張燕編
黒山賊本拠地である古びた砦。
「・・・袁紹は姿をくらましたか・・・」
そこに一人佇む男、張燕。
「朝廷が腐敗し、かつ袁紹が馬鹿だったから今までやってこれたもの・・・曹操か・・・」
曹操・・・そう、曹操である。
朝廷の討伐軍を退け自ら帰順し、事実上の支配権容認を勝ち取ったまでは良かった。
良かったのだが、変に正義感の強い袁紹はそれが気に入らなかったのか度々ちょっかいをかけてきていた。
・・・まぁ、その度に迎撃して追い返していたのだが。
官渡の戦いの後袁紹は姿をくらませ袁紹軍は崩壊。
今や大陸の勢力は劉蜀・孫呉・曹魏・黒山賊ぐらいのものだ。
黒山賊10万、とはいえ曹操に戦で勝てるとも思えない
何よりも将が少ない。
孫軽、王当、杜長、眭固、于毒、そして自分。
いずれも先代頭目、張牛角の時代からの猛者ではあるが、魏の、いや、魏、呉、蜀、三国の将と渡り合えるのは自分とせいぜい頑張って、孫軽くらいだろう。
さらに、魏、呉、蜀どの国であろうと、民から義賊と言われようとも賊と名乗っている自分たちを放って置くわけが無いのだ。
「・・・頭目としての責って訳か。
・・・白虎、いやこの場合は張牛角として、か?
・・・あの時のお前の気持ち、なんとなく分かるぜ・・・」
そう呟いた張燕の瞳には強い決意があった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
魏の本拠地、許昌。
官渡の戦いが終わり内政の引継ぎも終わり次はどうしようかというタイミングでその男がやって来た。
「・・・そう、つまり黒山賊は降伏するから部下の命はとるな、と言う訳ね。」
「そうだ、オレら黒山賊は民に義賊と呼ばれているとは言え賊は賊。
ならばこそ、勝てない戦をして無駄に部下の命を散らすより降伏してでも生きながらえさせてやりたいのでな。」
事前の連絡もなしに唐突に一人でやってきて黒山賊の降伏を宣言した男、張燕。
武将勢から受ける殺気は気にもかけないで堂々と話す姿は人の上に立つものとしてのカリスマを魅せている。
「そう・・・でも、罰も何も無しでは周りに示しがつかないわ。それはどうするつもりかしら?」
曹操のその言葉にスッと目を細め・・・
「オレの首でも何でも、持って行け。
それがオレの、黒山賊頭目としての責であり、最後の仕事だ。」
頭を差し出す様にその場に座り込む。
「覚悟は・・・本物みたいね。
良いでしょう、あなたの部下の命は、私に刃向かったりしない限り保証するわ。
その代わり、あなたの・・・そうね、腕を一本貰いましょうか。
あなた自身は殺すには余りにも惜しいわ。」
「・・・すまない、ありがとう。」
そう言ってスッと立ち上がり、一度周りを見回し、改めて夏侯惇の方を向き、
「もし、切り落とせなかった場合は貴方に、頼むぞ。」
「お、おいっ!?」
自らの得物、無銘の刀を脇に挟み込み、一気に引き上げた。
「かかか、ここで死なずいつ死ねと言う?あんたが長らえさせたこの命、あんたの為にここで果てるのなら本望って奴よ!まぁ、もっとも?簡単に果ててやる命でもないがなぁ!!!」
それは義に生きたが故に不器用な男の一生の物語。
恋姫†無双・張燕編~オレがオレである為にやったことだ、後悔なんざ出来るかってんだ~
「誰だァ!今“お頭”って言った奴!!今のオレは将軍だっつってんだろぉがぁぁ!!」