魔法少女のメモリアル~平和な元の世界を創造した……はずなんだけど。~   作:クレナイハルハ

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第5章、砕けたココロのGUARDIAN
夏明けの日


夏休みが終わり、新学期がやってきた。 

終わらせてあった課題を鞄に詰めて、コハルと共に家を出る。

朝、起きて朝御飯を食べに降りてきた頃からコハルはげんなりした様子で、足取りは非常に重くゆっくりだった。

 

「はぁぁ………台風でも、来ないかなぁ」

 

「来たら大変だよ、ほら歩いて。今日を頑張ったら明日から普通に行けるようになるよ」

 

「でもぉ……」

 

コハルが大きなため息と共に吐き出した言葉に苦笑しながら、手を引いて朝の通学路を歩く。

昨日もコハルは夕方遅くまでかけて友達と宿題に取り組んでいた。

コハルは次の冬休みこそは、最初の内に宿題を終わらせると話していたけど多分、夏休みと同じような未来が来る気がする。

宿題を前に頭を抱えて、「お姉ちゃぁん」と泣きついてくる姿が簡単に想像できてしまって、思わず口元が緩む。

……その時は、可能な限り手伝ってあげよう。

本人にやらせるのが自分のためになるとは言うけど、何も手伝わないお姉ちゃんにはもうなりたくない。

そんなことを考えていると、繋いだ手をコハルが此方をじっと見ていることに気付いた。

 

「お姉ちゃん、少し力が強いよ?」

 

「あ、ごめんね。」

 

すぐに力を緩める、無意識の内にコハルの手を握る力が強くなっていたみたいだ。

力を抜きできる限りの優しくコハルの手を握る。

小さな手の温もりが、胸の奥までじんわりと伝わってくる。

手を離すタイミング、見失っちゃったな。

コハルも嫌がる様子はないし、このままでいいか。どうせ学校が近付けば自然と離すことになるだろう。

横目で見れば、眠そうな顔をしながらも私の手を握って歩くコハル。その姿が少しだけ愛おしく思えて、私は前を向いた。

 

私は、この子にとっての良い姉でありたい。

 

前の世界の私は、妹という存在を素直に受け入れられず、あまり良い姉としてコハルに接することが出来なかった。

前の私にとって妹の存在は、あまり良く思わないものだった。

一人っ子だった頃は、自分だけに向けられていた両親の笑顔も、褒め言葉も、いつしか半分になったように感じていた。

お姉ちゃんだからと我慢させられ、お姉ちゃんだからとおやつも取られる。

お姉ちゃんだからと一緒に遊ぶことを強要させられ、自分よりも甘やかされる。

子どもだった私には、それが理不尽にしか思えなかった。だから、コハルに対しては素っ気ない態度を取ってしまっていた。

姉妹で話すことも少なければ、遊ぶこともない。

だからこそ、最後の最後に後悔したのだ。

もっと家族との時間を大切にするべきだったと。

私は、今度こそはコハルにお姉ちゃんらしいことをしてあげたい。

そんな思いから、彼女の意思を尊重した。

彼女がウィザーズとして戦う事もそうだ。

前の世界で彼女たちのように強い意思で魔法少女となり戦いに参加する子達もいた、どれだけ辛い現実を教えても。

どれだけ突き放しても、彼女たちは意思を曲げなかった。

コハルの意思を尊重して戦うことを認めた。

だから、必要以上にコハルやコハルの友達が傷付かないように私が戦う。

私は魔法少女だ、魔法少女はみんなを守らなきゃ

そんなことを考えていたからか、少し先で見覚えのある二人がいることに気付かなかった。

 

「やぁ、おはようソラ。気持ちの良い朝だね」

 

「ソラちゃんおはようございます、ずいぶん仲良しですね?妹さんですか?」

 

顔を向ければそこには、朝からマイペースな様子のこころ先輩に、嬉しそうと言うか可愛いものをみた時のような優しい笑顔を浮かべたおかし先輩がいた。

 

「先輩、おはようございます。そうです、妹のコハルです」

 

「おはようございます!コハルです!いつもお姉ちゃんがお世話になってますー!」

 

先輩達にコハルを紹介すると、何故か先程までの気分の沈みっぷりが嘘のような溌剌とした様子のコハルに少しだけ呆れた。

コハルの目が言っているのだ、いつの間にこんなに仲の良い感じの先輩を見つけたの?と。

そういえば、前の世界で先輩達にコハルのことを紹介することは無かった。

ずっと前線にいるのと同じだったし、先輩方は後方支援担当だから中々休みが合う日も無かったし。

 

「そうか、後輩の妹か。赤心こころだ、こころと呼ぶといいさ」

 

「私は小暮 御菓子……おかし先輩でいいですよー?」

 

「ありがとうございます!お姉ちゃんいつのまに先輩達と知り合ったの?前までずっと一人だったのに」

 

ぐっ、確かに私はぼっちだったけど、そのことを出すのは少し勘弁して欲しいな妹よ。

確かに私が今の世界を作ってからを考えたなら、私はひとりで過ごすことも多かった。

だから友達がいないと両親に心配されてもいた。

今は友人ということになっている希代さんがいるし……あれ、もしかして私は友達といえるような存在が……いない?

自覚していなかった気付き、それに思わず驚愕と焦りに近い何かを感じてしまい冷や汗が流れたような気がした。

 

「さて後輩、夏休みはどうだったんだい?私としては暑さに叶わなくてね。あまりギターを弾く気になれなくて、常に昼寝だったよ」

 

「えっと……」

 

別次元を救うために別の世界に行っていました、反社の娘の護衛ついでに隣町である星之扉町のお祭りに行っていました。

なんて、口が裂けても言えない。

まずそんなのふつうの女の子のする事じゃない……。

 

「家で読書したり、友人の家に泊まったり……友人とお祭りに行ったり。ですかね?」

 

「わぁ!夏休みを大満喫じゃないですか!」

 

「ふふ、夏休祭りか。風流だね、後輩」

 

両手をパチンと会わせ素敵な夏休みだったんですねと笑うおかしさんと、ふふっと小さく笑うこころ先輩。

 

「夏祭りなら、行ったのは星之扉町かな?あそこの祭りは沢山の人が集まるからね……おや、もう学園が見えてきたね。じゃあね、後輩たち」

 

「また一緒にお喋りしましょうねー!」

 

学園が見え、先輩達が高等部の教室がある方へ別れ歩いていく。

 

「じゃあ私も初等部の方にいくからまたね!あ、お姉ちゃん!帰ったらまたおやつ作って!」

 

「うん、分かったよ。だから今日の学校がんばってね」

 

「やった!コハル、頑張りまーす!」

 

そんな思考を他所に、コハルのおねだりを承諾すればコハルは先程までの以上に元気そうに笑う。

そんな姿に、帰りに商店街で果物を買って少し豪華なパンケーキでも作ろうかと思った私は、コハルや先輩達と共に、学園へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コハルや先輩達と別れ教室の自分の席へと座る。

そんな私に、誰にもおはようと声はかけない。

おはようなんて声はかけない、かけても返ってこないと分かっているから。

クラスメイト達が知り合い以上友人未満なのと同じように、クラスメイトにとっても私は知り合い以上友人以下なのだろう。

図書室で借りた本を読みながら朝礼までの時間を潰す。

教室の一部の声が盛り上がっている、恐らくは会話が盛り上がっているのだろう。

もしくは、私が元の世界の記憶を受け継いだことから変化した性格や在り方に困惑させてしまい、距離を計りかねているのか。

分からないな、でも私はいつも通りの日常を過ごすことにしよう。

そう思って続きの文へと視線を動かそうとして、朝のHRを告げるチャイムが鳴った。

もうそんな時間かと本を閉じて教卓へ視線を向ければ、担任の先生が教室へと入ってきた。

その様子に友達同士やグループで固まっていた人達が元の座る席へと戻る。

 

「さて、本日のホームルームを始める。まず、今日からこのクラスに転校生が来る!」

 

担任の先生が言い放った言葉にクラスの生徒が驚きの声をあげた。

 

「アニメや漫画みたいな展開キター!」

 

「どんな子かな?」

 

「仲良くなれるかな?」

 

「この時期に転校生かぁ」

 

ざわざわ、ヒソヒソと転校生の声が聞こえるなか私もまた驚いていた。

でも、クラスメイト達のように盛り上がる程の気分にはならなかった。

前の世界で軍に所属していた頃、嫌な話だがどう努力したとしても、酷い怪我や精神を病んでしまった子は軍から去っていく。

なんなら、昨日話した魔法少女が次の日には命を落としているなんてこともあった。

人が入れ替わる環境には、慣れているつもりだから。

転校生に、そこもで興味を持たなかった。

確かにこの時期に転校してくるのはあの人が見ていたアニメや漫画、小説のような展開だ。

 

「それじゃあ、入ってくれ」

 

そんな担任の先生の言葉と共に教室へと入ってきた女の子の姿に、私の思考は完全に停止した。

茶髪のボブカット、夏休みの終わり。

星之扉町で見つけた、私のせいで救われなくなってしまった存在。

 

「霧渚 鎖守(キリナギ クサリ)です。よろしくー……」

 

霧渚 鎖守(キリナギ クサリ)、その人だった。

 

どう、して?

どうして、彼女がこの学園に?そもそも前に通っていた学校はどう……。

 

「あー、霧渚だが親の都合で急遽こちらの学園に転校してきた。まぁ、ともかく仲良くしてやれ。霧渚さん、一番後ろの左から二番目の席、佐久魔の隣の席に座ってくれ」

 

「うっす~」

 

そんなまの抜けた感じ、その雰囲気にクラスメイト達はまたもやざわざわとし始める。

 

「うお、ダウナー系……」

 

「体ほっそっ、どうすればあんなスタイルに」

 

「もうちょっと食べて肉付けて欲しい」

 

「分かる、学校帰りに絡んで色々と奢りたい」

 

そんなクラスの声に反応せず、彼女は私の隣へと向かって歩いてくる。

そして私の隣の席に座ると、私の方を見てニヤリと笑いながら回りに聞こえないであろう声量で呟いた。

 

「これからよろしく、佐久魔…さん?」

 

『これからよろしく、先輩?』

 

あの時初めて会った時の彼女が、脳裏に過る。

あの日、目の前で失ったクサリが、今は私の隣にいた。

授業を受け合間合間の休憩時間、クサリは転校生ゆえか小説のようにクラスメイトに囲まれて質問責めにあっていた。

そんな彼女を横目に、鞄から取り出した本を読み読書に耽る。

この本の内容は、少し難しい内容だ。

 

タイトルやテーマにあるのは、『人を人足らしめるのは何か』。

 

────────────────────────

 

人は記憶する生き物であり、忘れる生き物である。

 

嬉しかったこと。

悲しかったこと。

誰かと交わした言葉。

もう二度と会えなくなった人の顔。

 

そうした記憶の積み重ねによって、人は自分という存在を形作っている。

 

けれど、人は同時に忘れていく。

 

昨日食べたもの。

何気なく交わした会話。

幼い頃に遊んだ玩具。

 

そして時には、忘れたくなかったはずの大切な思い出さえも。

 

『では、記憶を失った人間は、それでも以前と同じ人間なのだろうか』

 

────────────────────────

 

本に書かれていた一文に、思わず視線が止まった。

 

「……」

 

なんだか、不思議と気になる内容だ。

記憶を失ったとしても、その人はその人なのではないだろうか。

例えば、目の前にいる人が、昨日までの出来事を何も覚えていなくなったとしても、その人の身体が別の誰かになるわけじゃない。

でも、その人が大切にしていたものを忘れてしまったら?大好きだった人のことを忘れてしまったら?自分がどんな人間だったのかさえ、忘れてしまったら。

それでも、その人は以前と同じ『自分』だと言えるのだろうか。

 

……やっぱり、よく分からない。

 

分からないけれど、一つだけ思うことがあった。

忘れてしまうことは、必ずしも失うことと同じではないのかもしれない。

忘れてしまっても、何かを見た時。

誰かの言葉を聞いた時。

もう一度、思い出すことがある。

忘れたはずなのに、胸の奥が懐かしくなることがある。

だから、だからきっと思い出は完全に消えてしまったわけではないのかもしれない。

 

……なんて。

 

そんなことを考えながら、私はもう一度ページを捲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「マジカル!」 

 

「デジタル?」

 

「クロニクル!」

 

「「魔法少女図鑑!!」」

 

「第9回魔法少女図鑑!進行は私、天宮 音羽(アマミヤ オトハ)と!」

 

「神島 結姫(カミシマ ユズキ)でお送りする。このコーナーは毎回異なる魔法少女をゲストに読んで、本編に登場していた魔法少女について詳しく解説していく」

 

「さぁさぁ!新章開幕ということで、はりきっていくわよ!今回のゲストは!……いないわ」

 

「え?どういうこと?」

 

「ふふふ、考えてみたら私たち二人はこのコーナーのレギュラー。なのに私たちの紹介はまだだったじゃない!せっかくだし、これを機に私たちについて解説することにしたわ!今回は私で次回はユズキよ!」

 

「そーなんだ……」

 

「そーなのよ!というわけで紹介いくわよ!今回の魔法少女は私!」

 

──────────────────────

 

【魔法少女名】魔法少女ソーティラス

 

【変 身 者】天宮 音羽(アマミヤ オトハ)

 

【 武 器 】『魔銃ヘリオス&セレネス』

 

【 魔 法 】《風舞》

 

       《風音》

 

────────────────────── 

 

「魔法少女ソーティラス!これはギリシャ語で救世主を意味するソティラスからつけたのよ!それで武器は魔銃ヘリオスとセレネス!どちらも私の魔力を使って生み出す弾を撃つからリロード出来ない変わりに撃ち続けられる最強の相棒よ!」

 

「確かに、魔導銃みたいなのやってなかった」

 

「次に魔法ね!私の魔法……風舞は風を身体中に纏って空を飛ぶことが出来るのよ!まぁ、飛ぶよりは跳ぶに近いから未来先輩には負けるわね」

 

「身軽に動いて、空中から敵をどんどん倒す。強かった」

 

「そして次に風音ね、これは少しの間聴力を凄くして敵を見つけることが出来るわ!問題は聴力が強くなりすぎて普段は気にしない音でも、気になるような聴覚の過敏症状になっちゃうことね」

 

「あれ、凄く辛そう」

 

「風音を長時間使うとイヤーマフ必須の生活が続くから、注意して使ってたわね。本当にしんどかったわ……さて、そろそろ『マジカル!気になる?クエスチョン!魔法少女アンケート10』のコーナーへ進むわ!このコーナーでは気になるあの魔法少女の趣味や好きな食べ物についての様々な10個の質問に回答して貰った表を見ていくコーナーよ」

 

「オトハの回答、オープン!」

 

──────────────────────

 

 

Q1.好きな食べ物は?

 

A.オムライス

 

 

Q2.好きな事は?

 

A.ユズキと過ごすこと

 

 

Q3.自分の魔法少女としての衣装で、一番気に入っている部分は?

 

A.やっぱり、この振り袖!風舞使って跳ぶときにヒラヒラ揺れてスッゴク映えるのよ!

 

 

Q4.最近観た映画は?

 

A.劇場版 魔法少女プリズム☆ハート

 

 

Q5.魔法少女としての自分にキャッチコピーをつけるなら?

 

A.桜花爛漫

 

 

Q6.突然100万円もらったら、最初に何を買う?

 

A.ユズキの親権、もしくは私の家族にする権利を弁護士に頼んで手続きする。

 

 

Q7.魔法少女カフェを開くなら、貴方はどんなメニューを作る?

 

A.思い出のオムライス

 

 

Q8.魔法少女として戦う時のテーマソングを選ぶなら?

 

A.和風ロック

 

 

Q9.魔法少女としてCMに出演するなら、何のCMに出たい?

 

A.イヤーマフね、風音を使った後は本当に必要になるから商品の良さを誰よりも伝えられる自信があるわ!

 

 

Q10.最近ちょっと恥ずかしいと思った時

 

A.風舞の後にカッコよく着地しようとしたら、振り袖を踏んで転んだ時。

 

──────────────────────

 

「ん、そういえばオトハはオムライスが好きだった」

 

「まぁ、そうね。お父さんとお母さんが作ってくれた好きな料理だから。再現したいけど、うまく行かなくて失敗ばっかりなのよね。なかなか、届かないなぁ」

 

「だから一時期ずっとご飯がオムライスだったの?」

 

「べ、別にいいでしょ!?ユズキだって文句言わなかったし!」

 

「……コラボメニュー、思い出のオムライスより失敗した方が人気でそう。あ、10個目の奴は動画付き。」

 

「はぁ!?い、いつのまに?!てか、誰よ!撮影してたの!?」

 

「スタッフ、優秀」

 

「流さないでよ!?いや、流す前に終わらせるわこんなミニコーナー!終わるわよユズキ速攻で終わらせるわよ!マジカル!」

 

「デジタル!」

 

「クロニクル!魔法少女図鑑のコーナーでした!はい!おしまい、解散よ!!」

 

「また次回」

 






お久しぶりです。
タイトル、変えました。
今後も本作品の愛読をお願いします
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