ぼざろ世界を全力で楽しみたい転生者の話   作:アリマリア

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 今回は虹夏ちゃん視点。





ただし、彼女たちにも頑張る理由があるものとする。(虹)

 

 

 

 そろそろ私の誕生日が近づいて来た、ある日のこと。

 

「聞いてください、2人とも!」

 

 珍しく、ぼっちちゃんがちょっと遅れて来た、その日。

 合わせの練習をしようとSTARRYにまで来てくれた喜多ちゃんは、唐突にテーブルに手を突いてそんなことを言い出した。

 

 カウンターの椅子に座って雑誌を読んでた私と、その横で軽くベースを鳴らしていたリョウは、取り敢えず喜多ちゃんの方を見たんだけど……。

 喜多ちゃんは形の良い眉を寄せ、何やらすごい熱を上げていたようだった。

 

 ……うーん。喜多ちゃんって基本的にいつもテンション高いんだけど、今日は何やらいつも以上にカッカしてるなぁ。

 これは先輩として、話を聞いてあげなければなるまいよ。

 

「どしたの喜多ちゃん」

 

 取り敢えず雑誌を置きながら何があったか尋ねてみると、彼女は背負ってたギターをカウンターに置いて、私の隣に座りながら言ってきた。

 

「最近、茶子ちゃんと後藤さんの様子がおかしいんです! 何か心当たりとかあったりしませんか!?」

 

 ……あー、出た、喜多ちゃんのチャコちゃん語り。

 いつもの話題に、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

 この子、本人がいるところではともかく、いないところではいっつもチャコちゃんの話してるからなぁ。

 喜多ちゃんがいつも話してる内容は、3割が世間話で、3割がチャコちゃんのこと、2割がリョウ、それから2割が音楽関係のことって感じだもん。

 

 ま、仲が良い子の話しがちってのは、私たちくらいの年頃じゃ珍しくはない話なんだけどね。

 特に喜多ちゃんは、子供の頃チャコちゃんにすごい助けてもらったって話だし、友達として大事に想うってのは分かんない話じゃない。

 

 しかも、そんな仲の良い子がいきなり引っ越してしまって、突然の別れを経験して……そうして最近、数年ぶりに偶然再会できたんだ。

 なんともドラマチックな展開。そりゃあべったりになっちゃうのも、分かんない話じゃないよね。

 

 ……いやまぁ、それにしたって大好きすぎるでしょって感じだけどさ。

 リョウへの憧れもかなり大きかったイメージだったんだけど、チャコちゃんに対してはそれ以上だもんなぁ。正直ちょっと引く。

 

 

 

 まぁいいや、一旦喜多ちゃんとチャコちゃんの問題は置いておこう。

 むしろ問題はもう片方、ぼっちちゃんの方だ。

 

「あー……チャコちゃんはともかく、ぼっちちゃんがおかしいのはいつものことじゃない?」

 

 私やリョウ、チャコちゃんと一緒にバイトしてくれてる後藤ひとりこと、ぼっちちゃん。

 喜多ちゃんが初ライブから逃げ出しちゃった際に私が招いたギタリストであり、今は結束バンドのギタリストでもあり、そして私やリョウにできた新たな友達でもある子だ。

 

 で、そんなぼっちちゃんは、決して悪い子ってわけじゃないんだけども……。

 こう、なんていうか、リョウとかチャコちゃんとはまた別の方向性の、変わった子なんだよね。

 いや、変って言うか、割と頻繁に溶けたり弾けたりバラけたりメンダコになったりする。多分だけど人間じゃないんだと思う。

 

 そういう意味じゃ、ぼっちちゃんがおかしいのはいつも通りだと思うんだけど……。

 

 首を傾げる私に対して、喜多ちゃんはちょっと憤慨したように言い返してくる。

 

「そんなことありませんよ! 後藤さんは私なんかにギターを教えてくれたり、勉強熱心だったりする、すごく良い子なんですから!」

 

 まぁ、ぼっちちゃんが良い子ってこと自体は否定しないけどさ……。

 あれ、ていうか喜多ちゃん、ぼっちちゃんがおかしいこと自体は否定してなくない? 良い子ではあっても変な子だとは思ってるってこと?

 いやまぁ、何を思っていたとしてもそれを口に出すことがないのは喜多ちゃんの美徳だと思うけどさ。

 

 

 

 私が喜多ちゃんにちょっと白い目を向けてると、喜多ちゃんは「そうじゃなくて!」と頭を振った。

 

「最近の後藤さん、眠そうにしてるんですよ。お昼の時間にクラスに行ったら机に突っ伏して寝てたり、ギターの練習中にもうとうとしたりとか」

「眠そうに、かぁ」

 

 思い返してみると確かに、最近のぼっちちゃん、ボンヤリしてることが多い気がするな。

 いや、ボンヤリって言うか……何か考え込んでる感じ? そんな感じでボーっとしてるんだ。

 

 コップ洗いしてる時に手を止めてたり、ふとした時に声をかけても反応しなかったり、肩に手を置いてみると「ヒュワッ!?」って変な声を上げたり。

 

 いやまぁ、さっきも思った通り、ぼっちちゃんはいつも変ではあるんだけど……。

 言われてみれば、ここ数日のぼっちちゃんは、いつもに輪をかけておかしかったような。

 肌の感じもちょっと悪そうだったし、寝不足と言われれば確かにそんな感じもする。

 

「あー、確かに、ぼっちちゃんちょっと変だったかもね」

「でしょう!? リョウ先輩、何か知りませんか?」

 

 喜多ちゃんはぐいっと上半身を乗り出し、リョウの方に顔を寄せる。

 けど、リョウは……。

 

 ……あれ?

 リョウ、今、ちょっと目を逸らした?

 

「……いや、知らない。でも、この前アー写撮る時に歌詞が云々って言ってたし、作詞について悩んでるんじゃない?」

「あー、なんかプラカード提げてたよね、ぼっちちゃん。あれどこから持って来たんだろ」

「後藤さん1人で悩ませるなんて悪いですよ! 何か私たちで力になれることは……」

 

 喜多ちゃんが人の良さ全開で悩んでいると……。

 

 意外なところから、意見が飛んでくる。

 

「いや」

 

 小さく呟いたリョウは、指を滑らせていたベースから手を離し、喜多ちゃんの方を、そして私の方を見て言った。

 

「私たちは手を出すべきじゃない」

 

 ……おぉ、リョウが珍しく真面目モードだ。

 いつもテキトーだから忘れそうになるけど、こういう時のリョウって結構威圧感っていうか、オーラみたいなのあるんだよね。

 

「でも、後藤さん、すごく眠そうで……」

「そうだよ、私たちが案を出せば、ぼっちちゃんも良いヒラメキあるかもだし」

 

 食い下がる私と喜多ちゃんに対して、リョウは緩く首を振る。

 

「郁代はまだギター下手すぎる。他のこと気にするより、とにかく練習」

「うっ」

「いやリョウ、言い方言い方。喜多ちゃん、これでもかなりのペースで上達してるって! 頑張ってくれてるんだからさ、そんな言い方しちゃダメでしょー」

「虹夏も、今のぼっちにはあんまり干渉しない方がいい。せっかくウチのバンドの作詞が本気で頑張ってくれてるんだから、ぼっちが満足の行くものができるまで待とう」

「うーん……いいのかな、それで」

「少なくとも私は、作曲してる時に横からごちゃごちゃ言われるのは嫌」

「いやそっちが本音かーい」

 

 軽くツッコむ感じでリョウの胸を叩く。

 もう、ほんとコイツは。

 

 

 

 ……まぁでも、そっか。

 リョウがそう言うのであれば、多分、間違いないんだろう。

 

 リョウはことロックや音楽に関しては、かなり真面目だし真摯な人間だ。

 いや、それ以外の部分が雑でテキトーすぎて、相対的にそう見えてるだけかもしれないけど。

 

 私は作曲した経験とかはないけど、リョウが「作曲してる時に横からとやかく言われたくない」って言うんなら、多分それは本当のことなんだろう。

 イメージとしては、バイトでコップ洗いしてる時に横から「そっち先に洗った方がいいよ」「ほらこれもっと丁寧に」とか言われる、って感じ? 

 ……あぁ、それは確かにムカつくというか、ちょっと面倒くさいかもしれない。

 

 で、リョウが作曲をするのに対して、ぼっちちゃんは作詞が担当。

 作曲と作詞が完全に同じとは思わないけど、多分近しい部分はあると思う。どっちも創作系だもんね。

 だからぼっちちゃんに関しても、下手に触れたらうざがられちゃうかもしれない。

 それなら……確かに、あんまり不用意に触れない方がいい、かな?

 

「わーかったよ。取り敢えず、ぼっちちゃんが歌詞を見せてくれるまではノータッチとしましょう」

「うん」

「そうですね……了解です」

 

 リョウは、思ってたよりずっと真面目そうな顔で頷いて、改めてベースを手に取った。

 うーん、この感じ……やっぱりちょっと変か? 何かあったのかな。

 

 ……ま、いいけどね。

 リョウは、ある程度以上の過干渉を嫌うタイプだ。

 語りたがらない都合を無理に聞き出すのは得策じゃない。

 

 必要だと思えば、リョウの方から言ってくるだろうし、ここはスルーしといてやろう。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「ま、取り敢えずぼっちちゃんは放置というか静観でいいとして。

 チャコちゃん、そんなに様子おかしいかな」

 

 チャコちゃんは、ぼっちちゃんとはこれまた少し違う意味で、ちょっと……いや、だいぶ変な子だ。

 

 ぼっちちゃんは、あんまり人とコミュニケーションを取りたがらない。

 より正確には、コミュニケーションを取りたいとは思いながらも、それに苦痛を感じるし、その方法も知らない……みたいな感じに見えた。

 まぁつまり、多分、コミュニケーションを取ることに慣れてないんだろうね。

 きっとこれから一緒にいる内、ぼっちちゃんも少しずつ私たちに慣れていってくれるだろう。多分。……そのはずだよね?

 

 ……で、その一方。

 チャコちゃんは、これまたあんまり人とコミュニケーションを取りたがらない。

 ただ、彼女がぼっちちゃんと違うところとしては、それに苦痛を覚えることはなさそうってことと、その方法を知った上で無視してるっぽいことだ。

 

 接客対応なんかがその典型例だろう。

 彼女はやろうとすれば、きちんとした接客ができる。

 完璧な笑顔を浮かべることも、相手を気遣った言葉をかけることも、柔らかにドリンクを渡すことも。

 その全てができるのに、それをしようとはせず。

 かといって雑にやってるわけでもなく、あれでいて丁寧な対応はしてるから、あんまり否定し辛い部分もあるんだけど……。

 

 彼女がそんなことをする理由は……正直、ちょっとよくわからない。

 多分、チャコちゃんはチャコちゃんなりに、私たちのことを考えてくれてるんだろうとは思う。

 

 いつだってそうだもん。

 チャコちゃんは私たちのために、お姉ちゃんのために、そしてSTARRYのために頑張ってくれてる。

 

 でも、わからない。

 

 なんで、そんなことをするのか。

 なんで、そんなやり方を選ぶのか。

 ……彼女が、何を考えて、私たちにそんなに良くしてくれるのか。

 

 それは、いくら考えても、わからなかった。

 

 結局私には、灰炉茶子がわからないんだ。

 あまりにも、生きている世界とか、常識とか、視点とか、そういう何かが決定的に違うように思う。

 

 ……ま、よくわかんないとしても、チャコちゃんは私の大事な友達だ。

 大事なのは、理解じゃなくて共存。

 そんなわけで、私は今日まで、彼女と良き友達として付き合ってきたんだけど……。

 

 

 

 結局のところ、私よりも喜多ちゃんの方が、チャコちゃんへの理解度が高いんだろう。

 だからこそ、彼女の小さな変化にも気付けたのかもしれない。

 

「おかしいですよ! だって最近のチャコちゃん、明らかに笑顔が硬いじゃないですかっ!」

「え、そう? ……ていうか、マスク越しなのにそんな違いわかる?」

「わかりますよ!」

 

 ……いやこれ、理解度が高いっていうか。

 そんな細かいとこに気付くとか、喜多ちゃんこれ、単純にチャコちゃんの顔好きすぎてめっちゃ見てるんじゃない?

 リョウを気に入ったのも顔の良さからだったらしいし、喜多ちゃんそういうトコあるもんね。

 

 まぁ確かに、チャコちゃん、結構顔は良いとは思うよ?

 お目々はクリクリで可愛らしいし、眉もすっと伸びてて綺麗。髪質もすごく良くて見てて気持ち良いくらいだし。

 パーツだけで見ると、どれも整ってて綺麗なんだけど……。

 残念ながらチャコちゃん、いっつもマスクしてるから下半分が覗けないんだよね。そこがちょっと残念。

 

 それに加えて、チャコちゃんの顔って結構綺麗系なのに対して、(本人に言うと多分ぷんすこ可愛らしく怒るんだろうけど)身長もちっちゃいから体全体で見ると可愛い系で、ミスマッチ感あるんだよね。

 

 だから私としては、チャコちゃんへの評価は「可愛い子だな」程度だったんだけど……。

 もしかして、幼馴染の喜多ちゃんは、チャコちゃんの顔の下半分を知ってたりするんだろうか。

 チャコちゃんって昔から全然見た目が変わってないらしいし、もしかしたら今も、マスクの下まで見るとすっごい美人だったり?

 

 ……今度、お願いして見せてもらおうかな。ちょっと興味あるかも。

 

 

 

 と、それはそれとして、だ。

 

「うーん、チャコちゃんの笑顔が硬い、か……」

 

 心当たりは……うーん、ないなぁ。

 

 私から見たチャコちゃんは、いつも通りの彼女だ。

 お客さんをからかったりしながら、程々に接客をこなしたり。

 めちゃくちゃ丁寧かつ迅速に、なんなら私たちの分まで仕事をこなしたり。

 「練習頑張ってくださいね」って言って、飲み物とか軽食を毎日の如く奢ってくれたり。

 

 少なくとも、私の視点からすると、最近のチャコちゃんにおかしなところはない。

 ……いや、これをおかしなところがないとするのは無理があるけど、チャコちゃんの取る行動としてはおかしくはないんだよ、うん。

 

 何か特別なことがあったりしたかなと頭を捻ってみるけど……。

 ここ最近、バイト以外にあったこと言えば……アー写撮影のカメラマンをしてもらったことくらい?

 それだってチャコちゃん、ノリノリで付き合ってくれたしなぁ。

 笑顔が硬くなるようなことは、ない……はずなんだけど。

 

「チャコちゃんの方は、私は心当たりないなぁ。リョウは?」

「こっちは私もない。……というか、チャコのことはよくわからん」

「そっかー」

 

 リョウとチャコちゃんはどことなく通じ合ってるような気もしてたんだけど、どうやら変人同士でもわからないことはあるらしい。

 となると、フツーな女子高生である私にわかるわけもなく。

 

 残念ながら、喜多ちゃんのお悩みを解決することはできそうにないね。

 

 

 

 私たちにも心当たりがないと知ると、喜多ちゃんはがっくりと肩を落とした。

 

「チャコちゃん、大丈夫かしら。心配だわ……」

 

 そのお母さんみたいな口調に、思わず苦笑いが滲み出る。

 

「心配性だねぇ。いっそ本人に聞いてみればいいのに」

「それは……駄目です」

「なんで?」

 

 いつも明るい彼女にしては珍しく、ちょっと落ち込んだような様子で喜多ちゃんは語る。

 

「……茶子ちゃん、多分、何かをすごく悩んでるんだと思うんです」

「悩んでる? チャコちゃんが?」

「今まで一度も、こんなことなかったんです。茶子ちゃんは昔からいつも、私に弱いところとか見せなくて、完璧で頼れるすっごく綺麗な女の子って感じで……。

 それなのに、最近はどことなく余裕がなくて隙があるっていうか、ぼんやりしてるっていうか……なんというか、まるで普通の女の子みたいで」

 

 あー、なるほど。

 やっぱり、昔から知ってるが故に違いに気付けるヤツか。

 ……というか今更だけど、チャコちゃんって本当に昔からあんな感じなんだね。なんというか、すごいな、色々と。

 

 

 

 しかし、チャコちゃんの悩みかぁ……。

 ちょっと想像付かないな。

 

 チャコちゃんは、あれでいて結構秘密主義的というか、自分の情報……特に弱みを隠そうとするところがある。

 多分無理に聞こうとしても、誤魔化されてしまうのがオチだろう。

 

 となれば……うん。

 

「んー……喜多ちゃんは、普通の女の子っぽいチャコちゃんじゃ嫌なの?」

「そんなことないです! 弱みを見せてくれるのは嬉しいくらいなんですけど、でも、さっきの伊地知先輩じゃないですけど、やっぱり何か悩んでるなら力になりたくて……」

「気持ちはわかるけど……多分チャコちゃん、そういうのは望まなそうじゃない?」

「そうなんですよ。だから、こう、本人にはバレないように何か助けになれたらなって……」

 

 うーん……それは多分無理だなぁ。

 

 チャコちゃん、めちゃくちゃ察しが良いんだよね。

 この前なんて、驚かそうとしてSTARRYの階段下に隠れてたら、入り口のドア開けた途端「どうしたんですか虹夏ちゃん、そんなところで」なんて言われて本気で驚いちゃった。

 それに、ちょっと悩んでたり落ち込んでたりすればすぐ声にかけてくるし……私たちのことを、本当によく見てくれてる。

 

 そんな彼女だから、何かを隠れてやろうとしても、割と簡単にバレちゃうと思うんだよなー。

 

 だから、正直、私たちにできることって多くないんだよね。

 

 多分チャコちゃんは、私たちに悩みを知られることを望まない。

 隠れて力になるってことも、多分無理。

 

 だったら、ぼっちちゃんと同じように、放置するしかないだろうなって思う。

 

 ただ……喜多ちゃんはやっぱり、それだと納得してくれないだろうな。

 そんな喜多ちゃんに対して、結束バンドのまとめ役として、私が言うべきことは……。

 

 

 

 ……そうだ!

 

「ふっふっふ……」

「伊地知先輩?」

「喜多ちゃん、私たちは何かね?」

「何って……えっと、高校生?」

「ちがーう! いや違わないけど、それ以上に私たちはバンドマン!」

 

 私はカウンターに置いていた雑誌を丸めて、喜多ちゃんの方に付きつけた。

 

「バンドマンなら、言葉じゃなくて音楽で語れ!

 ってことで、チャコちゃんの悩みが吹っ飛ぶくらいの、最高の初ライブ見せてやろうじゃん!!」

 

 そうだ。

 彼女は、私たち結束バンドに、期待してくれてる。

 

 なら、その期待を上回るような、すっごいライブをすればいいんだ!

 

「いいじゃん、それ。賛成」

「……そうですね。時には私が茶子ちゃんの助けにならないと!」

 

 横にいたリョウもニヤリと笑ってくれたし、喜多ちゃんも頷いてくれた。

 後は、遅れて来るぼっちちゃんにも聞いてもらうだけ……。

 

 

 

 ……と、そう思っていたら、噂をすれば影。

 

「すっ、すみません、遅れました!」

 

 バン! と景気よくドアが開かれ、そこにいたのは肩を上下に揺らすぼっちちゃん。

 

「ぼっちちゃん、待ってたよー! それで、ちょっと話が……」

 

 早速今の話をしようと、声をかけようとした私だけど……。

 

「そ、その! あの、皆さん!」

 

 すごく、珍しいことに。

 ぼっちちゃんは、必死な形相で私の声を遮り。

 

「良ければ……その、おっ、お願いがあるんですっ!」

 

 そう、言ってきたのだった。

 

 

 

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