平和な元の世界を創造した……はずなんだけど。   作:クレナイハルハ

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スカイレイス

魔法陣を潜り抜けた瞬間に私が見たのは、地球とは変わらない青空、そしてそんな青空の宙に浮かぶ島だった。

ここが別次元、スカイレイス。

地球と同じ空だからあまり別次元にいるという感覚が感じられない。

そんな事を考えていると、宙に浮かぶ島の中央に透明な何かに覆われた大きな城が見えた。

 

「あれが、スカイレイス……」

 

あそこが、メリアの故郷。

そんなことを考えていた時だった、大きな爆発音と共に透明な壁付近から爆炎が上がり、金属同士がぶつけられたような金属音がいくつも鳴り響く。

そんな音に、前の世界で最前線でビーストと戦闘した記憶が甦る。

沢山の悲鳴や怒声が常に聞こえる戦場、息を着く間もなく攻撃してくる異形の怪物、奴らを殺さなければ後ろにいる魔法少女や軍の人達が殺される。

最小限の動きで攻撃を避けてビーストを殺し、周りを見てもし唾競り合いなどになっている魔法少女がいたらすぐに助けなければ別のビーストに殺される。

攻撃されたとしても噛み後や傷、あざで済めば良い方だ。

とにかく殺せ、とにかく動け、休むな、手を止めるな。

思考を止めるな、常に周囲を確認して攻撃しろ。

最小限の動きで敵を殺す、攻撃を避けなければ死ぬ。

 

『ご主人様!』

 

「ッ!」

 

メリアの言葉に目の前の光景が現実に引き戻される。

 

何をしているんだ私は、こんなところでボーッと突っ立てる暇なんてないだろ、今はこんなことしてる場合じゃない。

何のために私はここにいる、もう前の世界のような後悔をしないためじゃないのかッ!

 

背中の翼を動かし城へと向かい飛行する、城全体を覆う透明な壁。

恐らくはスカイレイスを守っているのだろう、そんな城の周囲には崩れた建物らしき残骸が溢れており、城の城壁には盾を構え片膝を着いている少女とクロスボウらしき物を構えた少女の姿が見えた。

城、正確には城を覆うように存在している透明な壁を攻撃する沢山の怪物と、離れて爆撃を繰り返す怪物達。

恐らくはフォールエンスの怪物とみて間違いはないだろう。

 

「メリア!」

 

私の声に答える様に左手の甲に装着されているメモリアルボンドがドクンと発光し私の手へと魔方陣が展開される。

思い浮かべる、光の羽の生えた機械の翼を広げ空を飛び、雷と共にガトリングガンを掃射しビーストを殲滅する、皆を笑顔にしたいと願っていた優しい少女を。

 

記憶燃焼(メモリアルバースト)、力を貸してミクさんッ!」

 

私の手には彼女が飛びながら撃っていたガトリングガンであるガーディリアが握られており、その重量を主張していた。

ミクさんが常にこれを持ってあのように飛行していたと思うと、ガーディリアを掃射しながら飛行していたミクさんは凄かったのだと実感する。

私はガーディリアを操作し銃身を回転させながら、城を囲う怪物へと向かって急降下しながら銃口を城付近の怪物達へと向ける。

すると、撃鉄が高速で回転する音に気が付いたのか此方へと視線を向ける怪物と城壁にいる少女達の呆然とした表情が見えた。

 

「ガーディリアッ!」

 

私の叫びに答えるように機械の擦れる音と弾丸の発射される発砲音が連続で響き、ガーディリアを持つ両手にくる反動を身体強化で封じる。

ガーディリアから放たれる弾丸の雨に、怪物達が次々と撃ち抜かれては沢山の光の粒子となり消えていく。

 

「ライトニングッ!」

 

更に、城へと向かってくる様々な怪物をガーディリアから放たれた雷が貫き、光の粒子に変えていくが、いくつかの怪物は膝をついただけだった。

城の透明な壁付近にいた敵が消えたのを確認して、ガーディリアを手放す。

ガーディリアは光の粒子となって消える、問題はまだ遠距離の敵が残っている事だ。

降下して城壁に降り立つと、膝を着いていた少女に肩を貸す形でクロスボウを持った少女が此方へと向かってきていた。

クロスボウを持った子の方はまだ動ける、でも消耗しているだろう。問題は盾らしき物を持った少女だろう、彼女はもう限界だろう。

向かってくる彼女達に体力を消費させないよう此方から近付き、声をかける。

 

「城付近の敵は殲滅した。現在の状況は?」

 

私の言葉に二人はポカンとした様子で顔を見合わせる。

 

「君は……」

 

「あなたが王妃様の言っていた?」

 

「私はセルリアン、王妃様については知らないけど援軍だと考えて。」

 

二人の質問に返事を返していると、遠くから聞こえてきた化け物の怒声と遠くから聞こえる爆発音に顔をしかめる。

恐らくは遠くの怪物達が爆撃を再開したのだろう。

 

「二人は下がっていて」

 

「何をいってるのさ、私も一緒に戦うよ。ネクスが……カインが支えてくれたお陰で少し休めたし」

 

「デルタ、それ以上無理は」

 

「へへ、大丈夫だよ。私はまだ……」

 

「クロスボウを持ってる貴方ならまだしも、盾を持つ貴方は今すぐ下がって休んで。そんな状態じゃ足手まといになる、二人とも今までずっと戦ってきたんだから下がって休んで、二度は言わないわ。」

 

「なっ!?あなた、いくら何でもそんな言い方!!」

 

「カイン!私は、私はこの城を守る要なんだから……大丈夫だよ、例え体がボロボロでも心は負けないから」

 

私の発言に怒りを押さえられたさない様子で私へと向かおうとするクロスボウを持った少女を盾を持った少女が止める。

それにしても、盾の彼女が言ったこの城を守る要という発言。仮説だが、恐らくはこの城を覆っていたあの光の壁は彼女の妖精魔法なのだろう。

だとしたら敵の爆撃や剣からずっとこの城を守っていたことになる、見るからに体が震えつつも無理して立っている状況だ。

なら、彼女が光の壁を展開しなくて良いようにしつつ相手の怪物達を一気に削りきらなければならない。

 

「あなたがあの光の壁?を作ってここを守っている、それで合ってる?」

 

「え、えぇその通りです。デルタの妖精魔法は魔法を展開し続けるという意識が持つ限り、対象を守る事が出来るのです。デルタの魔法で光の壁へのダメージは10分の1になって肉体に蓄積されるのですが、ずっと戦っていたからこのような状態に」

 

盾の少女、デルタと呼ばれる彼女に肩を貸しているカインと呼ばれる少女がデルタを支えながらそう説明する。

先程まで怒っていたとは思えない程に冷静な言葉の羅列に目を見開く、恐らくは私への怒りを抑えてデルタの妖精魔法について説明してくれる。

それなら既にデルタと呼ばれた彼女はもう限界、いや限界以上に頑張った後なのだろう。

 

「……分かった、今から二人に指示を出す。急に現れた人に指示されるのも嫌だろうし戸惑うだろうけど、今は聞いて。」

 

そう言うと二人は顔を会わせて見つめ合うと頷き、私へと視線を戻した。

 

「盾を持った貴方は城を守る妖精魔法を止めて、これを持って守っていて欲しい。」

 

そう言いながら足元へと背負っていたリュックを下ろす、様々な物が入っているからかドサッと普通のリュックからはならないであろう重量感のある音がした。

 

「クロスボウを持った貴方はもし、私が防ぎ切れなかった爆撃がここまできたら防いで」

 

私は記憶を辿り今使えそうな魔法少女と魔法、そして武器を思い付いた私は二人にそう言って城壁から下の大地へと飛び降りる。

 

「セルリアン!?」

 

「セルリアンさん!?」

 

二人の驚いた声が聞こえるが無視し地面に着地する瞬間に私は背中の翼で勢いを消して着地する。

チラリと後ろの城壁の上を見れば、四つん這いになり身を乗り出して此方を見つめ安堵した様子のカインと、先程預けたカバンを抱えたデルタが此方を見つめていた。

二人は優しいな、私がこうして城壁から地面へ飛び降りたのを心配して身を乗り出している。

戦場で誰かに心配されたの、本当に久しぶりな気がする。

 

「メリア」

 

『うん、ご主人様。いけるよ』

 

左手を自身の胸まで掲げる、私の声に答えるようにメモリアルボンドがドクンと鼓動して、メモリアルボンドにある真ん中の円へと向かう形で掘られた溝のようないくつもの線が輝き発光する。

思い浮かべるのは、両手に炎を纒い敵を殴り付ける戦法を得意とし、何があっても最後まで諦めない心を持ちまるで太陽のような笑顔を浮かべるのが特徴的な魔法少女。

 

記憶燃焼(メモリアルバースト)凛音(リオン)さん…借ります」

 

私の両手を包み込むように現れたのは赤オレンジ色が入り乱れ、手の甲には太陽らしき装飾がデザインされたガントレット『グラシャイン』だ。

深呼吸し右手の拳を握りしめて胸の前で開いた左手に打ち合わせる。

グラシャインからガキンという音が鳴った瞬間に右手を握りしめ地面へと叩き付けながら叫ぶ。

 

防土壁(アースウォール)!!」

 

次の瞬間、私が拳が落ちた少し先の大地が盛り上がり、どんどんと高く登り土の壁を作る。やがて土で作られた壁は城全体を覆うように広がり、瞬く間に妖精達の避難している城を囲んだ。

 

「一瞬で、城を覆うように壁を作るだなんて……セルリアンさんの妖精魔法は土と雷に関連するのかしら?」

 

「こんなに早く、広範囲に展開するなんて凄い妖精魔法だ。でもこの妖精魔法、まだ──」

驚いた声をあげる頭上の二人の元へ背中の翼を広げて上昇しつつ、両手のグラシャインを手放すイメージをすればグラシャインが光の粒子へ消え普通の私の両手が現れる。

 

「今から私はここを爆撃してる部隊を叩く、二人はここで待機してて。」

 

城壁から此方を見つめている二人へそう言って背中の翼を広げ更に上昇する、先程見つけた体に様々な銃器を生やしていた怪物達へと向かう。

私がこのまま向かえば、怪物達は私を倒そうとターゲットを切り替え、あのお城より私を優先して排除しようと動くはず。

恐らくは大量の銃撃をされる、当たったら痛いから当たらないよう動かないと。

いくら魔法少女の自然治癒が優れているといえ、大量に撃たれたら死ぬ、なら相手を撹乱しつつ一気に片付けないと。

 

「メリア」

 

私の声に応えるようにメモリアルボンドがドクンと鼓動しメモリアルボンドの真ん中の円へと向かう形で掘られた溝のようないくつもの線が輝き、発光を開始し、メモリアルボンドを装着した左手の手のひらに魔方陣が展開され回転する。

 

─『中々やるねセルリアン、ここまで耐えた魔法少女は久しぶりだよ。だから見せてあげる、これが私の奥の手……必殺技だ!』─

 

あの怪物を一気に片付ける方法について考えていた私の脳裏に、一人の魔法少女の姿が過った。

私の声に答えるようにメモリアルボンドがドクンと鼓動しメモリアルボンドにある真ん中の円へと向かう形で掘られた溝のようないくつもの線が輝き、発光を開始する。

思い浮かべるのは、自身の価値を証明するために軍へと所属し、その特徴的な戦い方で見事に自分の価値を証明した少女。

ラジアータさんのように二つ名『幻剣』をつけられるほどに強かったあの人、魔法少女リベルタとの模擬戦を思い出す。

 

記憶燃焼(メモリアルバースト)

 

軍に所属して様々な戦場を経験しある程度は戦えるようになった私は、魔法少女リベルタこと天草 運命(アソウ サダメ)さんと模擬戦をすることになった。

私はこの人が産み出した自身の魔法二つを掛け合わせた戦法に圧倒された、そして最後にはその戦法に私を含めた何名もの命を救われた。

最終決戦前、突如として前線に現れた大量のビーストから私を含めた魔法少女達を逃がすため、リベルタはその場に残り犠牲となった。

前線に支給された魔導兵器を持ち、魔法と武器でビースト相手に時間を稼いでいる姿は今でも夢にみることがある。

 

「もう一度、メモリ──」

 

『ご主人様、そんなにメモリアルバーストを使ったら……』

 

更に記憶燃焼(メモリアルバースト)を使おうとした私の詠唱は、メモリアルボンドから聞こえてかたメリアの声で中断された。

メリアは自身の妖精魔法である記憶燃焼(メモリアルバースト)の代償、一部の記憶の欠落を心配して、連続して魔法を使う私が心配になって声をかけてきたのだろう。

そんな彼女を安心させるように私は口を開いた

 

「メリア、私はあなたの故郷を護ると約束した。」

 

魔法は、奇跡とは違う。

奇跡は起こる事を祈ることしかできないが魔法は違う。魔法少女が願えばそれは、魔法は現実になる。もし奇跡が空から垂らされた一つの糸なら、魔法は……魔法少女の魔法は空からいくつも垂らされているロープ。

魔法は助けを望む人の手を掴むことも、拒むことも、払い除けることもできる。

魔法は使い方次第、人を助けることも傷つけることも出来る。

魔法少女の存在は、魔法は救済にも破壊にも……奇跡にも絶望にもなれる。

 

──ソラちゃん、この先で何があっても後悔しないように魔法を使って欲しいの…例えそれがどんな時でもね。これから守ってほしい、私のお願いだよ。──

 

だからこそ、後で後悔しない魔法の使い方を、選択を教えてくれた人がいた。

 

「魔法は使わなければ意味がない、後悔がないよう使えるときに使うべきだと知ってるから。それに私は大丈夫だよ、メリア」

 

そう言い左手のメモリアルボンドへと微笑み、私は改めて唱えた。

 

記憶燃焼(メモリアルバースト)

 

新たに出現した左手の魔方陣から生成されたソレを握りしめる、私が今握っているのは魔導弾対応型散弾銃ストライカー弐拾五式。

おおよそ、魔法少女が持っていたら違和感を感じられるであろう、実銃だ。

魔導弾対応型散弾銃ストライカー弐拾五式は実銃である散弾銃、RDIストライカー12を元として軍と魔法少女が協力し研究、実験を行い擬似的に作り出した魔力を使用した弾丸を使うことの出来る兵器の事だ。

相手の懐に飛び込んで一気に叩くなら、これが相応しいだろう。

私は爆撃を行っている怪物へと飛行しながら右手に持ったエスペランサーと左手の魔導弾対応型散弾銃ストライカー弐拾五式を握りしめ怪物達へと向かって降下する。

 

「ミーティア」

 

体を魔力が覆い、淡い青色で輝きはじめると同時に飛行速度が上がり私が飛行した後を青い光の軌跡が示す。

この魔法は瞬速と似ていて高速で移動する事が可能だ、でもデメリットとして体を覆う魔力が青く光輝くから凄く目立ってしまう。

 

「上に敵らしき存在を確認、全員狙え!」

 

「上空の敵を発見!」

 

「射程内だ!」

 

「爆撃ィイイイ!」

 

「爆殺っ!抹殺っ!」

 

目立つ私の接近に気付いたのか、怪物達はそれぞれ体に持つ銃器を此方はと向け発砲を開始する。

スナイパーライフルを両手に生やした怪物、頭には大砲らしき砲門を持ち両肩には大量のミサイルが格納されたコンテナを持つ怪物、両手と腹部にガトリングガンを生やした怪物がそれぞれの射撃武装を此方へと向ける。

次の瞬間、耳をつんざくような大量の発砲音やガトリングガンの砲身が回転する音が聞こえるなか此方へと向かって飛んでくる銃弾をミーティアによって強化された速度と背中の翼で急停止やバレルロール、急上昇を駆使して避けながら怪物達へと降下する。

急停止やバレルロールといった無茶な回避行動のせいか、呼吸が乱れる。

すると、銃弾が当たらなかったからか怪物の一体がその両肩に生やしたコンテナの蓋を開ける、そこから大量のミサイル弾が格納されており、そこから放たれたミサイルは煙の軌跡を残しながら此方へと向かって飛んできた。

 

「ぐっ……きつい、でもっ!」

 

メリアの故郷を、守るためなら……魔法少女はみんなの夢や希望を護るものだから、我慢する。それに被弾して、止まってる時間なんてないっ!

 

流石にあのミサイルの中を潜り抜けるのは難しいと判断した私は降下を一度止めリベルタのもう一つの魔法を使うため詠唱を口にする。

 

「ファトゥム!」

 

私の左右、そして前後等に並んで私の姿をした残像が複数体生み出される、残像達は今の私同様にミーティアの効果で光輝く姿で飛行しているため、相手からはどれが本物か分からないだろう。

ファトゥムは自分の分身、残像を産み出すことが出来る。それに産み出した分身や残像はある程度自由に動かすことが出来るから相手を撹乱するのに使える。

産み出された残像達を操作し私から離れて飛行させる、すると逃げる残像達を追いかけるように怪物から放たれたいくつかものミサイルが飛んでいく。

それを確認した私は残像ではなく私の近くへと向かってくる少なくなったミサイルを潜り抜け、怪物達へと向かい斜めに降下する。

ファトゥムで生成された残像に騙され、怪物達はドンドンと残像を狙い射撃する。撃たれた私の残像は即座に光の粒子となって消滅し、その数をどんどんとへ減らしていく。

 

リベルタ、あなたの必殺技……借りるね。私のため、ううん……護るために、今度こそ失わないために。

 

──ファトゥム!ミーティア!これが、これが私だけの価値で──

 

「ファトゥム、ミーティア……これが、彼女の持つ彼女だけの価値」

 

彼女がいつも、必殺技を使う際に使っていた詠唱を、少し私なりに変えて唱えながら新たに産み出した残像達と共に一気に射撃を続ける怪物へと向かって降下する。

 

──私の意味!私の証明!!──

 

「彼女の意味、彼女の証明、彼女が残し示してくれたもの!」

 

怪物達が撃つ弾丸が耳元を掠め、僅かに髪を散らす。それでも私や私の残像達は止まらない、止まるわけには行かない。

 

「オンリープルーフ、インパクト・ドライブ!!」

 

オンリープルーフ、インパクト・ドライブ。

 

それは魔法少女リベルタが自身の魔法を二つ使用して使う戦法であり必殺技。

この技はリベルタの言葉通り呼んで字の如く必ず殺す技として成り立っている、ミーティアで自身の移動速度を強化し、敵へと突撃しながらファトゥムで産み出した残像を周囲に展開、操作し共に突撃させることで相手を撹乱させ、油断したところに攻撃を叩き込む。

この技の凶悪な所は例え一度、攻撃を避けられたとしても、残像の操作や突撃のタイミング等、動きやタイミングを変えることでいくつものバリエーションを展開でき、相手にパターン悟られないよう戦闘を行うことが出来る汎用性だ。

私の残像が怪物の中の一体、両手にスナイパーライフルを生やした怪物達へと迫り右手に持ったエスペランサーを振り上げる。

それに対して怪物は自身の両手に生やしたスナイパーライフルの銃身を使い横凪に振るう

。だが、怪物の攻撃が当たった瞬間、私の残像が光の粒子となり消滅する。

 

「ナニッ!?」

 

それに動揺した瞬間に着地して背後へと回った私は、右手に持ったエスペランサーを横凪に振るい、怪物を吹き飛ばして両手と腹部にガトリングガンを生やした怪物へとぶつける。

 

「ごばらっ!?」

 

「こらっ!?テメェ邪魔だ!!撃てねぇだろうがぁ!」

 

「ど、何処ダァ!?何処に……こうなれば、ミサイルロックでぇッ」

 

「今ッ!」

 

そして即座に地を蹴って宙へ浮かび、本体である私を見失い両肩のミサイルコンテナの蓋を開く怪物、即座にファトゥムに紛れて接近した私は左手に持った魔導弾対応型散弾銃ストライカー弐拾五式をミサイルコンテナへと向けて発砲する。

そして即座に背後へとバックステップの要領で下がら飛行した次の瞬間、両肩にミサイルコンテナを持った怪物はミサイルコンテナ内部のミサイルの誘爆によりだ爆発し光の粒子となり消滅した。

目の前で発生した爆煙で残った怪物である両手と腹部にガトリングガンを生やした怪物と両手にスナイパーライフルを生やした怪物から恐らくは私の姿が見えないだろう。

それこそ暗視スコープ、ナイトビジョンや相手の持つ熱を検知する事が出来るサーマル暗視スコープでもない限り今の私が攻撃されることはない。

ガトリングガンの銃身が回転する音に即座に上へと飛行する、煙の向こうから私を狙っているのか両手腹部のガトリングガンの銃身を回転させている怪物の姿があった。

 

「ファトゥム!」

 

怪物が空を見て私の姿を見つけると即座にその銃口を此方へと向ける、即座に私はファトゥムを展開させる。

産み出された残像達と共に怪物へと向かい、此方へと向かってくる銃弾の雨に次々と残像達が光の粒子となり消えていく。

私は右手に持ったエスペランサーの刃先を怪物へと向けて降下を始める、重量のある大剣により先程以上の速さで降下するため銃弾を回避するのが先程よりも難しく感じる。

そのため、避けきれなかったがどうにか致命傷を避けた銃弾が腕や頬を掠める。

傷口から滲み出た血液が肌を流れる感触、そんな今の自分の状態に懐かしさを感じる。

私は、普通の少女でないのだと、改めて感じてしまう、考えてしまうがそんな思考をどうにか散らす。

 

「早いッ!?──がはっ!」

 

驚く声をあげる怪物の腹部、ガトリングガンの銃身を避けるように生身?らしき腹部へと突き刺す。即座にエスペランサーを力任せに引き抜き左手に持ったストライカー弐拾五式を向ける、引き金を引き、腕にくる反動を押さえ込みながら引き金を引き続ける。

弾倉から装弾された魔導散弾が怪物へと打ち込まれる、更に打ち込んだ場所へとストライカーが連続で六発の銃弾を叩き込む、すると怪物は光の粒子となり消滅した。

ふと感じた嫌な予感に即座に左へと飛ぶ、私が横へと飛んだ瞬間にスナイパーライフルの弾丸が私のいた場所を通り過ぎた。

銃弾の飛んできた方向を見ればその両手のスナイパーライフルをこららへと向けた怪物の姿が見える。

 

私は右手に持ったエスペランサーで地面を削りながら振りあげ土煙を起こす、これで相手からの私は見えないだろうし闇雲に撃っては来ないだろう。

即座にファトゥムを展開し残像と共に土煙の中から飛翔する、すると私と同時に煙から出た残像2体が光の粒子となり消える。

即座にファトゥムを追加で唱え残像の数を増やす、そしてミーティアで敵へと接近しながらエスペランサーを敵へて向けて投擲する。

 

「フンッ!この程度、自慢のライフルの強度には叶わぬわぁ!!」

 

怪物は下から上へと両手のスナイパーライフルを掬い上げるようにしてエスペランサーを弾く、だがこれでいい。

敵の視線は先程エスペランサーを投擲した場所に設置しておいた、驚いた表情を浮かべた残像である私に向いている。

エスペランサーを投擲した私は、即座にファトゥムで投擲した私の残像を生成しミーティアでの高速移動でエスペランサーを投擲した場所から怪物の真横へと移動していた。

移動しながらストライカーに使用している弾丸、魔導散弾を装填してストライカーのリロードを終えた私はストライカーを握りしめ、怪物へと向けて走る。そして、怪物が残像である私を撃った瞬間にミーティアで加速した私はスナイパーライフルを両手に生やした怪物へとストライカーの銃口を押し付け、引き金を引く。怪物は私が接近していたことか、それともストライカーの威力か分からないが驚愕したような表情を浮かべながら消滅した。

周囲に外の怪物が見えない、恐らくは城を爆撃していた怪物達を殲滅出来たのだろう。手元に引き寄せたエスペランサーを逆手に持ち地面に突き刺し左手に持ったストライカー弐拾五式を手放す、私の手を離れたストライカー弐拾五式は光の粒子となり地面に落ちることなく消えていった。

 

「………城の方に戻らないと」

 

背中の翼で空へと飛び上がる、先程の怪物達を倒したからなのか爆撃音はなく戦闘音等は聞こえなかった。

先程の怪物達を倒した事でフォールエンスは一時的に撤退した?そこから考えるなら、恐らくはフォールエンスがこの世界における拠点を持っている可能性がある、そして相手の拠点を探し出さない限りはこの攻撃は繰り返されることになりそうだ。

相手が昼にだけ襲撃してくるとは思えないし、深夜も起きて警戒した方が良いだろう、久し振りの徹夜になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背中の翼で飛行して城に戻った私を迎えたのは、先程までの機械的なデザインで体を隠す程の大きさの盾が消えており前を開けた赤いコートに黒いシャツ、ハーフパンツを履いた耳が横に長いことが特徴的なデルタと思われる少女と、そんな少女に寄り添い心配した様子を見せる褐色の肌に紺碧の瞳、金髪をショートヘアにしたサイバーパンク風というのだろうか、黒に赤色のラインが走るオーバーサイズなアウターを着て足首まである黒いパンツを履いている少女がいた。

 

「すごかったよ!セルリアン!!っ痛たた……」

 

『大丈夫なんか、ゼノン』

 

「あ、アハハ今回は少し無理しすぎたかも……ごめんよアルファ、無理をさせたよね」

 

『気にせんといて、ウチはあなたの盾なんだから。それにこういうときは謝罪より感謝の方がウチは嬉しいで』

 

「ありがとう」

 

『えへへ、かまへんでー?』

 

そう言ってアルファと呼ばれた少女?がデルタらしき少女に笑顔で返事を返す。

 

「すごいですねセルリアンさん、雷に加えて土の魔方を扱える上に沢山の武器をお持ちなんですね!」

 

『そうですよセルリアン殿!自分が変身したシュヴォルガンとは違う、連続で打ち出す武器と近距離で使っていた飛び散る何かを打ち出す武器はとても参考になったであります!他にはどんな武器か、是非ともお聞かせ願いたいでありますよ!!』

 

銀髪をストレートヘアにして、片目眼鏡を着けた先程ボウガンらしき武器を持っていたカインだと思われる少女と、軍服というのだろうか?黒い軍服に黒いケープを羽織った少女が両手を握り興奮した様子で近付いてそう話しかけてくる。

 

「えっ、えっと……」

 

「こらガンマ、そんな急に迫られたらセルリアンさんが驚いて動けないですよー」

 

『は!?も、申し訳ないでありますセルリアン殿!』

 

先程までの、正確には私がこの場所を離れるまでの間に増えていた二人の少女の存在。

そんな二人と常に一緒にいる友人と話す様にスキンシップを取る二人はメリアの言っていたケルビム・セラフィーさんの呼んだ増援?でも何か違うような気もする。

 

「どうかしたの?セルリアン」

 

『どないしたんや、急にうちらを何度も見て、あー!もしかして、ウチのあまりの美しさに見惚れたとか?いやー!困るなぁ!!』

 

「そんな訳ないでしょアルファ、きっと戦って疲れてるのよ」

 

『妖精魔法を何度も連発していましたから、きっと体力の消耗も大きいのでありますな!』

 

「えっと、あの……その二人は?」

 

このまま考えても分からないと感じて素直に質問を口にすると、デルタと思われる少女が掌にポンと拳を乗せると納得した様子で口を開いた。

 

「そう言えばちゃんと自己紹介してなかったね、ボクはゼノン!ゼノン・フェレクス、種族はエルフだよ。この世界に住む色んな種族の文化や生活を学ぶために旅をしてるんだ!こっちはボクと契約している妖精の──」

 

『アルファやで!ゼノンを守る盾、守護を司らせて貰っとる妖精や。よろしゅう!』

 

「改めてまして、私はネクス・スクトゥム。種族はヒューマンで、このスカイレイスの下にある大陸にある王立アーク・アン・シエル学園の生徒会長を務めています。此方は私と契約している妖精のガンマです」

 

『ガンマであります!火と水と風と土の4属性を司る妖精であります!』

 

「本当はあと一人、スピカっていう仲間がいるんだけど別の次元にいるフォールエンスと戦ってる人達に援軍をお願いしに行ってくれてるんだ」

 

「よう、せい?」

 

おかしい、メリアは私の肩に乗れるくらい小さかった筈だし、なにより私が見てきた妖精……ウィザーズ達が連れている妖精はメリアと同じくらいのサイズだった筈。

いや、この次元ではメリアのサイズが普通じゃなくてこのサイズが普通なの?

いやでも昔から伝わる妖精について図書館で調べても小さな姿をしているって書いてあった筈だし、もしかして例外なの?世界が変われば、じゃなくて次元が違うとここまで学んだことが変わって出てくるの?

 

『この城、そして妖精達を助けてくださり感謝する、メリアの主よ。』

 

妖精の姿について思考を巡らせていると、この場にいなかった声が聞こえ視線を向けると桃色のストレートヘアにドレス、頭に乗せられた黄金のティアラが特徴的な少女が此方へと歩いてきていた。

 

「ケル!」

 

「王姫様!」

 

見た目からかなりの高位な存在なのだと考えていると、ゼノンとネクスの言葉に考えが確信に変わる。

恐らくはこの人がメリアが言っていたケルビム様に当たる存在なのだろう。

 

『我は精霊王姫ケルビム・セラフィー、この城の主でありメリアの上司といった所かの』

 

「別次元より、メリアの願いにより救援に参りました。セルリアンとお呼びください」

 

『うむ。セルリアンよ感謝する、お主が来なければ恐らくはゼノンもネクスもこれ以上の怪我を負う可能性があった。よくぞ一人で、この城を攻撃するもの達を退いてくれた』

 

「其方にいらっしゃるカイン、デルタと呼んでいらっしゃる方々の尽力があってこそかと。」

 

取りあえず、元の姿で話した方がいいかな?

そう考え左手の甲にあるメモリアルボンドを外すと、私の髪が白から元の黒へと戻り、着ていたフード付きのコートも白から元の青へと変わる。

 

「ぇ、ええー!?髪が黒くなって、服まで変わっちゃった!?」

 

『なんか、一気に雰囲気変わるなぁ』

 

「も、もしかしたら彼女の契約している妖精の力で変化していた?それなら戻ったというのが正しいのでしょうか……羨ましい」

 

『驚きであります……』

 

私の変化にカインとデルタが驚いたように目を見開く中、魔方陣が展開されメモリアルボンドを通り抜けるとメモリアルボンドを包む光が変化した。

そして光は大きくなり、やがて光が収まるとそこにはいつものサイズではなく、()()()()()()()()()()姿()のメリアへと変わった。

 

………え?

 

『ケルビム様!良かった、無事で……』

 

『おや、前より寂しがりやになったのではないかメリア?』

 

そう言いながらケルビムさんへと抱きつくメリアの姿、いつもの肩に乗りそうな10cmくらいの身長ではなく普通の少女と変わらない姿で現れた姿に思わず固まる。

 

『む?どうしたセルリアンよ、硬直しておるが……』

 

「いやその、妖精ってもっと小さい姿だったと……」

 

『あぁ、お主は知らないのか。別次元から来た訳だし仕方がない、では説明しよう!』

 

そう言うとケルビムは背中にてを隠すと即座にスチャッと眼鏡を取り出して装着し、何処からか教棒を取り出した。

 

「いやその眼鏡と教棒どこから?」

 

『さて、セルリアンよ。我々妖精は魔力を多く含む場所、つまりはこのスカイレイスのような場所にいる時は元の姿に戻る』

 

あ、これ黙って聞いた方がいい奴。なんだか軍に所属していたあの子が説明しようモードになったときのことを思いだすなあ。

 

「元の姿ってことは……」

 

『そう、ヒューマンと同じ大きさになる訳だ』

 

「えっと、つまりは私のいた次元では魔力が多く含まれてないから小さいのであって魔力が豊富なこの次元だとこうなる?」

 

『その考えであっているぞ、何せ地球は遥か昔に魔力を扱う技術が衰退し魔力なんて殆ど存在しないに等しいからな』

 

「なるほど……」

 

少し考えて浮かぶのは、軍に所属していた頃に聞いた魔女狩りだろうか?ともかく妖精についての詳しい情報を得られた、考えてみれば今までメリアに妖精について詳しく聞いたことが無かったから良い学びだ。

そう言えば、フォールエンスは何故ここを襲撃したのだろうか?何らかの目的があることは確かなのだろうが………いや、それより考えるべきはこの後だ。

前の世界では、こういった場所の襲撃は繰り返し行われることがあった。

物資の補給や怪我の治療、食事や睡眠の時間を与えないように短期間で襲撃するのは当たり前だ。

繰り返されることを予測するなら、フォールエンスがこの世界で活動する拠点を破壊するしかないだろう。

 

「ところでケルビム様、今回のフォールエンスの襲撃を防ぐことが出来ましたが、私の予想なら一度退いたとしても、次が来る可能性があるかと」

 

『なに?……面倒な奴らよ。奴らの拠点を潰さなければこの襲撃が続くというのか』

 

「恐らく、その可能性が高いです」

 

私とケルビムの話を聞いたゼノンとネクスは目を見開き驚愕の表情になる。

 

「そんな!?」

 

「あんな大量の怪物が何度も来るなんて、いくらボク達の妖精魔法でも……」

 

『………奴らの拠点は未だに不明、とにかく今は休むのが先決じゃ。特にゼノンの傷は多い、早く休ませなければ』

 

「ケルビム様、私の魔法でゼノンさんとネクスさんを治療すれば良いかと」

 

『……それは、メリアの妖精魔法か?』

 

「はい、使えば相手の傷や疲労などの状態異常を自分に移す事が出来る魔法で────」

 

『ダメだ』

 

「ッ!何故!?妖精魔法を使えばきっと二人を万全な状態に出来る筈だし状況も好転する筈です!相手はいつ襲撃してくるのかわからないんですよ!?」

 

『だからこそ全員が消耗せず力を温存するために、次に備えて全員で休むのだ』

 

「でも、状況を変えるためには!ここを守るためには……」

 

『……セルリアンよ、今まで何度メリアの妖精魔法を使った?お主はメリアの妖精魔法に頼りすぎている。その代償がどんなものなのか、()()()訳ではなかろう?』

 

そう言いながら抱きつくメリアの頭を撫でるケルビム様の様子に私は少し苛立ちを覚えた。

忘れるなんてそんな筈はない、メリアの妖精魔法の代償は理解しているし、その上で使っている。

魔法は、後悔しないように使うべきだ。

 

「そのセルリアン、ボクは大丈夫だからさ。これでも自然回復能力には自信があるんだ!」

 

『せやせや、今まで結構えぐい怪我した時あったけど少しすればこの通り元気な状態やしな』

 

「私も疲労こそありますが、怪我はありませんから。」

 

胸を張りまたもや痛む様子のゼノンさんを支えるアルファさん、ネクスさん達の言葉に自分が少し焦っていた事に気付いた。

今は、前よ世界のように切羽詰まった状況ではない、そう自分に理解させるため一度深呼吸をしてからケルビム様へと向き直る。

 

「………分かりました。ならケルビム様、城壁のここか城の前を貸して頂けますか」

 

『む?それは構わんが……』

 

「見張りをします。これでも3日ぐらいなら寝ずに戦った経験もあります、だから皆さんと休んでください」

 

『地球ってそんな魔境じゃったか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから城の門の前にきた私はリュックから取り出した説明書を片手にパップテント組み立てている、何故かついてきたネクスさんとゼノンさんに見守られながら。

……どうしてこうなった?てか貴方達はこの城で休む部屋を与えられていたでしょ、なんで?

そんな疑問のこもった目線を向けるとゼノンさんは片手で後頭部をかきながら口を開いた。

 

「い、いやぁ別の次元の話を聞きたくて……抜け出して着ちゃった。えへへ……」

 

「その、ガンマが話を聞きたいと言って聞かなくて」

 

『む?主殿も異なる世界での学校について聞きたいと申していたではありませ──むぐ?!』

 

話を聞いたところこう言うことらしい、取りあえず二人とも部屋に戻ってすぐに休んだ方が良いとは思う。

ちなみにメリアは久しぶりにケルビム様と出会ったからか、ケルビム様と話している。

 

「ところでセルリアン!一体なにをしているの?」

 

「みての通りテントを組み立ててます、ケルビム様のお城にお世話になるのは悪いですし、此方の方が早く対応できます。見張りをしつつも休む場所が必要なので簡単な拠点を設置してるんです」

 

「むしろケルビム様なら別次元から来て頂いているのでお部屋を用意してくれると思いますが……。それにしても、素晴らしい技術力ですね、こちらは。私たちの知る夜営は地面に横になって毛布を被るものですが、確かにこれなら雨も防げますし大地に体の熱を奪われません。」

 

「ボクやスピカの分も欲しくなっちゃうなぁ……」

 

「あの、あげませんからね?」

 

テントを組み終えた私はテントの入り口を開けたまま、入り口に座り込む。一応、私はいつでも動けるよう魔方少女の姿のままだ。

見ればゼノンさんもネクスさんも地面に座っており、そんな二人に寄り添うように妖精達も座っている。

 

「それで、私に聞きたいことがあるんですよね」

 

「うん、そうだよ。えっとまずネクスから」

 

「では、私が始めに。セルリアンさん、あなたの住む次元にも学校はあるのですか?良ければ、どんな事を学んでいるか等を聞かせていただきたくて」

 

「私の住む次元では、大きく分けるなら何個か学校があります。まず七歳から十二歳までの六年間通う小学校、小学校の次に三年通う中学校。ここからは自由なのでなんらかの仕事に着く人もいますが、殆どは高校に通います。」

 

「高校?と呼ばれる学校の前で言っていたここからは自由というのは一体?」

 

「小学校から中学校までは義務教育……国に住む全ての子どもにその2つの学校へ行かせるのが義務なんです」

 

「そ、そんな制度が!?なるほど、ギムキョウイク……素晴らしいです!!」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうだよ、ボクやネクスが住む下の大陸でも学校はあるけど基本的には貴族とかよっぽど勉強が出来る人ぐらいが通う場所だからね。」

 

この世界では、学校があるけど全員が入学したり学ぶことは出来ないらしい。なんだか、嘘みたいな話しに感じてまうが別世界ではこれが普通なのだろう。

 

「えっと、高校を卒業した後は就職するかは自由ですが専門的なことを学ぶために専門学校や大学に行く人もいます。」

 

「専門学校というのは!?」

 

「えっと、お医者さんとか学校の先生とかになるための様々なことを学ぶための場所です。」

 

「なるほど……セルリアンさんの世界はとても素晴らしいですね、ギムキョウイクの上に更に専門的なことを学ぶ学校まで存在するなんて」

 

「その分、学費がかなりのかかるんですけどね」

 

小学校から中学が義務なのだが、高校からは学費がかなりかかる。専門学校や大学に入るなら更にかかるのが、少し大変な所だ。

私の世界の学校についたネクスさんが何やらメモらしきものをしているのを確認して、ゼノンさんの方に視線を向ける。

 

「それでゼノンさんは?」

 

「あぁ、それなんだけど……少しだけボクと一緒に来てくれない?見張りはネクスにお願いして」

 

「構いませんが……」

 

ネクスさんに見張りを任せて私はゼノンさんと二人だけで城へと入った。城は全体的に石を使って作られているからか、まるで絵本に出てくるお城のようだ。

そんな城の中を眺めつつもゼノンさんの後を追って歩く。

 

「ねぇ、セルリアンは契約してる妖精とどう出会ったの?」

 

「朝起きたら、枕元にいて急にご主人様と言われました。」

 

「へ、へぇ……そんな感じだったんだね。」

 

「はい」

 

いまでもあの時のメリアとの出会いは鮮明に思いだせる、朝起きて見知らぬ10cmくらいの身長で機械で出来た翼が生えた少女からご主人様と呼ばれるなんて、今後は絶対にありえない体験だろう。

 

「私の場合はね、確かにスピカに初めて会ったときかな。魔獣に襲われてるスピカとスピカの村の人を守りたいって思った時にアルファが空から現れてねそこで契約したんだ」

 

「そうなんですね……」

 

凄いな、まるでアニメのようなタイミングで契約してただなんて。この世界を物語にしたとき、きっと主人公になるのはきっとこの人……人で良いのだろうか?

いや、違うだろうし言い換えるなら……この世界を物語にしたとき、主人公になるのはきっとこのエルフさん?なんだろうな。

そう思っていると、一つの扉の前に着いた。

 

「この中で話そう」

 

そう言って扉を開いて部屋の中へと歩いていくゼノンさん、ケルビム様に何かしらの許可を得ずに入っても良いものかと思いつつもゼノンさんを追いかけて部屋にはいる。

 

部屋の奥には巨大な石板が飾られ他に何もない部屋、まるであの石板のためだけに作られたような部屋だ。

石板にはなんらかの文字らしきものと絵が彫られており、絵には恐らく妖精だと思わしき羽の生えた女の子と人間と思われる存在が描かれていた。

 

「これは……」

 

「これはねセルリアン、妖精魔法について記されている石碑なんだ。」

 

「妖精魔法についての?」

 

「ケルが言うにはこの石碑にはこうかいてあるらしいよ」

 

そう言ってゼノンさんは真剣な眼差しで石碑の文字を見つめ口を開いた。

 

 "妖精と妖精から選ばれし者、契約を結び"

 

  "その身に仮初の奇跡を宿すであろう"

 

   "その奇跡、妖精との繋がり示す"

 

  "代償を払い、契約者は奇跡を望み願う"

 

"その代償を持って妖精は仮初の奇跡を実現する"

 

       "妖精と契約者"

 

   "2つの強き思い、重なりしとき"

 

    "仮初の奇跡は、真の奇跡へ"

 

   "代償は妖精との絆により転生せん"

 

「……これは妖精魔法についてスカイレイスで古くから伝えられてきた伝承で、妖精魔法について昔のスカイレイスにいた契約者と要請が書いてたらしいんだ。」

 

「……何故、私に妖精魔法の伝承について教えてくれたんですか」

 

私は、この世界にとってのイレギュラー。本来なら関わることのない人物だ、そんな部外者とも言える人物に何故このような伝承を教えてくれるのか、わからない。

 

「そうだなぁ、妖精魔法を使う後輩へのおせっかいかな。所でセルリアンはさ、伝承についてどう思う?」

 

ゼノンさんからの問いに改めて先ほど聞いた石碑に記された伝承について考える。

『妖精に選ばれし者』、これは恐らく私やゼノンさん達のような妖精と契約した人物の事を指す言葉だろう。

であれば『仮初の奇跡』とは妖精魔法を指しているのだろうか?

私がメリアの妖精魔法を使う際に記憶を代償に捧げること、何らかの代償を払うことが伝承における仮初の奇跡と共通している。

だが、これは私以外のスカイレイスの妖精と契約した人の妖精魔法について詳しく知らない為に断言は出来ないだろう。

奇跡とも言える力、それが妖精魔法を示す言葉なら何故『仮初』という言葉を?『仮初の奇跡』と『真の奇跡』の違いは一体?

他にも気になる言葉があるが何を意味しているのか、分からない。

 

「分かりません、ただ……」

 

「ただ?」

 

「『仮初の奇跡』から『真の奇跡』へ転生させるには、妖精との強い繋がりが必要なのでは、ということだけ考察できました」

 

そう言うと、ゼノンさんは少し驚いたように目を見開くとすぐに笑いながら、口を開いた。

 

「ふふ、()()だよセルリアン。君が使っている妖精魔法は、この石碑で言うところの『仮初の奇跡』の状態なんだ」

 

「……なぜ、あなたがその事を分かるのですか?」

 

「だってボクの妖精魔法は、()()した後の物だからね」

 

所謂、ドヤ顔というやつだろうか?そんな表情をしながらそう言ったゼノンさんに私は納得した。

確かにそれならこの石碑や妖精魔法について詳しいのも理解できる。

この伝承は確かであると身を持って知っているからこそ、私の妖精魔法が仮初の奇跡だと判断できたのだろう。

 

「ボクの使っている今の魔法はね、昔と比べてかなり代償が軽くなったんだ。今は自分には来るダメージは10分の1だったけど、前はそのまま体にダメージと痛みが蓄積されてさ……あの頃は大変だったなぁ……」

 

ダメージがそのまま自分に入り、守った対象の痛覚までも請け負う。

それはつまり守る対象の怪我は請け負えないものの、ダメージと痛みかなりの忍耐力が必要だ。

痛みも苦しみも、疲労も状態異常も相手から自分に置き換える事が出来る魔法少女はその魔法を使っていた。

自分が強くないから、戦えないからせめて自分の力で魔法少女が戦えるようにと。

それが出来る彼女がどれほど強くて、どれほど苦しんでいるのかを、私は知っている。

たまたまだった、軍に戻ってきた魔法少女が戦闘で毒を持ったビーストとの戦闘で毒針で刺され怪我の出血の多さから状態が悪く意識を失った状態だった。

 

『○○○っ、○○○、誰か!早く○○○を治療場へ!』

 

『私が運ぶ!だから私に彼女を背負わせてッ!』

 

たまたま出入口の近くにいた私は身体強化の魔法で背負い、瞬速で彼女を運んだ治療場へと運んだ。

 

『救急なの!!この子を早く……ッ!?』

 

『………ッ』

 

青い髪は膝ほどある三つ編みにし、暗い紫色の瞳の彼女は首から下を覆う黒のラバースーツを着用し、その上から私が魔法少女の時に着ているドレスとは違い背中のひらいた簡素な青いワンピースを着た彼女がいた。

彼女は背中から彼女が魔法少女になったときの武器と思われる刀らしきものが納刀されている黒の鞘を吊るしていた。

彼女の名は雪月 雨音(セツヅキ アマネ)、実は敵魔法少女からスパイで潜入している、密かに軍の魔法少女がビーストとの戦闘で死ぬよう呪いを撒き散らしているなど様々な噂が一人歩きしていた彼女は私が背負ってきた魔法少女を一別すると口を開いた。

 

『……着いてきて』

 

落ち着いた様子で話す彼女に着いていくと、軍医である先生がいた。先生は毒で苦しむ魔法少女を視ると、出血多量な上に意識もなく戦闘後で体も弱っていた今の魔法少女には薬の投与は危険だと告げた。

 

『そんなっ、彼女はこのままじゃ』

 

『……先生、私がやる』

 

『アマネ……いいんだね?』

 

『ん』

 

『……分かった』

 

私が初めて彼女が魔法を使うのを見た。

その魔法を受けた少女は先程までの苦しそうな顔から穏やかな状態へと変化した、そして次の瞬間に雪月 雨音(セツヅキ アマネ)がその口から血をゴボッと吐き出しまるで今も攻撃されているような苦しそうな嗚咽を漏らしながら倒れた。

その姿に私は呆然として動けなかった、そのあとに軍医である先生が彼女の持つ魔法と彼女がどんな子なのかを教えて貰った。

誤解を受けやすい彼女は、とても強くて孤独だった。

魔法少女事件が失くなったこの世界で彼女はどう過ごしてあるのだろうか、また勘違いされたり、独りになっていないだろうか?

 

少し、心配になる。

 

「ゼノンさんは、強いですね」

 

「アハハ、よくネクス達にも言われるけど私は強くないよ。私は神様じゃないし英雄でもないから手の届く人しか守れない、だからせめて手の届く範囲の人達には絶対に笑っていて欲しいから守りたい、それだけなんだ。」

 

本当にこの人は、彼女に似ているけどきっと彼女とは別の方向で強いんだろうな。

 

「それに、強いのは君の方でしょ?セルリアン」

 

「え?」

 

そう思っていた私へとゼノンさんが告げた言葉に思わず思考が停止した。

 

「私が、強い?」

 

「だってそうでしょ、ケルが言ってたんだ。君の妖精魔法は、使えば使う程に記憶が消えていくって」

 

ケルビム様が、彼女に話したのか。

私の魔法の情報は可能な限り周りにはバレたくないんだけど。

 

「………そんなの、そんなの悲しすぎるし苦しい筈なのに君は今日私達を守るため何度も使ってくれた。セルリアン、なんで君はそんなに強くなれるの?」

 

そう聞く彼女はまるで泣きそうな表情を浮かべ、潤んだ瞳で私を見つめてきた。

ゼノンさんは感情が豊かで素直だ、出会ったばかりの私の心配するばかりか、私の使う魔法の代償を知って涙を流す。

この世界、私の世界で他人の為に涙を流せる人は、きっと彼女を含めて何人いるのだろうか。

 

「私は、私はただ自分に出来ることをしているだけ。昔、ある人に誓ったの……私はみんなの夢や希望を守るために戦うと。今回は私と契約したメリアに故郷を助けて欲しいと頼まれて、私には護る事が出きるだけの力があった、私は自分に出来ることをしただけ。」

 

魔法少女は、みんなの夢や希望を守る者。

 

火守さんが教えてくれた()()()()()

 

今の私がこうして魔法少女として戦えて、魔法を使える理由。

 

「そっかぁ……これでも色んな経験をしてきたけど、なんでかな……セルリアンには敵わないって感じるよ」

 

まぁ、自分でもかなり凄い経験をしてきていると思う。

魔法少女になって、自分と歳も変わらない相手と本物の殺しあいをして、戦場を経験して、どれだけ最善を尽くしても救えないことを知った。

 

人の生き方は千差万別、どんな事を経験したか、どんな育てられ方、どんな人間関係を築いたかで大きく変わることを知った。

 

人の体と心は、みんな等しく脆く儚く散るときは一瞬だと知った。

 

そんなことを想っていたら、ぐぅ~というお腹の鳴る音が聞こえゼノンさんの方をみれば目を瞑り、お腹を押さえた様子で口を開いた。

 

「難しい話したからお腹が空いたぁ、ご飯たべようご飯」

 

「……はぁ」

 

なんだか、さっきまでの会話が嘘のような間抜けた感じに思わずため息が出た。

 

「はっ!?そう言えばセルリアン!!」

 

「は、はい?」

 

部屋を出ようと扉まで歩いていると突如ゼノンさんが振り向いて私には詰め寄ってきた。あまりの勢いに半歩ほど後ずさる。

 

「セルリアン、あのおっきな鞄に食料とか入ってたりする!?」

 

「は、入ってますが……」

 

「お願い!!私にもたべさせて?」

 

「お断りします」

 

「なっなんでぇええーー!?」

 

両手をあわせてお願いと言うゼノンさんにこの世界でも頼みごとをするときに両手を会わせるのだなと考えつつ断る。

この世界の食料が別次元の地球に住む私の体に合うのかわからないし、もし食べて体調を崩す訳にはいかない。

それに、どれだけの日数を此方で過ごすのか分からないし此方の1日が私の世界での1日なのかも分からない。

ゆえに自分の分である食料は可能な限り節約して長期に渡って滞在することが出来るようにしたいのだ。

 

「いや、此方のセリフなのですが……」

 

「だってさぁ!いきなりの事だったしご飯なんて用意出来る訳ないじゃん!?」

 

「今から買いにいけば良いのでは?」

 

「そうだけどさぁ!!いつ奴らが攻めてくるか分からないしその、異世界のご飯を……ね?食べてみたいなぁなんて」

 

「え、えぇ……」

 

絶対に前者じゃなくて後者が理由な気がする。

 

「めっちゃ引いてる!?とにかくお願い!!お礼に何か用意するから、これを逃したら異世界のご飯を食べるなんて冒険は……出来ないんだよぉぉおおお!」

 

「ちょ、ちょっと!ひゃ!?」

 

そう言いながら私の腰に抱きついてきたゼノンさんの勢いに思わず背中から倒れる、腰へと抱きつくゼノンさんを引き剥がそうとするが、全く動かない。

身体強化を使っても剥がせないなんて、どうなってるの!?

 

「放さないぞぉ!セルリアン!君が頷くまで、ボクは絶対に諦めないーっ!」

 

「その諦めない心はこんな所じゃなくて、もっと別の所に使ってください!?」

 

なんとかゼノンさんを引き剥がそうとするが、力強くしがみついているからか剥がれない。

 

「大丈夫か!?」

 

「何か大きな音が聞こえましたが!」

 

どうにかゼノンさんを剥がそうとしていると、部屋の扉が開く。そこには先程倒れたときの音に反応して駆けつけたのかメガネを掛けたネクスさんとケルビムさん、そしてネクスさんの契約妖精であるガンマがいた。

 

「あぁ、その……えぇと」

 

『そ、その、中々関係がその進むのが早いかと思うんじゃが……せめてゼノンに用意した部屋でそういうのは、な?』

 

困惑した様子のネクスさん、そして目をぐるぐるとさせながら何故か頬を上記させて話し出すケルビム様に此方まで困惑してしまう、だがケルビム様が凄い勘違いをしていることだけは理解できた。

 

「ま、待ってください!!これはそういうのじゃなくて、ゼノンさんも離れてください!!」

 

「嫌だ!!もう絶対に離すもんか!!君が頷くまでボクは離さないぞ!」

 

『これは……セルリアン殿が誘い受けという状況でありますか?』

 

「な、何を言ってるのかしらガンマ!?」

 

首をコテンと傾げながら話すガンマの話に頬を顔を赤らめながら声をあげるネクスにガンマは再び口を開く。

 

『よくケルビム様が読んでた本に書いてあったであります』

 

『そうじゃ、これは別次元に住む者同士の禁断の───ってガンマ!?いつのまに我の秘蔵本を!?』

 

とにかく、これ以上へんな誤解を受ける前に説明しないと。

仕方ない、地球から持ってきた物資には限りがあるけど変な勘違いをされるよりましだ!

なによりこんな状況はあの魔法少女がヨダレを垂らしてダイブしてきた時の事を思い出しそうだから早く離れて欲しい!

あのときは、近くにいつも一緒に行動している魔法少女()()いて、助けを求めたらすぐに引き剥がして貰えた。

今思い出しただけで背中に嫌な汗が伝うのを感じた。

あのとき程、同性への恐怖を感じたことはない。

 

「もう!その、分かりました!分かりましたよ、食料を分けますから、だから早く離れてください!!」

 

「本当!?やったぁぁぁあ!!」

 

そう言うとゼノンさんは即座に私から離れると両手を上げて嬉しそうな声をあげる、その様子にため息を着きながら立ち上がる。

その様子に何かを感じたのか、ネクスさんが口を開いた。

 

「食料ってまさか……ゼノン」

 

「……あ、ネクスそのこれは」

 

その後、ゼノンさんの言い訳も虚しくネクスさんのげんこつを受け引きずられていった。

なんとかケルビム様への勘違いも解くことが出来たのだが、ゼノンさんとネクスさんはすぐに私のいるテントへとやってきた。

今から食料は買いにいくにも遅く、異世界の食事に興味があった為、私の元へときたらしい。

 

結局ゼノンさんに負けたんですね、ネクスさん。

 

ちなみに鞄にはいっていたのは鍋に入れたお湯に袋ごと入れて温めるタイプの非常食で、豚骨魚介まぜそばに醤油ラーメン、カルボナーラにペペロンチーノや様々な缶詰めとかなり沢山の種類はいっていた。

このときばかりは食料を多めに購入する判断をした過去の自分と、買い出しに出てくれた希代さんの部下の人達に感謝した。

 

「うんまぁー!これが異世界の麺料理か…これ魚?いや肉?の美味しい感じのスープが絡んだ麺!とにかくお湯で温めるだけでこんなに美味しい料理が出来るなんて凄すぎるよ!」

 

『ほんまにウマイなぁご主人!セルリアンさんの世界にもこんなウマイもんが沢山あるなら行ってみたいわ』

 

「そのときは絶対に私も誘ってくださいよゼノン!1人だけ美味しいご飯とか許しませんよ!」

 

『セルリアン殿の世界には素晴らしい技術力で溢れてるのでありますな、ますます興味が出てきたのであります!!』

 

「それにしても、本当に良かったんですかセルリアンさん。ゼノンが言い出したとは言え貴重な食料を……」

 

「大丈夫、遠慮せずどうぞ」

 

真っ暗になり空には三日月、半月、満月と三種類月が大地を照らしている。

地面に座り温めた豚骨魚介まぜそばを木で出来たフォークで麺を啜るゼノンさんとアルファさん、ネクスさんとガンマさんを横目にガスコンロに設置した小さな鍋、コッヘルで茹でた醤油ラーメンの入った袋を手に取る。

この世界を冒険しながら、旅しているゼノンさんは野宿をした時の食事の為に木で出来たフォークを持ち歩いているらしい。

まぁ、幸い食器類の必要な物じゃなくて袋を割いてすぐに食べられるタイプだから自分用の食器類を使わなくて済んだのが幸いかな。

洗うのにも水を使わなければならないから、フォークだけで済んで良かった。

 

『ご主人様、良かったの?食料……』

 

「大丈夫、食材は多めに買って貰ったから。何より……」

 

『ご主人様?』

 

食べたくても食べられないのが、どれだけ悲しくて苦しいのかはよく知っているし目の前で感じて欲しくない。

 

「…なんでもない。遠慮せず、メリアも食べてね」

 

醤油ラーメンの袋を割いてテントの入り口に座るメリアに手渡して自分の分の袋を茹でる。

この世界も夜が暗いのは変わらない、月が三つもあるのは予想外だったけど。

数時間後、食事を終えたゼノンさん達は部屋へと戻っていった。

自分の食事を終えてからコンロなどの一式を閉まってリュックへと片付けてからテントの中に入る。

 

さて、見張りをしないと。

 

既にメリアがテントに入っていて座っていた、コンロやごみをしまったリュックをテントの入り口へと起き寝袋と毛布を取り出す。

この次元だとメリアが私と同じくらいよ大きさになったのは完全に想定外だったけどこの寝袋ならメリアも入れるよね。

 

「メリア、この寝袋に入って休んで。寒かったら毛布もあるから」

 

『ご主人様、使わないの?』

 

「いつフォールエンスが仕掛けてくるか分からない以上は、こうして見張っておいた方がすぐに動けるから」

 

そう言いながらテントの入り口に座る、ここなら何が起きてもすぐに動けるしメリアも起こすことが出きる。

 

『ご主人様が休むべき、ご主人様がここを守るために今日はたくさん戦ってくれた。だから私よりご主人様が休むべき!』

 

「メリア……私はこれまで寝ずに戦った経験もある。それに敵が夜ではなく昼に襲撃したのも何かおかしいと思うんだ、()()なら襲撃対象が眠っているであろう夜に襲撃してくるのがセオリーのはず。

眠っている間にフォールエンスが仕掛けてこない可能性がない訳じゃないし、すぐに動ける戦力が必要なの」

 

『なら、メリアも起きてる!』

 

「え?」

 

『メリアも一緒に起きてたら、すぐに妖精魔法使える!メリアのお願いでご主人様はスカイレイスに来てくれた、助けてくれた!だからメリアも起きる』

 

そう言いながら私の近くへ渡した毛布を被って近付いてくるメリアに気が付けば私の口が動いていた。

 

「………なんで、なんでメリアはそこまで私をご主人様と呼んで慕ってくれるの」

 

ずっと、私は気になっていた。

 

『え?』

 

「私は、たまたまメリアの妖精魔法を使う事が出きる条件に合致した人間なだけ」

 

なんでメリアは私をご主人様と呼んで慕ってくれるのか、少し分からなかった。

私以外にも彼女の妖精魔法を扱うことが出来る条件に合致する人はいる筈だ。

いくら自分の司る魔法と変身したアイテムを使いこなす事が出来ると感じられた相手に忠誠を誓って仕えるしきたりがあるとはいえ、私を選んだ理由が分からなかった。

正直に言えば私は彼女の主に相応しくないと思う、いくら妖精が食事を取らなくても良い種族だとしても毎日毎食分けられず、たまにしか与えることが出来ない。

正直に言えば私が彼女と過ごすのは、彼女の妖精魔法が目的だ。

彼女の妖精魔法があれば私は、軍に所属して戦っていた頃より沢山の人を守ることが出来る。

救いを求める多くの人が伸ばした手を掴むことが出来るし、魔法少女に変身した状態で殺しきれないフォールエンスの敵への対抗手段になる。

そんな、契約した妖精を気にかけない私なんかがメリアの主なんて相応しくないと思う。

もしかしたら私は、世界を創造したことでいくつもの運命を、あるべくした定めを歪めてしまったんじゃないか?

本来ならメリアは私ではなく、別の誰かと契約していたのではないか?と考えてしまうのだ。

 

「私はあんまり良い主じゃないと思うんだ、メリア。メリアが、たまたま最初に見つけたのが私なだけで、本当はウィザーズの子達みたいにきっと妖精を大切にしてくれる人が、私よりメリアをもっと大切にしてくれる人が───」

 

『嫌』

 

「いるって、え?」

 

即答ともいえる返事の早さに、思わず私は間抜けな声を漏らし彼女を見る。メリアの瞳はまっすぐ、私を見つめてその目に涙を貯めていた。

 

『嫌、いや、イヤ!メリアのご主人様は()()だけ!他に私の妖精魔法を使う事が出来る人がいても、ソラを選ぶ!』

 

「どうして、私なの」

 

『ソラは、ソラの記憶は確かに沢山ある!記憶量が多くてどれも魂に刻まれている程に鮮明な記憶ばかり!でもそれだけじゃない!ソラの記憶への思いは強くて、忘れても大丈夫なように記録するほどに、記憶を大切にしてる!』

 

「記憶を、思い出を大切にするのは……普通じゃ」

 

『違う!普通の人は、記憶は忘れるし鮮明に思い出せる記憶が少ない!なのに、ソラの記憶は全部が、全部が強い思いのある記憶なの!そんな大切な記憶を忘れる事になってしまうのに、ソラはメリアやみんなの為に私の魔法を使ってくれる!今回だってメリアの故郷を助けてくれた!』

 

「それは、私にそれが出来る力があっただけ……それに殆どメリアの妖精魔法のおかげ」

 

『メリアは、そんな優しいソラが良い!ソラしか、メリアのご主人様はいない!』

 

「やさ、しい?わたしが……」

 

私が?優しい?

 

本来なら人殺しで、罪を償わなければならない程に助けられず、手を伸ばすことすら出来ず見殺しにしてきた、そんな私が?

平和な世界を創造したせいで、多くの人を不幸にしたかもしれない私が?

 

「私は、私は優しくない……私は」

 

『違う!ソラは優しい!だから、ずっと何か悲しんでる、ずっと苦しんでるから……メリアは少しでもソラの悲しみを消す力になりたい。だってソラはメリアの、大切なご主人様だから』

 

そう言いながらメリアは私を抱き締めてきた、パラリとメリアの羽織っていた毛布が床に落ちる。

私はずっと彼女を使えば多くの人を救えると、何処か彼女を道具のように見ている私が嫌だった。

彼女がいれば私は強くいられる、彼女の魔法があれば戦略の幅が広がると。

今回の件だってそうだ、私が彼女の故郷へ来たのは、私がメリアに失望され私の前から消えるかもと思ったのもある。

でも、そんな私でもメリアは大切な主であると言ってくれた。

 

「ありがとう、メリア」

 

そう言って私はメリアを抱き締め返す、目の前にいる彼女は私にとってかけがえの無い存在だと理解できた。

 

「ありがとう、私を選んでくれて」

 

メリア、貴方と一緒なら私はきっともう大切なものを取り溢すことも失うこともなくいられる。

 

私を選んでくれて、私と契約してくれて

 

「本当にありがとう、これからも……よろしくね」

 

『うん、私の……ご主人様』

 

一枚の毛布でお互いの体が冷えないよう包み、テントの入り口で二人の少女は並んで座る。

そんな二人をスカイレイスの夜空に広がる星と三つの月が、まるで見守るように照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「マジカル!」 

 

「デジタル?」

 

「クロニクル!」

 

「「「魔法少女図鑑!!」」」

 

「さあ!さぁ!毎度お馴染みとなりましたこのコーナー、第6回魔法少女図鑑!進行は私、天宮 音羽(アマミヤ オトハ)と!」

 

神島 結姫(カミシマ ユズキ)

 

「で、お送りするわ!このコーナーは毎回異なる魔法少女をゲストに読んで、本編に登場していた私たち魔法少女について詳しく解説していくというものよ!」

 

「今日のゲストは、この人!!」

 

「魔法少女サンライズ、間崎 凛音《カンザキ リオン》だ!よろしくな!」

 

「わー」

 

「ユズキ、急にリオンさんが描かれた大きな団扇とペンライト振ってどうしたのよ?急に推し活?」

 

「?だってアイドルが来るんでしょ?それならこうした方がいいってスタッフが」

 

「いや、それは確かにアタシなんだが……ここにいるのはアイドルじゃなくて魔法少女になったアタシだから、その、推されるのはなんか変と言うかむずむずするというか、とにかく違うんだよ」

 

「えっと、じゃあ止める」

 

「そうしてくれ、マジで」

 

「二人の話も済んだことだし、いつもの魔法少女紹介コーナーにいくわ!今回紹介する魔法少女はこの人!」

 

──────────────────────

 

【魔法少女名】魔法少女リベルタ

 

【変 身 者】天草 運命(アソウ サダメ)

 

【 武 器 】片翼剣ブルーバード

 

【 魔 法 】《ファトゥム》

 

       《ミーティア》

 

──────────────────────

 

「幻剣の二つ名でも呼ばれていた魔法少女リベルタさんよ!」

 

「ん、本編の回想で登場したばかりの人」 

 

「メタいな?それにしても幻剣かぁ、いいなぁ!アタシもそんな2つ名ほしかった……」

 

「魔法少女の中でも、二つ名で呼ばれる人はかなり少なかったですし、二つなはちょっとした憧れでもありましたよね」

 

「そうなんだよ、ラジアータ先輩は逢魔ヶ時ノ王!かっこ良すぎるんだよ本当に!」

 

「ちなみに彼女の使用する武器は片翼剣ブルーバード、剣の刃が鳥の翼のようなデザインだった事から付けられたらしいわ」

 

「資料にはブルーバードと一緒に片手で扱える魔導兵器を使って戦闘する事が多かったって書いある……珍しい」

 

「へぇ、確かに珍しいな。ほとんどの魔法少女は自分の武器使う奴らが殆どで魔導兵器はほぼ軍の人達が使ってたし」

 

「まぁ、その方がいざというときに使えるわ。魔力を使いきったときに敵の援軍とか、あったら勝てたみたいなの………さて!次に彼女の使用する魔法について解説するわ!一つ目が魔力で自分の分身、質量を持った残像を生み出すファトゥム、もう一つが魔力で体を覆い光輝く姿になる代わりに高速移動が可能となるミーティアよ」

 

「分身、何れだけ増えられるのかな……」

 

「ユズキの言うとおりだな、一体何体まで分身できんだ?分身だけで学校の1クラスを埋められそうだ」

 

「もしかして、この人だけでアイドルできる?」

 

「一応、ファトゥムは時間経過で消えるみたいだし時間限定のパフォーマンスは行けるんじゃねぇかな?」

 

「一時間だけのシンデレラガール」

 

「まぁ、王道っちゃぁ王道な感じの名前だな?」

 

「いや、そこはもっと儚い感じだけどおしゃれな感じにして、そうね。ユニット名はSETUNA NO YUMEとかどうかしら?」

 

「うーん、なんか掛けた名前にしたいよな。幻で時間経過で消える……MIRAGE@Girlsとかどうだ?てかこれ解説コーナーだよな?なんで急にアイドルユニットの名前考えてるんだアタシしら」

 

「それもそうね?それじゃあ気を取り直して次のコーナー!『マジカル!気になる?クエスチョン!魔法少女アンケート10』のコーナーよ!」

 

「このコーナーは気になるあの魔法少女の趣味や好きな食べ物についての10個の質問に答えて貰った表を見ていく。」

 

「それじゃあ!早速表を見て行くわ!」

 

─────────────────────

 

 

Q1.好きな食べ物は?

 

A.海老フライ、鯖の味噌煮、あら汁

 

Q2.好きな事は?

 

A.陶芸や絵を描くこと。自分の価値を証明でき自由に生きたことを記すことができるもの全般。

 

Q3.あなたを四字熟語で表すと?

 

A.不撓不屈

 

Q4.最近観た映画は?

 

A.劇場版超弩救戦艦ドレットノートCord:Epsilon

 ~果てなき未来への出航~

 

Q5.因縁の相手は?

 

A.父親

 

Q6.好きな言葉は?

 

A.夢なき者に成功なし、為せば成る為さねば成らぬ、何事も。

 

 

Q7.疲れた時、自分へのご褒美や何かする事は?

 

A.雪月 雨音(セツヅキ アマネ)を膝に乗せて餌付けしながらアマネニウムを接種する。

 

 

Q8.「宇宙」と「深海」探検したいのはどっち?

 

A.どっちも。

 

 

Q9.寝起きドッキリ企画!誰にどんなドッキリを仕掛ける?

 

A.セルリアンの寝ている布団又はベッドをファトゥムを使って分身した私で囲って、更に布団の中に服を脱いだ半裸の状態の私が入る。その後にミーティアで光って起こしたところを混乱させるかんじ。

 

Q10.最近ちょっと恥ずかしいと思った時

 

A.雪月 雨音(セツヅキ アマネ)にあーんをされているところを多数の魔法少女に見られながら食べたこと。

 

──────────────────────

 

「ん、海鮮好き」

 

「みたいだな、あとは雪月 雨音(セツヅキ アマネ)って奴に執着してる感じか?」

 

「みたいね、彼女って癒し系って感じなのかしら」

 

「あんまり良い噂を聞かなかったんだよな、その雪月 雨音(セツヅキ アマネ)ってやつ。一応、あの人と同じ待機組だったし、使える魔法は戦闘向きじゃないんだろ?」

 

「って!今回もアンケートの回答にどっちもが入ってるじゃない!?最初はちゃんと答えてくれてたのにー!」

 

「オトハ、ドッキリのアンケートに狙う人が書かれてる」

 

「………運命先輩、ドッキリの手伝いあればオファー待ってます!て言うか誘ってください!!ソラさんの寝顔を拝めるどころか寝ぼけた時にプラスして驚く姿もみれるなんてそんな幸福なことは──」

 

「おい神島、天宮のセルリアンへの執着してる噂ってガチなのか?」

 

「ソラのことになると、オトハを止めるのは無理」

 

「なるほど、つまりは放置か?」

 

「放置が一番、どもこれじゃあ進行できない…手を握って。潜影」

 

「おわっ!?すげぇ、全部が白黒に見える世界だ」

 

「ここなら静か、進行できる」

 

「おい、天宮がアタシ達がいないことに気付いたらどうすんだ?」

 

「そうなったら戻れば良い、オトハも止まってこのコーナーを進行できる」

 

「慣れてんなぁ…」

 

「2年一緒に過ごしてるから」

 

「そっかぁ、確かにそれならこの対応も納得だ」

 

「今回はもうお時間、二人で締めるしかない」

 

「じゃあやるか」

 

「ん……マジカル」

 

「デジタル!」

 

「クロニクル、魔法少女図鑑のコーナーでした」

 

「てかさ、戻ってまだ天宮が戻ってなかったらどうすんだよ?もう昼だぜ?」

 

「……こっそりご飯食べにいく?潜影で収録部屋の外に出れる」

 

「お、いいね!ハンバーグ食いに行こうぜ!」

 

「スタッフには書き置き残した、いこ」

 

 

数分後、書き置き通りにご飯に行った二人を他所に一人で部屋にいたことに気付いたオトハがユズキ探しに走り出すのは、また別のお話。

 

 

 






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