イナイレにクッソエゴいオリ主をつっこんでみた 作:QBK
雷門中学校に転校生がやってきた。
白いツンツンヘアーが特徴的な少年、彼の名を豪炎寺 修也という。
界は、豪炎寺のことを一方的に知っている。
何を隠そう豪炎寺は、去年の
サッカーオタクの界が彼の名を知らないはずもない。
だから朝、教室に豪炎寺が入った時はハチャメチャに驚いたし、とても嬉しかったが、それと同時になんでうちに転校してきた?木戸川清修のチームはどうしたんだ?という大きな疑問を抱いた。
「悪いな、サッカーは、もう辞めたんだ」
円堂からのサッカー部に入らないか?という誘いを、そう理由付けて断る豪炎寺を見て腑に落ちた。
そうか、サッカーを辞めていたのか。それなら納得がいく。そういえば、去年のFFの決勝戦のときもベンチにすら入ってなかったな。あの時、すでに豪炎寺はサッカーを辞めていたのか。なるほどなるほど。
界は一人でうんうんと頷いた。
本当ならサッカー部に入ってもらいたいところだが、そういうことならば仕方があるまい。俺からの豪炎寺への勧誘はやめておこう。
界は机に伏せ、授業の時間まで寝ることにした。
◆
練習試合が決まった、と、顧問の冬海に知らされた。
界は喜んだ。
対戦相手はFF40連覇を成し遂げ、現在も連覇記録を伸ばし続けている、現最強の中学生チーム帝国学園だそうだ。
界はもっと喜んだ。
「相手が強けりゃ強いほど、燃えてくる」
「マゾじゃん」
「ぶっ飛ばすぞおまえ」
軽口を叩いてきた半田をぶっ飛ばしつつ、界は対戦するうえで生じる、1つの問題点を提示する。
「試合するって言っても、人数が足りないな」
部員不足。それは、試合以前の問題であった。
雷門中学サッカー部は一年生4人、2年生4人、マネージャー1人の、計9人で構成されている。その内、マネージャーは試合に出場出来ないので、実質8人だ。
サッカーの試合に必要な人数は最低でも11人。つまり、試合をするにはあと3人、部員数が足りないということになる。
「部員なら今から集めればいい!部員皆で頑張ればなんとかなるはずだ!」
「まじかよ。いやでもそうするしかないか」
今から部員を募って3人も来るのだろうか?と界は思ったが、それ以外になにか方法があるわけでもないので素直に従うことにした。
冬海が、気怠そうにため息をついて部室を出ていこうとする。
「そういうことですので、私はこれで失礼します。まぁ、精々頑張って下さい。負ければ廃部。一週間後、この部屋が物置場に逆戻りしていないといいですね」
冬海は最後に、へっ、とこちらを見下すような笑いを溢して去っていったので、界は、冬海の背に向かって中指を突き立て、淡々と言った。
「Fuck off。二度と来んなカス」
「ヒィィィ!清水先輩、怖いッス!」
清水 界という少年は、とても口が悪いのだ。
◆
練習試合が決まった日から、数日がたった。途中経過として、部員集めは極めて難航していた。
この状況に対し界は、やっぱこうなるよな、という感想を抱いた。
部員がなかなか集まらないという事態は、界の予想通りの展開だ。
しかし何故か界には、円堂の言い出したことだからどうせなんとかなるっしょ、という自分でもどこから湧き上がってきているのか分からない謎の自信があった。本当に謎だ。
とにかく、部員集めの件に関してはなにも心配するようなことはない。そして、界には、界のやることがある。
◆
放課後、他の部員たち、主に円堂が新規部員を集めるために学校中を駆けずり回っている中で界は訳あって、染岡を河川敷のコートに呼び出していた。
「うむ、よく集まってくれた。諸君」
「俺一人だけだけどな」
「うっせ」
「で、用件はなんだよ?俺もあんまり暇じゃねぇんだ。なるはやで頼むぜ」
「ハァン?ろくに練習もしねぇくせに何言ってんだ?」
「アァン?」
会話を始めて間もなくして催されるメンチ切り大会。ケンカするほど仲がいいとは言うが、この二人にその言葉は的を射ていないだろう。
「「……チッ」」
結果、引き分け。決着は一分経たずに訪れた。界はこんなことをするために染岡を呼び出したわけじゃないし、染岡もあまり時間を食いたくなかったのだ。
「あ゛ー、今日ここに染岡を呼んだのは他でもない、お前が雷門中学校サッカー部のフォワード―――ストライカーだからだ」
「……」
染岡は、黙って話の続きを促す。
「時に染岡よ、強いストライカーになるうえで、真っ先に必要なものとは、何だと思う?」
界は、1つの質問を染岡に投げ掛けた。
「……ストライカーに必要なものつったらやっぱ、得点力だろ。点取り屋なんだからよ」
染岡のその回答は、とても有り触れたものだった。
チームの点取り屋としての役割を担うストライカー。
当たり前だがサッカーとは、相手から点を取って取り返されてという、攻防戦があるからこそ成立している。ストライカーに点を取る力、得点力が無ければゲームは始まらない。
染岡はそう考えた。だからストライカーとして真っ先に必要なもの、それすなわち得点力だと答えたのだ。
染岡の考えは決して間違っていない。間違っていないのだが、それが界のお眼鏡に叶うかは別問題だ。
「ん、5点」
「5点!?」
「もちろん100点満点中な」
「低すぎんだろ!」
「まぁ、得点力が大事ってのも間違ってはないけど、考えが浅い。水溜りかよ」
「清水お前ホントに口わりぃな」
「遺伝だ。気にしないでくれ」
「口の悪さって遺伝するもんか……?」
「しらん」
「なら言うなよ!」
だんだん話が逸れていきそうになったので、界は、パン!と手を叩き、話の舵を切った。
「とにかく。……染岡、お前の考えは浅い、浅すぎる。だから一回、全部ぶっ壊せ」
「はぁ?」
染岡には、界が何を言っているのかよく理解できなかった。
界は、トントンと、自分の頭を人差し指で小突きながら言う。
「そのまんまの意味だ。頭ン中空っぽにして、0の状態から始めるんだよ」
「始める?始めるって、一体何をだよ?」
染岡の、その問いを待っていったと言わんばかりに、界は大きく口を歪めた。
「───1週間後の帝国戦、それまでにお前を
覚悟しろよ?と不敵な笑みを浮かべる界に、染岡は、思わず息を呑んだ。
◆
なんやかんやで練習試合当日。
円堂の努力が功を奏したのだろう。部員はなんとか集まったらしい。
曇天の中、雷門中学サッカー部の面々はグラウンドに出てウォームアップをしていた。
「すー、はー」
「くぁあ……」
深呼吸をして心を落ち着かせようとする半田の隣で、界は大きく欠伸をかいた。
「……清水お前、緊張とかしないわけ?」
「んー、まぁ適度な緊張感は持ってるつもりだけど。ていうか、お前らが硬くなりすぎなんだよ。もっと肩の力抜け」
「なことも言っても、相手はあの帝国だぜ?しかも負けたら廃部っていうおまけ付き」
「……俺達はただ、全力を尽くして戦うだけ。頑張るだけだ。どんな試合結果になろうがそのことに変わりないだろ?」
「そりゃ、そうだけど……」
「やることが変わらないんだから、なにもそこまで緊張することはねーってことよ」
そう言い残して、界は半田との会話を切り上げる。
「おーい清水!シュート撃ってくれよ!」
「あいよー。じゃ、半田、そーいうことだから。気楽にやろうぜ」
小走りで円堂の元に向かう界の背中を眺めながら、半田ははぁ、とため息をついた。
「やるだけ、やってみるかぁ……」
半田真一は、中途半端に、やる気を出した。
◆
「うぅ……」
私が戦うわけじゃないのに、やっぱり緊張するなぁ……
木野の表情筋は凍りついたように強張ったままだ。
廃部がかかっているうえに相手は全国一位の超強豪という、強烈すぎる向かい風にぶち当たっている状況下での練習試合となると、自分が実際にコートに立つわけはないがやはり、どうしても肩に力がはいってしまう。
先程からソワソワと、落ち着きを持てずにいる木野。
彼女はふと、コートの中でシュートの練習をしている界と円堂のほうに視線を向けた。
「フンッ!」
「どりゃぁ!────うべっ!」
界のシュートに飛びついた勢いのまま、顔から着地を決める円堂。木野はポカンとした。
「……なーんか、意外といつも通りかも?」
既視感のあるやり取りを見て、木野の緊張は少しだけ解れた。
決戦の時は、けっこう近い。