異世界から帰還したら、変な化け物が闊歩する日本だったんですけど、これってどういうことですか!?   作:火星で1,000往復

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9話

 

 異世界日本生活3日目を迎えました。

 外はまだ暗い時間に起きて、早速新聞配達のバイトに行き、ネットカフェに戻ってきたところになります。

 新聞配達の方は初日なので社員の方に道を教えてもらいながらの配達になりしたが、明日からは早速1人で回ることになります。

 

 きしめん頭に飛ばされた異星では叩いても叩いてもそれこそ大流行するウイルスみたいに無尽蔵に湧いて増えて拡大していく邪教の組織相手に昼夜問わず24時間休みはなしで戦っていたのでそこまで大変ではなかったけど、あの世界での経験がなかったら慣れないとなかなか厳しい仕事だったと思います新聞配達。

 朝早いし、回らなきゃいけない場所は多いし、配る量は多いし、時間は限られているし、道は暗くて寒いし……それに邪教の連中やこの前遭遇した醜鬼に襲われた時のことを思えば大したことないけど、日の出前の静かな街って1人で回るとなると結構不気味だしね。

 

 そしてこの後はイベント会場に向かいスタッフになります。

 休める時間はあまりないけど、戦場に比べたら全然ホワイトなので大丈夫。

 

 ネットカフェに戻ると、ブラントが引き続き醜鬼などについて調べてくれていた。

 

「戻ったか、盟友よ」

 

「ただいまブラント。何か目新しい情報とか見つけた?」

 

「醜鬼だが、一般に公表されている情報では“人を襲う怪物”程度のもので、魔都災害に被災した時の対応などの情報が大半であり、詳細な情報はほとんどない。信憑性の薄い場所にはいろいろな憶測や真偽のわからぬ情報が出回っているがな」

 

「……あの魔都災害の避難マニュアルだっけ? 醜鬼にいざ襲われたら、運良く魔防隊員の人に助けられたりしない限り、ほとんど役に立たないよアレ」

 

「それは我も同意である」

 

 ブラントの方も大きな収穫はないみたい。

 昨日、ブラントが魔都災害に被災した時の対応に関する政府から出ているマニュアルを調べてくれたけど、魔都と現世をつなぐクナドに取り込まれた時の対応として“無闇に動かず魔防隊の救助を待ちましょう”というものだった。

 現世側に出てきた醜鬼に襲われた時や魔都で醜鬼に襲われた時の対応も、指定のシェルターに避難して魔防隊の救助を待ちましょうだの、身を隠し魔防隊の救助を待ちましょうだの、襲われた経験のある身からしたらびっくりするくらい役立たずな内容だったし。

 魔防隊はクナド発生の観測に長けているので、魔都災害が発生した場合すぐさま急行するのでご安心くださいとかあったけど、被災者からしたら醜鬼にやられるのが先か魔防隊が駆けつけてくれるのが先かの運に左右されていると思います。

 実際、僕はあの時本当に死にそうでしたから! 

 

「あの時は偶然夜雲さんが見つけてくれたから良かったけど……」

 

 クソガムさんに魔都に落とされて、いきなり醜鬼に襲われて……本当に、夜雲さんがたまたま近くを通りかかって見つけてくれなければ怪我じゃ済まなかったはず。

 

「クレイの者どもといえど、醜鬼相手には歯が立たぬようだからな。我が星骸の力があれば可能性はあるが……すまぬ。この通り、今の我は無力な存在だ」

 

「そんなことないよ! あの時だってブラントがいなかったらきっと夜雲さんが来てくれる前に潰されていたし、今だってたくさん助けてもらってるから!」

 

 無力なぬいぐるみになってしまったことで、あの時助けられなかったことを悔やみ謝罪するブラントに、そんなことないと否定する。

 実際、あの時もブラントがいなければ夜雲さんが見つけてくれる前にペシャンコになっていただろうし。今もこうして醜鬼や魔都についてずっと調べてくれている。

 感謝こそすれども、謝られることなんてない。これは気遣いとかではなく、僕の本音です。

 

「その寛容に我が返すは、謝罪ではなく感謝であるべきだな」

 

「うん、そっちの方が僕としても嬉しいよ」

 

 今はぬいぐるみだし、元もエイリアンだけど、これでも盟友。

 見た目がわかりにくくても、口調とかからブラントが喜んでいる感情は伝わってきた。

 

「抱きしめていい?」

 

「それは拒否させてもらう」

 

「なんでさ!?」

 

 いい雰囲気になったと思ったのに! 

 便乗してそのままぬいぐるみブラントをモフらせてもらう要求は却下された。

 

 

 

 

 

 そんな感じで盟友との短い休息の時間を過ごしていたら、イベント会場の方に向かわなければいけない時間になった。

 というわけで本日二つ目の労働に行ってきます。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

 

「うむ、道中気をつけよ」

 

 ブラントに見送られて、ネットカフェの部屋を出る。

 側から見たらぬいぐるみに話しかけている変人だけど、幸い部屋の外に人の姿はなく見られているようなこともない。

 

 特に何事もなく、駅に到着。

 電車で向かうのだけど、異世界日本の鉄道は男性専用車両と女性専用車両に完全に分けられていた。

 痴漢対策──ではなく、女尊男卑社会の産物らしい。そもそも異世界日本では桃食べた女性の方が男の人よりずっと強いので、むしろ痴漢なんて命知らずのやることらしい。

 

 10両編成の電車は、7両が女性専用車両だった。

 でも電車の利用者数は男性の方が遥かに多いみたいで、男性専用車両は鮨詰め状態である。見るからに狭そう。

 

 異世界日本の人にとっては当たり前の光景なのかもしれないけど、流石に可哀想な気がします。

 女性専用車両の方は一両につき10人も乗ってないというガラ空き具合なのに、男性専用車両の方は昼にも関わらず通勤ラッシュの電車くらい入っている様子。中はサウナ状態で窓曇っているし。

 男性専用車両を7両で編成してもまだ狭いくらいなのに、3両とは……この世界のお父さん、苦労しているだろうなぁ……まあ、僕のお父さん異世界日本にはいないけどね! 

 脳内でそんな悲しくなる1人コントをしながら、空いており空調もちゃんと効いている女性専用車両に乗ります。

 

 ちなみに、ブラントが調べてくれたのだが、女性専用車両にも“パートナー”という制度を使った特別な手続きが必要だが男の人が乗れる場合があるらしい。詳しくは知らないですけど。

 

 しばらく電車に揺られ、約20分後、目的地であるイベント会場の最寄りの駅に到着。

 電車を降りると、2つ後ろ側の男性専用車両から疲れた様子の男の人たちが次々降りてくるのが見えた。

 ちなみに女性専用車両からこの駅で降りたのは僕1人です。

 

 改札を抜けて、イベント会場の方に向かう。

 イベント会場のスタッフは今日限りの日雇いであり、交通費も支給してもらえる。

 仕事の内容は会場設営と撤去作業のお手伝いになります。ほとんど肉体労働だけど、体力はあるし大丈夫。

 

 ──と、まあ先刻までこのように異世界でも平和な日本に来たことから油断し切っていた自分の呑気さと、この宝くじの一等に当たるレベルの引きの強さというか運の悪さを呪いたくなりました。

 

「醜鬼だあああああぁぁぁぁ!!」

 

 イベント会場の設営作業をしていた最中、ステージとなる場所に突発的に発生するクナドが出現。

 そこから数体の巨人のような怪物であるこの異世界日本の大きな脅威、醜鬼が魔都側から溢れ出てきたのです。

 

 いや、嘘でしょ!? 一昨日会ったばかりなのにこんなことってありですか!?

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