異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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7話

 

「──なるほどなるほど。つまり、ミナトちゃんは気がついたらいつの間にか魔都に立っていたわけだ。うーん、典型的なクナドに取り込まれたパターンだね」

 

「そうですね。突発的に発生するクナドから迷い込むのは、魔都災害で最も多い事例です」

 

 あの後、僕は夜雲さんとカイコさんに魔都に遭難した経緯について訊かれた。

 とは言っても、きしめん頭に異世界日本に送り込まれたらその先が魔都でした、なんて馬鹿正直に話すわけにもいかないので、気がついたらいつの間にか迷い込んでいたということにしました。

 

 疑われるかもと思ったけど、どうやらこの異世界日本だと突発的に魔都と現世をつなぐ門であるクナドというものが発生することがあるらしく、それに取り込まれるなどして魔都に人が迷い込んでしまう事例が発生することがあるという。

 むしろ魔都関係で発生する災害である魔都災害の事例では1番多いパターンだとのことで、この突発的に発生するクナドによって取り込まれ行方不明となる人が後を経たないのだという。

 数年前に自然発生するクナドを観測できる手段を獲得してからは犠牲者が減少しているというが、それでも今なお年間100人以上の人が魔都災害によって命を落としたり行方不明になったりするらしい。

 

「あの辺でクナドは観測できていませんでした。まだ精度が不十分ということ、報告し対策を講じていただく必要がありますね」

 

「いやぁ、君を見つけたのは巡回中の偶然なんだよ! 間に合って良かった、うん!」

 

 そして、僕が見つかった近くでクナドは観測されなかったという。

 しかしクナドの突発的な発生全てを観測できているわけではなく、今も間に合わない被災者が出ているとのことで、その辺は疑われなかった。

 

 ……まあ、僕の場合はクソガムさんに宇宙の果ての星から飛ばされてあの場所にいたのだから。しかも別世界の。

 クナドとかいうものが観測できなかったというけど、実際はそれが正しいから余計な苦労をかけてしまうのが申し訳ないです。

 そして、あの辺を巡回していた夜雲さんが偶然見つけてくれたことで助かったというので、本当に感謝してもし足りないです。後少し遅かったらと思うと、考えたくない……。

 

 魔都にいた件はうまく誤魔化せたみたい。

 後は桃の窃盗を企む他国の工作員とかテロリストと疑われることなくうまいこと現世側に送ってもらい、異母兄の設定のマスカレードを密かにコールして迎えに来てもらうだけだけど……。

 

「ミナトちゃんは高校生だよね。お家どこかな? ご家族の人に連絡取れる?」

 

 僕の荷物から見つけた免許証を見て名前を確認したため、名乗ってもいないのに僕の名前を知っている夜雲さんは、魔都の遭難に関する経緯を確認した後、僕の住所と家族について尋ねて来た。

 

 正直に言うと、ないです。

 そりゃそうだ。だって僕この異世界日本に戸籍すらないんだから。

 家なし、戸籍なし、家族なしの未成年ってバレる前に、マスカレードに迎えに来てもらわなければ。

 

 などでここは曖昧に答えて、煙に巻きます。

 

「札幌です。両親はまだ仕事中だと思うのですが、同居している兄がいるはずなので……」

 

 細かい住所は言いません。

 だってバレるから。

 

 まあ、免許証見て詳しく調べられるとバレるから意味ないけどね! 

 僕の住所は札幌なので嘘はついていませんが、あくまで本来の僕の生きる世界の日本での住所なので細かく調べられると嘘だとバレると思います。

 

「お兄さんいるんだ! 夜雲さんのところは妹ばっかりだから、お兄さんってどんな感じなのか知らないんだよね。ねえねえ、どんな感じなのかな!?」

 

 すると夜雲さんは兄がいると言う僕の嘘に──本当の兄もいるから厳密には嘘ではないのだけど──食いついて来た。

 ずずいと距離を詰められ、思わず身を引く。

 

「どんな感じ? あれかな、執事って感じ? ご飯作って待ってくれるとか──」

 

「ち、近いです!」

 

「組長、少し落ち着きなさいな」

 

 この人絶対陽キャだよね!? 

 ほぼほぼ初対面にも関わらず、ベッドの上に乗って詰めてくる遠慮や壁を一切作ろうとしない距離の詰め方に、思わず驚く。

 カイコさんが引き剥がしてくれたけど、急に距離を詰められたことにビックリして心臓バクバクいってます。

 夜雲さん綺麗な人だからドキドキしたのもあるけど、それ以上にビックリしたと言うのが強いバクバクです。恩人に向けるべき感情ではないけど、正直なところちょっと怖かった……。

 

 そして夜雲さんの言葉を聞いて、マスカレードがスーツの上にエプロンを着けてフライパンとターナーを手に「おかえりなさい」と言ってくれる光景が頭に浮かんだ。

 ……なにこれ、すっごい楽しそう。

 

『マイヴァンガード、ご命令とあれば給仕もいたしますが』

 

(うん、ぜひ──って、いや別にいいよそんなことしなくても!)

 

 ポケットにしまっているマスカレードが僕の心情を読み取り、思わず頷きたくなる提案をしてくれたけど、流石にそんなこと楽しんでいる余裕はないことくらいわかっているので理性を働かせて却下します。

 ……ひょっとして、マスカレードってちょっと天然なの? 

 

 一方、カイコさんによって引き戻された夜雲さんは、椅子を跨ぐように反対に座って背もたれに寄りかかり上で両手を組む形でだいぶお行儀悪い形で座りながら、話を続ける。

 

「免許証も見た感じ本物だし、桃泥棒とも違うっぽいね。あ、そうそう免許証だけど勝手に見ちゃった、ゴメンね!」

 

「あ、いえ、それは大丈夫です」

 

「札幌なら向こうの門が近いかな。そうそう、この五番組の寮にあるクナドだけど現世側は山形県に繋がっているんだよ。そうだ、今度ミナトちゃん家に行っていい? いっそ夜雲さんが風で送ってあげちゃおうか? お兄さんに会ってみたいな〜!」

 

「うっ……! そ、それは……」

 

 魔防隊五番組寮──今保護してもらっているこの施設だけど、ここにある現世と繋がっているクナドは山形県に繋がっているとのこと。

 北海道につながっているクナドもあるとのことで、そちらを使用し札幌に送ってもらえることになりました。

 そこまでは良かったのだけど、近いからと夜雲さんが家に来ると言い出した時には焦りました。

 来られたらその場で嘘がバレちゃうから! 

 

「あ、兄に連絡取れるようにしていただければ迎えに来てくれますから! 大丈夫です! 流石にこれ以上ご迷惑をおかけすることはできないです!」

 

「え〜、遠慮しなくてもいいのに。夜雲さんの風ならあっという間だよ? むしろ風になってもらうのも夜雲さん的にはアリかな!」

 

「そこまでにして下さい」

 

「あいたッ」

 

 やんわり断ろうとしてもズイズイくる夜雲さんにたじろいでいたら、みかねたカイコさんがバインダーで夜雲さんの後頭部を叩いて止めてくれた。

 なんだろう、親娘かな? 

 

「怪我も大丈夫そうだし、ご家族の方が迎えに来てくれるなら早く帰って安心させてあげるのが一番ね。組長、彼女は私が現世に送ります」

 

「え〜! こんな可愛い子を前にお預けなんて──」

 

「民間人へのセクハラは流石に見過ごせません。りうさんと総組長、どちらに報告いたしましょうか?」

 

「あははは! 夜雲さんお仕事残っているの思い出しちゃった! じゃあ、後はシクヨロ!」

 

 カイコさんが助け舟を出してくれたおかげで、夜雲さんは引き下がってくれた。

 本当に家に押しかける勢いだったら助かりました。悪意がないため、強く断ることもできず、かなり危うかった……。

 

「あ、ありがとうございます。えっと……カイコさん」

 

「いいえ、こちらこそ組長がごめんなさいね。それじゃあ案内してあげる」

 

「はい!」

 

 夜雲さんを手玉に取って追い払ってくれたカイコさんに案内され、現世側に繋がる門へと案内してもらう。

 

現世側(向こう)に出れば電波も繋がるはずだから」

 

「はい、何から何まで本当にありがとうございます!」

 

 そして、魔防隊が管理している北海道とつながるクナドを通り、現世──異世界日本の地に降り立った。

 

 時刻は20時過ぎ。まだ街中は灯りがある時間帯であり、空は暗いが寝静まっているほどではない。

 

 ここまで見送ってくれたカイコさんの目を盗み、マスカレードをこっそりと少し離れた場所にコールし、スマホを起動して電話をかけるふりをする。

 異世界日本ということもあり圏外も覚悟していたけど、問題なく電波は受け付けてくれているみたい。

 

(10分くらいしたら来て)

 

『承知しましたマイヴァンガード』

 

 マスカレードに指示を送り、少し時間をおいて来てもらう。

 10分後、左目に縦傷が走る銀髪に黒スーツ姿という、街中を歩けば確実に職質を受けるだろう姿のマスカレードが登場した。

 

「兄さん!」

 

 兄妹っぽく、街行く人々があからさまに避けるマスカレードを見つけるなりかけ寄り飛びつく。

 それをしっかりと受け止めてくれるマフィア──マスカレード。

 外見は確かに怖いかもしれないけど、闇堕ち騎士とはいえその中身が紳士であることを知っているので、こうして飛びつくのに抵抗はない。しっかり受け止めてくれることもわかってますから。

 

「……彼が、お兄さん?」

 

 人間なんぞヤクザだろうがちっぽけな相手に見えるだろう醜鬼と戦う日々を過ごす魔防隊員であるカイコさんも、見るからにマフィアというか殺し屋みたいな姿で、血のつながった兄妹とは思えない外見をしているマスカレードには疑いの眼差しをむけている。

 

 そんなカイコさんに、マスカレードは落ち着いた様子で僕の頭を撫でながら応対してくれた。

 

「妹がお世話になりました。初めまして、ミナトの異母兄のレドと申します」

 

「レドさん、ですか。私は魔防隊五番組副組長、五木カイコと申します」

 

「この度は妹を助けていただきありがとうございます。……この子は父の再婚相手の娘でして。片親が違うのでこの通り外見が兄妹には見えないかと思いますが、私にとっては紛れもなく愛しい家族です。帰りが遅くなったので何らかの事件に巻き込まれたのかと思い気が気でなかった……」

 

「ああ、異母兄妹ということですか……失礼しました。良かったね、ミナトちゃん」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

 マスカレードの完璧な説明と演技に、カイコさんも納得してくれた様子。

 さすが無常の騎士。あの気難しいブラスター・ダークの相棒、頼りになるわ。

 

 ご家族の方が来てくれたなら心配ないと、無事に帰してもらえることになった。

 

 

 

 

 カイコさんと別れて、マスカレードと夜道を歩く。

 絵面を見ると時間帯もあって犯罪の匂いがする光景だけど、そんなことよりも深刻な事態が発生している。

 

「でも、僕いま宿無しの身なんだよね……」

 

『カプセルホテルかネットカフェでひとまず夜を過ごしましょう。スマホが使えるならば、近場の宿泊施設を検索可能では?』

 

「お金足りるかな……」

 

『いざとなれば金策には我々を使っていただければ──』

 

「いや、流石にそれは悪いから! そこは僕がなんとかするから!」

 

 宿無しの身なので、まずは今夜を凌ぐ宿を探して、そこでユニットや盟友と今後のことについて相談することに。

 とはいえ僕の所持金はあまり無いので、宿を確保してもその後の金策を考えないといけない。食費も足りなくなるだろうし。

 

 とりあえずマスカレードの提案を採用して、スマホで近場の宿泊可能な施設を検索してみることにした。

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