幼少の頃は身体が弱くて、何時も姉さんたちに心配をかけて居た。
部屋の窓から見える、外で駆け回る上の姉と、それを苦笑しながらも着いて回る下の姉を見る度に羨ましさと、その場に行けない悔しさで毎日の様に泣いていた。
日に当たらず育ち肌は白く、華奢な身体、後ろ髪は背中にかかる程長く、前髪も目元にかかる程の深青の髪、姉に似た顔立ち、そんな背景もあったのだろう、いつしかこう呼ばれていた。
夏侯月姫、と。
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「• • • 此処も、仕えるに値しなかったか。」
ガヤガヤと賑わう町をコロン、コロンと音をたてながらゆったりと歩く男。
くるくると手で弄ぶ見事な龍の意匠が施された煙管、和服と韓服を足した様な衣服に身を包み、履いている靴は下駄、その容姿は美しく、男も女も関係なく振り返ってはほぅ、と溜息をつく。
「気が進まねぇ。気が進まねぇが、姉さん達を頼るしか無いか• • • 。」
はぁ、と溜息とともに吐き出した煙は天高く、雲ひとつない青空へと消えて行った。
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「月!ついに、ついに華琳様に仕える決意をしてくれたのだなっ!」
「ふむ、旅に出ると言われた時はどうなるかと思ったが、やはりお前の目に叶う様な領主は居なかったのだな。いやはや、私達としては嬉しい限りだな。」
ガバァっと、豪快に、しかしこちらの身体を気遣ってくれているのか痛くない程度の力加減で抱きついてくる上の姉と、その行動に苦笑しながらも歓迎してくれる下の姉。
「惇姉さん、まだ決まったわけじゃ無いよ。オレは曹操様とは一度も会ったこと無いんだから、先ずはあって見ないことには、ね?
淵姉さんも、そこは留意しといてくれよ?」
幼少の頃、身体の弱さから親、親族にまで見放され、字、真名でさえもつけられなかったオレに、親以上に愛情を注いでくれ、真名も、二人の間を埋める存在、と言う事から夏蘭と名付けてくれた。
五年前も、二人があの手この手で呼んでくれた流れの名医、先代華佗(どうやら旅中に代替わりしたらしく、今はとある庵で隠居中との事)に見てもらい身体の弱さも人並みに成った。
二人にはとても感謝しているし、出来るなら二人のために己の力を振るいたいと思っている。
しかし、しかしだ。
色々な人の話を聞くに、二人が仕えている曹操は女性愛者であり、側近は極度の女尊男卑思考、更にオレの幼少の頃の病弱さ、身体の弱さを一族包みで付き合いの有る曹操様が知らないはずも無く、幾ら姉が居るからとそんな所に仕えれる自信はない為に、この五年間、自らの主と定められる人は居ないものかと各地を放蕩していたのだが結果見つからず。
妥協点として、公孫瓚様(突出してる所が特に無く、普通に仕えれはする)、袁術に下っている孫策様(孫策自身は仕えるに値するが袁術に下っている為仕えるには先行き不安)、馬騰様(一族、配下の半数以上が脳筋思考仕えるのはいいが目に見えて苦労しそう)が挙げられるがやはり、一度も会わずに曹操様を決めつけるのも良く無いだろうと、口利きしてもらう為に姉の元へ帰ってきたのだった。
「ま、あって見ないことには話にならないってね。出来るなら姉さん達と一緒にいたいし、良い人で有ることを願うよ。」
「勿論だ!華琳様は素晴らしい方なのだぞ!」
「フッ、お前も色々考えているのだろうがそれは杞憂さ。
華琳様は才を持つ者を愛す。
病弱さえなければこれ程の才を持つお前だ。
私達と同じか、もしかするとそれ以上に、良くしてもらえるだろうさ。」
何時迄も離れそうに無い上の姉を引き剥がし、皮肉げに笑うが、曹操様を盲信する上の姉には通じず、下の姉もオレならば大丈夫だろうと微笑む。
「 • • • 敵わないなぁ。」
オレの事を理解してくれる、評価してくれる姉に、ふぅ、と溜息をつき苦笑することしか出来なかった。
「く、くは、くはははは!!
正史?外史?そんなもの糞食らえ!
姉二人が!オレが定めた主が!仲間が!
皆が表に出さずに悲しんで居るんだ、様は手前ぇを倒してその銅鏡ぶっ壊して“アイツ”を呼び戻せば万々歳の“はっぴーえんど”てヤツだろう!
さぁ、始めようじゃねぇか。
オレと手前ぇ、二人だけの戦争って奴をよぉ!」
それは、病弱を克服し、並び立つものなし
恋姫†夢想 • 夏侯月編〜オレがオレ自身に嘘付かない為に、アンタに恩を返させてもらうぜ?〜
「オレが支えてやれだぁ?
はっ、バカ言ってんなよ、お前が居なきゃ始まらねぇだろうがよ • • • 一刀。」