外で戦闘中のサキさんから無線が飛ばされます。

 しかし、その声はカイコさんの制服ではなく、銀髪オッドアイの方から聞こえてきました。いつの間にか無線はカイコさんの制服から外され、銀髪オッドアイの足元に転がっていたのです。

 多分、先ほどカイコさんを襲った時にこの四肢のないツチノコみたいなトカゲがくすねたのでしょう。部下の手癖も悪いな銀髪オッドアイ。

 

 銀髪オッドアイはその無線を拾うと、通話のスイッチをオンにします。

 

「──サキ、新たな醜鬼が接近しています。規模は第二波に匹敵するけど、内訳は通常の醜鬼ばかりだから、また結界を利用して足止めしたところを銃撃で殲滅して。あともう少し頑張ってくれるかしら」

 

「……ん」

 

 カイコさんを人質に取ったとでも言うのかと思いきや、先ほどまでの無機質な声ではなくカイコさんと瓜二つの声を出してサキさんに返答しました。

 声と口調だけはまるでカイコさんがアフレコでもしているかのような精巧な模倣に、まさか寮の中に銀髪オッドアイが出てきているなど知らないサキさんは騙されてしまい、それで通話を切ってしまいました。

 

 実際、銀髪オッドアイが準備していたのか、それとも醜鬼の群れがやってくる仕掛けでもしていたのか、第二波に匹敵する規模の群れが新手として寮に接近していました。

 雑魚ばかりの数だけは多い群れなので、カイコさんが援護に下りなくても違和感はないですし、時間稼ぎにはもってこいの群れ。

 都合良すぎるタイミングなので、それこそこの銀髪オッドアイが準備していたとしか考えられないです。

 

「逃げて……ミナト……」

 

 顔色を悪くしたカイコさんが、声を振り絞り僕に逃げるように言います。

 でも逃げろと言われて逃げられる状況じゃないし、そんなこと言われても見捨てられるわけないです。

 

 毒だとしたら急いでカイコさんを助けなければいけません。

 ライドを使おうとデッキを取り出すと、牽制するように四肢無しトカゲがシャーと威嚇するような声を発して動けないカイコさんに噛みつこうとする動きを見せました。

 

「このトカゲ、カイコさんを離せ!」

 

 とにかくカイコさんを捕まえているトカゲをなんとかしないといけません。

 ライドしようとデッキに伸ばしていた手を止めて、まずはカイコさんを助けるためにキャップをトカゲに投げつけます。

 

 キャップは狙い通りトカゲの頭にうまくかぶさり、視界を塞がれたトカゲが一瞬混乱してカイコさんを縛る身体の拘束を緩めました。

 その隙をついて手すりを蹴りトカゲの体に飛び乗り、カイコさんを引っ張り上げて拘束から助け出すと、そのままトカゲの体を蹴って二階からカイコさんと一緒に飛び降りました。

 

「──痛っ!」

 

「無事かポートちゃん!?」

 

 自分の身体を下にしてカイコさんを庇う形で地面に落ちたので、カイコさんは無事でしたが僕の方はちょっと無事じゃないかな……。

 いや、無事じゃない。悪くて骨折くらいで済んでいる僕と違って、カイコさんの方はぐったりして動かない。早く助けないといけないです。

 

「ライド、するから……ちょうだい、エンジェルフェザー……!」

 

 後から飛び降りてきたブラントに、デッキを要求します。

 どうせライドしてしまえば、その間僕の怪我は気にしなくていいので。それよりカイコさんを助けないと。

 

「無茶だ盟友よ、怪我が──」

 

「いいから! 早く!」

 

「う、うむ」

 

 有無を言わさずブラントからエンジェルフェザーのデッキを受け取ると、ファーストヴァンガードのカードを取り出してライドを使います。

 

「スタンダアップ、ヴァンガード! 我、先導者、朱霧 ミナト! 絆に応え、来れクレイの友、エンジェルフェザー!」

 

『傷病無き世界が実現するまで共に戦いましょう、先導者』

 

「ライド! “手当の守護天使(ファーストエイド・セレスティアル)ペヌエル”!」

 

 エンジェルフェザーのグレード0のユニットであるペヌエルにライドし、すぐに手元の救急箱から解毒剤を取り出してカイコさんに飲ませます。

 僕の方はライドしている間はユニットが上書きされているので、自分の怪我については後回しにします。

 

『解毒剤は右の緑の瓶に!』

 

「ありがと! カイコさん、これ飲んで。解毒剤だから」

 

「……っ」

 

「喋らないでください。すぐに安全なところに運びますから」

 

 意識はあるみたいだけど、痺れているらしく喋ることも困難な様子のカイコさんを安全なところに運ぶために、グレード1のユニットにライドして仲間をコールします。

 

「ライド、“ホワイトウィップ・エンジェル”。コール、“介護の守護天使(ナーシング・セレスティアル)ナレル”、“サウザンドレイ・ペガサス”」

 

 ホワイトウィップ・エンジェルにライドし、カイコさんの治療にナレルを、安全な場所に運ばせるためにサウザンドレイ・ペガサスをコールします。

 

「ナレルはカイコさんの治療をお願い。とりあえずペヌエルが持ってた解毒剤を飲ませてあるから。サウザンドレイ・ペガサスはカイコさんを安全な場所に運んで」

 

『お任せください。ちゃんと治しますからね〜』

 

「ブラントはサキさんに銀髪オッドアイが来たことを伝えて。僕がなんとか足止めしてみるから」

 

「うむ、気をつけるのだぞ」

 

「分かってるよ。ライド、“聖火の守護天使(キャンドル・セレスティアル)サリエル”! コール、“後駆の守護天使(こうくのセレスティアル)アールマティ”、“礎の守護天使(アンダーレイ・セレスティアル)ハスデヤ”!」

 

 カイコさんをナレルとサウザンドレイ・ペガサスに託して、ブラントには無線を奪われて事態を知らないサキさんに銀髪オッドアイの襲撃を伝える役目を託し、僕は銀髪オッドアイを足止めするためにグレード2のユニット“聖火の守護天使(キャンドル・セレスティアル)サリエル”にライドし仲間のユニットをコールします。

 

「行くよ、みんな。サキさんがきてくれるまで時間を稼いで、カイコさんたちを守る!」

 

『は、はい! 頑張ります!』

『フィーバー! 任せろ、マイヴァンガード!』

『ええ、戦場の天使は患者を守るのも使命!』

 

 エンジェルフェザーのユニットたちは、神聖国家ユナイテッドサンクチュアリの戦場でも駆け抜けて患者を救う戦う医療部隊。

 命を救い、命を害する敵を退ける、戦う白衣の天使たち。

 天使なので空も飛べるユニットが多いのも特徴です。

 

 ライドして力を借りているサリエルの翼を開き、アールマティとハスデヤと共に先ほど飛び降りた寮の二階へと舞い戻ります。

 

「人質とったからっていい気になるなよトカゲ野郎が! こう言うゲスな手管使う場面くらい、こちとら邪教の連中相手に何度も経験してるっての!」

 

 そして戻ってきたところで僕たちを追いかけるためにか飛び降りようとしていた四肢無しトカゲと鉢合わせしたので、驚いているその頭に先ほどのカイコさんが受けた傷のお返しも兼ねてドロップキックをぶち込みました。

 

 しかし、当然ダメージらしきものは無し。

 多少の仰け反った程度で、すぐに四肢無しトカゲが反撃とばかりに噛みついてきました。

 

 ……まあ、効かないの分かってたけどね! 勢い任せで蹴ったのはいいけど、やっぱりダメージは入ってないですけどね! 分かってたよ桃食べてない僕たちの攻撃が効かないのは! 

 

『余裕あるか?』

 

「当然」

 

 効かないのはわかっていたので、反撃も想定済み。

 噛みつき攻撃を回避して、一歩遅れて二階に乗り込んできたアールマティ達のところに着地し並びます。

 

 対する四肢無しトカゲの方は追撃せずその場にとどまりこちらを横から見ており、僕たちの前には飛び降りる前の位置から動いていない銀髪オッドアイが立っていました。

 

『あの子が敵?』

 

「一応、親玉だと思う」

 

『なるほど。じゃあ、こっちのトカゲは俺に任せてもらうぜ』

 

「お願い。ハスデヤは僕の援護を」

 

『了解です、マイヴァンガード』

 

 トカゲはアールマティに任せて、僕とハスデヤは銀髪オッドアイと対峙します。

 

「前回はボコボコにされたけど、今回こそは泣かしてやるから覚悟しろよ銀髪オッドアイ!」

 

「対象の能力解析を開始。やれ、野槌(のづち)

 

 銀髪オッドアイが野槌とか呼んでいる四肢無しトカゲをけしかけたのを口火に、僕とハスデヤは銀髪オッドアイに向かっていき、アールマティが野槌を迎撃する形で、銀髪オッドアイとの二回戦の火蓋が切られました。

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