イナイレにクッソエゴいオリ主をつっこんでみた 作:QBK
少年、清水 界はちょっと優れた普通のサッカープレイヤーだ。
ポジションはフォワード。小学生の頃は、クラブチー厶に所属しストライカー兼キャプテンとしてチームを率いた。
そんな彼は今、中学2年生。
稲妻町に位置する、雷門中学校に通いながら、サッカー部の一部員として特訓に励んでいる。
耳を澄ませばほら、今日も聞こえる。
彼等の声が。
「お前ら!サッカーやろうぜ!」
サッカーボールを片手にハツラツと声を上げる少年。
彼こそが、雷門中学サッカー部のキャプテン、円堂守だ。
「半田ー、それ読み終わったら俺にも貸してくれ」
「えー、やだよ。染岡さっきポテチ食ってただろ」
「あっ、死んだッス」
「だーかーらー、そいつは物理でゴリ押しだって言ってるじゃん。変に特殊攻撃するくらいならAボタン連打してたほうがマシ」
「うるさいでヤンス!それくらい分かってるでヤンス!」
「分かってるんだったら最初からそうすればいいのに」
……目も当てられない。
やっぱ耳澄まさない方がよかったのではないか、と思う程に酷すぎるサッカー部の現状を目にしたキャプテンの円堂は、当然のことだが、憤慨した。
「俺たちはサッカー部だぞ!お前たちだって、サッカーがしたいからこの部活に入ったんだろ!?それなのに、サッカーしないでどうするんだ!」
「あー?んなこと言ってもよ円堂、どうせグラウンドはよその部活に使われてて、ろくに練習もできねぇじゃねぇか」
「うぐっ……」
言っていることは正しい円堂だが、染岡の割と尤もな言い分に黙らされてしまう。
「で、でもなぁお前ら……!」
「おーい、円堂ー」
円堂が言葉を詰まらせていると、後ろの方から声を掛けられた。
「清水!」
「よっ、シュート練付き合ってくれよ」
界だ。彼はこの自堕落なサッカー部の中でも、真面目に練習に取り組んでいた。
雷門中サッカー部でサッカーに熱心なのは円堂と界の二人、それと女子マネージャーをやっている木野の計三人だけだ。こんな環境で、彼らもよくやっている。
「おう!もちろんだ!」
「じゃ、いつもの河川敷行くか。……お前らも、気が向いたら来てくれよ?」
「おー、気が向いたらなー」
絶対来ないだろこいつら、と界は思ったが胸のうちに留めておく。
そんなことより、今はいつの間にか駆け出していた円堂を追いかけるべきだと界は考えた。
「清水ー!早く早く!」
「忙しないやつだな、あいつ」
「そうだな。ま、お前らは逆にだらけ過ぎだけど。ちょっとは円堂のこと見習ってほしいよ。全く。 じゃ、俺等はいつものとこで待ってるからな」
そう言って、界も円堂の後を追って行ってしまった。
「あれ?そういえば木野はどこだ?」
「係の仕事で遅れるそうだ。……って円堂も聞いてたろ」
「あ、そうだった」
「しっかりしてくれよ……」
遠くなっていく二人の話し声。
それを聞きながら、部室に残されたメンバー内二人しかいない2年生の片方の半田は、はぁ、とため息をついた。
「練習なんてしたところで意味ないのに、よくやるよな。二人とも」
「同感だ」
2年生のもう片方、染岡も半田の意見に同意した。
彼等の横では、一年生四人組が1つのゲーム機に集まってワイワイしている。楽しそうでなによりです。
それを横目で見た染岡は、今しがたの半田と同じようにため息をついて、もたれかかっていた椅子から立ち上がった。
「……つってもまぁ、偶には行くか。練習」
「え?マジ?」
「マジだ。ちょっとは身体を動かさねぇと鈍っちまうしな」
「いや、もう既に鈍りまくりだろ」
「うるせぇ。行くっつったら行くんだよ」
「はぁ……」
珍しくやる気を見せた染岡に、半田は心底驚いた。
そして、まぁお前が行くなら……と彼もまた椅子から立ち上がる。
「俺も行くよ」
「好きにしろ」
ゲームで盛り上がる一年生達を尻目に、二人は部室を後にした。
そうして最後まで取り残された一年生達、そのことに気が付いた一人が、あれ?と声を上げた。
「先輩達は?」
「トイレにでも行ったでヤンスよ。きっと」
「ッス」
「四人一緒にトイレに行くとかある?あ、死んだ」
2年生がいないことを疑問には思ったが、それ以上の追求はなく、結局彼らはそのままゲームを続けた。
◆
ボールを視界に捉え、ボールが置いてある位置を脳に焼き付ける。
そうしたら、前を向いて、見据えるのはゴールだけ。
勢いをつけてから、右脚を軸に、左脚を力強く振り抜く。
「ふっ!」
界は生まれつきのサウスポーだ。
サッカーにおいて左利きというステータスは、それだけで重宝される。いわば、天の恵み、生まれ持った才能というわけだ。
シュートに食らいつくように、円堂が飛ぶ。
「だぁっ!」
円堂は、界のシュートをパンチングで弾いた。
「うべっ!」
そして顔面から着地した。
「わお、ナイスド根性」
円堂のポジションはキーパー。ゴールを守る、チームの守護神だ。
彼のキーパーとしての強みというと、やはりこの圧倒的泥臭さだろう。
顔面ダイブして土に塗れようが、絶対にボールだけは止める。そんな意志の強さが、円堂にはある。
「よし!もう一本!」
立ち上がった円堂がパシッと拳を手のひらに打ち付け気合を入れ直す。
それを見た女子マネージャーの木野 秋は、もう、と呆れたようにベンチから腰を上げた。
木野はサッカー部創立メンバーの古参だ。と言っても、サッカー部が出来たのは一年と数ヶ月前だし、設立時のメンバー数もたったの3人なのだが。
「円堂くーん。先に顔の土拭こうよ。タオルあるから」
そう言いながら円堂の方に手を振る木野の手には白い清潔なタオルが握られていて、木野の手の動きに合わせてヒラヒラと揺れている。
すると円堂がちょっと嫌そうな顔をしたので、界は木野の援護をすることにした。
「そうだな、行って来い円堂」
「えー……でも、どうせまた汚れるし……」
「うっせ!さっさといけ!」
「わ、分かったよ!分かったから蹴らないでくれぇ!」
円堂を後ろからゲシゲシと足蹴にして、木野の方へ向かわせる。
人が気を遣ってくれたのなら、それを甘んじて受け入れろ。界は幼い頃、父にそう教わった。
父には、他にも様々なことを教え込まれた。
礼儀作法や道徳を父から学び、人としての在るべき姿を、界は父の背中に見た。
大好きなサッカーも、父に習った。元々界がサッカーを始めたきっかけは、プロとしてサッカーをプレイする父に憧れを持ったからだ。
そして、父から享受した教えの数々は、今も界の心に深く残り続けている。
「ほら、こっち来て。拭いてあげるから」
「んぐ……」
顔についてしまった土を木野に取ってもらっている円堂を見て、界は思った。
羨ましいなぁ……
と。
「よし、キレイになった」
「ん、サンキューな!木野!」
「どういたしまして。ふふっ」
界は思った。
爆ぜろ。
と。
「よーっし、清水!今度こそもう一本!」
「おう、ぶちのめす」
「え?」
「さっさと来いボケぶっとばしてやる」
「えぇ……?」
界は今の円堂と木野のやり取りを見せ付けられ、円堂に対して羨望の感情が溢れ出し、同時に腹を立てている。正直、八つ当たりもいい所だ。思春期の男子は恐ろしい。
円堂は、身に覚えがない殺意を向けられ困惑しながらもゴールの前に立つ。
「よ、よーし、こい……」
な、なんでこんなに怒ってるんだ……?と円堂は思ったが、その疑問を口に出して聞くのは悪手だと、彼の本能的な部分が理解していた。
「おいおい、膝が爆笑してるぞ。そんなんでキーパーが務まるのか?」
「う、ううううるせぇ!来いったら来い!」
めちゃめちゃビビっている、しかし、円堂も男だ。一度ゴールに立った以上、逃げ出すわけにはいかない。
円堂の覚悟を感じ取った界は、口元をニヤリと歪め、シュートの体勢に入る。
「オラァ!」
「絶対に止めぶべらっ!」
界の放ったボールは真っ直ぐの軌道を描き、一切のブレなく円堂の顔を真正面から強襲した。
漢、円堂守、渾身の顔面セーブ(受動的)
「おっ、ナイスセーブ!円堂!」
このあと、木野に滅茶苦茶怒られた。
……更にその後、練習に合流しようとした半田と染岡は、木野に説教される界と、コートに倒れ伏す円堂を見て、静かに踵を返した。
清水 界:オリ主。リア充が羨ましいサッカー少年。クソボケ属性を持つ男は全員俺が滅ぼす、と意気込んでいる。
クソはじめまして。作者です。
何だこのオリ主、全然エゴくねぇじゃねぇかと思った方、作者もそう思います。次回からはもっと主人公のエゴを強調していけるよう頑張ります。