魔法少女のメモリアル~平和な元の世界を創造した……はずなんだけど。~   作:クレナイハルハ

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新たな日常と動く影

スカイレイスの一件を乗り越え、最大の敵。

夏休みの宿題を討伐し、二学期を迎えたウィザーズ。

初等部4年生であるヒヨリ、ユリエ、マナミ、コユキ。

ちなみにコハルは初等部3年生のため、別の授業を受けている。

そんな彼女たちは新たなに始まる総合学科と呼ばれる学習への興味と関心で一杯だった。

 

「総合……どんな授業なんだろう」

 

ヒヨリがテーブルに座りそう呟く。

二学期最初に行われる総合学科と呼ばれる授業。

その内容が全く想像できていなかったのだ。

 

「昨日調べたのですが、総合学科は簡単に言えば、普通の国語や算数のように決められた教科を勉強するのではなく、自分たちで課題を見つけて、それについて調べたり、考えたりする授業みたいです」

 

ヒヨリのテーブルの横で、得意気に解説するユリエ。

そんなユリエの解説にヒヨリやコユキ、マナミが耳を傾ける。

 

「つまり、自分たちが暮らしている場所や社会について知るための授業……ということですね!」

 

「なんか社会科みたい……」

 

ヒヨリはその解説に相槌をうち、ヒヨリの机に置いた両手の上に乗せた顔で、興味深そうに聞いているマナミはいつものめんどくさそうな表情ではなく、面白そうなゲームやおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべている。

 

「似ていますが、少し違います。総合学科では、先生から教えられたことを覚えるだけではなく、自分たちでテーマを決めて調べたり、みんなで話し合ったりすることが大切なんだそうです」

 

「流石はお嬢様、予習復習ばっちりじゃーん!」

 

「じゃあ、何を調べるかは私たち次第ってことなの?」

 

「ええ!基本的には、そういうことだと思います」

 

「楽しそうだねぇ」

 

マナミの目が輝く。

その一方で、ヒヨリの隣の机に座っていたコユキは机に突っ伏した。

 

「うへぇ……自分で調べるんですか?普通に先生が全部教えてくれればいいのに……」

 

「コユキさんはもう少し自主性を持った方がいいと思いますよ」

 

「だって面倒じゃないですかぁ……アニメ見る時間と推し活時間がこれ以上減るのは勘弁ですよぉ!」

 

そういいながら頭を抱えるコユキにマナミやユリエは思わず吹き出してしまう。

 

「ひどい!第一、なんでマナミさんそんなに楽しそうなんですかぁ!いつもならマナミさんだってめんどくさいって言いそうなのに!」

 

「いやぁ、普通の授業じゃないっぽいし!面白そうじゃん!」

 

「反対派は私一人なんですかぁ!?」

 

そんなみんなのやり取りを見ながら、ヒヨリは微笑む。

こんな、当たり前の日常。

本当に、楽しい友達と過ごす学校での日常。

ウィザーズとしてフォールエンスと戦う非日常ではない、こんな日常の風景が酷く愛おしい。

だからこそ、それを壊そうとするフォールエンスから、絶対に守る。

みんなと一緒なら、きっと守れる筈だよね。

ヒヨリがそう心の中で呟いた、その時だった。

ガラガラガラ!と教室の扉を開けて入ってきた教師の姿に、友達と過ごしていた生徒たちがテーブルへと戻っていく。

ユリエ、マナミは自分の机へ戻っていく。

コユキは始まってしまったと持っていた文庫本を机の引き出しへしまう。

 

「そろそろ授業を始めますよぉ、席についてくださぁい~」

 

教室の前方から先生の少し気の抜けた声が響く。

ウィザーズ全員のいるこのクラスの担任教師の女性は、いわゆるゆるふわ系でありその声も何処か間延びていた。

そしてその声のせいか、この先生の授業はとにかく眠くなることで有名である。

先生は全員が席についたことを確認し、授業の開始の挨拶をすると両手をパチンと会わせると口を開いた。

 

「は~い、本日から新しく始まる総合学科の授業を始めていきますぅ。」

 

先生はそう言いながらチョークを手に取り今日の授業内容が大きく書かれていく。

 

『私たちの住む地域を知ろう』

 

「はーい、というこで!今日から始まる総合学習では皆さんに自分たちが普段暮らしている天野川市の地域について調べてもらいたいと思いますぅ~!」

 

ユリエの調べた通り、なにかを調べると言う内容であることにヒヨリは目を見開いた。

チラリとユリエの机の方へ目を向ければ、ドヤという効果音や擬音がついていそうな笑みを浮かべるユリエの姿があった。

ヒヨリは思わず苦笑しながら、先生の話へと耳を傾ける。

 

「皆さん、この天野川市昔には、大切にされてきた場所や建物、地域ならではのお祭りや文化がた~くさんあるんですよぉ」

 

先生が黒板へいくつかの言葉を書き込んでいく。

『歴史』 『文化』 『自然』 『地域の施設』

 

「皆さんでグループを作ってぇ、この中から興味のあるものを選んで調べてもらいますぅ~。図書室で本を探してもいいですし、家族の人に聞いてみるのですね」

 

「はーい先生!じゃあ、実際に見に行ったりもするんですか?」

 

手を上げ質問するマナミに、先生は嬉しそうに頷きながら答える。

 

「はぁい!もちろんですよぉ……マナミちゃんが関心を持ってくれて先生とても嬉しいですぅ!調べて終わりではありませんよぉ?実際にその場所へ行って、自分の目で見たり、そこで暮らす人たちから話を聞いたりすることも大切な勉強です~なので、皆さんもどんどん見学に行きましょうねぇ~」

 

「おお~!」

 

「では皆さんにはまず、今回の授業で調べる為のグループを作って貰いますぅ!10分待っているので、グループを作ってくださぁい、喧嘩しちゃメッ!ですよぉ!では始めてくださぁい~」

 

先生がそう言うと、教室中で一斉に椅子を引く音が響いた。

 

「じゃあ、私たちはこのまま四人でいいよね?」

 

マナミが真っ先に声を上げた。

 

「もちろんです!」

 

「だね!」

 

「アハハ、いつものメンバーですねぇ」

 

コユキはそういいながら椅子を寄せる。

 

「それじゃあまだグループ分け時間だけど、何を調べるか決めちゃう?」

 

「いいですね、その方がこの後の行動もスムーズになりますし」

 

四人は黒板に書かれた項目へ目を向ける。

『歴史』『文化』『自然』『地域の施設』

そんな候補から少女達は自分達の調べる内容について考える。

 

「私は歴史がいいと思います。昔の天野川市について調べるのはどうでしょう?」

 

「私は自然かなぁ。川とか公園とか、結構いっぱいあるし!」

 

「私は……どれでもいいですよぉ」

 

「コユキさん、ちゃんと考えてください……」

 

「だって結局、どれを選んでも調べものするんですよねぇ……でもユリエさんやマナミさんの場合、どこを見学して話を聞けば良いか、考えるの少し大変じゃないです?」

 

コユキの言葉にユリエとマナミは思わず固まる。

確かに自然について調べるのは良いかもしれないが、誰に話を聞き何処を見学すれば良いか分からない。

歴史についても、何処へ見学をお願いすればよいか分からないのだ。

 

「確かに、自然とか誰に聞けばいいんだろ?」

 

「えっと、市役所の方……とか?」

 

「うーん、見学となると難しいかも」

 

そう呟くヒヨリに、他の調べる場所を考えるなかマナミは何か思い出した様子で声を上げた。

 

「そうだ!浅桜神社!浅桜神社はどうかな!?」

 

「へ?、う、うち!?」

 

「ああ!確かに、それなら調べやすそうですね!」

 

「で、ですね。私たち、いつも浅桜神社に集まってますし、ヒヨリさんのお父さんなら緊張せずに話を聞けそうです」

 

浅桜神社。

ヒヨリの家であると同時に、ウィザーズにとっての活動拠点でもある。

放課後に集まることもあれば、作戦を立てることもある。

彼女たちにとっては、もはや学校とは別の意味で馴染み深い場所だった。

 

「私のお父さんやお母さんに聞けば、神社の歴史とかも教えてもらえると、思う。たぶんだけど」

 

「なら決まりじゃん!」

 

マナミが嬉しそうに声を上げる。

 

「浅桜神社なら、歴史も文化も調べられそうですし!」

 

「私は賛成です!」

 

こうして四人の調査対象は、あっさりと決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、早速調べる時間を使い話を聞くため、ヒヨリはユリエやマナミ、コユキと共に浅桜神社へと向かう事にした。

こんなにも早く調べるものと見学が決まったのは始めてですぅっ!?とは先生の言葉である。

調べる場所が自分の家であり、そんな家である神社を見学場所に選んでくれたヒヨリの両親はおおいに喜んでいた。

座布団へ座ったヒヨリにユリエ、マナミにコユキにヒヨリの父、浅桜 斗真(アサクラ トウマ)は頷くと口を開いた。

 

「さて!せっかく総合学科の調べる場所に浅桜神社を選んでくれたんだ。張り切って教えさせて貰うよ、まずはどうやって浅桜神社が出来たのか。そこから行こうかな」

 

「うん、お願いねお父さん」

 

「お願いしますわ」

 

「お願いしまーす」

 

「しまーす」

 

張り切った様子の父親の姿に少し恥ずかしそうにするヒヨリ。

トウマに対して楽しそうだという声が聞こえそうな程の笑顔を浮かべるマナミと、会釈するユリエ。

そしてノートとシャープペンシルをコユキ。

四人を見ると、話し始める。

 

「浅桜神社の紀元は、はるか昔……なんて昔までは遡らないんだ。浅桜神社そのものが建てられたのは、実はそこまで昔じゃないからね」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

ユリエが意外そうに目を丸くする。

だが、それはヒヨリもそうだった。

神社であるからには、遠い昔。

それこそ江戸時代くらい前から続いているものだと思っていたから。

 

「うん。今からおよそ百年くらい前……昭和の初め頃だと言われている。だから私もまだまだ神主の新人に入るのかな」

 

「昭和初期……」

 

「じゃあ、それより前はここには神社がなかったんですか?」

 

「そういうことになるね。でも――」

 

トウマはそこで一度言葉を止める。

そして、神社の外へと視線を向けた。

 

「この場所にまつわる話自体は、神社が建てられるよりずっと前からあったんだ」

 

「ずっと前?」

 

「一体、何があったんですか?」

 

ユリエとマナミが同時に尋ねる。

その隣では、コユキが興味深そうにノートへメモをとっている。

 

「……昔、この辺りにはね。今では空想や昔話の中の存在だと思われているようなものが、本当にたくさん語られていたんだ」

 

「えっとそれは妖怪、とかですかね?」

 

アニメや漫画に詳しいからか、即座に反応したコユキにトウマはゆっくり頷いた。

 

「昔の人たちは、山や川、森や夜道……人間には分からない場所で起きる不思議な出来事を、妖怪や怪異の仕業として考えていたんだよ」

 

「じゃあ、昔は妖怪って普通に信じられてたんですか?」

 

「そうだね。でも、時代が進むにつれて少しずつ変わっていった。町が大きくなって、科学や文明が発達して、人々の暮らしも便利になっていった。その一方で、昔から語られていた妖怪や怪異の話は、少しずつ『迷信』や『昔話』として扱われるようになったんだ」

 

「……妖怪を信じる人が減っていったんですね」

 

ユリエが静かに呟く。

 

「そう。人々に語られなくなり、信じられなくなった妖怪たちは、次第に力を失っていったと言われている」

 

「ええっ!?」

 

マナミが目を丸くする。

 

「妖怪って、信じてもらえないと弱くなるの!?」

 

「昔の伝承では、そういう話もあるんだよ」

 

「アニメや漫画でもあるあるな設定ですね、有名な妖怪は忘れられてもある程度は生きられるけど無銘に近い妖怪は人からの恐怖とかが無いと生きられない的な」

 

「どうだろうね。そこまでは分からないかな」

 

いきいきと漫画で得た知識を語るコユキにトウマは苦笑する。

 

「ただ……浅桜神社には、そんな時代に生きていた一匹の妖怪の話が残っているんだ」

 

「一匹の妖怪……?」

 

「そう。それが、この神社で祀られている―九尾の狐だ」

「九尾の狐!?あの!?」

 

「はいはい、コユキちゃん。そこで怖がらない」

 

「怖がってませんよぉ!ただちょっとテンション上がっただけです!いや、やっぱりちょっと怖い!!」

 

「今、尻尾があったら思いっきり丸まってそうだけど?」

 

「ないですからね!?それに九尾の狐ってヤバい妖怪じゃないですか!?国を陥れたとか、王様を誑かして破滅にーとか!」

 

マナミに指摘され、コユキは慌てて自分の背後を確認する。

その様子にトウマは思わず笑みを浮かべた。

 

「まあまあ。そんなに大規模な話じゃないよ」

 

「本当ですか?」

 

「むしろ、どちらかと言えば優しい話だね」

 

ヒヨリやユリエ、マナミが首を傾げる。

コユキの語る九尾の狐の伝説があるならば、少し恐ろしく大規模なものを想像していたからだ。

トウマはそんな娘たちを見ながら、ゆっくりと話を続けた。

 

「昔、この辺りには桜色の炎を操る九尾の狐がいたと言われている」

 

「桜色の炎?花火とかでしかみませんね……幻想的ですわ!」

 

桜色の炎という単語から想像したのか、ユリエが目を輝かせる。アニメやゲームで出てきそうな内容からか、コユキも同じく目を輝かせていた。

 

「その狐もまた、人々から忘れられていくにつれて力を失っていった。そしてある日、飢えに耐えられなくなった狐は、道端で倒れてしまったんだ」

 

「……妖怪なのに?」

 

「妖怪だって、お腹は空くんじゃないかな?」

 

「それはそうかも!」

 

「でも、その狐を助けた人がいたんだ」

 

「誰ですか?」

 

ユリエが尋ねる。

 

「一人の妊娠した女性だった」

 

その言葉に、四人は静かにトウマの話に耳を傾ける。

 

「その女性は倒れている狐を見つけると、自分が持っていた食べ物を狐に分け与えたそうだ」

 

「自分の食べ物を……?」

 

ヒヨリが呟く。

妖怪って果たしてお腹が空いても人間の食べ物を食べられるのだろうか?

そんな素朴な疑問を他所に、話は続いていく。

 

「そう。狐が妖怪だと知っていたのか、それともただの動物だと思っていたのか。それは伝わっていない。ただ、その女性は困っている狐を放っておけなかったんだろうね」

 

「それは、とても優しい人だったんですね」

 

ユリエは、その女性を想像したのか微笑む。

 

「そうだね。きっと凄く優しい人だったんだろう。そして、食べ物をもらった狐はその女性にこう約束したと言われている」

 

トウマは、まるで昔から伝わる言葉を大切に読み上げた。

 

「『この恩は生涯を掛けて返す。ソナタの一族が安全に子を産み、天寿を全う出来るよう守り続けよう』……。その後、狐は本当にその女性と、その家族を守り続けた」

 

トウマの話は続く。

 

「妖怪や悪霊から家族を守り、子供たちが無事に育つように見守った。そして、女性の一族に何か災いが起きそうになれば、その桜色の炎で追い払ったとも言われている」

 

「すごい……」

 

マナミがぽつりと呟く。

 

「それじゃあ、その狐は怖い妖怪じゃなくて……守り神だったんですね」

 

「そういうことだね。やがてその話を知った人々は、その狐を恐れるのではなく、自分たちを守ってくれる存在として敬うようになった」

 

「それが浅桜神社に繋がるんですか?」

 

「うん、そうだね」

 

トウマは神社の奥、石で作られた九尾の狐の像を見る。

 

「人々はその九尾の狐を守り神として祀る場所を作った。それが、この浅桜神社の始まりだと言われている」

 

「なるほど……」

 

ユリエは持ってきたノートへと急いで内容を書き込んでいく。

 

「じゃあ、安産祈願のお守りが人気なのも、その伝説が理由なんですね!」

 

「その通りだね、うちのおきつね様とコユキちゃんのいう玉藻前とか天狐と同じ存在なのかは、分からないけど」

 

「そこは分からないんですか?」

 

「うん。そもそも九尾の狐というのは、昔から色々な地域で語られてきた存在だからね。同じ『九尾の狐』でも、伝わっている話は場所によって全然違うんだ

 

「なるほど……」

 

コユキは少し考え込むようにシャープペンシルを動かす。

 

「つまり、浅桜神社の九尾は、この辺りに昔から伝わっていた別の九尾の狐ってことですか?」

 

「そう考えるのが一番自然だろうね。少なくとも浅桜神社に伝わっている話では、人間を騙したり、国を滅ぼしたりするような話は残っていない。むしろ、人間に助けられたことで、その恩を一生かけて返そうとした狐の話だ」

 

「……なんだか、すごく義理堅いですね」

 

ユリエが感心したように呟く。

 

「そうだね。だからこそ、この神社では昔から『家族を守る狐』として大切にされてきたんだ」

 

トウマはそう言うと、神社の奥へと視線を向けた。

 

「安産祈願、健康祈願、厄除けのお守りが特に人気なのも、そのためだね。子供が無事に生まれ、生まれた子供が健やかに育つように。そして、家族に災いが降りかからないように……そういう願いを持って県外から来る人や外国の人も多いんだ」

 

「へぇ~……」

 

マナミは感心したように境内を見回す。

いつも遊びに来ている場所。

放課後になれば当たり前のように集まり、時にはウィザーズとして戦うための作戦会議まで行う場所。

それが、今まで知らなかった物語を持っている。

 

「なんだか……」

 

ヒヨリがぽつりと呟いた。

 

「住んでる場所なのに、知らないことがいっぱいあって少し変な感じ……」

 

「アハハ、まぁそうだね。ヒヨリがこの神社の神主になるにはまだ先の話だからそこら辺は教えてなかったからな」

 

トウマは笑いながらヒヨリの頭を撫でる。

 

「自分の身近にあるものほど、意外と知らないことが多いものだよ。灯台もと暗しだね」

 

「なるほど……」

 

ユリエが頷く中、トウマはふと思い出したようにヒヨリへ視線を向けた。

 

「そういえば、狐で思い出したけど……ヒヨリは昔から狐に好かれていたね」

 

「え?」

 

「動物園の触れ合いコーナーでも、狐がヒヨリのところに集まっていてね。あの時は随分と人気者だったなぁ。本当に動物に好かれやすかったけど、特に狐は凄かったんだ」

 

「そう、なんですか?」

 

ユリエが何気なく尋ねる。

 

「……あれ?」

 

マナミはそこで何かを思い出したように首を傾げた。

 

「そういえば、スカイレイスの時もそうじゃなかった?」

 

「っ!?」

 

ヒヨリの肩が僅かに跳ねる。

当然だが、ヒヨリは両親にウィザーズとして活動していることは伝えていない。

だからこそマナミの発言は非常にまずい、それこそ正体バレの鍵だった。

 

「ほら、あの狐みたいな動物! ヒヨリが近くにいたら、なんか凄く懐いてなかったっけ?」

 

そんなことにも気付かず話を続けるマナミに、ユリエは大きくパチンと手をたたくと大声で話し始める。

 

「え、えぇ!!ええ、そうでしたわね!本当にヒヨリさんは動物に好かれやすい体質で!!本当に!!羨ましいかぎりですわねぇ!!!!」

 

ユリエが物凄い圧の込められた瞳でマナミへと視線を飛ばす。

そんな視線に最初こそ首をかしげていたマナミだったが、ピクリと肩を震わせると慌てて口を開いた。

 

「あ、アハハ~!本当に!羨ましくて仕方ないよねぇ!!」

 

「そ、そうですね!本当に夢の国のお姫様かってくらい集まりますもんね!!」

 

マナミの言葉に、コユキも慌てて話を合わせた。

 

「ふふ、ヒヨリは昔から動物に好かれる才能があったからなぁ」

 

トウマは懐かしむように呟きながら笑う。

そんな父の姿に、ヒヨリは自身が異様に狐から好かれる事が不思議に感じていた。

どうして、私なのかな?

 

「……そう、なんだ」

 

ヒヨリは苦笑しながらも、ウィザーズとして戦っているという事実がバレずに済んだことに安堵した。

ふと、境内にある九尾の狐の像へ視線を向ける。

視線の先で、石造りの狐はただ静かに彼女を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィザーズ組が浅桜神社について調べるなか、佐久魔 空良は困惑していた。

というのも、現状が原因だ。

空良は、背中から突き刺さる視線と柔らかな感触にただ困惑していた。

休み時間、次の授業への準備を進めたりトイレへ行ったり友達とのコミュニケーションを取る自分の好きな事が出来る時間。

そんな中、隣の席の女子から質問責めされるなか、彼女は読書している空良の背後へ回ると、一言も話すことなく背後から空良に抱きついたのだ。

何の断りも発言もない、唐突な行動。

クサリを囲っていたクラスメイト達が悲鳴を上げたり、頬を赤らめたりと様々な反応を見せた。

 

「え、ちょっと待って……」

 

「あの二人って、そういう関係だったの?」

 

「転校してきたばっかりだよね!?」

 

「というか、佐久魔さんも何で普通に読書してるの!?」

 

問題はその後に一切離れることなく、そして空良もまた何も返事や反応をしなかった為か変な勘違いが起きているようだった。

前の世界で彼女はここまで距離感が近かっただろうか。

暫くするとクサリの机にいた彼女への質問を投げ掛けようとしたクラスメイトの多くが自身の机へ戻りチラチラと此方を確認してくるようになっている。

どう反応していいのか分からず、何も返事をしない。

そのためか、周囲では妙な勘違いまで起き始めている。

私が創り変える前、魔法少女事件のある世界での彼女はもっと控えめな性格だったような気もする。

何処か、私たちの間に線引きをしていたような控えめで、時折自身を卑下する感じの印象だった。

周囲から向けられる視線が痛い、本当にどうして?

 

どうして、こうなったの???

 

暫くして授業が始まる時間になると、彼女は自分の机へ戻っていった。まるで、抱き付くような事なんて何もしていなかったような自然な動作で戻っている。

ずっと、どうして彼女からあのような行動をされたのか分からず考えていれば、気がつけば次の授業は終わっていた。

慌ててノートを見れば、習慣か思考と行動が分離していたのか授業のノートはしっかり取られてある。

歴史の授業だから、まぁ大丈夫かな。

そんなことを考えながらイスに座っていると、今度は私の膝に座ってきた。

 

「♪」

 

???????????????

 

確かに、挨拶のために机とイスの間はいつもより空いていた。

でも、なんで膝?なんで来た?なんで私?

どうして私は、さっきからこの子にされることを一つも拒めていないんだろう。

 

「……」

 

まるで、拒んではいけないような。

そんな気がしてしまう。

いや、私には拒む権利なんて無いのかもしれない。

魔法少女事件の起きなかった世界は、クサリにとって地獄の続きを意味しているのかもしれない。

だから、こうしてクサリが私のそばにいることを、嫌だとは思えなかった。

でも、こんな風に過ごして良いのか分からなかった。

だって、だって私はクサリを救うどころか、苦しめてばかりなのだ。

魔法少女事件のあった世界では、私が彼女を救えなかった。

目の前で撃たれて死んでしまった。

そして私が魔法少女事件の起きない世界を祈ったから、彼女はあぁして苛められ続けていた。

私には、彼女を拒む資格なんて、無いのかもしれない。

でも、本当に……本当に、どうして?

この前に始めて会ったような私に、どうして?

そんな私の考えを他所に、膝の上に座ったクサリは楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の1日が終わり、夜。

怪しげな試験管の並ぶ空間で、試験管を見つめていた白衣の老人はあからさまなため息をつきイライラした様子を隠そうともせずに口を開いた。

 

「精霊姫や妖精はいつになったら捕まえられるのだ、貴様ら…」

 

「も、申し訳ありませぇん!」

 

ディストラ・レイベーダー。

フォールエンスの創設者である彼は、自身の想定よりもはるかにこの地球という惑星へ留まっていること。

この星の侵略が全くといっていい程に進んでいないこと。

そして自身の求める研究を進めることの出来ない焦りからか、その表情は険しく見る者達を震え上がらせた。

 

「こ、今回こそはあの小娘供を倒し!妖精と精霊姫をレイベーダー様に!」

 

「貴様の口からは何度その言葉を聞いたか分からんな」

 

「今回は今までとは違います!今回用意した奴はこれまでの武力による侵略とは違います!」

 

そう言いながら白衣を羽織り、頭を下げていた人物が呼び出した異形の存在にディストラ・レイベーダーは小さくため息をつく。

現れたのは、まるで地球に存在するパソコンやテレビが継ぎはぎ体へ縫いつかれた存在。

 

「奴らは群れとして動きます!ならばその群れの核を破壊すれば、奴らはきっと自身の手で崩壊していく筈です!」

 

「……そこまで言いきるか。ならば最後のチャンスだ、もし失敗すれば相応の物を支払って貰うぞ」

 

「はっ!」

 

「……それで、そいつは何が出来る」

 

「この星に住む人間の、記(・)憶(・)へ干渉します」

 

「記憶だと?」

 

「はい!奴らがこれまで戦ってきた理由。互いを仲間だと認識している記憶。家族との思い出。そして──自分自身が何者なのかという記憶まで!」

 

「……なるほど」

 

ディストラ・レイベーダーは、初めて興味を示したように異形の姿を見つめる。

 

「つまり、敵を倒す必要すらないということか」

 

「その通りでございます!」

 

白衣の人物は嬉しそうに笑う。

 

「奴ら自身に、奴らを壊させるんです」

 

「ふむ……」

 

ディストラ・レイベーダーの口元が僅かに歪んだ。

 

「今度こそ、期待しているぞ」

 

「はっ! 必ずや――!」

 

暗闇の中、継ぎ接ぎだらけの怪人がゆっくりと顔を上げる。その無数のモニターに映し出されたのは、ウィザーズの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「マジカル!」 

 

「デジタル?」

 

「クロニクル!」

 

「「魔法少女図鑑!!」」

 

「第10回魔法少女図鑑!進行は私、天宮 音羽(アマミヤ オトハ)と!」

 

「神島 結姫(カミシマ ユズキ)でお送りする。」

 

「このコーナーは毎回異なる魔法少女をゲストに読んで、本編に登場していた魔法少女について詳しく解説していくコーナー!なんだけど、今回のゲストは前回同様になし!前回で話した通り、ユズキについての解説になるわ」

 

「ようやく私の出番が来た……スタッフ、紹介文公開よろしく」

 

──────────────────────

 

【魔法少女名】魔法少女アズリィール

 

【変 身 者】神島 結姫《カミシマ ユズキ》

 

【 武 器 】大鎌バルバートス

 

【 魔 法 】《影縫い》

 

       《潜影》

 

────────────────────── 

 

「魔法少女名はアズリィール、オトハにつけて貰った名前。武器は、刃の部分を飛ばしてブーメランに出来る大鎌のバルバートス」

 

「あの大鎌、あの機械チックなデザイン!最高にかっこいいのよねぇ!」

 

「ん、ゲーミング発光も出来る」

 

「出来るの!?」

 

「気合いで………魔法は影から黒い鎖を出して対象を束縛する影縫い。影の中に潜って移動できる潜影があるよ、任務だと良く潜影で近付いて外にでて一息にヤるのが定番」

 

「まぁ、一番リスクの少ない技よね…影ってあまりみないから油断を突くのに一番だし」

 

「うん、あと影縫いは結構重宝した。主に魔法少女拘束とか」

 

「さて、そろそろ『マジカル!気になる?クエスチョン!魔法少女アンケート10』のコーナーいけわよ!」

 

──────────────────────

 

 

Q1.好きな食べ物は?

 

A.オトハの作ってくれるもの全部

 

 

Q2.好きな事は?

 

A.オトハと過ごすこと

 

 

Q3.自分の魔法少女としての衣装で、一番気に入っている部分は?

 

A.分からない

 

 

Q4.最近観た映画は?

 

A.劇場版 魔法少女プリズム☆ハート

 

 

Q5.魔法少女としての自分にキャッチコピーをつけるなら?

 

A.影

 

Q6.もし休日が1日だけ完全に自由なら何する?

 

A.寝る?

 

 

Q7.魔法少女カフェを開くなら、貴方はどんなメニューを作る?

 

A.アイス?

 

 

Q8.魔法少女として戦う時のテーマソングを選ぶなら?

 

A.おまかせ

 

 

Q9.魔法少女としてCMに出演するなら、何のCMに出たい?

 

A.オトハと同じものなら何でもいい

 

 

Q10.最近ちょっと恥ずかしいと思った時

 

A.ない

 

──────────────────────

 

 

「ほぼ意味なし解答!?」

 

「……なんか変?」

 

「ユズキ?もうちょっと、その……まぁいいわ!というか、せめてアイスなら味決めなさいよ!ほら!珍しく色々と食べてたじゃない?」

 

「うーん……抹茶?」

 

「今、絶対に私の和服見て言ったわよね?コラボメニューにするならもう何種類か考えといた方が良いわね」

 

「……がんばる。取りあえず抹茶とラムネとバニラとチョコ」

 

「考えてあるじゃないのよ……あと自分のテーマソングがおまかせって……作曲家泣かせな答えね」

 

「良く分からない、オトハが選んで」

 

「しょうがないわねぇ!いい感じのを選んであげるわ!」

 

「お願い……今回はここまで。マジカル」

 

「は、早くない!?まぁいいわ。デジタル」

 

「クロニクル、魔法少女図鑑のコーナーでした。次回もお楽しみに」

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