ぼざろ世界を全力で楽しみたい転生者の話   作:アリマリア

26 / 39
ただし、きららジャンプは全てを救うものとする。

 

 

 

 きららジャンプとは何か?

 ふふん、この割とディープなぼっち・ざ・ろっく! オタクである私が解説してしんぜよう!

 

 きららジャンプとは!

 ……いや、改めて考えると、なかなか説明が難しいな、これ?

 なんか、こう、アレだ!

 主要な登場キャラたちが、一斉にジャンプするヤツ。

 これを総称して、きららジャンプと呼ぶのだ!

 

 いや実際、きららジャンプって明確な定義がないんだよね。

 

 多分発端はけいおん! とかあの辺りに遡るんだけど……。

 きらら……まんがタイムきらら系列に連載されるような、殆ど男性が登場せず、可愛い女の子たちが部活とかお仕事を頑張るお話。

 そういうのがアニメ化すると、皆お決まりのように、オープニングでジャンプをするのだ。

 

 きらら作品でよく見られる、オープニングでのジャンプ。

 これを称し、「きららジャンプ」と呼ぶのである。

 

 

 

 しかし、勿論その中にも、多少の差異はある。

 手を繋いでたり繋いでなかったり、背景が青空だったりそうじゃなかったり、ポーズを決めてたり自然なジャンプ姿勢だったり。

 

 その辺に僅かずつ違いがあるからこそ、正確にどれがきららジャンプでどれがきららジャンプじゃないかの定義が難しい。

 いや難しいっていうか、あくまでそういうミームに過ぎないから、厳格に定義されているものでもないんだけどさ。

 「皆で一斉にジャンプしている」のがきららジャンプとするなら、ゲッターもきらら作品ってことになってしまうものね。

 

 とにかく、確かに言えることは、1つ。

 メンバーが女子or女性のみで、なおかつ同時に楽しそうにジャンプしていること。

 

 このモーションを、オタクは「きららジャンプ」と呼称するのだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 さて、話を戻して。

 

「きららジャンプしましょう!!」

 

 結束バンドのアー写撮影会。

 そこで何故、私がそんなことを言い出したか。

 これに関しては、賢明な読者諸君ならばお察しのことだと思う。

 

 ……いやごめん、やっぱ今のなし。

 推理小説読んでてこの文章出てくると、作者のしてやったりなドヤ顔思い浮かんでムカつくんだよな。まぁ私はガチで賢明だから今まで察せなかったことないけどね。舐めんなよクソナードどもが。

 

 っとと、話を戻して。

 結束バンドのアー写撮影会、なんで私がこんなことを言い出したかと言えば、その答えは1つ。

 

 喜多ちゃんの、自然な笑顔を引き出すためである。

 

 

 

 現在喜多ちゃんは、とても強い罪悪感を抱えている。

 あの日、結束バンド(仮)の初ライブから逃げ出してしまったこと。

 あるいはそれ以前に、嘘を吐いて結束バンドに入ったこと。

 そして、それを黙り続けてしまったこと。

 

 謝罪とは、1つの区切りであり、精神的な禊だ。

 それを契機として、相手も自分も、その罪から意識を切り替える。

 そういう、1つの通過儀礼的なものなのだ。

 

 しかし、そんな禊を経ても、罪悪感から解放されないこともある。

 罪が重すぎた場合や、本人の自罰的感情が強かった場合だ。

 

 喜多ちゃんの場合、犯した罪自体は軽微だ。

 人を殺したわけでもなく、死体を遺棄したとか尊厳を貶めたとか、あるいはテロを企てたとか外患誘致したとか……。

 そういう、普通の人間には抱えきれない罪を背負ってしまったわけじゃない。

 

 しかし、それでもなお、彼女の心に影が落ちている理由は……。

 喜多ちゃんが、あまりにも図抜けた、超絶最強の聖人だから、だ。

 

 彼女の犯した罪は、嘘を吐いたこと、それを隠したこと、責任を放棄したことくらいか。

 高校生の少女としては決して珍しいものじゃない、ありふれた悩みの末のありふれた罪だ。

 

 彼女の精神性が普通のそれなら、一度謝罪を挟めばそれで終わりだっただろう。

 思春期の女の子としてはありふれた罪なのだ。一々引きずっていてはキリがない。

 

 ……が。

 喜多ちゃんは、そんなことすら許さないくらいに、自分に厳しく他人に甘い。

 

 たとえそれが軽い罪だとしても、それを許されたとしても、それでも罪がなかったことにはならない。

 自分は罪を犯した駄目な人間であり、他の皆と並ぶには相応しくない存在だ、と。

 そう思ってしまうくらいに、彼女は……ひたすらに、優しいのだ。

 

 だからせめて、目立たないように。

 脇役として、踏み台として、結束バンドの皆を支えられるように……と。

 

 多分、彼女はそんなことを考えている。

 そう考えるから、皆から、一歩引いてしまうのだろう。

 

 

 

 ……だけど。

 だけど、そんなことは、認められない。

 人生全力エンジョイ勢の私からすれば、そんな結論は受け入れられるものじゃないのだ。

 

 私は、そんな喜多ちゃんの、大人の対応を認めない。

 

 だからこそ……。

 だからこその、きららジャンプなのだ!

 

 

 

「ジャンプ?」

 

 唐突な私の提案に首を傾げる虹夏ちゃんに対して、私はカメラから顔を放し、ピンと1本、指を立てた。

 

「思うに、先ほどから画として微妙なのは、統一された動きがないからです。

 ああいえ、勿論虹夏ちゃんはアクティブで大変結構なお手前なのですが、結束バンド全体の、動きの統一感がないんですよ」

「動きの……統一感?」

 

 

 

 ……実のところ。

 私は人にものを教えるのが、あまり得意ではない。

 

 手前味噌な話になるけど、私はかなり高スペックな自信がある。

 人より何倍も呑み込みが早いし、理解が深いし、実践も上手い。

 だからこそ、人にものを教えるってなると、これがなかなか面倒くさい。

 

 だってさ、私が1言っただけで理解できることを、他の人って100くらい言わないと理解できないんだよ?

 そうなるとどうしても、なんでこんな面倒くさいことしなきゃいけないんだーって思っちゃってさ。

 だから私、人にものを教えるの、苦手じゃないけど好きではないんだ。

 

 だがそれも、時と場合と相手による。

 

 例えば相手が両親なら、多少面倒くさかろうが、ちゃんと1から100まで解説する。

 共通認識を作ったり、同じことで笑ったり驚いたりするために、人には対話が必要だ。

 

 そのためにかかる手間と、それによって得られる関係性の蓄積。

 2つを天秤に乗せた時に後者が重くなるからこそ、私はその道を選ぶ。

 

 当然ながら、世界で一番大切な存在である、結束バンドの皆に対しても同じで……。

 

 どう言えばわかってもらえるかな、と頭を巡らせながら、私は口を開いた。

 

 

 

「写真、特にグループのアー写には、一目見た瞬間にわかる統一感、謂わば『雰囲気』が必要なんです。

 例えばですが、全員が一つの方向に向かって歩いていたり、縦2人横2人で固まっていたりと、そういう感じです。

 今は中央に虹夏ちゃんと山田が固まって、ちょっと離れて喜多ちゃん、逆側にかなり離れて後藤といったところですが、これではバンドというより、修学旅行で仲の良い2人とそうでもない2人がグループになっちゃった写真という感じに見えてしまいます」

「すごく現実感があって嫌な例えだね……」

 

 虹夏ちゃんは、うへーっと嫌そうな表情を浮かべる。

 

 この子は一見陽キャのように見えるけど、その実中身はインドア派の陰寄りニュートラルって感じ。

 そういう、ちょっとお辛い展開に追い込まれたこともあるのかもしれない。

 ……いや、優しい虹夏ちゃんのことだし、むしろ自分は今日のようにつるむ側で、誰かを気まずい立場に追いやってしまったことを思い出してしまったのかも。

 

 私がすっっっっっっっっっっっっごい好きな虹夏ちゃんの特徴の1つに、距離感の取り方がすごくドライってのがあるんだよね。

 虹夏ちゃんって基本めちゃ優しいんだけど、「あーこの子こういうタイプか」って思ったら距離を置く……っていうか、あまり過干渉しすぎないようにするんだ。

 

 だからこそ、こうしてアー写を撮る時も……。

 喜多ちゃんや後藤からちょっと距離を取られても、無理に距離を詰めたり、質問したりはしないのだ。

 

 陰キャはクラスの除け者にされるのを嫌うが、同時に矢面に立たされるのも嫌という性質を持っている。

 過度に排斥されたり、イジめられたりするのは勿論嫌だが……。

 逆に、陽キャに「ねぇねぇオタク君、何読んでんの?」とか「ほらみんな! オタク君が何か言おうとしてるよ!」とか言われたら、それはそれで死ぬ。

 そういう面倒な生き物なんですよ、オタクって。

 

 そういう意味じゃ、虹夏ちゃんはすごくオタク君に優しい距離感を保ってくれる子と言えよう。

 

 適度に気にしてはくれるけど、適度に放っておいてもくれる。

 露骨に気を遣ったような喋り方もしないし、落とした消しゴムは拾ってくれるし、時々視線が合うこともあるんだ。

 やっぱこれ伊地知俺のこと好きなんじゃね? まぁ別に俺の方は伊地知のこと好きとかそういうんじゃないけど告白とかされるんなら全然付き合うとかそういうのも嫌なわけじゃないかな~~~ってクラスメイト男子の200%くらいに思われてそう。

 でもこういう子に「あ、あはは、○○君とはそういうんじゃないかなーって……」って気まずそうに言われるのが一番心に来るから男子諸君は諦めなされ。諦めぬ者は月のない夜は背中に気を付けろよ。剣士の恥を刻んでやる。

 

 

 

 と、それはともかく。

 

「少し説教を垂れるようになってしまって本当に申し訳なくて死にたいくらいなんですが……。

 グループのアー写は、普通の集合写真とは違います。一目見てそのバンドの方向性を示さなきゃいけない……っていうのは、虹夏ちゃんたちには今更語るまでもないと思いますが。

 それ以前に、そもそも統一感……別の言い方をするなら、一体感。それが出ていないと、アー写を見た人は『あぁ、このグループは内部ですら纏まってないんだな』と思ってしまいます。

 要は、『皆がバラバラで仲が悪そうなアー写』より『一体感があって仲が良さそうなアー写』の方が評価されやすいんですよ」

「あぁー、確かにそれはそうかも」

 

 アー写は、言うならばグループの顔だ。

 企画のディレクターや監督は、基本的にまず活動履歴と共にアー写を見てそのグループを知る。

 ちょっとルッキズムな感じはするが、やはり美的な第一印象というのは評価に大きく影響するのだ。

 

 これから結束バンドがより良く活動していくためには、一体感のある写真を撮らねばならないだろう。

 

 

 

 ……と。

 

 一応理屈は通ってるし、こうやって説き伏せれば、虹夏ちゃんはいい感じに説得できるはずだ。

 

 勿論と言うべきか、私がジャンプしようと言い出した理由の本命は、こちらではない。

 最初から言っている通り、喜多ちゃんをもっと彼女らしくさせるためなんだけどね。

 

 まぁでも実際、一体感は出せるのなら出した方が良いし、この辺を弁えればアー写の点数が伸びることは間違いない。

 ここに関して嘘は吐いてないから、どうか許して欲しい。裸で土下座して犬の真似して靴舐めるから。

 

 

 

「でも、統一感を出すってのはわかるけど……なんでジャンプ?」

 

 コクリと首を傾げた虹夏ちゃんに、腕を組んで説明……というか言い訳。

 

「一言で言えば、画に動きを付けるためですね。

 今の段階では皆さんの色と統一感を同時に出す、と言われても難しいと思います。まだまだ知り合って長いわけではありませんしね。

 それならいっそ、画に動きを足して、パワーで誤魔化した方が強いですから」

「動き? ってのがあった方がいいんだ?」

 

 あー、そっか、そこからか……。

 

 うーん……なんと説明したら理解を得られるかな。

 この辺の話って、しっかり理論を学んで理解するか、あるいは結構感覚的な話をしなきゃなんだよな。

 弾き語りだけで登録者数13万越えの最強一流動画クリエイター後藤ひとり様や、音楽系のコンテンツならかなり強い山田ならともかく、虹夏ちゃんに理解できるだろうか。

 

 ま、取り敢えず、出来るだけ平たい言い方を意識して言ってみるか。

 

 

 

「基本的には、そうですね。

 写真やイラスト、動画でもそうですが、ただ静止した状態よりは、何かしらの動きがあった方が想像を掻き立てられるんです。

 で、想像を掻き立てられるということは即ち、目を惹くっていうことに繋がりますから」

 

 ここからは少し話が逸れますが、と前置きして例を出す。

 

「例えば、一昔前で言えばテレビ番組、今では動画投稿者や配信者。こういう映像分野で数字を稼ぐ人は、基本的に画の動きを意識してると思いますよ。まぁ、逆に動きを付けないことによって音に集中させる、などの技法もあるわけですが。

 動画や生放送が氾濫する現在、そういったコンテンツの供給は需要を遥かに超えています。その中で生き残るには、こういった知識は必須になるのです。

 もはや、映像関係の活動者でこういう情報を知らないのは、かなりの情弱と言っていいでしょうね」

「う゛っ」

「え、どしたのぼっちちゃん」

 

 何故か後藤が胸を抑えてるけど、どうしたんだろう。

 

 後藤の……つまりギターヒーローの動画は、基本その首から下だけを映してるだけの、非常にシンプルな構成だ。

 動きは極端に少ないけど、だからこそ弾き語りの音に集中できる。

 音楽に関しては知識にリミッターかけてるから詳しくはわかんないけど、後藤のギターってめちゃくちゃ聞き心地良いからね。

 下手に動画に注力するより、こういうシンプルな構成の方がむしろ映えるというわけだ。

 

 後藤も十中八九、この辺りの事情は理解しているんだろう。

 まさか何も意識しないままラッキーヒットした、なんてわけもないしね。

 

 ……いや、自分で言っててなんだけどちょっと不安になってきたな。

 一応ケアしとくか。必要ないと思うけども。

 

「まぁごく一部、それこそ国宝級とか最高の天才とか絶対者とか孤高のギタリストと呼んでいいような、神に選ばれた真なるイデアとでも言うべき御方なら、ほとんど映像のない弾いてみた動画だけで登録者13万人とか行けたりするかもしれませんけどね。それこそギターヒーロー様とか」

「あー、確かに。ギターヒーローさん、殆ど映像に動きとかないけど、つい聞いちゃう魅力あるもんね」

「うぇへへ……」

 

 私のべた褒めに対してデレデレ照れる後藤が可愛くて仕方がない。

 思う存分にへにへする後藤と違って、口端が吊り上がりそうなのを抑えるので必死ですよこちとら。

 

 ま、照れてしまうのも当然かな。

 後藤視点だと、私はギターヒーローの正体知らないはずだもんね。

 自分という色眼鏡もなく評価してもらえてるんだって嬉しくなっちゃったんだね♡ 可愛いね♡♡♡

 

 いやでもマジレスすると、あんなクソ程目立つピンクのジャージ着てお高いギターなんか持ってたら、普通に特定余裕だと思うんだけど。

 後藤はもうちょいネットリテラシー持った方がいいと思う。せめて動画撮影の時くらいは着替えようよ、ピンクのジャージとか着てる人、そうそう他にいないよ。

 まったくもう、40以上のSNSアカウントでそれぞれ全く別のプロフィール設定でRPしてる私を見習ってほしいってものだ。……あぁいやごめん、やっぱ見習わなくていいわ。これ常人がやったら解離性人格障害起こしちゃいそうだし。

 

「ともかく、基本的にこういうのは、いい感じに動きを付けたらいい感じになります。

 そして幸い、私はいい感じに写真を撮る技術を習得してます、任せてください」

「おぉ……もうなんかいつものことになりつつあるけど、チャコちゃん最高に準備良いね!」

 

 サムズアップしてくる虹夏ちゃんに、同じジェスチャーを返す。

 

 任せてほしい。

 こちとらこの4、5年を「結束バンドのサポートをする準備」というただ1点にのみ費やしてきた高スペック系転生者。

 並みのサポーターよりも総合的なスペックは高いはずだ。高品質の支援をあなたに。灰炉印のパーフェクトケアプラン、月額なんと-120万円! こちらから貢がせてもらうね♡

 

 

 

 * * *

 

 

 

 さて、そんなこんなで説得は終了。

 いざ、ジャンプの瞬間を写真に捉えようという段階に入った。

 

 本当は、あんまり私が口出しするべきじゃないんだろうけど……私にとっての本題は、むしろここから。

 

「ジャンプするのは、動きを付けることに加えて、自然さとか女子高生の青春感もプラスできます。

 だからあまり気負わず……虹夏ちゃんと山田はそのままでいいとして、後藤は別に頭を上げようとかしなくていいし、喜多ちゃんも周りに合わせようとしなくて大丈夫だからね」

「えっ、あっ、いやっ」

 

 後藤がわたわたと両手を振り回し、「いやでも私なんかがそのままだったら結束バンドの足引っ張っちゃいますし」と意思表示するのに対し……。

 

 喜多ちゃんは少し、驚いたように……じゃないな。

 どこか怯えたような視線を、こちらに向けて来る。

 

 ……あちゃあ、この感じ。

 気遣ったの、バレちゃったかな。

 

 ちゃんと隠せるように言ったつもりだったけど、流石は喜多ちゃんだ。

 私が如何に高スペックだろうと、人付き合いに長けた彼女の目を欺くのは難しかったらしい。

 

 であれば……今、続けるべき言葉は。

 虹夏ちゃんに、山田に、後藤に、そして喜多ちゃんに。

 部外者でありファンである、私が言いたい言葉は……。

 

「まだ皆は、バンドの方向性も決まってない。

 それはつまり、どんなバンドにでもなれるってことでもあるよね。

 だから、今から『こうしなきゃいけない』『こうでなきゃいけない』なんて考えるのは損だよ。

 これから先無理になったりしないよう、気を遣わない自分自身を見せてよ。

 ……きっとそれが、一番『結束バンド』のアー写として、一番良くなるからさ。一応プロのカメラマンやれる私が保証する」

 

 果たしてその言葉が、正しい意味で喜多ちゃんや後藤に伝わるかは……正直、賭けになる部分が大きかった。

 人の言葉なんて、捉え方によって180度意味合いが変わって来る。

 できる限り正しく伝わるよう、言葉は選んだつもりだったけど……。

 

 

 

 果たして。

 喜多ちゃんは、ほんの少しだけ目を見開いた後……。

 

 クスリと、小さく笑ってくれた。

 

 

 

「……ねっ、せっかくだし、皆で手を繋いでジャンプしませんかっ?」

「お、いいね~! なんか青春っぽい?」

「あ、わ、私、手汗がぁ……」

「え、やだ。汗ばむし」

「リョウは強制ー!」

「あ、じゃあ私は先輩の袖掴みますね!」

「あっ、く、空気、空気読まなきゃ……!」

 

 

 

 ……うん、和気あいあいと姦しい。

 やっぱり結束バンドは、こうでなくっちゃね。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 その後、アー写撮影はつつがなく進行した。

 

 ハプニングと言えば、後藤の下着を目撃しかけた私が、自分で目潰しして失明しかけたくらいか。

 え、何? 後藤の下着について? 教えるわけねーだろスカポンタン。というかわざと強く頭を打って記憶消去しといたから覚えてないよ。

 

「……ふぅ」

 

 出来上がった会心の一枚を見て、思わず安堵のため息を吐く。

 

 ある意味において、今日の私のお仕事は、ここで終了だ。

 この後は、後藤が山田の心を救うイベントが入るだけ。

 深く関係するわけじゃない私は、当事者ではなく傍観者として、この原作イベントを楽しませていただくつもりだ。

 

 

 

 早くも消えた山田を除く結束バンドメンバーも、虹夏ちゃんの号令と共に現地で解散。

 

 私は荷物を鞄にしまい、何故か「この後遊びに行かない?」と誘ってくれた喜多ちゃんの提案をゲロ吐くような気持ちで断って……。

 「寄り道するから」と皆とは別の方向から家に帰る……フリをして、シュバっと街路樹の影に隠れる。

 

 そこから視線を投げかける先にいるのは……。

 歌詞が書けてない件を相談し損ね、道の塀に座って俯く、我らが主人公(ヒーロー)・後藤ひとり。

 

 さぁ、後藤。

 山田に連絡を取りなさい。

 自分が書く歌詞への不安を、山田にぶちまけるのです。

 本編でも貴重とされるぼリョウ成分、存分に私に味わわせてくれ……!

 

 ドキドキしながら見守る私の前で、後藤は大きくため息を吐いた後、スマホを握りしめる。

 おお、来た来た来た! これで後藤は山田に連絡を取り、例のへい大将の喫茶店に向かう……!

 

 

 

 ……と、私が完全に油断しきった、その時。

 

 

 ぺぽぺぽ、と。

 

 私が提げてた、スマホを仕舞ったポーチから、少し間抜けな音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 ……LOINEの通知音?

 

 …………は???

 

 なんで私??????????

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。