異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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現在の状況ですが、時系列は原作だと48話〜49話、テロリストが襲来し一方的にボコられて返り討ちに遭っている頃です。



23話

 

 クソガムさんに異世界日本へ誤送還される前、邪教から世界を救ってくれと異世界という名のどこか遥か遠くの星に召喚され、そこで邪教の連中と異世界からの救世主こと勇者として戦うこととなった日々。

 邪教の連中はライドの前口上を律儀に待ってくれるエンターテイナーの一面もある悪党どもだったけど、そこはリアルな悪党ども。勝つためなら平気で卑劣な手段を用いてくることもありました。

 

 それこそ人質作戦なんて何回もやられました。

 むしろ定番。ライド前に仕掛けてくるのもお約束。何故か頑なにライドの瞬間だけは妨害してこなかったけど……それはともかく。

 おかげで人質1人くらいであれば、それもあの近距離ならば取り返すことは難しくなくなりました。

 抵抗する術があるように、攻撃が効かない理不尽仕様でも捕まった人質を取り返す隙を作る手段はありますし。

 卑劣な連中だったけど、ある意味あいつらとの戦いの経験が活かされることで、こうしてピンチを乗り越えられる場面もあるんだよね。……なんかそれはそれで複雑ですが。

 

 当然、人質を取り返したらそれを再び奪われないようにしないといけません。

 そこら辺はコールしたユニットにお願いすればいいので、いざ戦う場面で戦力がいつもより不足することにはなるけどそれほど苦労はせずに済みました。

 うん、本当にクレイのみんなには頭が上がらないです。言ってしまえば邪教に勝ってあの星を救えた時点でもうこれ以上僕に付き合う必要ないのに、こうして異世界日本での戦いにまで付き合ってくれるのですから。

 ……きしめん頭? 確かにこの能力はあいつから借りたものだけど、死んでもあのトンチンカンには感謝する気ないです。だってあいつ性格悪いし、仕事雑だし、サポート不足だし。今回の誤送還もあいつが原因だし。

 

 今回はサウザンドレイ・ペガサスとナレルにカイコさんを頼んでいます。

 そしてこちらにはアールマティとハスデヤ。

 後コール可能な枠は一つ残ってますけど、銀髪オッドアイの鼻を明かしてやりたいし、不測の事態があるかもしれないので、その時のためにひとつ空いているリアガードサークルを残しておくことにしました。

 

『さあ行くぜ、ツチノコもどき! こいつは苦いぞ覚悟しろよ!』

 

 銀髪オッドアイが野槌とか呼んでいる、カイコさんに噛みついて多分毒を流し込んでくれただろうツチノコもどきの醜鬼。

 銀髪オッドアイの命令で襲いくるそいつは、アールマティが対応してくれてます。

 まずは噛みついてきた牙を回避しつつ、巨大な注射器みたいな見た目をしている光線も出せる愛用の水鉄砲という名の凶器を使って苦いだけのお薬を撃ち込みます。

 カウンターで口に撃ち込まれた激ニガ薬液に、野槌は勢いよく喉に異物をぶち込まれたことに対してか、それとも耐え難い苦味によるものか、爬虫類みたいな見た目なので表情がわかりにくいですが、とにかくその反撃が効いたらしく苦しそうにして薬液を吐き出しました。

 

『背中ガラ空きだ!』

 

 そこにすかさずフィーバーをかまそうとするアールマティ。

 しかし理不尽仕様の醜鬼の体表がそれを許さず、注射針が折れてしまいました。

 

『マジかよ!?』

 

「“マジかよ!?”じゃねえよあんぽんたん! こっちの攻撃は効かないって言ったよな人の話ちゃんと聞けよ! お前の口にそのセンブリ茶液注ぐぞバカ!」

 

『アイアイマム!』

 

 調子に乗ってポカをやらかしたアールマティを嗜めつつ、こっちも銀髪オッドアイに仕掛けます。

 

 銀髪オッドアイの方は、野槌を嗾けながらも自身は動かずに向かってくる僕たちを無防備に突っ立って待ってます。

 まあ、待ち構えているのはこっちの攻撃が効かないことは承知しているからだろうけど。もしくは本当に相手にするつもりがないからなのか。

 

 どっちにしてもムカつくので、その端正なのに無表情で左右の目の色が違う綺麗な顔目掛けて、容赦なく飛ぶ勢いのままドロップキックをかまします。

 

「これでも食らえ!」

 

『理不尽仕様なのでは!?』

 

『スカートなんです、それはやめてくれませんか!?』

 

 先ほどのアールマティのように──いや、隙をついているわけでもなく真正面から馬鹿正直に突っ込んでいるのでさらに愚かとも言える──自分から理不尽仕様の敵に攻撃を仕掛けていく僕に、普段は冷静なハスデヤが思わずツッコミをしてスカートが捲れるのもお構い無しの攻撃にサリエルが抗議をする中、勢いよく銀髪オッドアイの顔面にかましたドロップキック。

 

 しかしその両足が届くことはなく、銀髪オッドアイはその小柄な体躯に不釣り合いな怪力と超人的な反射神経で突き刺さる直前にくるぶしを掴んで止めてみせました。

 

「こいつ──回すなぁ!」

 

 見た目は子供なのに、まるで巨人を相手にしているかのよう。

 一歩も後退することなく真正面から受け止めてみせた銀髪オッドアイは、そこから流れるように足を脇に抱え込んでその場で二回転半してから、ハスデヤとは逆方向へとジャイアントスイングで投げ飛ばしました。

 

「いったぁ……ふざけんなテメェ!」

 

『それは投げるものじゃないですよ!』

 

 ハスデヤの向かってくる方向とは逆に投げ飛ばしたことで前回のカロンを巻き込んでしまうような事態は避けられたものの、寮の内壁を派手に壊して隣の部屋に飛ばされてしまいました。

 でもこの程度なら大したダメージにはなってないので、すぐに起き上がってハスデヤの方を向いていることで晒している背中目掛けてキャンドルを投げ飛ばします。

 

『覚悟!』

 

 それに合わせてハスデヤも剣で切り掛かり、挟み撃ちになるように攻撃を銀髪オッドアイに仕掛けます。

 

「…………」

 

 しかし、それに対する銀髪オッドアイの回答は。

 僕が投げたキャンドルを無視して背中で受け、ハスデヤの剣はまるで蚊を払うかのように軽く右手を振るだけ。

 

『えっ──!?』

 

『消えた!?』

 

 しかし、銀髪オッドアイにとってはそれだけで十分でした。

 キャンドルは傷ひとつつけることなく銀髪オッドアイの背中に届いた直後にまるで魔法のように消えてしまい、ハスデヤの剣も軽く払われただけでその手をすっぽりと抜けて弾き飛ばされてしまいました。

 

「いけない──!」

 

『なっ──かはっ!?』

 

 そして手元の剣が綺麗に抜けて消えたことに困惑するハスデヤに、銀髪オッドアイがすかさず左手を伸ばし先ほどまで剣が握られていたはずの手を掴むと、流れるような動きで懐に入り込み綺麗な背負い投げで床に天使の身体を叩きつけました。

 

「…………」

 

「させるか!」

 

 衝撃で動けなくなっているハスデヤにトドメを刺そうと無言で手を上げる銀髪オッドアイ。

 そうはさせじとすぐに飛び出し、タックルをしかけてその攻撃を間一髪で阻止します。

 

 僕が飛んでくることが想定外だったらしく、受け止められなかった銀髪オッドアイは衝撃にバランスを崩してその小柄な体躯に見合う形で吹き飛ばされました。

 といっても、僕をジャイアントスイングで壁をぶち抜き隣の部屋まで投げ飛ばしたのに比べると、1メートルくらい後ろに飛ばされただけなので、吹き飛ばされたというほどでもないですけど。

 

 けど、銀髪オッドアイの小柄な身体ならこのまま抑え込めるかも。

 背中から床に叩きつけられた銀髪オッドアイが反応する前に、即座に馬乗りになり重心を押さえて、両手にも力が入れられないように組み伏せます。

 

「これでどう──うがっ!?」

 

 傷つけることは無理でも、これで抑え込める。

 そう思っていたのですが、銀髪オッドアイは表情ひとつ変えずに、しかしその小柄な身体からは信じられないような怪力で両手を持ち上げ振り払い拘束を解き、間髪入れずに僕の頭を両手で捕まえて強烈な頭突きをかましてきました。

 

 一瞬目の前が光って真っ白になり、音が遠くなって目の前が船の上のようにふらふらと覚束なくなる。

 身体がうまく動かせない。

 これは、不味い状態です。脳震盪起こしたかも……

 

「うう……」

 

 頭突きの衝撃と、脳震盪でバランスが取れず、崩れてしまいます。

 

「推定状態、脳震盪。変身状態でも頭部への強い衝撃は有効と判明」

 

 僕をどかして起き上がった銀髪オッドアイは、まだ視界もぐらついて起き上がることもできない僕の状態を冷静に分析すると、襟を掴み片手で軽々と持ち上げそのまま乱暴に床へと叩きつけました。

 

「がっ──!?」

 

 脳震盪もあって、まともに受け身も取れず背中から叩きつけられました。

 床を割り亀裂が走る中央で、背中から突き抜けた衝撃に肺の空気が抜けて声にならない悲鳴が溢れます。

 この銀髪オッドアイ、ハスデヤにした背負い投げといい、人を生地みたいにバカスカ叩きつけやがって……! 

 

『マイヴァンガード……この、よくも!』

 

 立ち上がったハスデヤが、鞘を鈍器がわりにして僕を助けようと後ろから銀髪オッドアイの後頭部を狙って殴りつけてきます。

 しかし銀髪オッドアイは完全無視。

 2度3度と殴りつけるも一切効いている様子はなく、銀髪オッドアイのでは僕の襟元を掴んだまま離さず、表情ひとつ変えません。

 

「うっ……離せよ、テメェ!」

 

「…………」

 

 視界の揺れも治まってきたところで、襟を掴んで押さえている銀髪オッドアイの手首を掴み、翼を広げて強引に飛び上がります。

 

 タックルで転かしたときもそうだったですが、銀髪オッドアイの力は怪物だけど、体重は見てくれ相応のものです。

 それに襟を掴む手を簡単に離したので、拘束から抜け出すのは意外と簡単にいけました。

 

『ご無事ですか!?』

 

「サリエルが守ってくれてるから全然平気!」

 

 心配そうに声をかけてくるサリエルに、問題ないと返します。

 銀髪オッドアイはやはり追撃するつもりはないらしく、その場にとどまったまま。

 ハスデヤは剣を拾いに行き、アールマティの方は野槌をうまく足止めしてくれている姿が確認できます。僕のいうことを聞いて、しっかりと無闇な攻撃はせずに足止めに注力してくれてます。

 

『そういう貴女は思いっきり攻めて、そして反撃をしっかりもらいましたよね? それもドロップキックなんて……慎重さと恥じらいを持ってください! 下着が見えるのはサリエル()なんですよ!』

 

「ご、ごめんなさい……」

 

『分かればいいです。さあ、集中して!』

 

「アイアイマム!」

 

 そして問題無し、体も動くし視界の揺れも治まった、銀髪オッドアイは動いてないと一息つけるタイミングになったことを確認したところで、サリエルからドロップキックの件の猛抗議がきました。

 アールマティに攻撃は効かないのだから足止めに徹して隙を晒したりカウンターを喰らったりする無闇な攻撃は控えるようにと言いながら、サリエルにライドした僕の方はドロップキックを仕掛けて投げ飛ばされるということをやらかしたので。

 

 気を取り直して、ハスデヤのことを完全に無視して無言でこちらを見ているだけで動かないという相変わらずの余裕の銀髪オッドアイに今度こそ一撃をかます──もとい、サキさんがきてくれるまでの時間を稼ぐためにグレード3のユニットへライドします。

 

「ライド! “神託の守護天使(プロフェシー・セレスティアル)レミエル”!」

 

『森羅万象──全てを抱きしめ、愛しましょう!』

 

「対象の新規の変身能力を確認」

 

 銀髪オッドアイがライド中を狙わないのは、おそらく僕の能力を解析するため。

 新規の変身能力を確認とかいっているし、それこそ僕がライドするユニット全ての姿を確認したいとでもいうつもりなのでしょうか? ……いくら敵を知るためとはいえ、そこまでされるとドン引きますよ。

 まあ、そんなことしなくてもすでに僕は君が嫌いですけどね! 

 

 赤白のナース服に、大きなハサミ型の双剣“双聖鋏(ディヴァイン・シザース)”を握る、エンジェル・フェザーの特殊医療部隊“瑠璃色の守護天使(ラピスラズリ・セレスティアル)”の副隊長を務める上位天使。

 

「力を借りるよ、レミエル!」

 

『仰せのままに、マイヴァンガード! 罪なき無辜の人々を傷つける破壊者たち、悉く双聖鋏で断ち切って見せます!』

 

 うーん、それはちょっと難しいかな……こっちの攻撃全てを問答無用で無効化してくれる理不尽仕様だし。

 

「行くよ、ハスデヤ!」

 

『合わせます!』

 

「…………」

 

 まあ、何はともあれ勝負はこれから。

 剣を拾ってきたハスデヤと挟み撃ちになるように息を合わせて、相変わらず無表情で突っ立っている銀髪オッドアイに向かっていきます。




野槌(のづち)
オリジナルキャラ。組長会議で夜雲さんが寮を留守にしている間に仕掛ける襲撃のために銀髪オッドアイが用意した特殊個体の醜鬼。外見は四肢の無い巨大なトカゲ、ほぼツチノコ。全長は約7メートル。牙には致死性はないが獲物を痺れて動けなくする即効性の高い毒を持つ。これで動きを封じ、生きたまま丸呑みしてしまう。表皮は柔らかいので攻撃は通りやすいが、非常に高い再生能力を持っており多少の傷はすぐに治ってしまう。元ネタは妖怪の野槌です。
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