ろっく?いや、ギターすら持ったことないけど?   作:クウト

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今回少しだけ、少しだけ長いです。
理由はキリが良い場所を見つけられず、いっその事アニメ二話終わらせるかって思ったので。
少しはリョウとかと話せて良かった。


初バイトって少し緊張するよね

スマホのアラームで目を覚ます。

モゾモゾと動く姉さんを押しのけて、アラームを止める。

さて、昨日寝る前に後藤さんへとメッセージを飛ばしておいたのだが、読んでくれてたのだろうか?

その内容なのだが……。

 

『明日からバイトだね。……まさかとは思うけど、マラソン大会が嫌な中学生みたいに水風呂とか薄着でベランダに出るとかやっちゃダメだからね?もしやってたらできるだけ風邪ひかないようにして寝るんだよ?』

 

という内容。

普通ならお節介すぎるとは思う。だが後藤さんに限って言うと、このぐらいではお節介すぎるという事はないのだ。ベッドに入り込んだままスマホを操作して新着のメッセージを確認。

 

『申し訳ありません。正直に白状すると私は天見様を裏切り、氷風呂に入った後、全身にシップを貼って扇風機の前でギターを掻き鳴らしてました。ですが幸いなことに丈夫な身体のおかげで熱は出てませんごめんなさい見捨てないでくださいお願いします!!』

 

「あ、はい。……てか、氷風呂て……」

 

予想を遥かに超えてくる後藤さんには少しため息が出てしまった。

姉さんを起こさない様にベッドから抜け出して朝の準備を開始する。というか、ベッドに入り込んでくるなんて……お酒呑んだな?昨日なんか酒臭いのが入ってきた気もするがやはり姉さんだったのか。なんて思いながら顔を洗い、洗濯物を干してからキッチンへと向かう。

……ん?これって新品だったはずなのにもう空いてる?呑みすぎじゃないの?

家に酔い止めは置いてないなぁ……。

パッと思いつくのはシジミの味噌汁だが、シジミなんて今はない。とりあえず卵のお粥でも作っておこうかな?あ、スポーツドリンクはあったはずだしテーブルの上に出しておこう。

……こんなのをパッと思いついてしまうのはどこかの酒カスきくりちゃんのせいだな。この人ちょいちょい脳内にチラつくのほんとなんなの?

この間も

 

『気持ち悪〜い……!ちょ、音寧ちゃん、うちにお粥でも作りに来てくれない?だいじょぶ変な事はしないから。あ、でも変な事は起きるけどね!ウチ出るから!』

 

ほんとなんなのこの人。

しかも出るってなに?幽霊?絶対行かない。

サッとご飯とお弁当を用意してメモを残す。二日酔いならお粥とスポーツドリンク用意してるからと簡単に書いて終わりだ。

 

「じゃあ、行ってきまーす」

 

少し大きな声で言うと、俺の部屋から小さな音がする。返事をしてくれたのならありがたい限りだが、もし気持ち悪いなら吐く前にベッドから抜け出してくれている事を願いつつ家を出たのだった。

 

 

 

それから学校ではいつも通りに時間が過ぎ放課後。

たまには放課後にカラオケでもと誘ってくれる奴らも居たが、バイト始めたからと断ることに成功。というかだな?な〜にが、『女の子にお前も来るって言ったんだよ!?』だよ!その辺は自分達でなんとかして頑張るところだよね?

まぁ、そこはもういい。今はこっちだ。

 

「後藤さん、まだかかりそう?」

 

「…………」

 

あー、聞こえてないなこれ。

現在、俺と後藤さんは二人でSTARRYへと辿り着いていたのだ。そして店に入る前に少し待ってくれと後藤さんに言われた俺。

確かに心の準備も必要なのは同意するのだがもう十分は扉の前で立ち止まっている。

もう無理矢理にでも入ってやろうか?そう思っていた俺だったが、階段の上の方から声をかけられた。

 

「ん?音寧くんじゃん。そういや今日からだったね」

 

「あ、星歌さん」

 

「学校お疲れ。それと、今はいいけど店では店長って呼んでね?」

 

「了解です」

 

「それで、これ何?どんな状況?」

 

「実は……」

 

後藤さんの心の準備が必要でそれが完了するのを待っていることを説明。それを聞いてなるほど任せろと頷いた星歌さんは何故か俺を階段の上へと移動させて……ん?移動する必要あった?

 

「チケット販売は五時からですよ?まだ準備中なんで」

 

え?威圧?し始めたんだけど?

え?なんなの?バカなの?

とりあえず止めなければ……!

 

「ひぃぅ!?あ、え、ああああまみ天見がえ、ばバイトおお落ち着いて」

 

「何やってんですかぁ!!」

 

「天見くん!いたぁ!よ、よよかったぁ!」

 

「……うん、ごめん。ここまでとは思ってなかった。君もごめんね?頼むから落ち着いて……ほんと頼むから。あんまり騒ぐとアレが……!」

 

まさかバイトが始まってもいないタイミングからイジっていくとは思ってなかった。

俺が頭を抱えて後藤さんを落ち着かせようとした時だった。ガチャリと扉が開く。

 

「何やってんですか」

 

「ほら、来ちゃったじゃん……」

 

姉さんが出てきた。

それを見た星歌さんが頭を抱える。

というか姉さん?ここライブハウスだし防音もしっかりしてるだろうに、なんで外での騒ぎを察知できたの?最近姉が人外じみてきて不安である。

 

「え?店長……まさかとは思いますけど、うちの大事な大事な音寧くんを困らせてます?仕返しに私も店長を困らせますよ?」

 

「やめてね?」

 

「こら姉さん。あんまり星歌さんを困らせない「星歌!?!?」ん?あれ?なんか間違えてたかな?」

 

「いや、間違えてはないんだけど……あーもう!ほら仕事仕事!」

 

「ちょっ!店長!仕事の前にお話がありますからね!?そんな近しい仲は許してませんからね!?歳を考えてくださいね!?」

 

「あぁ!?そこ言っちゃうかなぁ!?」

 

「え、なにあれ。二人ともこっわ」

 

「…………」

 

「あ、後藤さーん?意識はしっかりとしましょうね〜?」

 

まぁなんだかんだとあったが店内へと入ることができた。ここまで長過ぎるよね……。

さて、俺も初のバイトモードにならなくては!しっかりとしていこう。

 

「音寧くんの初仕事はコレを落ち着かせてね。それで、マンゴー仮面?はこっちに来てね」

 

「は、はい!マンゴー仮面です!」

 

初仕事は姉の世話かぁと思っていれば、また変な事になってきた。星……店長、マンゴー仮面はないですよね?てか後藤さんも嬉しそうにしない。

とりあえずツッコミを入れておかなければ。

 

「もう、お姉ちゃん!ぼっちちゃんはそんな名前じゃないでしょ!」

 

「後藤さんは喜ばない!……って、虹夏さん。お疲れ様です」

 

「おつかれー!バイト頑張っていこうね天見くん!で、お姉ちゃん?話聞いてる?」

 

「はいはい。わかったわかった」

 

癒しである。

なんだろう、こう、笑顔っていいね……!!

扉前での騒動!店内で荒ぶる姉さん!まだふざけるつもりの店長!そして弄りに対して無自覚な後藤さん!

疲れたよ……!!

でも虹夏さんの笑顔で回復できた気がする。

 

「山田さんも今日からよろしくお願いします」

 

「ん。よろしく」

 

俺は山田さんに改めて挨拶。

これから先輩になるのだから礼儀は大事。

 

「……ん!?虹夏ちゃんのお姉ちゃん!?」

 

「おぉう!?びっくりしたって、今更?」

 

急に後藤さんが動き出した。

店長が虹夏さんのお姉さんだということに、今気がついた様だ。そして手のひらを店長と虹夏さんに向ける。

 

「姉妹?」

 

「そう」

 

「そだよ〜」

 

「姉弟?」

 

「はい」

 

「そうだね」

 

あー。これは……。

後藤さんは山田さんを見て目を輝かせる。

 

「仲間!」

 

「え?なんの話?」

 

しかし山田さんはよくわかっていなかった。

おそらくだが、身内組が二組もいるのに私は?みたいな変な疎外感を感じたのだろうか?同じ職場に家族が、しかも二組もっていうのは珍しいとは思うが、そんな別に気にしなくても。

さあさあ!後藤さんも切り替えて仕事モードにならないと!って、後藤さん?……また見えなかったなコレ……。

 

「ほらほら、ぼっちちゃん。そんな緊張しなくてもいいから。って、わけでまずはテーブルから片付け……ん?ぼっちちゃんが……消えた?」

 

「なんかスッと居なくなったね」

 

「あー。コレ、何度見ようとしても見えないんですよねぇ」

 

そう言いながら机の下を覗き込む。

やっぱり居た。

 

「コツは、なんかこう、近くの暗いところや狭いところとか探せばいます」

 

「本当にいたぁ!」

 

「流石ぼっち。私でも見えない速さには素直に驚き」

 

「あ、すいません……ちょっと一息ついて心を落ち着けたくて……」

 

「始まってもいないのに休憩は早過ぎるかな!?」

 

もっともである。

とりあえずもう後藤さんは虹夏さんに任せよう。

俺は俺でさっさと仕事をしなければいけない。

 

「では音寧くん、ここは姉である私が「山田さんよろしくお願いします」……わ、わたぁ……し……」

 

「ん。厳しくいくから」

 

気合いを入れなければ!!

 

「あー、まぁ、そう落ち込むなって……な?りんごジュースでも飲みな?ほら」

 

「いただきます……」

 

「さっさと気分入れ替えてね?ほんと、頼むからね?本当に困らせないでね?」

 

そして俺は店内の掃除を教わることになったのだった。ただ、しばらくすると聞こえてくるギターの音にまた困惑する俺であった。

まったく、後藤さんと一緒にいると退屈しないぜ!

いや、ほんと、退屈する暇ねぇや。

 

「モップ掛けが終わったら、次はテーブルを戻していく」

 

「はい」

 

「まぁ、今日は簡単に掃除する程度で大丈夫。教えながらだとどうしても時間かかっちゃうし、時間もあんまりないから一通りをザッと教えていくよ。すぐにお客さん入って来ちゃうから」

 

「メモの準備はできてますので、手加減なくお願いします」

 

「了解」

 

掃除をしながらライブハウスは飲食店扱いになるとか、色々と知らないことを聞けたりと勉強になるな。そして掃除が終わり、次はチケット販売をする横について、教えてもらう。

金銭が関わってくる事だし、一番最初にお客さん達と顔を合わすのだ。ここはしっかりとしなければ店の信用にも関わってくる。笑顔を忘れないようにしよう。

そう思いながら受付でチケットの販売を行なっていく。今回のバンドは人気があるのだろうか?それなりの人数が入っている。いつか、後藤さん達のバンドもこうやって人気になってくれると少し嬉しい。

そん時は古参アピしよ。

 

「天見。この前は、ごめん」

 

「ん?急にどうしました?」

 

ある程度お客さんも入り、ひと段落したところで山田さんに謝られてしまった。

 

「バンドに誘うの、無理矢理過ぎたから」

 

「あー。いえ、気にしなくていいですよ。誘ってくれる気持ちは嬉しいので」

 

これは本当。

誰かに何かを誘われるというのは少し嬉しい。

正直に言うと、こうやって誘いがあるのはここ何年かの話。今までは自分から距離を調節して気を抜けない友人関係しかなかったからなぁ。もはや友人と言っていいのかもわからない。

だから、この人たちの気やすさは少しだけ嬉しくはあったのだ。

 

「そっか。ならよかった」

 

「まぁ、アレです。誘いを断って、後藤さんだけ任せてってのは悪いんでギターとボーカルできそうな人がいないか探しときます」

 

実は一人心当たりがあるのだ。

ギターはできるのかわからないが楽器背負っていたのを見たことがあるし、そいつは歌がうまかった。

別のクラスの奴に誘われて行ったカラオケ。

正直言ってあまり行きたくはなかったのだが、大部屋を借りるぐらいの人数だったしいつ抜けてもバレないかと思って少しだけならと付き合いで参加したのだが……。

喜多のやつは頭1つ抜けて歌がうまかったな。

 

「それはありがたい。お礼にこれあげる」

 

山田さんから渡されたのはピック。

STARRYのドリンクチケットだ。

 

「ありがとうございます」

 

「私の奢りだから」

 

ドヤる顔。

うーん、これは……。

あの店長は虹夏さんの姉だからと言うか、厳しくもあるが基本的には結構優しいと思う。がぶ飲みしなければ、ちょっとだけならジュースをタダで飲むことも許してくれるだろう。

それをわかっているのだろう。

だというのに、わざわざ自分の奢りを強調する山田さんに少しイラッとした俺である。心が狭い……!

 

「二人とも受付はもういいよ。今日のバンドは人気あるし、リョウは勉強になるから見とけ。音寧くんもライブハウスの雰囲気ってのをしっかりと感じておいて」

 

「わかった」

 

「はい。じゃあすみませんが、よろしくお願いします」

 

そう言って虹夏さんと後藤さんがいる場所へと向かう。……ふむ。その前に少しイジっておこう。

 

「店長」

 

「どした?」

 

「コレ、山田さんの奢りみたいなんで給料から天引きで」

 

ドリンクチケットを取り出して店長に渡す俺。

 

「え?」

 

「わかった。カッコつけるからこうなるんだよ」

 

困惑する山田さんを放置して返事をする店長。

流石である。

 

「え?あ、ちょっ」

 

「ゴチになります!」

 

何か言われる前にジュースを飲みにいくことにした。勿論ライブも楽しみである。

 

 

 

人気バンドのライブ。

曲は勿論良いし、MCまですごく面白い。

スタッフだから仕事をしないといけないのだが、ついつい、ずぅと目と耳を向けてしまいそうになる。そんな楽しいライブだった。

それに!後藤さんもちゃんと飲み物を出せていた!!接客ができていた!これが一番良かった!安心した!!

顔や動作がぎこちない?いいんだよそんなの!後からなんとでもなる!!

 

「音寧くんおつかれ。今日はもう帰っていいよ」

 

「お疲れ様ですぅ〜」

 

少しばかり歓喜を噛み締めていると店長がやって来た。今日のバイトは終わりのようだ。

はい。お疲れ様でした!

と、言おうとしたら姉さんが割り込んできた。

 

「お前はまだ仕事だよな?」

 

「……うぅ、帰りたい。私も、音寧くんと一緒に仕事の話しながらちょっと青春っぽい感じで帰路に着きたい。後藤さんが羨ましい……!!」

 

涙目になる姉さん。

だがしかし、俺たちは高校生である。あまり遅い時間までバイトはできないのだ。

それに後藤さんを駅まで送らないとだし。

 

「はぁ、ご飯作って待っとくね。さて、後藤さん帰るよ!」

 

「あ、はい」

 

お疲れ様でした!

とみんなに挨拶をして帰る事にしたのだが、虹夏さんが駆け寄って来た。

 

「お疲れー!今日はごめんね?ずっとリョウに任せててさ。何か変なこと教わらなかった?大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと仕事を教えてくれましたから」

 

「それならよかったよ。じゃあもう遅いし、気をつけて帰ってね?」

 

「はい。……あっと」

 

「ん?」

 

コレは言っておかないといけないだろうな。

ここで働けるようになったキッカケ……いや、この世界に引き込んでくれた恩人なのだから。

 

「今日は、ありがとうございました。えっと、なんていうか、バンドの人達や、お客さんの雰囲気というか、ちょっと興奮しててなんで言えばいいか纏まってないんですけど」

 

「お、おぅ。ゆっくりでいいよ?」

 

いきなり言うことを決めたのだから仕方ないだろう?でも、ちゃんと言っておきたいのだ。

 

「新人スタッフとして仕事を覚えないとって思ってたんですけど、すごく楽しかったです。つい、仕事を忘れそうになるぐらいに」

 

「そっか……!」

 

「はい」

 

「そっかそっか!よかったよ!」

 

虹夏さんの笑顔が眩しい。

本当に嬉しそうな笑顔だった。

 

「でもちゃんと仕事も覚えてもらわないとダメだからね!次は私が教えてあげるし、勿論リョウよりもしっかりとね!」

 

「はい。ドンと来てください!」

 

こうして俺と後藤さんはSTARRYを出る。

道路に出た途端に出た息は、自分が思っていた以上に緊張していたのだなと自覚する感じで……うん、楽しかったな。

後藤さんを駅まで送り、急いで帰宅して簡単にご飯を作る。ここまで遅くなったのなら今日は姉さんと食事を取るのもいいかもしれない。弁当を持たせてはいるが、少しぐらいなら食べるだろうし。

 

「先に風呂でも入るかな。っと、その前に」

 

帰り道でくしゃみをしていた後藤さんが気になる。

メッセージを送ってみる事にした。

そして帰って来た言葉。

 

『風邪引きました……。ごめんなさい』

 

……氷風呂に入るからだよ……。




次は適当に間話でも挟もうか悩み中です。
それと今週の更新はもうできないかと思います。日曜日、仕事なんで……。
またゆっくり書いていきます。
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