平和な元の世界を創造した……はずなんだけど。   作:クレナイハルハ

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番外編:20XX年、某所にて

 

20XX年、日本中を巻き込んだ『魔法少女事件』から数年の月日が流れた。

 

政府は軍に所属した多くの魔法少女、そして更生を終えた敵であった魔法少女に対して受けることの叶わなかった授業や講義を行う事となった。それぞれの県の学校にて行う授業を無事終え、無事成人し就職していったかつての魔法少女達は既に少女では無くなっていた。

 

一人は飲食店、一人は自衛隊、また一人は家の稼業を継いで就職していき魔法少女の活躍は過去のものとなった。

 

そうして迎えた夏、青空から降り注ぐ日差しを手で遮る一人の女性がいた。

 

「あっつい………」

 

片手で日差しを遮りながら、もう片方の手に持ったホースの先に付けたシャワーヘッドで店先に飾られた花へと水を掛ける。

 

彼女の名はオーマ・ラジアータ、かつては魔法少女ラジアータとして活動し逢魔ヶ時ノ王という二つ名で呼ばれた魔法少女である。

 

「ラジアータ、そろそろ言っていた時間だよ」

 

「わかっておる、行ってくる。悪いが店の方を頼む。父さん」

 

「あぁ、行っておいで。お花も忘れずにね」

 

「わかっておる」

 

店のエプロンを身に着け優しい笑顔を浮かべた男性、父さんにそう返しながらホースで流していた水を止めて店の奥にある生活スペースに着けていたエプロンを置く。

 

そして用意していた荷物の入った鞄を肩にかけ、纏めておいた花束を持ち、店の方にいった父さんに一言伝えてから家を出る。

 

ふと、空を見上げる。目の前には綺麗な青空の広がり、鳥達がその翼を羽ばたかせ飛んでいる。

 

「それにしても、あの戦いがもう過去のものか」

 

あの頃では考えられないくらい平和な日常が、そこにあった。

 

公園で楽しそうに遊具や友達と遊ぶ子供がいる。楽しそうに笑い合う人達がいる、空腹に餓えること無く食事をする人々がいて、それぞれに家がある。

 

それは彼女がかつて見てきた二年前ではとても考えられない光景だ。

 

当たり前となってきた平和な光景を眺めながら、彼女は目的地である墓地に足を踏み入れる。いくつもの墓が並び、失くなった者達が眠る場所で自分の用がある人物が眠る場所の前に二つの人影があった。

 

「お前らは……」

 

「お久しぶりです、ラジアータさん」

 

一人は黒髪のおさげを左右に結んだ髪型の女性、小暮 御菓子(こぐれ おかし)。かつては軍所属の魔法少女達が住む寮にて寮母のような役割を担っており、今は実家の旅館にて働いている女性である。

 

かつては目の前の墓に眠る少女の面倒を見ていた事もあったらしい。

 

「久しぶり、ラジアータ」

 

そして此方へと小さく手を振るのは暗めの茶髪をポニーテールに纏めた少女、赤心(セキシン) こころ。当時は魔法少女ビートライザーとして活動しており、かつて敵であり彼女に救われた魔法少女がヘルパーとして生活を支えながら、モデルとして活動している。

 

「なんだ、お前らも彼女の墓参りか?」

 

「うん、偶然そこで会ってね」

 

「全く、せめてこころさんは彼女と一緒に来れば良かったんじゃないですか?一人じゃお水とか線香とか大変じゃないですかー」

 

笑いながら「凄い偶然だよねと」と話すこころに頬をプクリと膨らませながら心配した様子で話す御菓子。

 

「せっかくの祝日なんだし、彼女にもたまには休んで欲しいのさ…」

 

()()()、ですもんね」

 

そう話す彼女らの横を通り、墓に供える為に持ってきた花を分けて左右に供える。

 

「綺麗なお花ですね、ラジアータさんが選んだんですか?」

 

「一応、花屋だからな」

 

「なるほど、グラジオラスにアイリス。カスミソウか。良いのを選んだねラジアータ」

 

「確かに色合いが良いですね」

 

「グラジオラスの花言葉は思い出、アイリスは希望、カスミソウは感謝だね。」

 

「へぇー、そんな意味があるんですか」

 

こころの知識に感心した様子の御菓子はラジアータの持ってきた花束を見つめる。選んだ花はそれぞれに意味を調べ選別して出来た花束である。

 

グラジオラスの花言葉は『思い出』。

 

アイリスは『希望』と『信じる心』。

 

カスミソウは『感謝』。

 

ガザニアは『あなたを誇りに思う』。

 

アングレカムは『祈り』、『いつまでもあなたと一緒』。

 

シオンは『追憶』『君を忘れない』。

 

スターチスは『途絶えぬ記憶』。

 

全てラジアータが彼女へと向けていたメッセージを秘めた花ばかりであった。

 

だが、彼女に対して花言葉で表したメッセージはその場の二人も……いや、彼女と深い関わりのあった魔法少女なら思い浮かべるであろう。

 

ラジアータが供えられていた古い花と持ってきた花を交換し、御菓子が持ってきたお供え物を置き、こころが持ってきた線香に火を点ける。

 

「さて、誰から拝む?」

 

「それじゃあ私から」

 

そう言って御菓子は『佐久魔 空良』と刻まれた墓石に手を合わせる。静かに、小暮 御菓子は黙祷する。それに続いてこころが彼女の墓へと手を合わせ黙祷する。

 

「それじゃあ、私は文乃ちゃんや結姫ちゃん、音羽ちゃんの所にも行ってきますね」

 

「私もご一緒しようかな」

 

「我もすぐに合流する、先に行っておれ」

 

そう話ながら二人は別の離れた場所に並ぶ二つのお墓へと向かう。それを見届けラジアータはゆっくりと墓石へと歩みよった。

 

「お主なら、この世界を変えられる気がする。そう話していたが、まさか本当に世界を変えるとはな」

 

墓石へと語りかけながら手に持った柄杓で水を掬い上げ、ゆっくりとかけていく。

 

「お主のおかげで日本は救われた、人々は空腹に餓えることはなく道は整備され、我らのような魔法少女が生まれることも、戦うこともない。平和そのものだ」

 

柄杓を置き、手を合わせて目蓋を閉じる。

 

確かに私はお主ならと言ったが、なんで逝ってしまったんだ。もし、あの時におまえにかけた言葉がお前が前にしか進めなくする呪いになってしまったのなら我は……いやこれはもう考えないと決めていたな。

 

全く、お主も音羽も結姫も死んでしまって残された我らは何度涙を流したことか……とんだ魔法少女タラシだな、お主は。

 

あの戦いが終わりもう10年か、早いものだ。

 

なぁソラよ、お主は天から見守っているのか?それとも輪廻転生し新たな命となり生まれ変わったのか?後者なら、どうか幸せに生きて行け。

 

我らは我らなりの幸せと日常を歩む。

 

目蓋を開き、立ち上がる。後は音羽と結姫、文乃の墓にも手を合わせなければな。あの二人も空の上できっと幸せに暮らしておるだろうか、それとも輪廻転生し幸せに暮らしているだろうか。

 

これからいくつもの月日が流れてたとしても、我も御菓子もこころも逝ってしまったお主らの事は忘れない。

 

「さて、行くか」

 

ゆっくりと立ち上がると、後ろに気配を感じて振り返るがそこには誰も居なかった。不思議に感じていると、風が吹いて髪が揺れる。

 

風は、ゆっくりとした温かく優しい風だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急ニュースです。10年前、シンの残した魔法少女に関する研究書類並びに、魔導兵器や軍に所属した魔法少女に関する書類が何者かに盗まれました。関係者によりますと、何者かが書類を保管していた施設を襲撃。書類を持ち去ったと考えられています、なお施設を警備していた人達は普通では有り得ない傷を負っており意識は不明です。警察はこの事件の捜査を進めています。』

 

 






『第1章、再び繋がるCONTACT』Fin.

    Next Episode,Unlock.

『第2章、挫けぬ心をREMEMBER』Start.



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