異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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39話

 

 八雷神という新たな脅威に対抗するべく、魔防隊の戦力強化を目的とした他の組との合同訓練。

 それに出るため夜雲さんたちが寮を留守にする間、この五番組の担当区域の魔都災害の対応を代行するために十番組より派遣されてきた魔防隊の隊員、伏見さん。

 しかしこの伏見さん、実はあの銀髪オッドアイの仲間の1人であり、魔防隊の敵である八雷神の1人、“晶伏”が正体でした。

 どうやって魔防隊に潜伏していたのかは不明ですが、夜雲さんたちが不在の隙をついて正体を現し、僕を捕まえるために襲撃を仕掛けてきました。

 

 何で魔防隊員ではなく、魔都の桃も食べてない、八雷神からすればなんの脅威にもならなさそうな寮の管理人でしかない僕を狙ってきたのか。

 理由は銀髪オッドアイが執着していたからとのこと。

 それで興味を持って、捕まえて仲間への戦利品にするために襲ってきたのです。

 

 つまり晶伏に狙われたのは全部あの銀髪オッドアイが原因でした。

 本当にろくな事してくれないなあの野郎! 

 恨み言を撒き散らしたいところだけど、今はそれどころではないのであいつへの恨み言を吐き出すのは後回しにします。

 

 ブラントに夜雲さんへのSOSをお願いして、助けが来てくれるまで耐えるためにダークイレギュラーズにライドし晶伏と戦うことになったのですが。

 何とこの晶伏という八雷神、救世主として戦うためにあのクソガムに借りたクレイのユニットにライドしたりコールしたりする能力を持っており、僕の知らないユニットたちを展開してきたのです。

 異世界日本にはヴァンガードはなく、クレイの存在は一切知られていないはずなのに、何でこの晶伏という八雷神が媒介になるカードを持っていて、ディスティニーコンダクターの力が使えるのか。

 それは分からないけど、相手が使えるなら現実として受け止めるしかない。

 ……もしあのきしめん頭がこの晶伏に貸しているからというなら、あいつは是が非にもボッコボコにしなければいけなくなるけどね! 

 

 晶伏が展開しているリアガードは2体。こっちは3体。

 イエロー・ボルトに背後の変形ロボットを、アイシクル・レジスタントにロボットアームの少女を任せて、僕はエンブレム・マスターとともに敵のヴァンガード──ピンク髪の婦警さんのユニットにライドしている晶伏へ挑みます。

 

「エンブレム・マスター!」

『砕け散れ!』

 

 エンブレム・マスターに前衛を任せて、隙をつくために側面を狙いに行きます。

 僕が攻撃できる隙を作るため、エンブレム・マスターが右手の力を使ってエネルギーの塊を用いて晶伏の顔目掛けて攻撃を仕掛けるものの、やはり桃の力がなければ攻撃が通らない理不尽仕様は晶伏にもあり、派手な爆発を起こしたものの晶伏の顔は無傷でした。

 

「効かないね、そんなの!」

 

『くっ!』

「させるか!」

 

 逆にエンブレム・マスターの右手を掴み、お返しと言わんばかりに逃げられなくなったエンブレム・マスターへ銃を向ける晶伏。

 引き金を引く瞬間、させるかとその手を横から蹴り付けて射線を外し、エンブレム・マスターへの攻撃を阻止します。

 

「この!」

 

「おっと……!」

 

 攻撃は効かないので向こうはノーダメージだろうけど、弾き飛ばしたりすることならできることはあの銀髪オッドアイとの戦いで確認済み。

 攻撃は効かないから意識から完全に外して油断していた晶伏の手から拳銃が溢れ落ち、さらに驚いて力が緩んだ隙にエンブレム・マスターを捕まえている手にも踵落としをお見舞いして離させて、反撃が来る前にエンブレム・マスターを抱えて飛び上がって距離をとりました。

 

『すまん、マイヴァンガード』

 

「気にしないで」

 

 少し距離をとったところに着地して、エンブレム・マスターを下ろします。

 晶伏はダメージこそないものの蹴り飛ばされて銃をこぼした手を見ており、攻撃は効かないけど弾かれるくらいはすることを認識しているみたいで、追撃はしてきませんでした。

 

「あらら……流石に、全く効かないなんて都合よくはいかないか」

 

 攻撃は効かないけど、衝撃は伝わる。

 それを受けて流石に油断しすぎたと判断したようで、グレード3のユニットを使うために新しいカードを手に取ります。

 

『警戒しろ、マイヴァンガード』

 

「分かってる」

 

「じゃあ、僕もライドさせてもらおうかな──“極光戦姫 セラス・ホワイト”にライド!」

 

 グレード3のユニットへのライド。

 ライトの時に発生する光に包まれ、一瞬の後にピンク髪の婦警さんのような姿をしていた晶伏は、アイシクル・レジスタントが抑えてくれている方の少女のものよりも遥かに大きなロボットアームを背中から伸ばすおそらくヒューマンの、やはり僕は知らないけどクレイの住人であることはわかるユニットに姿を変えました。

 

『グレード3……向こうも本気か』

 

「張り合う必要ない。どうせこっちの攻撃は通らないから、時間を稼ぐことに徹して」

 

『了解だ』

 

 ゴツいロボットアームには、指の代わりに砲身が3つ。

 さらに手持ちの武器なのか、手首ではなく腰にかけるために作られたような輪が大きい手錠もあります。……うん、やはり手錠って呼ぶサイズじゃない。

 

 物騒な装備を持つユニット──セラス・ホワイトにライドした晶伏は、いかにも悪巧みしていそうな笑みを口元に浮かべると、牽制にロボットアームから砲撃してきました。

 

「────ッ!」

『小癪なぁ!』

 

 怯ませるための大雑把な狙いでばら撒くように数を撃ってくる攻撃。

 それを僕は空に飛び上がって回避し、エンブレム・マスターは右手の力を使いエネルギーの盾を作り出して防御。

 

 でも、これは見るからに牽制。殺気もほとんどない。

 次の攻撃が本命だと警戒する中、ロボットアームの砲撃をアイシクル・レジスタントの方にも向けてリアガードにコールしたこちらのユニットたちを足止めしている晶伏は、僕の方を見上げて大きな手錠を投げてきました。

 

 あの手錠には何かある。

 触るのが危険だと直感で判断した僕はその銀色の輪っかを回避します。

 

「……無駄だよ」

 

 しかし、投げられた輪っかは途中で軌道を変えて、正確に僕を追尾してきました。

 

「追いかけるのかよ!」

 

 さらに避けようとするも、それに合わせて巨大手錠もまた軌道を変えてきます。

 追尾機能があるという面倒くさい仕様の巨大手錠に文句を言いながら、捕まらないように飛んで逃げるも、巨大手錠は鎖を増やしながら伸ばして、まるで僕と紐でもつながっているかのように背中を狙って追尾してきました。

 

『マイヴァンガード!』

 

「僕は気にしなくていい! コール、プリズナー・ビースト! エンブレム・マスターと一緒にセラス・ホワイトを叩いて!」

 

 晶伏からの砲撃を防ぐために動けないエンブレム・マスターに、僕のことは気にしなくていいから相手のヴァンガードを叩くように指示を出し、援護のためにプリズナー・ビーストをコールします。

 

『──了解した! 行くぞ、プリズナー・ビースト!』

『グオオォォォォォ!!』

 

「おっと、君たちの相手もちゃんと用意してあげるから。コール、アラート・ガードガンナー、セキュリティ・パトローラー! そいつらの相手よろしくね」

 

 しかしユニットを展開できるのは向こうも同じ。

 コールによって新たにロボットのユニットを2体展開して、エンブレム・マスターとプリズナー・ビーストに当てます。

 

『くっ!』

 

 エンブレム・マスターたちは足止めを受け、晶伏に近づけません。

 そのエンブレム・マスターへ、ガンダムみたいなビームライフルを持つユニット──アラート・ガードガンナーがビームを撃ってきました。

 

『その程度!』

 

 エンブレム・マスターは砲撃を防いだ時と同じように、エネルギーのバリアを張り防ごうとします。

 しかしビームがバリアに当たった直後、ビームはバリアに弾かれて散った──かと思いきや、一瞬のうちに光線からワイヤーに変わりバリアを避けてエンブレム・マスターに絡みつき身動きできなくしてしまいました。

 

『何だと!?』

 

 驚くエンブレム・マスター。

 その横でビームがワイヤーに変わった瞬間身の危険を感じて距離をとったプリズナー・ビーストの背後から、イエロー・ボルトが抑えていたはずのトランスフォームするロボットが接近してきてプリズナー・ビーストを捕まえました。

 

「スキあり、確保!」

 

『グアアァァァ!?』

 

 プリズナー・ビーストは新たにコールされたユニットには警戒していたものの、背後から接近してきたトランスフォームするロボットの存在には気づけず、背中を取られてしまい巨大な鉄の腕に捕まってしまいます。

 

 捕まったけど、撃破されたわけじゃない。

 巨大手錠に追いかけられながらも、助けるために新たなユニットをコールしようとしたのですが──

 

「今助けを──」

 

「監獄送りだ、銀河を荒らす犯罪者ども!」

 

「なっ──!?」

 

 次の瞬間、助けになるユニットをコールする前にプリズナー・ビーストとエンブレム・マスターはどこからともなく現れた鉄柵扉の牢獄みたいな箱に閉じ込められ、そのまま箱ごと姿を消してしまいました。

 

呪縛(ロック)された……!? いや、違う。僕の知らないあのユニットたちの能力か──!」

 

 退却したわけじゃない。コールしたユニットがやられた時に感じる繋がりが遮断されるような感覚がなかったので、エンブレム・マスターとプリズナー・ビーストはやられたわけじゃない。

 やられていないけど2体のリアガードの枠は空いているので、リンクジョーカーのユニットが持つユニットどころかリアガードの枠そのものを使えなくする特殊な能力である呪縛というものとも違います。

 

 多分、イエロー・ボルトもこれにやられたのだと思います。退却したわけでないのにいつの間にか姿が見えなくなっている──やられたことに気づかなかったのが、トランスフォームするロボットを自由にさせる結果になってしまいました。

 おそらく、晶伏が使っているあの僕が知らないユニットたちの扱う特殊な能力なのだろうと見て、アイシクル・レジスタントへ警戒するように伝えます。

 

「一旦下がって! そいつら、リアガードを退却させずに除去する力がある!」

 

『ここを退くわけには──』

 

「確保ォ!」

 

『しまっ──!?』

 

 しかしアイシクル・レジスタントはここでロボットアーム少女まで自由にさせるわけにはいかないと踏みとどまり、そこに横槍を入れてきたもう1体の白いロボットがまた同じような能力を使って鉄柵の箱に閉じ込めてしまいました。

 

「……時間稼ぎって言ったよね!?」

 

 なんか、あっという間にぼっちにされたんですけど!? 

 しかもまだ僕の方は手錠と追いかけっこしている最中だし。

 多分この輪っかにもあの鉄柵の箱にユニットを閉じ込めるの類の力があると思わるので、僕まで捕まるわけにはいきません。

 

「確か、七番組寮はこっちの方に──」

 

 できることなら僕もライドしたいところだけど、ライドしたところでダメージを与えられないので晶伏を倒せるわけじゃないし、かと言って逃げるだけでは夜雲さんが到着する前に全員がよってたかってきて巨大手錠に追いつかれる可能性が高いです。

 ならばと、逃げるなら少しでも早く夜雲さんと合流できるように逃げた方がいいと判断し、ブラントを残すので心配ですがバレてないことを願いながら、五番組が合同訓練に向かったという七番組の領域の方に向いて飛んでいくことにしました。

 

「逃がさないよ?」

 

 寮を捨てて逃げる僕を見て、逃さないと晶伏も追撃を仕掛けてきます。

 ロボットアームにある機能なのか、2人の極光戦姫は空を飛べるらしく飛行して、ロボット組は各々地上を走って追撃してきました。

 

 六番組の方が近いけど、こちらも合同訓練で組長不在。五番組と同じく代理の人員が来ているかもしれないけど、八雷神は組長じゃなきゃ勝てない強敵であることは聞いているので、僕が連れてきたせいでやられたなんてことになったらマズイです。

 せっかく空を飛んで逃げることができるユニットにライドしているので、ここは機動力を活かして夜雲さんもいる七番組寮を目指す方がいいです。

 ブラントからのSOSを受けた夜雲さんが飛んできているとすれば、道中で合流できる可能性もあるし。

 

「逃げるなんて情けなくないかな?」

 

「じゃあ追いかければいいじゃん! どこまでも逃げますよーだ!」

 

「じゃあどこまでも追いかけてあげる♪」

 

「結構です! むしろ帰ってください!」

 

 逃げるのだって立派な戦略なんですよ! 情けなくてもみっともなくても他力本願でも、最後に勝てばそれでヨシ! 1番カッコ悪いのは逃げることじゃなくて負けることだって、死んで何も守れなくなることだって、こちとら宇宙の彼方で散々思い知らされてきたんだから! 

 

 こうして僕は晶伏と幼稚な言い争いをしながら、空の逃避行に挑むことになりました。

 

「ふふっ……捕まえた♡」

 

 ──晶伏が伏見さんとして潜伏している間に仕掛けた罠に気付かぬままに。




オリキャラ(八雷神)

晶伏(しょうふく)
八雷神の伏雷神担当。伏摩の代役。十番組の魔防隊員に扮して潜入していた八雷神の一角。一人称がミナトと同じく『僕』であり、彼女がディスティニーコンダクターに借りた救世主のものと類似するクレイのユニットにライドしたり、コールしたりする能力を有する。さらに最大で6体まで分裂しそれぞれ異なるクランにライドしクレイのユニットを展開することが可能。美羅の分身能力とは異なり、全てが本体であり分体、分裂元を撃破しようと最後の1体が自動的に本体になる、分身というより増殖に近い。
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