異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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24話

 

 ハスデヤと挟み撃ちになるように、銀髪オッドアイに向かっていきます。

 理不尽仕様だからレミエルの宝具でも切れないと思うけど、それはもう仕方のないことだと割り切ってます。

 僕の役目は野槌からカイコさんを取り戻すことと、ブラントが呼びに行ったサキさんが来てくれるまで持ち堪えること。

 そしてカイコさんを助ける事は成功したので、あとはサキさんが来てくれるまでここでこのトカゲもどきと銀髪オッドアイを足止めすればいい。

 それを目標とすれば、レミエルを始めとするこのエンジェルフェザーのみんなは空を駆ける機動力があるから、翻弄して足止めするのには頼りになるのです。

 ……そして何より、あの銀髪オッドアイをぶん殴りたい!(これが本音)

 

 というわけで、狭い屋内だけどハスデヤと共に銀髪オッドアイに向かっていき、機会があればその綺麗な顔を殴りにいきます。

 銀髪オッドアイの目的は僕だけど、この寮には現世に繋がる門もあるし、あのデカブツ醜鬼使って襲ってきた時みたいに市民を巻き込む惨事を起こす可能性もあるし。というかこいつは必要とあればそういうの平気でやるタイプだろうし。

 

 銀髪オッドアイは、挟み撃ちを仕掛ける僕とハスデヤに対し、その場を動かずこっちを向いてます。

 ハスデヤのことを無視するのは、攻撃が効かないことを分かっているから。無視しても脅威にならないと判断していると思われます。

 そして僕の方を見ているのは、ライドしているレミエルの力を調べたいからだと思う。新規の変身能力を確認とか言っていたし。

 

 ならば結構、その油断に塗れた無表情を吠え面に変えてやる! 

 

「…………」

 

 あのさ……黙ってないでせめてもうちょっと驕った表情とかしときなさいよ。ロボットですかお前は。

 

「ハスデヤ、膝!」

 

『はい!』

 

 クールを気取っている(そんな事はない)銀髪オッドアイの喉に向かって右手の剣を突き出す直前、ハスデヤに膝を狙うように言うとともに僕がどんな手でくるかと待ち構えていた銀髪オッドアイの寸前で剣を手放し急停止をかけます。

 背中がお留守な銀髪オッドアイには、僕からの攻撃よりもハスデヤが膝裏に剣で殴りつける強烈な膝カックンをお見舞いしてもらいます。

 

「────ッ」

 

 ハスデヤのことを完全に無視していた銀髪オッドアイはその膝カックンを無防備な状態で受けて、無傷だったもののバランスを崩しました。

 

 すかさず崩れた銀髪オッドアイに、剣ではなく肘打ちを喉に当ててそのまま勢いよく転倒させます。

 普通の人間相手にやったら、喉を潰されて呼吸困難になったところに後頭部を勢いよく地面にぶつけてしまうという、頭と首へのダメージがとても大きいかなり危険な攻撃です。

 まあ、銀髪オッドアイにはこのくらいしてもいいでしょ。どうせノーダメージだし。

 

 攻撃は効かない。ダメージは受けない。

 でも、タックルで転倒させることができたように、この銀髪オッドアイは体重などに関しては見た目通り。転かしたりする事は決して難しくは無い。

 

『これで──』

 

「──沈め!」

 

 そのまま馬乗りになって銀髪オッドアイを抑え込み、やはり無傷で痛がる様子もなく無表情のまま反撃の兆しを見せた銀髪オッドアイの綺麗な顔面に、ディバインシザースを合わせて両手で握り込んだオルテガハンマーをトドメと言わんばかりに叩き込みました。

 

 ハスデヤ、レミエルの協力を得た連携攻撃で、銀髪オッドアイを衝撃で開いた床の穴に頭をめり込ませ、宣告通り床に物理的に頭を丸々沈めた間抜けな姿に変えることに成功しました。

 

 ワハハ! いつかやってやると思っていた銀髪オッドアイの顔面への強烈な一発を叩き込んでやったよざまあみろ。

 内心喜びながらも、間抜けな格好でも掴みかかろうと伸びてきた手をかわすためにその場から飛び退きます。

 

「…………」

 

「まずは一発。この調子で行こう、ハスデヤ」

 

『了解です、マイヴァンガード』

 

 そしてやっぱり分かっていたけど銀髪オッドアイはノーダメージ。

 床板の破片とかで汚れているものの、あれだけやっても平然と立ち上がりそしてやっぱり無傷で無表情な姿を見せつけてきました。

 

 一旦仕切り直し。

 隣に降りてきたハスデヤにこの調子で攻めて行こうと伝え、無傷の銀髪オッドアイにむかって左右に分かれ再び挟み撃ちになるように動いて向かっていきます。

 

「…………」

 

 さて先ほどレミエルのオルテガハンマーで間抜けな姿を一瞬晒した銀髪オッドアイは、先ほどと同様にその場を動かずにハスデヤを無視してこちらにのみ視線を向けました。

 

 ブレないなこいつ。

 ならもう一回連携プレーで間抜けな姿に変えてあげるから覚悟しておけ! 

 

「ハスデヤ、頭よろしく!」

 

『はい!』

 

 次は僕の方が最初に仕掛けてバランスを崩し、本命の転倒に追い込む攻撃をハスデヤに任せます。

 というわけで、先ほどは急ブレーキして意表をついたのとは逆に、直前で低い位置に動いて足元に狙いを定めてディバインシザースを打ち込みます。

 

 銀髪オッドアイの方はこちらの思惑を見通したのか、そもそもハスデヤは無視して僕だけに対応するつもりだったのか。

 どうせフェイントだろうと判断する事なく、相手の視界から外れるように間合いに入った瞬間に姿勢を下げて攻撃を仕掛けてきた僕に冷静に対応し、右足の脛を狙い突き出した宝具の切先を左足で蹴り付けて弾いてきました。

 

「────っ!」

 

 それにすぐさま攻め方を変更。

 蹴られた衝撃に抵抗せず回って受け流し、お留守な後頭部を狙って剣を振り下ろすハスデヤにタイミングを合わせて二本の剣の刃を銀髪オッドアイの姿勢を支える右足に叩きつけました。

 

 一瞬だが片足立ちになったところに、頭と足を狙った同時攻撃。

 これにより銀髪オッドアイがバランスを崩したところで、ハスデヤの攻撃で前のめりになった顎に蹴りを打ち込みます。

 これは綺麗に決まり、銀髪オッドアイの首からゴキッという音が鳴り90度曲がりました。

 

「まだまだ!」

 

 こんなものじゃ終わらせないから! 

 ディバインシザースを一旦離して、開いた両手で銀髪の頭を掴み額に膝蹴りを打ち込みます。

 

 しかしそれも効いてない銀髪オッドアイは、頭を掴むこちらの手首を逆に掴むと力ずくで引き離そうとしてきました。

 

「この──銀髪ゥ!」

 

『銀髪に何か恨みでも……?』

 

 見た目は子供なのに、この怪力。

 ここから膝蹴りから床に叩きつけてもう一回頭をめり込ませる間抜けな姿に変えようとしたかったけど、それは断念してあげます。

 代わりにマーハでやられた時のお返しと、銀髪オッドアイの腹部を蹴り付けました。

 

「おとなしく殴られてなよテメェは!」

 

『もしくは蹴られなさい!』

 

『オゥ……副長が先導者に染まってやがる』

 

 蹴られた銀髪オッドアイは、どうせ効いていないくせにあっさりと手首を掴む手を離しました。

 ついでに野槌を相手に激苦や激辛の薬液を使って目、鼻、口に嫌がらせの攻撃を仕掛けて足止めしているアールマティがこっちを見てなんか漏らしてます。聞こえてるとすれば、後でレミエルに折檻もらうことになりそうな失言を。

 

 結構力を込めて蹴ったのに、体は軽いくせに力は怪物の銀髪オッドアイは踏ん張って転がるのを阻止しました。

 少し後ろに下がっただけ。こんな距離ではひとっ飛びでその小さな体でも届く間合いに詰めてこれるだろうけど──

 

『そこ──くっ!』

 

 すかさず背後をとるハスデヤが、銀髪オッドアイのうなじに狙いを定めて剣を突き出す。

 急所を捉えた攻撃だったものの、しかしこれは理不尽仕様の銀髪オッドアイの体に傷をつける事はできずに弾かれました。

 

 今のところサンドバッグ状態で一方的に殴られ蹴られ切りつけられの銀髪オッドアイは、しかし無傷のまま。

 表情もロボットのように無表情のまま。

 攻撃が効いている様子はやはりなく、むしろ僕たちが攻めてくるのを無駄な足掻きと嘲笑い消耗を狙っているのではないかと思えてきます。

 

「なめるなよ!」

 

 ディバインシザースを拾い、今度は上に跳ねて上段から宝具の刃を振り下ろします。

 それを銀髪オッドアイは無防備に受け、刃が薄皮ひとつきれずに止まった隙に今度はこちらの番だと掴み掛かろうと手を伸ばしてきました。

 

「これお願い!」

 

『はい!』

 

 でも、掴ませてなんかあげません。

 振りは大きくても握る力はあまり込めてなかったディバインシザースを離すと、それはハスデヤに任せて開いた両手で逆に銀髪オッドアイの伸ばしてきた手首を掴み取り左右に押し除けて、両脚で銀髪伸ばしてる頭を捕まえます。

 

「せえのっ!」

 

 うまく誘導に乗ってくれた銀髪オッドアイの頭を今度こそもう一回床に嵌めて間抜けな姿に変えてやります。

 必殺、フランケンシュタイナー! 

 

 ノヴァグラップラーのみんなに護身術から人間でもできる格闘技までいろいろと教えてもらったうちの一つです。

 けど、レミエルにライドしその力を借りて繰り出したこの攻撃は無力な人間の時にやるよりもずっと強烈。

 今度こそ、銀髪オッドアイを床に頭を突っ込ませる間抜けな姿に変えることができました。

 

 あとは頭が埋まっている間に体格差を使って押さえ込んで身動きを封じて時間を稼げばよし。

 無理だったとしてももう一回こんな感じの間抜けな姿に変えてやります。

 そう意気込んで床に頭を埋める間抜けな姿の銀髪オッドアイを取り押さえようとした時──

 

「よし、このまま押さえ込んでとっ捕まえれば──はいッ!?」

 

 頭が床にはまっているという間抜けな姿を晒していたはずの銀髪オッドアイの足が、まるで麦わら帽子の海賊みたいに突然伸びてきました。

 危機に対する防衛本能か、突然の攻撃だったけど直感で何か来るというのを察して寸前で僕は避けることができたのですが、伸びた足はそのまま後ろのハスデヤの体にヘビのように巻きついて身動きを取れなくしてしまいました。

 

『くっ──!?』

 

「ハスデヤ──やばっ!?」

 

 思わずハスデヤの方に目を向けてしまった隙に、今度はもう片方の脚が伸びてレミエルの翼を捕まえました。

 まずい油断した! そりゃそうだ、片方伸びるならもう片方の足が伸びてもおかしくない。

 そのままレミエルでも抗いきれない怪力によって僕は床に引きずり倒され、縮んでいく脚に引き摺られて銀髪オッドアイのところにハスデヤもろとも連行されてしまいました。

 

「この……放せこいつ!」

 

『マイヴァンガード──ぐあっ!?』

 

「アールマティ!」

 

 さらに僕たちのピンチに気づいたアールマティが先ほど捕まった僕と同様に視線を逸らしてしまい、そこにすかさず野槌の舌が伸びてアールマティが体を貫かれてしまいました。

 

『悪い副長……しくじった……』

 

『おのれ、よくも私の部下を……!』

 

 打ちどころが悪かったアールマティが消えてしまう。

 一瞬の油断がまさに命取りになってしまい、一転して状況は最悪なものに。

 

「──コール、“要の守護天使(エッセンス・セレスティアル)ベカ”!」

 

『それじゃあ始めよっか、斬撃訓練!』

 

 ここは流石にコールを使うしかないと、銀髪オッドアイが逆立ちの状態から床より頭を抜こうとしている隙に膝下なら動かせる右手でカードを取り出して新たなユニットを展開しました。

 

 取り出すことができたのは、要の守護天使ベカ。彼女は戦う看護師──というより、生粋の戦闘要員を務める守護天使の一員。

 野槌に銀髪オッドアイと1対2の状況だけど、持ち堪えてくれると信じられる頼りになるユニットです。

 

「僕のことは気にしないで! サキさんが来るで持ち堪えてなんとか!」

 

『オーケーお任せください、マイヴァンガード!』

 

 ハスデヤと僕の体を捕まえているのは銀髪オッドアイの伸びた脚。つまり理不尽仕様の肉体の一部。

 ベカの剣では切り裂いて僕たちの拘束を解くことができないので、サキさんが来るまでの足止めをお願いします。

 

「個体名称アールマティ消滅後、新規の召喚を確認。推測、対象の召喚には一度の限界につき数的上限が存在する可能性有り」

 

 頭を床から抜くことができた銀髪オッドアイが、アールマティがやられた後にベカが出てきたことから、僕のコールには一度にできる上限の数があることを察知した様子。

 本当はまだひと枠残ってるので、カードに手が届けばもう一体コールすることもできるけどね。教えてやるつもりないけど。

 

「捕縛せよ」

 

『そう簡単には捕まってあげないよ?』

 

 2対1でやるかと思ったけど、銀髪オッドアイは僕たちを両足を使って拘束していることもあってか野槌にベカを捕まえるよう指示を出して自分は観察に徹する様子。

 頭が床にはまっていてギリギリ見られてないのか、僕がカードに手を伸ばしてベカのコールに成功したことはみられていないみたい。

 

「屋外に2。屋内に2。対象の能力推定、異界の存在の憑依および召喚。憑依及び召喚対象に桃の効能は確認できず、醜鬼には無効。媒介はカードと推定。一部カード使用を確認できず、使用枚数と合致せず。確定せず、要検証の必要あり。召喚は上限4、使用者本人の憑依枠を召喚に転用可能ならば5枠と推測。確認した固有名称、“アビス・ルーター”、“マクリール”、“マーハ”──」

 

 銀髪オッドアイが僕とのこれまでの戦いを通じて得られた情報をまとめているらしく、ぶつぶつと情報を並べていく。

 僕が思っていたよりかなり詳しく調べられていたみたいです。

 こうして2回も襲撃してまで僕のこと調べるとか、ひょっとしてこいつ僕のストーカーじゃないかな? ……うん、ないね。執着というより純粋に調査として調べられてる感じだよこれは。

 

『その程度で私を捕まえられるなんて思わないでね、ツチノコもどきさん』

 

 野槌の伸びる舌を、屋内ながら器用に飛び回って回避するベカ。

 ツチノコもどきは言葉がわかるのか、それとも捕まらないことに苛ついているのか、振り回す舌がより速くなっていき、壁や柱を容赦なく破壊して、そしてベカには掠りもせず空振りを繰り返しています。

 

『マイヴァンガード、申し訳ありません……』

 

「謝らなくてもいいよ。大丈夫、ハスデヤのせいじゃない」

 

 ベカの観察に集中しながらも、拘束は一切緩めない銀髪オッドアイ。

 捕まった状態ではベカの奮戦を見守ることしかできない歯がゆい状況に、最初に捕まったせいで責任を感じているハスデヤが申し訳なさそうに謝ってきました。

 責めるつもりなんて毛頭ない僕は大丈夫だと伝えます。

 

「悪いのは徹頭徹尾──」

 

『このレミエルの不手際です』

 

「違います。あのきしめん頭と銀髪オッドアイです。百万歩譲ってもきしめん頭か僕のせいです」

 

 もちろん、レミエルにもアールマティにも非はない。

 悪いのは全部こんな世界に放り出したあのきしめん頭と、このむかつくくらい綺麗な顔している銀髪オッドアイです。百万歩譲っても、みんなの力を借りて戦いながらそれを十全に扱えなかった僕です。異論は認めません。

 

『マイヴァンガード……』

 

「いまはベカとサキさんを信じよう」

 

『……はい!』

 

 邪教を倒して星を救った元救世主としては情けない限りの姿だけど、仲間の奮戦を信じるのも戦いです。

 反撃するならそこから挽回していけばいいので。

 

「……お待たせ」

 

「──!」

 

 そして、その時はハスデヤを励ましてからすぐに訪れました。

 

 小さな声と共に、僕たちの後ろに駆けつけてくれてサキさんの姿がありました。

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