異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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ミナトのコールですが、無力な霊体に限りなく近い状態(クレイにおけるライド前のプレイヤーに近い状態)としてならば、ライドしていない状態でもグレードに関係なくユニットをコールできます。
この場合にコールされたユニットは本当に無力なので、一般人との喧嘩になっても負けるほど弱いですが。


8話

 

 魔防隊に保護され、魔都から異世界日本に出た後、この異世界日本には身よりもなければ家もない宿無しの身となった僕は、ひとまず適当なネットカフェを見つけて一晩泊まることにした。

 

「やっと、休める……」

 

 いきなり遥か彼方の遠い星に召喚され、きしめん頭に依頼されクレイの仲間達の力を借りて邪教の組織との戦いに勝利し、ようやく元の世界に帰れると思った矢先のこと。帰還の際に、きしめん頭の手違いで落とされた異世界日本。

 その異世界日本に存在する魔都と呼ばれる異空間に放り出され、今生の別となると思っていた盟友と予期せぬ再会を果たし、魔都に生息する怪物である醜鬼に襲われ、そして嵐のような魔防隊の組長さんに助けられた。

 

 平穏な日々に戻るかと思いきや、あの星で繰り広げた邪教との戦いと冒険の日々に匹敵する怒涛のような1日だった。

 

 おかげで疲れ果てていた僕は、一晩の仮宿とはいえようやくゆっくりと眠ることができる場所を確保できた安堵に諸手を挙げて降参し、パソコンの置かれた台の上に突っ伏した。

 

「疲れているのはわかるが、気を緩めすぎである」

 

 そんなだらしない僕の姿を見て、ブラントが毛布をかけながらため息をつく。

 確かに、あの星で戦っていた日々は大抵硬い地面や床の上に座りいつ敵に襲われてもいいように気を張り詰めながら浅い眠りで疲労を誤魔化すような日々で、そうでもしないと寝込みを奇襲されて即お陀仏だった。

 こんなふうにゆっくりだらけるなんて死にたいですと宣言していると同義だったので、その頃の知るブラントから見ると今の僕は本当にだらしがない休み方をしているのだろう。

 

 けれど、叱責しつつも疲れ果てていることを考慮して毛布をかけてくれる優しさを見せてくれるところが僕は好きです。ありがとう。

 

「ありがと、ブラント。……ブラントもこっちきて休もうよ」

 

「我を抱きしめて頬擦りするつもりであろう。断る」

 

「見透かされてた……」

 

 ついでに抱き枕にさせてと頼むが、見透かされた盟友にスルーされた。

 ぬいぐるみになったブラント、とっても抱き心地がよさそうだから欲しかったんだけど……本人が嫌がるなら無理強いはできない。残念。

 

「調べたいこと、山ほどあるけど……でも、ちょっと……今日は、流石に疲れた。もう、寝かせて……」

 

 僕も分かっている。

 本当はこんなところで寝ている暇なんてないって。

 この世界の日本じゃない、別世界から来た異世界人であることがバレる前に札幌から出て行かないといけないこと。

 宿を探さなきゃいけないこと。

 力を貸してくれたグランブルー海賊団のユニット達にお礼を言うこと。

 5年間を生き残るために、この異世界日本のことを調べなきゃいけないこと等々。

 やらなければいけないことはたくさんあるってことくらい。

 

 でも、今だけは。

 今夜だけは、もう疲れ果てたから眠らせてほしい。

 ゆっくりと、何事にも怯えることなく、深い眠りを味合わせてほしい。

 

「…………」

 

「……もう眠ってしまったか。よほど疲れが溜まっていたと見える」

 

 疲れから深い眠りについた僕の隣で、台に上がったぬいぐるみのブラントは、パソコンを開いた。

 

「異なる世界とはいえ、ここはポートちゃんにとって故郷の星。帰郷の安堵に身を委ね一晩眠りに逃避することには目を瞑ろう。その間に我は我のやり方でこの世界の情報を知るまでよ。今のままでは無知にすぎる故、な」

 

 魔都とは? 

 醜鬼とは? 

 桃とは? 

 桃による恩恵とは? 

 魔防隊とは? 

 

 日付が変わり、駅では終電も過ぎ、世間が寝静まった夜。

 1人の少女が泊まったネットカフェの一室では、夜通しパソコンの画面が光っていた。

 

 

 

 

 翌日。

 暗殺者とかの襲撃に悩まされることなく柔らかい布団の上で過ごしたことで、深い眠りについた僕が目を覚ましたのは、昼を回った頃だった。

 

「……おはようって時間じゃないよね、コレ。12時間くらい寝ていたとか、疲れていたとしても、我ながらだらしなさすぎる」

 

「もう目を覚ましたのか?」

 

 寝起きの第一声に時計を見て昼まで惰眠を貪っていたことを反省すると、リュックの隣でぬいぐるみに擬態しているようにしか見えない体勢で休んでいたブラントが起きたことに気づき立ち上がって近寄ってきた。

 

「まだ眠っていてもいいのではないか?」

 

「いや、流石に起きるよ。眠りすぎるのも良くないし」

 

 異世界日本とはいえ、現世側はほぼ安全。

 脅威となる邪教もいなければ、自衛以外に醜鬼と戦う理由もない。

 ましてどこぞの仕事の雑なクソガムさんのせいで、異世界日本の魔都側にいきなり飛ばされて醜鬼に襲われるという事態に遭遇したのだ。初日くらいは、帰還したばかりで惰眠を貪り疲れをとろうと咎める者もいないしいいのではないか? 

 なのでブラントはまだ眠っていてもいいのではないかと言ってくれたけど、それは怠惰にすぎるので起きます。

 

 きしめん頭は僕を故郷の日本に帰すまで、5年くらいかかるとあのふざけた手紙に書いていた。

 つまり、醜鬼だ魔都だという未知の危険がある異世界日本で5年くらい生活しなければいけないということ。

 また醜鬼に襲われたり、魔都に迷い込んだりする可能性はあるため、ちゃんと5体満足で家に帰るためにもこの異世界日本にある危険を調べなければいけない。

 

 幸というかなんというか、今回は醜鬼をどうにかしてくれとか、魔都をどうにかしてくれとか、あのきしめん頭に頼まれたわけではない。

 そういった危険に自ら首を突っ込む理由はないため、帰還の準備が整うまで大人しく過ごしていればいい。

 

 けれども、醜鬼などの魔都に関する脅威に晒されること──魔都災害というものに遭遇した時に自分の身を守るためにも、この異世界日本にある脅威というものを知っておく必要はあった。

 

 ……それから帰還までの5年を凌ぐための生活費を稼がないといけないので、働き口を探す必要もあった。あと住むところも。

 

「そう考えると、やることたくさんあるからね。休んでいる暇ないよ」

 

「……まったく、やはりか」

 

 これからの予定をブラントに伝える。

 すると、ブラントはやれやれというように首を横に振ると、パソコンの方に行き画面を見せる。

 そこには、多数の魔都や醜鬼に関する情報を記したページがいくつも開かれていた。

 

「盟友よ。我は今でこそ無力な存在だが、調べ物をする程度はできる。魔都と醜鬼については我が調べるゆえに、盟友は己の生活基盤を整えることを優先せよ」

 

「ブラント……」

 

「ポートちゃん。少しはクレイの者達(我ら)を頼りにせよ。何のための絆か」

 

「……ありがとう! 大好きだよ、盟友!」

 

 頼っていい。

 1人でこの世界に放り込まれたと思っていた僕にとって、ブラントとの予期せぬ再会はたとえ彼が無力なぬいぐるみになっていたとしても嬉しかった。

 

 というわけで、ネットカフェで醜鬼や魔都などについてはブラントに調べてもらい、僕は働き口を探すことにします。

 マスカレードは手伝ってくれると言ったけどクレイのみんなに頼るのは先導者として情けなさすぎるので、自分の食い扶持くらいは自分で稼ぎます。

 ……本当は学校行くべきなのかもしれないけど、異世界日本に戸籍も保護者もいない僕にそんなことできるわけないし。

 

 きしめん頭に召喚された先では邪教とのドンパチばかりでまともに働いた経験ないけど、召喚される前はバイトしてたし多分なんとかなるでしょ! 

 ……異世界召喚で半年もサボったから確実にクビになっていると思いますけどね。

 

「とりあえず未成年でも雇ってくれる場所を……おお、結構あるね」

 

 ファミレス、コンビニ、イベント会場のスタッフ、新聞配達、お菓子工場、運送会社の仕分け作業などなど。

 結構たくさんあるので、とりあえず未成年でも採用できるというところにあたってみることにします。

 異世界日本では学校に通ってないので、お金はなくても時間はありますからね。

 ……いや、それってニートじゃん。

 

 条件に関して魔都の桃を摂取済みかどうかというものがあったところは異世界日本だということを感じたけど、元の世界の日本との違いはそれくらいでした。

 

 日雇いのイベント会場のスタッフと、新聞配達、お菓子工場で採用してもらえました。

 イベント会場のスタッフと新聞配達は早速明日から、お菓子工場は明後日から入ります。

 働き口は確保できたので、当分は凌げる……はず。

 

 というわけで、異世界日本2日目。

 この日は魔都に巻き込まれると言ったこともなく、無事に働き口を確保してネットカフェに戻りました。

 新聞配達が朝早いので、今日は早めに休むことにします。

 

「うむ、我も引き続き調べよう。今日は目新しい情報はない。まずは戦いの疲れを取ることに専念するがいい」

 

 魔都などに関することを調べるのはブラントに任せて、まだ日が沈んだばかりの時間だけど、その日は眠りにつくことにしました。

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