異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

33 / 49
オリ主(ザラキエル)VS銀髪オッドアイです。



31話

 

 見た目にそぐわぬ怪力や瞬発力、こちらの攻撃だけがノーダメージになる理不尽な無敵仕様、伸びる脚、醜鬼の操作、そしてどこでもドアよろしく瞬間移動に使えるクナドを作る能力。

 こうしてこれまで判明した能力を挙げてみると、この銀髪オッドアイがかなり器用なことがわかります。

 

 引き出しの数ならクレイのみんなの力を借りることができる僕も劣るつもりはないけど、こっちは攻撃が一切通らないから有効打になる手札がないんだよね……。

 もっとも、こんな理不尽に苦しめられるのは全部この異世界日本に放り出してくれた仕事の雑なクソガムさんのせいですけどね! 

 

「とりあえず出てけ!」

 

 ザラキエルにライドして、寮の壁の崩れた穴から入ってきた銀髪オッドアイと対峙した僕は、戦闘の余波で崩れるなどして上であのツチノコもどきと戦っているだろうサキさんに迷惑がかからないように、そしてエンジェルの機動力を活かすための広いフィールドを確保するために、とりあえず壁を壊してくれた侵入者に体当たりをして再び外に出しました。

 

 ダメージはないけど体重は見た目相応に軽い銀髪オッドアイは、効かないなら構わないとノーガードで体当たりを受けてくれたので、簡単に外に出すことができました。

 

 銀髪オッドアイを屋外に出したら、殴られたりする前にさっさと空に上がって距離をとります。

 銀髪オッドアイは確かに手札が多いけど、空は飛べないみたいなので、上に動けるというのはこちらのアドバンテージですね。

 

「わわっ!? 全く……麦わら帽子の海賊かっての!」

 

 ただし相手は空を飛べないというだけで、対空攻撃の手段はあるので空も安全ではないですが。

 

 体当たりで寮の外に出してさらに逃げた僕に対し、銀髪オッドアイは某麦わら帽子の海賊のように脚を伸ばして攻撃してきました。こっちは脚しか伸ばせないみたいだけど。

 蹴り付けるだけでなく、鞭みたいに振り回してくるので、一度避けたとしても油断できません。

 軸足を残しているので振り回してくる脚は一本で済んでいますが、しなるし不規則に曲がるし速いしなので、避けるだけでも結構大変です。

 

「空も安全じゃない。そしてどこでもドアみたいにクナドを使えるなら──」

 

 そしてあんな便利な能力があるなら、ただ脚を伸ばして振り回すだけじゃ済まないはず。

 異星で戦った邪教の連中の中にも瞬間移動してくる奴がいて、そいつは戦いの中で自分自身だけじゃなくて部下や自分の身体の一部だけ瞬間移動させて奇襲を仕掛ける戦い方を得意としていました。

 だから、銀髪オッドアイもクナドを作る能力を応用して瞬間移動してくるなら、例えば突然僕の背後に使ったクナドに脚を飛ばして奇襲するとかも仕掛けてくる可能性があります。

 

「──ドンピシャ!」

 

 その推測通り、銀髪オッドアイは二つのクナドを使って脚を回避した先の僕の背後に飛ばして奇襲を仕掛けてきました。

 予想していたので、振り回している脚が突然現れたクナドに飛ばされるのを見逃さなかった僕はその奇襲も回避します。

 

「背中を狙うとは捻りがないね!」

 

「推測通り、クナド形成機能を用いた奇襲の効果は著しく低下。奇襲への適応が想定より高く、桃に該当しない能力の他、瞬間移動能力との戦闘経験を有すると推定」

 

 クナドを使った奇襲でも僕を捉えられなかったことを受け、銀髪オッドアイは一度脚を引っ込めました。

 ぶつぶつと僕のことを分析しているけど、高速で動き回る僕を正確に捉えて背後をしっかりとる奇襲を仕掛けてきたこともあり、色の異なる二つの目がこちらを向いている時点で隙を一切感じさせないです。

 推理するタイプはこういう時顎に手を当てたりして考え込んで、閃くまで仲間に戦闘押し付けているものじゃないんですか? 異星で救世主やってた時の僕の仲間には、まさにそんなタイプのがいました。賢くて閃くととてもいいアイデア出してくれるから頼りになる仲間だったけど。

 

 急降下して突っ込んでみてもいいけど、ここは一旦空で待機。息を整えて僕の方も誰をコールするのがいいかとか考えるための仕切り直しの時間に使います。

 

 サウザンドレイ・ペガサスはカイコさんを別の魔防隊の拠点にすでに避難させることができたことを聞いてます。

 夜雲さんなら桃の能力もあるしすぐに来れるだろうから、僕はもう少し時間稼ぎをしてこの銀髪オッドアイが現世に行かないように踏ん張ればいい。膠着状態になるのはむしろ望むことなので、ここは向こうから仕掛けてこなければ動かないのが吉とみました。

 

「桃ではない能力、瞬間移動に類する攻撃への対応……目標の存在意義を推定。鳴颯(なるはやて)への対抗手段」

 

「……ん?」

 

 隙を見せずに僕を見上げながらぶつぶつと何かを言ってる銀髪オッドアイが、僕の存在意義の考察をして勝手に推測を始めました。

 

 いやあの……僕クソガムさんの雑な仕事の事故でここに飛ばされたしがない異世界人なので、存在意義とかそんな大層なものは持ってないんですが……。

 

「いろいろ考えてもらって悪いけど……事故で飛ばされた異世界人に存在意義なんて大層なものはないんだよね……」

 

『意義は役目ではなく、1人1人の心に宿るもの。例え生まれる世界を違えたものでも、心があれば意義は宿るものよマイヴァンガード』

 

「あ、いや別に悲観してるわけじゃないから大丈夫」

 

 無意味な推理に思考を回して見当はずれなことを閃いた銀髪オッドアイのことを哀れんでいたら、理由もなくこの世界に飛ばされたことを悲観していたと勘違いしたザラキエルから慰められました。

 ごめんザラキエル。その優しさは温かいけど、今それを必要としているのは僕じゃなくて銀髪オッドアイの方かもしれないです。

 ……いや、やっぱり良いよ。銀髪オッドアイは無意味な1人推理を哀れまれるくらいの待遇がちょうど良い。ダッサイwって煽ってやろう。

 

「無駄なことしてるね。ダッサイw」

 

「自白を確認。目標の正体は異世界人」

 

「……異世界人なのバレた!?」

 

 余裕こいて煽っていたら、ポロリとこぼしていた自分の正体を拾っていた銀髪オッドアイに異世界人であることがバレてしまいました。

 というか、君もやけにあっさりと受け入れたね!? 異世界人とか普通信じられるものじゃないと思うんですけど。

 

「僕、異世界人違ウ。シガナイ寮ノ管理人アルネ」

 

『マイヴァンガード……』

 

 いや、まだごまかしは効くと思うので否定します。

 僕はしがない魔防隊五番組寮の管理人で、異世界人なんて非現実的な存在じゃないですよ。

 本当のことを混ぜて言えば嘘は信じられやすくなるっていうから、嘘が下手だ下手だと言われる僕でもこれなら信憑性があるはず。

 

「見苦しい否定。対象の証言に信憑性は認められない」

 

「お前マジでしばくぞこら!」

 

 しかし、銀髪オッドアイは優れた頭脳で僕の嘘を看破してきました。

 くっ……コイツじゃなきゃ騙せていたはずなのに。相手が悪かったようです。

 しかし、僕の渾身の嘘を見抜いてドヤりたいのはわかるけど言い方というものがあるのではないですかね!? 

 

 やっぱりこのクソガキシルバーさんはもう一回くらい地面に頭を沈めてやりますよ。やらねばならない。そう、やらなければ僕の気が済まない。

 

『落ち着いて。あなたが為すべきことを思い出して、マイヴァンガード』

 

「アイアイマム!」

 

 危ない危ない。冷静さを見失いそうになっていたところでザラキエルに止めてもらい、今すぐ急降下突撃を仕掛けようとしたところ止まることができました。

 時間稼ぎが目的なのに、一時停止している戦闘を僕の方から再開するのは悪手でした。

 この僕から冷静さを失わせるとは、銀髪オッドアイの挑発はとても効果があります。

 

『…………』

 

 ザラキエルさんが普段の慈愛に溢れた彼女からは考えられないほどすごい冷ややかな目を向けてきました。

 ごめんなさい、挑発のせいじゃないです。僕の短気が原因です。

 

「…………」

 

 僕を挑発した(してない)銀髪オッドアイは、僕の正体を知りこちらの存在意義についてとかいう時間の無駄にしかならない考察をしてから一区切りついたのか、再び戦闘体制に入り近くにクナドを形成してきました。

 

「それはもう見切ってるっての!」

 

 僕の方も警戒は解いてなかったので、即座に反応して側に出てきたクナドから離れます。

 予想通り、形成されたクナドから銀髪オッドアイの伸ばした足が飛ばされて空を切り、問題なく回避した僕は()()()()()()()()()()()()()()()()飛ばされてきた足に蹴り付けられて地面に叩きつけられました。

 

「────ッ!?」

 

 えっ? ちょ、ちょっと待って? 今確かにクナドから飛ばされてきた脚を回避したはずなのに、何故か背中を蹴られたんですけど……何が起こったの今? 

 

 地面に叩きつけられながらまたもや未知の事態に遭遇して混乱する中、クナドを使って銀髪オッドアイが直上に瞬間移動してきました。

 そのまま踏み潰そうとしてきたので、横に転がって回避した直後、銀髪オッドアイが踏みつけた地面に蜘蛛の巣状のヒビができるほどの衝撃が走りました。

 

「危なかった……」

 

『油断しないで!』

 

 あんなの食らったらザラキエルでも耐えられなかっただろうから、まさに紙一重の回避でした。

 でも余韻に浸っている暇なんかありません。

 今何が起きたのか答えを見つけないと、次の攻撃を躱せなくなる。僕の正体を知った銀髪オッドアイがいつ本気で殺すつもりの戦いに切り替えるかわからないんだから。

 頭回せ、なんでさっき地面に落とされた時は回避したはずの攻撃が全く別の場所から同時に来たのか探らないと……! 

 

 銀髪オッドアイは容赦なく追撃してきます。

 ザラキエルの警告もあり、衝撃にもたついてうまく立ち上がれなかったので避けるのを諦めて頭を守るために腕を交差したところに、銀髪オッドアイの拳が飛んできました。

 

「くっ──!」

 

 銀髪オッドアイの攻撃は一撃が重たい。

 不安定な姿勢だったこともあり踏ん張れず、石ころみたいに飛ばされました。

 

 飛ばされ視界が回る中、銀髪オッドアイがクナドを潜る姿が一瞬見えて、直後に背後に移動してきた銀髪オッドアイが蹴り飛ばそうとしてきました。

 

「──ッ!」

 

 これはクナドを使う姿が見えたので仕掛けてくることを察知できたこともあり、直前で飛び上がって回避します。

 

 そのまま翼を使って高度を上げ一旦距離を取ろうとしたけど、銀髪オッドアイはクナドを使って空中に移動して追ってきました。

 

「そのくらいするよね!」

 

 この程度なら想定内。

 右フックを捕まえてさっきのお返しだと地面めがけて投げ飛ばします。

 

「大人しく地面を這ってなよ!」

 

 そのまま地面に落ちれば良かったけど、銀髪オッドアイはまたクナドを使って落ちる前に再び空に上がってきました。

 しかもまた僕より上に出てくるし。

 

「飛べないくせに空に上がってくるなよ!」

 

 こちらに向かって伸びる脚を鞭のように振り回してくる銀髪オッドアイに文句を言いつつ、今度は二本の足で振り回される脚を飛び回って回避していきます。

 ちょくちょくクナドを使った瞬間移動で脚を飛ばしてくるし、不規則な軌道で振り回してくるので、空中という上下にも広い空間ということもあり回避し続けるだけでも忙しいことこの上ないけど、ザラキエルの機動力なら対応できます。

 

「当たるかそんな──危なっ!? 今のは当たりそうだったけど……でも、当たるかそんな攻撃!」

 

 直撃受けそうな攻撃があったけど、それもなんとか回避して、ついでに銀髪オッドアイを挑発しておきました。

 単にムカつく相手を煽る意図もあるけど、さっき地面に落とされた時の攻撃のからくりがまだ分からないので、それを確かめるためにも煽ってさっき僕に当てた攻撃の手札を引き出させようという狙いもあります。

 

「…………」

 

 僕の挑発を受けて、銀髪オッドアイは一度片足を引っ込めると、クナドを足元に形成して足を飛ばしてきました。

 

 根拠はない。あえていうなら直感。

 その攻撃がさっき僕を地面に落とした時と同じことを仕掛けてくると感じた僕は、別のクナドがどこに形成されるかを見渡して、そのカラクリを見つけました。

 

 出てきたクナドは二つ。

 一つは僕の右側、そしてもう一つはそれを上に飛んで回避しようとしたところで背後を取れる場所。

 下と背後と左側には引っ込めた方と反対の振り回している方の脚が暴れているからから、右にこれ見よがしに出てきたクナドを通じた攻撃を躱して避けるとしたら飛べる先は上になる。

 

 そして銀髪オッドアイがクナドを通じて足を飛ばしてきた時、まるであいつの足元のクナドが新たに出てきた二つのクナドにつながっているかのように両方から伸びる脚が出てきました。

 

「ああもう、やっぱりそういうことかよ!」

 

 上に回避していたら、右をかわしたと思ったところでまた地面に叩き落とされるところでした。

 なのでここはあえて前に飛んで、一本になった振り回される脚を潜り抜けて回避することを選択しました。

 

「……想定より対応が迅速」

 

「からくり解けたよ!」

 

 僕が上ではなくあえて危険な方を回避先に選んだことから、銀髪オッドアイも僕がこのカラクリを見抜いたことを察知した様子。

 瞬間移動を駆使する連中は元々メチャクチャだったけど、それはこの銀髪オッドアイも同じだったみたい。

 正直理屈が難しすぎて僕はいまだにわかってないけど、銀髪オッドアイがしたのは瞬間移動──正確にはクナドを繋いだ時にできる次元だか時空だかの歪みを使って入り口一つに対して出口を複数に増やすというものです。

 

「クナドを繋ぐ時の次元の歪みを使って、入口に対して出口を増やしてるんでしょ! 悪いけど、似たようなことしてくるやつと戦ったことあるので知ってるんですよ!」

 

「…………」

 

 図星みたいで、銀髪オッドアイは否定しませんでした。

 ペイルムーンにもこれができるユニットがいるしね。あっちは鏡を使っていたけど。

 からくりが分かればもうそんな奇襲に引っかかってやらないよ! 

 

 単純に瞬間移動するときに移動先だけ増えるって認識しておけば、避けるのは少し大変になるだけで不可能じゃないです。

 むしろクナドなんてわかりやすい前兆がある分、銀髪オッドアイの方が対応しやすい……

 

「手数を対応されるならば、体積で対抗」

 

「質量保存の法則を知らないのかよお前はぁ!?」

 

 ごめんなさい調子に乗りました。

 銀髪オッドアイは数を増やしても対応されるならばと、出口の方に巨大なクナドを形成するとそこから質量保存の法則をガン無視する出口側でクナドに合わせて巨大化してきた足で回避不能な踏みつけ攻撃を仕掛けてきました。

 

「これ無理──」

 

 数を増やしてくるくらいなら回避できるけど、こう来られるのは流石に初めての経験ですね。うん、避けられないです。

 

 

 

 

 

「足退かせよこのクソガキシルバー……!」

 

「…………」

 

「痛い痛い痛い! 力入れるな、僕骨折れてる──痛いってば!」

 

 結局クナドを使い巨大化した足を回避できなかった僕は、地面に叩き落とされて、ライドも解除されて、骨折した痛みがぶり返して呻きながらうずくまったところをまた銀髪オッドアイに踏みつけられるハメになりました。

 

 しかし、負かした相手を踏みつけるのは趣味悪いよ。……でも納得、コイツ性根腐ってるだろうしね! 

 

「てか、名前くらい教えてくれたって──」

 

「静粛に」

 

「えっ?」

 

 まだ戦っていると思うサキさんのところに向かったり現世に向かったりしないのが幸いだけど、いつ飽きたりして動くかわからないので、良い加減名前教えろと喚くなどして銀髪オッドアイをここに留めておこうと見苦しい抵抗をしていたところ。

 何かに気づいた銀髪オッドアイが突然僕に対して「静粛に」と呼びかけるという今までの無機質な言葉遣いとは違うことを言ってきました。

 

 コイツ会話できたのかよ!? と内心驚いて思わず「えっ?」なんで間抜けな声がこぼれてしまった直後──

 

「────ッ!?」

 

 突然銀髪オッドアイは僕の頭を蹴り付けてきて、ただの人間に戻っていた僕は当然それを避けることもできず、目の前がブレて次の瞬間には視界が真っ暗になり意識を失ってしまいました。

 

 




前哨戦のオリ主VS銀髪オッドアイはここまでになります。
次は寮を壊され部下と管理人を痛めつけられてプッツン来ている夜雲さんVS銀髪オッドアイになります。
前座を片付けた2人の組長も合流し、組長と八雷神の本格的な戦いになる予定です。







……因みにナレルは回復要員なので今回の銀髪オッドアイとの戦闘には参加していません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。