ぼざろ世界を全力で楽しみたい転生者の話   作:アリマリア

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ただし、転生者は様々な分野で活動しているものとする。

 

 

 

 私こと灰炉茶子は、結束バンド全力応援隊隊長である。

 

 ぼっち・ざ・ろっく! の、そして結束バンドのファンとしてこの世界に転生した以上は、彼女たちの活動を近くで観測し崇め奉り、全身全霊を以て原作ブレイクが過ぎない程度に応援したい。

 要は推しのことを全力で推したい! ってことだ。オタクとしては至極当然の発想だろう。

 

 

 

 しかし、ここで1つ問題がある。

 外部からバンドを応援する方法は、実のところそこまで多くないんだよね。

 

 勿論、原作ぶっ壊してでも応援するっていうんなら、超簡単だ。

 彼女たちに活動資金として1億くらい渡して、プロのアーティストに渡りを付け、ガチガチのSPを護衛に付け、国内最大手のレーベルにゴリ押せば良い。

 恐らく1年を待たずして、そして彼女たちの実力に関わらず、彼女たちはプロデビューを果たすだろう。

 

 だが、そんな物語になんの価値がある?

 

 私が好きなのは、「ぼざろ原作の無双モノ」じゃない。ぼっち・ざ・ろっく! そのものだ。

 見たいのは、ご都合主義のストーリーではなく、ギャグみたいな毎日を送り絆を深めながら前に進んでいく結束バンド。

 なりたいのは、ぼざろのストーリーを蹂躙するオリ主ではなく、STARRYに通うただのモブバイト。

 

 だから私は、原作の苦悩とか努力とか感動をぜーんぶぶっ壊してまで私TUEEEEしたいとは思わない。

 慎ましく、原作を壊しすぎない範囲で彼女たちを支えると、心に決めたのだ。

 

 

 

 ……しかしそうすると、難しい問題が出て来る。

 

 一体どこまで手を出していいのか? という線引きだ。

 

 私的には、原作の流れである……。

 「結束バンドのわちゃわちゃした日常」

 「後藤ひとりが一歩ずつ明るい方向へと進んでいく流れ」

 「結束バンドの面々が難しい現実に苦悩し成長していく未来」

 この3つさえ歪めなければ、ある程度はめちゃくちゃして構わないと思ってる。

 

 ただ、この3つ目の条件がなかなかクセモノなんだよなぁ……。

 なにせ、これは「結束バンドの皆が苦悩する」ことが前提になってる。

 つまり、彼女たちが現実的な不条理に悩まされることに関して、私は基本的にノータッチなのだ。

 

 例えば、初ライブを前にギターが逃げた、とか。

 例えば、新しく入ったギターが協調性ゼロのぼっち陰キャガールだった、とか。

 例えば……バンドの方向性の問題で、メンバーの意見が食い違う、とか。

 

 そういうイベントは、結束バンドの4人が頑張って乗り越え、成長するための……謂わば、試練。

 彼女たちの成長機会を私が奪ってしまうことは、決してこの世界に良い影響を与えないだろう。

 

 だからこそ、私は大仰に手を出せない。

 あくまで一般的な顧客とかファンの領域でしか、彼女たちを支援できないわけだ。

 

 

 

 では、バンドの外部から行う、一般的な支援の仕方とは何か?

 

 やっぱり一番は、物販とかCDとかを買うことだろう。

 しかし、買う数が少なければそこまでの応援にはならないし、逆に買う数が多すぎると布教が滞る。

 おひとり様いくつまでという制限がかかることもあるし、これだけだと万全なサポートにはならないだろう。勿論これもするけどね。

 

 というかそもそも、駆け出しの頃はお金よりも知名度の方が欲しいだろうし。

 

 これも経験だ、と色々な表現者としての活動もしていた私だけど……。

 結論から言うと、何かしらの機会がないと表現者としてはまず成功できない。

 そして成功できなければ困窮することになるし、貧すれば鈍するの言葉通り、どんどん負の循環にハマってしまう。

 

 彼女たちが頑張ってやった表現が、奏でた音楽が、知られる機会すらなく消えていく……なんて、そんなことはあってはならない。

 もしそんなことになったら世界滅ぼす。ポストアポカリプスってやる。

 

 だからこそ、結束バンドにはある程度……あくまである程度ではあるけど、段階的に人気を得るだけの発破材が必要になるわけだ。

 そんなわけで私は、あと数か月の内に初ライブを控えた結束バンドのために、知名度向上のための手段を整えていた。

 勿論、本格的に使うのは未確認ライオットの後、彼女たちがアルバムを出してからになるだろうけどね。

 

 

 

 現代社会においては、アーティストの知名度を上げる方法はいくつかある。

 その中でも最も効率が良いのは……。

 有名どころでの売名と、業者を雇ったサクラ、それからSNSでのバズ、炎上商法。

 主にこの4つに絞られるだろう。

 

 4つ目は論外。結束バンドは清く正しく美しいイロモノバンド、炎上のイメージとかいらん。むしろ私が火消しするまである。

 売名とサクラも、できれば避けたいところだ。不自然さが彼女たちに伝わる可能性があるし、歪な手段を使って得た評価は反転する危険性がある。

 

 だとすれば、取るべき手段は1つ。

 SNSでの情報発信、それがとんでもなくバズることである。

 

 

 

 ……が。

 バズというのは、実のところなかなか難しい。

 

 どの時間帯にどんな人が見ているか、どういう言説が一般に受け入れられるのか、そういうものをしっかりと理解した上で面白い発言をし、有名どころが反応すればいい感じにバズるんだけど……。

 

 結束バンドのSNS大臣である喜多ちゃんは、そういう面じゃあまり向いてないんだよなぁ。

 

 彼女のイソスタはずっと見てるけど、常時風が吹いてこそいるが、最大風速はそこまで出ない感じだ。

 そういうのは少数の排他的・保守的なコミュニティでは受けが良いけど、大衆にはあまりウケない。

 常に同じ方向に同じだけの風が吹いていても、衆愚はすぐに飽きて放り捨ててしまうからね。

 

 つまるところ、ここにテコ入れする必要があるわけで……。

 ハイスペック系転生者を自負する私は、この問題を解決するため、既にしっかりと対策を取ってる。

 

 具体的には、影響力のあるアカウントを、40個程用意した。

 

 普段から定期的に面白かったりキラキラしたり役に立つ情報を撒いたりしつつ、ちょこちょこ偽造した個人的情報を発信して、同一人物とバレないよう地道に育ててきたアカウントたち。

 なんというか、気分は子育てみたいだった。我が子たちが愛する結束バンドの役に立つ。これ以上の光栄はないのであります。

 

 そんなわけで、結束バンドがある程度軌道に乗ったら、これらから定期的な宣伝を行う予定だ。

 「最近このバンドの曲聞いてるんだけど、学生時代思い出して涙出て来る」とか「音楽はよくわかんないんだけどすごい楽しい曲」とか「全米が泣いた」とか「君はまだ、本当のロックを知らない」とか「最後の1フレーズ、君は必ず涙する」とか「結束バンド、最高~!」とか。

 あんまりヤラセ感がないよう調整しなきゃなのが面倒だけど、彼女たちのためならえんやこら、だ。

 

 ちなみに、我が子たちの中で一番育ったアカウントはイラストを投稿してるヤツで、フォロワーが大体120万くらい。

 社会への風刺とかそっち系のシニカルな表現してたら想像以上に育った。

 定期的に好きなものの発信とかも行ってるので、結束バンドの宣伝をしても違和感はないだろう。

 ちなみに、既にギターヒーローは宣伝した。多分登録者1万人くらいはこのアカウントから流れてるんだと思う。

 

 

 

 ……さて、そろそろ本題に入ろうか。

 

 その日はちょうど、この120万のアカウントに投稿する用のイラストを描いていたところだった。

 

 結束バンドのメンバーミーティングから1週間、最近は色々あって、私は猫の手も借りたいような状態が続いていた。

 この後も予定がぎちぎちに詰まってるし、気の休められる瞬間がない。ぶっちゃけ流石に疲れてきた。誰か助けて。

 

 ……まぁ、助けてくれる人なんておらんのですけども。

 そもそも今取り掛かってるのは外部に漏らせなかったり、私自身の能力が必要な仕事ばかりだ。

 前者だけでも誰かに託そうと思っても、両親には迷惑かけらんないし、勿論ぼざろのネームドなんて論外オブ論外。

 他に信頼できる相手は……強いて言えばあの糞尿探偵くらいだろうけど、アイツに胸襟開くくらいなら肋骨開く方がまだマシだし。

 

 そういった理由もあり、私はデスマーチをソロ攻略中なわけだ。

 ぶっちゃけ1つも穴を開けられないかなりの過密スケジュール、とてもじゃないけどサボるなんてしてはいられない。

 

 そんなわけで、結束バンド誕生の瞬間を涙を流して鑑賞しながら、片手間に絵を描くこと20分程度。

 ようやく出来上がったものをSNSに投稿した、ちょうどその時。

 

 

 

 ピロン、と。

 家族と結束バンドの面々しか登録していないスマホが、鳴った。

 

 

 

 私は投稿したブツの確認も忘れ、スマホに飛びついて通知を確認。

 果たして、そこには……。

 

 

 

 喜多ちゃんから、メッセージが来ていた。

 

 

 

『茶子ちゃん、ちょっと今から出て来れない?』

 

 

 

 行きま~~~す♡♡♡

 

 

 

 * * *

 

 

 

 集合場所に指定された、下北沢駅。

 超特急でそこに向かった私を待ち受けていたのは、後藤を除く結束バンドの3人組だった。

 

 しかし、彼女たちは見慣れた制服姿ではなく……私服ッ!

 そう、至福の私服姿!! 激かわぷりちー♡エモーショナル女子高生3人組だッッ!!!!!

 

「うおっまぶしっ!」

「え、何が?」

 

 虹夏ちゃんの真面目なツッコミを受けながら、私は思わず手で目を覆った。

 な、なんて眩しい姿なんだ3人とも……ッ!!

 

 

 

 まず目に入るのは、だぼっとゆるっとした外観の淡い色のトップスにロングスカートの虹夏ちゃん。

 髪やリュックの黄色、トップスの淡い紫、スカートの群青で綺麗にカラーが分かれ、いつものリボンは腕に巻きつけて寒色の中に紅一点なアクセント。

 そこまで強く主張しないファッションからは、いつものように隣にいる顔が良すぎる女の気配が感じられて非常にえっち♡

 

自己評価低め虹夏ちゃん大好き高校校歌

作詞作曲:灰炉茶子

チュリトス輝く丘登り 虹夏ちゃんのいつでも明るく振舞うとこすき

ドラムの音が鳴り響く でも実はちょっと重くて時々暗い一面を覗かせてくるの魔性すぎ

金色眩しい星を見て 活発であまり豊満でない子の胸盛るなぶっ飛ばすぞ

下北沢の大天使 そもそも設定とかキャラデザの段階で貧乳か巨乳かなんてことは数億回考えられてんだよお前らの性癖で考え抜かれたバランスを崩すんじゃねぇよボケカスがよと一時は思った私であったが冷静になってみるとそうして禁忌を犯すというのもまた多様性であり芸術の一種なのではないだろうかと内省したので二次創作作者様は自由に胸を盛ってヨシ

おお 我ら 山田ばかりキャーキャー騒がれるせいで自分の魅力に無頓着な虹夏ちゃん大好き高校

おお 我ら 山田ばかりキャーキャー騒がれるせいで自分の魅力に無頓着な虹夏ちゃん大好き高校

 

 

 

 さて、次に件の山田はと言えば……。

 緩めの黒のシャツに灰のロングスカートという、シンプルなモノクロコーデ。

 言葉で並べると†黒に染まりしオタク†のようにも思えるけど、彼女の自然な着こなしとバチクソ良い顔、何よりしっかりとしたコーディネートによって、ちょっとマニッシュな大人っぽさが演出されてる。

 

 いや大人っぽいというか、もうただただえっちだよね。性的という意味じゃなくて、こう、ふとした瞬間に目に入る唇の艶やかさとか、腕の機能的な曲線美とか、そういう方向性でのえっち。

 

 顔が(リょう)

  服装も(リょう)

    山田リョウ

 

 茶子、心の俳句。

 

 

 

 そして真打、恐らくこの中で最もファッション方面に強い喜多ちゃん。

 割と女性らしさを抑えた前者2人と違い、彼女はもうレディー感バリバリ♡♡

 バルーンスリーブとかトップスインとかバッチリ決めて来るこの陽キャ感、そりゃあ後藤は耐えられまいよ。私でさえ耐えきれずに液状化する寸前だし。

 

 あと個人的に想う喜多ちゃん最萌えポイントとして、自分のパーソナルカラーを赤中心に定めてるっぽくて、ファッションが暖色系に偏ってるんだよね。今回も白を基調としたところにスカートでオレンジを入れ込んでる。

 思春期の女の子が自分を「これだ!」って決めてるって……なんかこう、えっちだよね♡

 

 

 

 結論、3人ともえっち♡。

 まぁオタクはなんでもかんでもえっちさを見出すからね。前世でも根っからのオタクだった私としちゃ、エッチコンロ最大火力点火って感じ。エチチチチッ!!ボッ!!!!

 

 ……え、後藤はどうかって?

 いや後藤はそういうんじゃないし。崇拝対象にエロチシズム覚えるのはちょっとイカれてるのでは?

 ま、普通にえっちだとは思いますけどね! 胸とか! 私にはないし!

 

 

 

 そんな感じでいと眩しきお三方に目を焼かれ、思わず目を抑えてうずくまっていると……。

 とんとん、と肩が叩かれる。

 

 思わず「はえ?」と声を上げて横を見ると……。

 

 

 

 ほんの数センチ先に、喜多ちゃんの、宇宙みたいに綺麗な瞳があった。

 

 

 

「メガ、メガヤケルッッッ!!」

「茶子ちゃん、急に呼び出してごめんね? 来てくれてありがとう!」

「アッアッアッ、キタチャンカワイイヤッター!!」

「嬉しいわ、ありがとう! それでね、実は茶子ちゃんにお願いしたいことがあって……」

「ハイ、ナンデモシマス」

「やった! せんぱ~い、快く受けてもらえましたー!」

「……え、今の言うほど快かった? ていうかチャコちゃん、気絶してない? 大丈夫?」

 

 

 

 * * *

 

 

 みんなのあまりの可愛さと、喜多ちゃんの最強顔の近さを前に自意識を喪失してしまっていた私だったけど、喜多ちゃんの両手にほっぺを包まれたことで緊急回復。

 柔らかお手々♡ あったか体温♡ すき♡ すき♡ 大好き♡♡♡

 

「ほーら茶子ちゃーん、そろそろ起きてー」

「あう……え、なんで、はれ?」

 

 最高に気持ちの良い目覚めによって、おれは しょうきに もどった!

 いや正直言うと、寝起きのダルさに喜多ちゃんに触られたことによるハイテンションが混ざって、ちょっと精神的に落ち着かない状況ですが。

 

「茶子ちゃん、さっきまでしてた話覚えてる? 大丈夫?」

「あぁ、えっと、うん。聞こえてはいたから問題ないけど」

 

 喜多ちゃんの頼みっていうのは予想通り、カメラマンだった。

 

 そう、今日は結束バンドメンバーミーティングから約1週間の休日。

 原作通りであれば、そろそろアー写撮影イベントが発生する頃合いである。

 勿論それに勘付かないわけもなく、私はきちんと準備を整えてきている。ご安心めされよ。

 

 取り敢えず、地面を転がった時に付いたホコリをパンパンとはたき、その場で立ち上がると……。

 ちょっと呆れたような目をしてくれていた虹夏ちゃんが、改めて声をかけてくれた。

 

「ごめんねー、せっかくの休日に来てもらっちゃって」

「いえ、喜多ちゃんの頼みとあらば断われませんし、それが結束バンドのことであれば尚更ですから」

「お、おう。ありがたいっちゃありがたいけど、なにげに重いな……?」

「伊地知先輩、これは『重い』じゃなくて『想い』ですよ! それだけ茶子ちゃんは私たちのことを想ってくれてるんです! キャー!」

「こっちもこっちでテンション高いし……茶子ちゃんと喜多ちゃんの空気感には付いて行けないなぁ」

 

 やれやれと首を振った虹夏ちゃんは、「このままじゃ話進まないし、もういい?」と喜多ちゃんに言い聞かせた後、改めてお話ししてくださった。

 

「それで、今日来てもらった理由なんだけどね? もっとバンドらしくなりたーい! って思ってさ」

「なるほど」

 

 ……視界の端で、山田が僅かに視線を逸らしたのが見えた。

 本音を言えば、この1週間でこの辺りに関してメンタルケアしておきたかったんだけど……ちょっとどうしても時間が取れなかったからなぁ。

 

 こうなれば、もう主人公(ヒーロー)に頼るしかあるまい。

 いや、「もう」というか「いつも通り」だけども。

 

 あの喫茶店で、空のお皿と鶴の折り紙と共に偽らざる山田の本心を聞いて、ヒーローは彼女の望む通りに自分の色全開の歌詞を提出する。

 それを以て、結束バンドは山田の想う通り「自分たちらしい」バンドになっていくのだ。

 それこそが後藤ひとりのもたらす、完全な救済。信じよ、さすれば与えられん。やっぱり後藤は最高のヒーロー♡♡♡ もはや神♡♡♡ 主人公(後藤)(原作者)世界(ぼざろ)、これらがisで結ばれる仮説を三位一体説と言います。

 

 私がすべきは、事がそこに進むまでに、山田が抱える不安や辛さを少しでも軽減してあげることだったんだけど……。

 事がここまで進んでしまうと、どうにもね。

 あと数時間で解決するって考えると、もう私の出る幕ではないかな、とも思ってしまう。

 

 そんなわけで、私は心が引き裂かれそうになりながらも懸命に表情に出さないように努め、改めて虹夏ちゃんの言葉に耳を傾ける。

 

 

 

「それで、思い付いたんだよ。アー写を撮ろうって!」

「アー写……アーティスト写真。日本語で言うところの宣材写真ですね。

 宣伝のために公式にマスコミに提供される、アーティストやモデルなどの写真を指す言葉。

 取引相手がそのグループや個人を認識する第一印象であり、一般の方々への放送の際にも使われる、非常に大事な写真のこと」

「そうそう! 詳しいねぇ、あんまり一般的な言葉じゃないと思うんだけど」

 

 まーね。

 これでも一時期芸能界に出入りしてたこともあるし、そりゃ当然知ってますとも。

 とはいえ不必要に目立つわけにもいかないし、顔出しNGの上に本名とは全く別の芸名だったから、みんなが知らないだろうけどさ。

 

「なるほど。これから結束バンドというロックバンドとして活動していく上で、宣材写真は必ず必要になります。

 まだ喜多ちゃんが特訓中であり、皆の連帯感も完全でない今、ライブに出ることは難しい。

 ならばその間に宣伝写真を撮るなど、できることをやっておこう、と。

 その上で、私には4人を撮影するカメラマンを頼みたいと、察するにそういうことですね」

「うーん、すごい察し力。チャコちゃんと話すと楽でいいね~」

 

 リョウなんかは話聞いてないことも多いからさー、とやれやれポーズの虹夏ちゃん。

 ちなみに山田が話を聞いてないことがあるのはガチ。

 大事な話してる時はともかく、ぼんやり話してる時は「え、何? ベースライン考えてた」なんて返されることもままある。そういうところが可愛いんだよなぁこの末っ子気質♡♡♡ もー、仕方ないからあと100万回くらい話してあげるね♡♡♡ 100万回聞いたネコ(属性)。

 

「そういうことなら、私は適任ですね。写真技能士1級とフォトマスター検定の2級まで取ってますから。大抵の人よりは良い写真が撮れると思います」

「前から思ってたけどチャコちゃんはなんでそんなに資格取ってるの? まだ高校入りたてだよね?」

「それは茶子ちゃんだからですよ! 茶子ちゃんに不可能はないですから!」

「あはは、喜多ちゃんの言う理屈もよくわかんないし、なんでカメラマンを目指すわけでもないのにそんな資格取ろうとしたのかもわかんないなぁ」

 

 虹夏ちゃんは理解を放棄した笑みを浮かべ、すぐに切り替えて手を合わせてくる。

 

「そういうことなら、お願いしちゃっていいかな!? 資格まで持ってる人にタダでお願いするのも申し訳ないような気がするけど……」

「私たちの仲じゃないですか、任せてください。今日は偶然私の持つ最高品質のカメラを持って来たので、バッチリイメージ通りの写真に仕上げてみせます」

「なんでそんなもの持ち歩いてるの?」

 

 私は家から持って来たとっておきのカメラを取り出す。

 十分手に握れる程度のサイズ感だけど、ずっしりとした重みを感じる一品。

 値段相応にスペックも高い、ライカのコンパクトモデルである。

 

 へへへ、結束バンドの雄姿を写真に収めようと思ってたけど、アー写を撮らせてもらえる好機に恵まれるとは……! まさかとは思ったけど、あまりの幸運に顔が歪みそうになる。

 我が生涯に一片の悔いなし。もう今日死んでもいい。これ何度目の「もう死んでもいい」だろうな。

 

「へー……あれ、案外ちっちゃいんだね。もっとゴツゴツしたヤツかと思ってた」

「触ります?」

「いいの? ありがとー。……おぉ、思ったよりずっしり」

「ちなみにそれ、限定生産モデルで1つ150万円は下りません」

「うぇっ、ちょっ、返す返す返す!!」

 

 虹夏ちゃん慌ててや~んの! 可愛すぎて鼻血出そう♡♡♡

 

 

 







 アー写撮影に転生者ちゃんを誘おうと言い出したのは喜多ちゃんです。
 覚悟キマった喜多ちゃんはグイグイ来るぞ、気を付けろ。



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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