異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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夜雲さん&優希(鳳翼)VS晶伏(ジ・エンド)&ネハーレンの続きになります。


42話

 

「これは凌げるかな?」

 

 銃口を夜雲を乗せる優希に向ける晶伏。

 

「────ッ!」

 

 それに対して、優希は晶伏が引き金を引くより前に、銃口を向けられた瞬間すぐに飛び出した。

 

 先手必勝と言わんばかりの突撃。

 下手に回避するとネハーレンの横槍が入る可能性が高いため、晶伏が銃撃をする前に射線上を突き進むのを承知の上で、だからこそネハーレンの横槍が入らない最短距離で間合いを詰める。

 

 数発の被弾は覚悟の上で突っ込んできた優希に、晶伏は構えた銃を発射せず即座に持ち替えて両手を前に交差しながら突撃してきた優希の攻撃を受ける盾にした。

 

 優希の突撃は防がれた。

 しかし優希は1人ではない。首輪を繋ぐ鎖を握る主人がいる。

 間髪入れずに優希の背に乗る夜雲が、巻き込む敵を切り刻む旋風を晶伏へ飛ばした。

 

 頭を狙って飛んできた旋風。

 優希が突撃を仕掛けた時にはそれを読んでいたかのように、晶伏は銃を持つ方とは反対の手に持つ剣でその旋風を防ぐ。

 

 そしてその瞬間、晶伏は両手を防御に用いて、さらに頭を狙う旋風を剣で防いだことで自らの視界を一瞬だが塞いでしまう。

 

(今だ──!)

 

 狙っていたその瞬間を、2人は逃さなかった。

 

 優希は足に力を集中し、夜雲は巻き込む敵を刻む旋風に自ら飛び込み、晶伏の胸部と手首に蹴りを叩き込んだ。

 

 銃の被弾を恐れない突撃、そして奴隷と主人の連携による三段攻撃。

 防御に回った晶伏は二段までその攻撃を阻んだが、三段目の攻撃は防ぎきれずまともに受けてしまう。

 

「銃を構える相手目掛けて突撃、鎌鼬吹き荒れる旋風に乗って突撃とか、やること大胆だね。そしていい連携だ」

 

 そしてその攻撃を受けた晶伏は、傷つくどころかたじろぎひとつせず、2人の連携を評価するような余裕を見せており、全く効いている様子がなかった。

 

(さっきより遥かに硬い……第二形態は見てくれだけじゃないってわけね!)

 

 オーバーロードだった時と比べ、ジ・エンドにライドしている晶伏の外殻は遥かに強靭になっている。

 それこそ最初の突撃の時点で銃や剣を使ってわざわざ防御する必要などなかっただろうほど。

 

「くっ──!」

 

 攻撃が効いていない事を受け、優希はすぐさま夜雲を乗せながら晶伏の視界より逃れるようにその場を離れる。

 真後ろに飛べば銃の餌食に、中途半端に間合いを取れば剣の餌食になるためである。

 

「捉えた──!」

 

「やばっ──」

 

 晶伏の視界から外れることはできたが、しかしそれを狙っていたネハーレンが優希の飛んだ方向に先回りしており、槍を突き出してきた。

 

「させないよ!」

 

「ぐっ──!」

 

 気づいた時にはネハーレンの突き出す槍は優希を捉えている、躱すことはできない。

 だが、優希は1人ではない。一時的な貸し出しとはいえ、頼りになる魔防隊の組長が背中にいる。

 

 優希を狙って槍を突き出してきたネハーレンだが、夜雲が飛ばした風に腕と騎竜を切り付けられ、槍の軌道が変わり優希の脚を掠めるだけに終わる。

 

 夜雲が守らなければ肩か、或いは胸部を貫かれていただろう。

 難を逃れた優希は、晶伏の背後に回り込むようにネハーレンを抜けていった。

 

「すみません!」

 

「フォローするから! ほら、集中!」

 

「はい!」

 

 抜かれたネハーレンの方からドラゴンが苦し紛れに火球を吐くも、その時にはすでに優希たちは晶伏の背中に狙いを定めて飛び出しており、火球は空を切るのみ。

 

(胸がダメなら、背中はどうだ──!)

 

 夜雲の風を背中に受けて急加速した優希は、晶伏の背中に渾身の体当たりを仕掛ける。

 

「────ッ!」

 

 しかし、それでも頑強なジ・エンドの外皮にはまるで歯が立たず、逆に優希の方が弾き返されてしまった。

 

「大丈夫!?」

 

「まだいけます!」

 

 弾かれてもすかさず夜雲が風で立て直すのを援護する。

 直後にネハーレンが槍を手に突撃してきたが、夜雲の援護ですぐに体制を立て直すことができた優希は上に向かって飛んだことにより回避に成功した。

 

「何だと!?」

 

 弾かれ崩れた状態では回避できまいと踏んで振るった槍が躱されたことにネハーレンが驚く。

 それを一瞬だけ見てから、すぐに振り向いたジ・エンドの頭部めがけて、見つかる前に急降下する。

 

「夜雲さん!」

 

「おまかせ!」

 

 殴っても体当たりでも砕けないなら、表面を刻んで削る。

 夜雲が起こす巻き込む敵を切り刻む鎌鼬が舞う竜巻を纏い、優希は晶伏の顔に上から突撃を仕掛けて──

 

「がぶりんちょ!」

 

「ぐっ──!?」

 

 風の刃を歯牙にも掛けないジ・エンドに翼を噛みつかれて捕まった。

 

「奴隷ちゃん! 待ってて、すぐに助けるから!」

「翼です、見た目ほどダメージは──」

 

 頭上からの奇襲、まだ見つかってなかったはず。

 しかし晶伏は視界から外れていたはずの優希の位置を正確に把握しており、攻撃のタイミングに完璧に合わせて躱しカウンターで噛み付いてきた。

 

 幸い、噛みつかれたのは翼の部分。

 鳳翼の最大の利点である飛行能力に欠かせない部位のため損傷すれば機動力を大きく削がれてしまうが、一方で傷を受けても痛みや出血などダメージは少なくて済む部位でもあり、見た目ほど痛くはない。

 

 だが、捕まった状態には変わりない。

 夜雲を心配させまいとする優希だが、その言葉を遮るように晶伏は噛みついた状態で優希を振り回した。

 

「あっ、これまずい──」

 

「夜雲さん!」

 

 翼を拘束するジ・エンドを攻撃し優希を助けようとした夜雲だが、突然発生した遠心力に鎖から手が離れ優希から落下する。

 

「乱暴だな、夜雲さんじゃなきゃ地面に叩きつけられてるよ今のは。奴隷ちゃん待ってて、すぐに助けに行くから!」

 

 能力で起こした風ですぐに体制を立て直し優希を助けに行こうとするが、そこにネハーレンが立ち塞がる。

 

「主の邪魔は──」

 

「邪魔!」

 

「なんとおおぉぉぉ!?」

 

 しかし優希の元へ一直線に飛ぶ夜雲が、邪魔だと片手間で起こした強烈な突風に吹き飛ばされて墜落、足止めに失敗する。

 ネハーレンを吹き飛ばした夜雲はそのまま優希の元へ駆けつけ──

 

「お待たせ奴隷ちゃん──」

「ダメです、罠──」

 

 夜雲が来る瞬間を狙っていた晶伏が、優希を離す。

 直後、晶伏の狙いを察した優希が夜雲を守ろうとジ・エンドと夜雲の間に残っている翼と両手を広げたところへ、避けようがない至近距離から黙示録の炎が襲いかかった。

 

「ぐあああぁぁぁ!?」

 

「奴隷ちゃん!」

 

「燃えろ燃えろ、あはははは!」

 

 どちらにせよ、捕まっていた優希は黙示録の炎で焼かれていた。

 ならば噛みつかれた時点で即座に翼を切って離脱するべきだった。

 結果論だが、致命傷にはならない末端の器官である翼を切り落としても、全身を焼かれるよりはマシだから。

 しかし夜雲は流石に致命傷を避けるためとはいえ優希を傷つける選択をすることを躊躇ってしまった。

 

 だが、一瞬の判断ミスは戦場では命取りとなる。

 咄嗟に夜雲が優希を守ろうとするも、吐き出された黙示録の炎は風の防壁を一瞬で散らし優希の体を突破、夜雲も巻き込み2人を包み込んだ。

 

 火だるまになって落ちる優希たち。

 そこに晶伏は銃を向け、容赦ない追撃を撃ち込む。

 

「ほらほら“奴隷ちゃん”、頑張って♪」

 

「ぐっ──!」

 

 炎に包まれながらも優希は何とかその銃撃から逃げるために立て直そうとするも、銃弾は翼や脚を貫き、夜雲の体も何発か掠めて傷をつける。

 

「待ってて、奴隷ちゃん……こんな炎、すぐに消すから……!」

 

「夜雲さん、ダメです……俺の体に隠れて……!」

 

「そんなの出来ないよ! 夜雲さんは、組長なんだから……!」

 

 炎をなんとか消そうと、銃弾が掠めるのも厭わず風を起こし黙示録の炎を散らそうとする夜雲だが、ジ・エンドの放つ炎は風で散らすことができるほど生やさしいものではない。

 風を突破し優希の体を貫く銃弾も、それによって穿たれた穴に炎を呼び込み優希の身体をより深く燃やしていく。

 それでも優希は片方が欠けた翼で夜雲を守ろうと懸命に飛び続けているが、無理をしているのは明白であり夜雲から見ても長くは持たないのはわかった。

 

(夜雲さんの風じゃこの炎は消せない、このまま焼かれて飛び回っていてもあいつの的になるだけ、それに炎も銃弾もほとんど受けてくれてる奴隷ちゃんが持たない……迷ってる暇はない!)

 

 だからこそ、もう迷うわけにはいかない。

 夜雲は炎を消すために起こしている風を収めて、優希を落ち着かせるように顔に手を伸ばして、この窮地を脱するための方法を伝える。

 

「夜雲さん……?」

 

「奴隷ちゃん、落ち着いて聞いて。このままじゃ奴隷ちゃんが持たない。だから、夜雲さんを信じて飛ぶのをやめて」

 

「……はい!」

 

「よしよし、いい子!」

 

 必要なことを伝えた夜雲。

 そしてその指示を受け、迷うことなく従い飛ぶのをやめる優希。

 

「一か八かだけど、こういうときの運は持ってるから!」

 

 炎を消さなければ、戦いにならない。

 風では消せない黙示録の炎を消すため、夜雲は賭けに出る。

 一歩間違えれば死。炎を消せず失敗しても死。

 確率は低いが、こういうときの強運は持っている。夜雲は己に言い聞かせて落下する先の地面めがけてより加速するように追い風を吹かせた。

 

「おやおや、ヤケクソかな?」

 

 火だるまになって落ちていく2人の姿に、晶伏は嘲笑する。

 自殺を選んだと解釈し己が手を下すまでもないと判断したのか、銃撃の手を止め、岩に激突して伸びているネハーレンを尻尾で回収し、落下の結末を観戦することにした。

 

「くうぅぅ……!」

 

 自殺行為としか思えない、落下を加速させるという選択。

 その理由もまともに説明されていないが、炎で体を焼かれながらも落下速度を制御し続ける夜雲の姿に、優希は彼女に全てを託し身を任せる。

 

 そして2人は加速して地面に激突。

 その際に発生する衝撃波で火を吹き飛ばし、風だけでは消化できなかった黙示録の炎を消すことに成功した。

 

「……ハハハッ! イカれてるよ君たちは!」

 

 一歩間違えれば、炎を消せても衝撃で死亡。

 生還しても、衝撃の威力が足りなければ黙示録の炎を消しきれず焼死。

 炎を消し奇跡的に生還したとしても、いくら桃の恩恵を得た肉体でも大怪我は必至。戦闘など続けられなくなる。

 

 そんなイかれた博打に挑み、そして成功させ落下地点でお互い起き上がることすらやっとの状態になりながらも生き残った2人の姿に、晶伏は笑うしかなかった。

 

「まだ行ける……?」

「勿論です……!」

 

 満身創痍。

 優希も夜雲も、ジ・エンドにライドしている晶伏は当然ながら、ネハーレンと戦うことすらも困難なほどにボロボロである。

 とくに炎と銃弾を夜雲より多く受け、最後の落下の際も夜雲を庇った優希の方は、もはや自力では立てず、夜雲に支えてもらいながらやっとのことで起き上がっている有様である。

 

 それでもまだやれると、2人は晶伏を見上げる。

 まだ倒れていない、まだ戦えると。今にも倒れそうな状態で、それでも起き上がり、対峙する。

 

 もはや戦える状態ではないことなど、晶伏から見ても明らか。

 放置して離脱しようとも、京香とミナトの元へ向かおうとも、この2人は追うことすらできないだろう。

 

 そもそもこの2人と交戦したのは追撃を振り切るためであり、追撃困難な状態に追い込んだ時点でこれ以上戦う理由はない。

 とはいえ、魔防隊の最強戦力である組長1人。今ならば確実に仕留められる状況であり、ここでトドメをさしておくというのも一理ある。抵抗は予想されるが、所詮は死にかけの反抗でありジ・エンドの前にはせいぜい掠り傷の一つ二つが限界だろう。

 

 放置するべきか、トドメをさすべきか。

 晶伏が思案していたところに、七番組の組長の相手をさせるために用意していたはずの双頭のドラゴンがやってきた。

 

「敵の新手!?」

「待って奴隷ちゃん、あのドラゴンの後ろから誰か来てる──」

 

 新たな敵の到来。

 双頭のドラゴンが接近する姿を見た2人だが、同時にその後ろから来る人の姿も見えた。

 

「あれは──」

 

「優希、夜雲! 無事か、2人とも!」

 

「京香さん!」

「やっほー、京香! ナイスなタイミング!」

 

 それは、この絶望的な状況において2人にとって誰よりも頼もしい援軍の到来。

 

 魔防隊七番組組長、羽前京香が到着した。

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