ぼざろ世界を全力で楽しみたい転生者の話   作:アリマリア

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 ペルソナ3reloadヤッター!!!!





ただし、時には転生者もわがままを通すものとする。

 

 

 

 現時点の結束バンドには、色んなものが欠けている。

 

 まず大前提として、喜多ちゃんの技量。これが最も決定的だ。

 今の喜多ちゃんのボキタテク……じゃなくてギタテクは、無知な私からしても素人に毛が生えた程度だ。

 綺麗な音を出すどころか、正しい音を出し続けるのにも失敗することが多い。

 

 けどこれでも、ちゃんと練習し始めたのがつい数か月前と考えると爆発的な成長……らしい。

 私はスペックつよつよだからよくわかんないけど、この前2人きりでバイトしてる時に山田が「郁代は頑張ってるよ」って言ってた。

 山田は音楽に関してだけはガチな女。彼女が評価するってことは、喜多ちゃんはかなり飛び抜けて成長が早いんだろう。

 

 ……が。

 如何に喜多ちゃんの成長性が高くとも、現時点ではまだ、ライブをするには不足している。

 

 現時点の喜多ちゃんの実力では、どうしたって曲全体の色を濁してしまう。

 今の自分じゃ、大事な結束バンドの曲の駄目にしてしまうの、と。

 

 この前の休日、ファストフード店でドリンクをかき混ぜながら、他の誰でもない喜多ちゃん自身がそう独白してきた。

 まぁそう言った後、「だからもっと頑張るわ! 茶子ちゃんに満足してもらえるように!」ってぐっと拳を握りしめてたし、落ち込んだ様子はなかったけどね。

 

 本音を言うと、私のためじゃなくて結束バンドのために頑張ってほしいなぁって思うんだけど……。

 まぁ、喜多ちゃんの力になるのなら何でもいいか。

 どうせ時が来れば、喜多ちゃんは後藤に惚れてくれるんだし。

 

 あのどうしようもない程鮮烈なピンクの閃光は、誰しもの瞳と脳を焼く。

 見て、知って、聞いた以上、そこから逃れる手段はない。

 前世での私……俺が、そうされたように。

 

 

 

 ……少し話が逸れたな。閑話休題。

 

 今の結束バンドには、足りないものがある。

 それは喜多ちゃんの技量の他にも、いくつか挙げられるんだ。

 例えばそれは、チームワークだったり、資金だったり、オリジナルの曲だったりするんだけど……。

 

 基本的にそれらは、時間をかけて捻出するしかないものだ。

 

 だからこそ彼女たちは、バンドマンとして日常を過ごしながら待っている。

 喜多ちゃんが上手くなり、チームワークが纏まって来て、資金も溜まり、山田と後藤が曲を書き上げることを。

 そしてそれらを用いて、最高の初ライブを行う日を。

 

 その間にできることをしよう、ということで持ち上がったのが、このアー写撮影なわけだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 改めて、本格的にバンド活動を始める前に、アー写を撮ることにした結束バンドwith私。

 

 ……しかしながら、そもそもこの場にいるのは虹夏ちゃんに山田、そして喜多ちゃんのみ。

 結束バンドに必要な、最後にして最大のピースが欠けているように思う。

 

「あの、後藤は?」

「あー、ぼっちちゃんも呼んだんだけどさ、実はかなり家遠いらしくて。呼んだのちょっと前だし、そろそろ来ると思うんだけど……」

 

 うーんって感じで腕を組み、頭上のチュリトスをぴょこぴょこ揺らす虹夏ちゃん。

 ……いや、今更だけどそのチュリトス何なの? 星歌さんも生えてるけど、髪って言う割には光沢があるし、自由に動かせるみたいだし、触覚か何か?

 

 いやまぁ、後藤みたいな人外もいるんだし、虹夏ちゃんの体に特殊な器官があったりしてもおかしくはないんだけどさ。

 ちょっと調べてみたいから細胞提供してもらえない? ああ大丈夫、おかしなことに使ったりなんてしないよ? ちょっと虹夏ちゃんが大事故起こした時のために移植用クローン作るのと遺伝子を未来に残すために凍結保存するだけだから。

 

 

 

 ……なんて、そんなことを言っている内に、スタミナないのに走って来たせいか、顔を青くした後藤がやって来た。

 ちなみにこの「顔を青くして」というのは比喩とかじゃなく、ガチで顔が青い。コードで言うと#00008b。やっぱ人間じゃないねこの子。そんなヤバいところも愛してる♡♡♡

 

 で、そんな後藤なんだけど……。

 私たちの元に走って来たと思ったら、そのまま倒れ込むようにスライディング土下座した。

 ……いや、倒れ込むようにスライディング土下座したのか、スライディング土下座するように倒れ込んだのかはわかんないけど。

 

 とにかく、後藤はその場に倒れ込み、そしてそのまま地に頭をこすりつけんばかりの土下座を敢行。

 その首には、わざわざ用意してきたのか、「私は約束通りに歌詞をかき上げられませんでした」と書かれたプラカードがぶら下がっている。

 

 そう。

 後藤は今日呼び出された理由を知らず、てっきり怒られると思っていたのである。

 

 いや、虹夏ちゃん要件も伝えずに片道2時間の子を呼び出したんかい! このうっかりさんめ♡

 あと後藤、別に歌詞を書き上げるタイムリミットとか決めてるわけでもないのに謝るの、追い出されかねないから悪く思われたくないっていう自己肯定感の低さと一度引き受けた以上ちゃんとやりたいっていう真面目さが感じられて素敵だね♡♡♡ まさにぼざろの主人公って感じのダメダメさ、養ってあげたいしもっと駄目にしてあげたい♡♡♡ でも前に進みたいと望む心は否定できない! だからただ見守ってるね♡♡♡

 

 

 

 と、私が感極まっている間にも事態は進むわけで……。

 混迷を極めた状況で頼りになるのはやっぱり、皆のママこと虹夏ちゃん。

 彼女はてきぱきと後藤の誤解を解き、新しくアー写を撮らないといけない説明のため、旧アー写を見せたりしていた。

 

 せっかくだからって、私も横から見せてもらったんだけど……。

 

 シャッターの前で笑顔でピースする虹夏ちゃん。

 興味なさげに視線を逸らす山田。

 そして何より、左上に浮かぶ無表情の喜多ちゃん。

 

 前世では百万回くらい見たけど、改めて見ても酷くて笑いそうになるな、これ。

 画面構成から表情の統一感まで、こんなに素材を台無しにできるんだって感じの写真。

 A5ランクの黒毛和牛ロースにクリーム塗りたくってパフェの器に盛るが如き暴挙だよ。

 

 とはいえ、これに関しては皆に罪はない。

 いや、ぶっちゃけて言えば、約1名罪はあるんだけども。

 

 旧アー写がこんな酷い出来になっちゃったのは、当日に喜多ちゃんが逃げ出してしまい、まともにアー写を撮ることができなかったからだ。

 

 多分急いで撮ったんだろう、虹夏ちゃんと山田の表情の統一感もないし、喜多ちゃんは卒アルの集合写真の合成みたいに左にポツンと浮いている。

 その喜多ちゃんにしても、写真はすごい無表情だし、背景との違和感もバリバリだし。

 更に言えば画面全体に対して喜多ちゃんスペースの比率が歪で、見てて辛くなるくらいだ。

 ……うん、私が撮る時はとっておきのを用意しよう。

 

 それはそれとして、虹夏ちゃんの「喜多ちゃん、逃げちゃったから」に対する喜多ちゃんの心底申し訳なさそうな、でも明るさは失わない「ごめんなさい!」可愛すぎな♡♡♡ 駄目だ体が熱い、私これ聞いただけで8000kwhくらい発電できる気がする。キタチャンカワイイヤッター発電で日本のエネルギー問題を解決! クリーンな再生可能エネルギーで世界を救うぞッ!!

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ぶらり下北5人旅。

 本日は晴天に恵まれ、絶好のアー写撮影日和。

 穏やかな下北沢の街を、結束バンドの4人とおまけの1人が歩きます。

 

 これからバンドでやりたいこととか、練習の予定とかについて話しながら、4人はアー写撮影の聖地を目指して旅を続ける。

 気分は乳と蜜の流れる地を目指す旅である。やはりぼざろは神話だった? 後藤ひとりは救世主? 年齢は? 復活の時期は? 個人的に調べてみました!

 

 行くあてもない旅だったけど、4人は女子高生らしく……まぁ後藤は私と一緒に後を追いかけるだけになりがちで、私なんかとポツポツお話くださってたんだけど……わいわいと姦しく騒ぎながら街を練り歩く。

 

 喜多ちゃんがイソスタ映えしそうな喫茶店に入ろうって言い出したり、山田が古着屋に吸い込まれていったりと小さなアクシデントはあったものの、経過はおおむね順調。

 うざったいナンパだとかチャラついたクズが寄ってくることもなく、皆は楽しい散歩を続けた。

 

 

 

 ……まぁ、当然というか、仕込みである。

 

 そもそもこんな美少女軍団が歩いていたら、真っ当な性欲のある男は皆吸い寄せられてしまうだろう。

 前世男だった私が断言するけど、男なんて下半身でもの考えてるカスばっかだ。

 いやばっかは言い過ぎかもだけど、そういう輩が少なからずいるっていうのはこれまでの少女人生でもよくわかってる。このロリコンどもめ!

 

 更に言えば、注意が必要なのはゴミみたいなロリコン野郎どもだけじゃない。

 将来ロックスターになることがおおよそ確定している結束バンド。

 その芽を摘もうと、あるいは利益にたかろうと、ハイエナが寄って来る可能性もあるのだ。

 

 そんな社会の掃きだめみたいな汚濁を、彼女たちに近付けるわけにはいかない。

 そんなわけで私は、彼女たちを守るべく策を講じた。

 

 現在散歩中の結束バンドだが、実は私たちからちょっと距離を空けて、私服のSPたちが余計なちょっかいが入らないようにガードを固めている。

 更にその警備網を突破して来る少数の兵に対しては、能力だけは保証されてる探偵がカバー。

 最終防衛ラインとして、まぁ1人2人程度までなら対処できるだろう私もいる、三重の防御態勢だ。

 

 本音を言えば、あんまり一般人に手を上げたくはないんだけど……結束バンドの邪魔しようってんならソイツは人じゃないからセーフ。結束バンド教にあらずんば人にあらず。異教のサルは殴ってヨシ!

 

 この状況、平和ボケした日本の中で考えれば、かなりガチガチの構えと言える。

 これを突破できるのは……それこそ秘密警察級の精鋭か、スナイパーによる狙撃くらいだろう。

 

 ……まぁ、流石に若干過剰な気がしないでもないけどね。

 原作じゃ何も起こらなかったわけだし、今回も平和に終わる可能性の方が高い。

 

 でも、私は臆病なんだ。

 万が一にでも彼女たちに何かがあったら、世界の悪意に絶望して終末戦争の引き金を引きたくなっちゃうかもしれない。

 

 そんなわけで、念には念を入れて更に念を入れるくらいの、バッチリ厳重な体制で事に臨んでいるわけですよ。

 安定志向、大事。結束バンドの平穏は何よりも優先されるのだ。

 

 

 

 さて、そんなわけで安心安全の4人+αの旅。

 住宅街の階段だとか、薄暗い路地裏だとか、色んなところを巡ったんだけど……。

 どうやら虹夏ちゃんは、撮影場所を決めかねているようだった。

 

 公園の……あれ正式にはなんて言うんだろう、バネでびよんびよんする遊具に乗って遊ぶ喜多ちゃんと山田をパシャパシャと激写している私の横で、虹夏ちゃんは「うーん」と唸っている。

 

「階段、フェンス、植物の前、そして公園……金欠バンドマンのアー写で定番どころはこんなところかなぁ。あ、あと良さげな壁!」

 

 悩んでるっぽい虹夏ちゃんに意見具申。

 

「みんな素材が良いですし、背景はどこでも映えると思いますよ。最悪こちらで良いものを身繕って合成という手もあります」

「それもアリだけど、やっぱり大事なアー写だし、みんなで良いトコ見つけたいなーって。これも結束バンドの大事な思い出の1つになると思うしね?」

「虹夏ちゃん天使すぎワロタ」

「え? 何? 天使?」

 

 やべ本音が漏れた。

 

 いやでもホント、めちゃくちゃ天使だよね虹夏ちゃん。

 自分はすぐにでもバンドとして活動して知名度を上げたいだろうに、そこで出て来るのが「皆の思い出になる」だもん。

 アライメント的な意味で根っからの善というか、流石は結束バンドのママというか。

 彼女が万全な状態なら、結束バンドの結束はそうそう揺るがないだろう。

 

 まぁ、虹夏ちゃんも欠点がないわけじゃない。

 皆を支えるママでありながら、結束バンドの中で最も等身大で、精神的にぐらつきやすいというのも彼女の特徴の1つ。

 つまり、結束バンドのことを虹夏ちゃんが支えるように、虹夏ちゃんのことは他のメンバーが支えなきゃいけないわけだ。

 ママは皆のために、皆はママのために! 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 それからしばらく歩き、皆ちょっと疲れて来たってことでドリンク休憩。

 こんなお休みの時間ですら原作イベントで満ちている。その点結束バンドってすげぇよな、最後まで供給たっぷりだもん。

 

 喜多ちゃんが後藤に「楽器持って来れば良かったね」と言ったのを聞きつけ、虹夏ちゃんの抱えるドラマー孤独問題が爆発。

 山田とドラムスティックを巡ってひと騒動あった後、親の声より聞いた伊地知ニジカが現れたり。

 

 たくさんポスターが貼ってある壁に喜多ちゃんが反応し、山田がそれっぽいことを言って喜多ちゃんが振り回されて、虹夏ちゃんがドン引きしてしまったり。

 

 そういったイベントを経て……。

 

 私たちはいよいよ、聖地に辿り着く。

 

 

 

「あ、あの、あっちに多分ですけど、良さげな感じの壁が……」

 

 おどおどとそう言って、謎パントマイムを披露する後藤。

 話慣れてない感じが素敵♡ 抱いて♡ 喜多ちゃんを♡ 私は普段陰気な子程閨ではバリタチになってほしい派閥。後藤ベッドヤクザ概念万歳!

 

 っとと、流石に今は思考を逸らすわけにはいかない。

 話を戻して、後藤の導き。

 彼女の見つけた聖地こそが我らの目指す場所である。いざ往かん、賽は投げられた。

 

 

 

 そうして後藤の先導の元、辿り着いたのは……。

 親の顔より見た壁だ。

 

 4人が十分映れる広いベージュの壁に、でかい大木のグラフィティが描かれている。

 確かにロックバンドのアー写の背景としては的確だろう、アングラで洒落た雰囲気だ。

 ……しかし、このグラフィティ描いた人、どうやったんだろ。わざわざ脚立持ってきたのかな。

 

 それはともかく、良い感じの撮影場所も見つけたし、いざ撮影開始。

 虹夏ちゃんが持ってきてたスマホ用3脚を借りて手ブレを防止しながら、私は思い思いのポーズを取る結束バンドの4人に向かってレンズを向けた……。

 

 

 

 ……ん、だけど。

 

「…………えーっと」

 

 さて、どこから指摘したもんか。

 

 画面中央で山田はクールに立ち尽くし、虹夏ちゃんは彼女の肩に手を回してウインク。

 うん、ここはいい。むしろめちゃくちゃ良すぎて興奮する。

 やっぱ虹夏ちゃんと山田って距離感近いっていうか、肌と肌で触れ合う距離感だよねこれ……。

 山田のほっそい首に虹夏ちゃんの腕が回って……素肌と素肌が触れ合ってるって考えると……! は、ハレンチ! ハレンチハレンチ!! ハレンチ警察出動だ!! 虹夏ちゃんと山田を逮捕して一緒の独房に入れる! いや2人入れたら独房ではなくない?

 

 この2人に関しては、何も問題はない。

 まぁ世界的売れっ子バンドマンとしてはちょっと軽すぎるかもしれないけど、アー写は別に切り替えられないものじゃない。本格的に売れ始めてから、改めて自分たちらしいアー写を撮り直せばいいだろう。

 

 今大事なのは、バンドの方向性とか格の高さ以前に、きちんと個性が出ていることだ。

 虹夏ちゃんはしっかり明るく動きがあって、山田はカッチリクールで静的。

 この画にはしっかりと、彼女たちの彼女たちらしさが出ている。

 だから、この2人に関しては問題ないんだ。

 

 

 

 問題なのは、横にいる後藤と喜多ちゃんだ。

 

 後藤はそのコミュ障故だろう、他3人に近寄れず、少し離れたところに立っている。結果として画角に入りきらず見切れてしまっていた。

 更に言えば、完全に俯いてしまってるから口くらいしか見えなくなってるし。

 こんな状態を写真にしても0点だ。加点式で。もし減点式なら-1万点かな。

 

 まぁこれはこれで、後藤の色が出てるけどね。

 写真としては0点だけど、結束バンドの後藤ひとりのアー写としては10点満点中1兆飛んで89億6700万点といったところだろうか。

 ぼっちで陰キャでコミュ障な後藤の可愛さが良く出てるね♡♡ これはこれでロックで最高♡♡♡ すみませんこれあと3万部くらい刷れますか? 部屋に張りたいんだすけど。

 

 

 

 ……だから、後藤はまだいい。

 問題ではあるけど、許容できるライン。アーティストとしてはむしろ良いかもしれないくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 でも、喜多ちゃんは、駄目だ。

 

 決して許容できないラインを越えている。

 

 

 

 

 

 

 虹夏ちゃんと山田を中心として、向かって右の端にいるのが後藤。

 それと逆の左に、2人から近いようで遠い、絶妙なポジションに立っているのが喜多ちゃん。

 

 ……問題は、彼女が自らの存在感を消し去ろうとしていることだ。

 

 皆さんご存じの通り、喜多ちゃんはバリバリの陽キャピーポーだ。

 人と一緒にいることを楽しみ、体験を共にできることを喜ぶ。

 現に、私が一緒にお出かけする時の喜多ちゃんはいつもニッコニコの笑顔だし、今日も山田や虹夏ちゃんと話している時は楽しそうだった。

 

 そんな彼女が、こうして皆と一緒に写真を撮るんだ。そりゃあはしゃぎたいに決まってる。

 

 それなのに、喜多ちゃんは今、穏やかで控えめな笑顔を浮かべるばかり。

 ……いつもの、あの光り輝く太陽のような笑顔が、浮かんでいないんだ。

 

 もっと言うと、それだけじゃない。

 彼女は虹夏ちゃんや山田から、一歩引いた位置にいることもそうだ。

 彼女は写真を撮られ慣れてる。だからこそ、今私が向けているカメラからどう映るのかも、しっかり理解している。

 理解した上で、2人の主張を掻き消さないよう、目立ち過ぎない位置と態度を取っているんだ。

 

 ……ここまで露骨にやられれば、誰だってわかる。

 彼女は、結束バンドの活躍を邪魔しないよう、脇役に甘んじようとしているんだろう。

 

 

 

 多分、全ての元凶は、あの時逃げてしまった負い目なんだろうな。

 

 彼女は、結束バンド(仮)の初ライブから逃げてしまった。

 どれだけ練習してもギターは弾けないままで、そんな状態を先輩たちに見られるのは申し訳なくて、結束バンドの奏でる曲を駄目にしてしまうから。

 

 だから、逃げた。

 

 そして逃げた先で、運命(後藤)に出会って……。

 山田に認められ、虹夏ちゃんに赦され、再びここに帰って来ることができた。

 

 ……けれど、彼女は良い子だから。

 喜多郁代は、自分の醜さに目を向ける強さを持っているから。

 

 だから……。

 あの時に打ち明けた彼女の本心は、バンドに再び迎えてもらった今も変わっていない。

 

 あの日に逃げてしまった自分は、このバンドには相応しくない……って。

 

 故に、彼女は脇役に徹しようとしているんだ。

 多分無意識の内に、他のメンバーから一歩引いて……。

 このバンドに相応しくない自分を踏み台にして、他の3人が伸び伸びと活動することを望んでいる。

 

 

 

 これが、彼女の取った行動のツケ。

 一度逃げてしまった少女が、自分から心に負った罰。

 

 これこそが喜多ちゃんらしさで、これこそが結束バンドの最初の、自然な流れ。

 

 そう、納得しようと、私は奥歯を噛みしめたけど……。

 

 

 

 

 

 

 ……駄目だ。

 こんなの、絶対、認められない。

 

 

 

 

 

 

 太陽のような笑顔を浮かべない喜多ちゃん。

 皆と一緒にいることを喜べない喜多ちゃん。

 

 それじゃ、彼女の最も大きな特徴が、強みが、個性が……かき消えてしまっている。

 

 私は満足できない。

 こんな喜多ちゃんと一緒にいても、私はこの世界を楽しめない。

 

 

 

 だから、だから、だから……。

 

 

 

 今だけは、わがままを通させてもらうぞ。

 

 

 

 

 

 

 この画じゃ、喜多ちゃんの性格も良さも、何も伝わらない。

 それは、駄目だ。アー写として落第点どころか、全く価値がない。

 

 負い目を気にするのは良いんだ。

 自分のやっちゃったことを反省し、その分を埋め合わせようとするのは、人間として尊い思考、行動だと思う。

 

 

 けど、だからって自分を殺しちゃ駄目だ。

 そんなこと誰も望まないし、喜多ちゃん自身も前に進めない。

 

 結束バンドのファンとして、喜多ちゃんのファンとして、私は彼女を止めなきゃいけない。

 そんな悲しい在り方をやめるよう、彼女を説得しなくてはならない。

 

 

 

 でも、これを何と言って伝えればいいのか。

 事が事だ、あまり他のメンバーに意識されるようなことは言うべきじゃないだろう。

 結束バンドは出来立てほやほやのひよこグループ、それぞれの結束が十全になるまでは余計な波風を立てるべきではない。

 

 しかし、そうなると喜多ちゃんに何と言うべきかが難しい。

 下手なことを言ったり、あるいは1人だけ呼び出して話すなんてことすれば、他3人が勘繰ってしまうだろう。

 

 であれば……私は、何と言うべきだろうか。

 

 誰も傷つけず、気付かせず、ただ喜多ちゃんに喜多ちゃんらしくなってもらう。

 

 そんな、たった1つの冴えた方法。

 

 

 

 それは……。

 

 

 

 

 

 

「……ンプ」

 

「え、どしたのチャコちゃん」

 

 

 

「きららジャンプしましょう!!」

 

 

 

 私の答えはこれやと叫び、結論を投げかけた。

 

 

 







 行間を読むの楽しすぎて一生物語が進まない。
 予定では今回で写真撮影が終わるはずでした。
 それもこれも全部、深読みできるくらいしっかり作り込んである原作が悪い。



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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