ろっく?いや、ギターすら持ったことないけど?   作:クウト

4 / 12
おらぁ!!
今日休みアンド昨日昼寝して寝られないから連投だおらぁ!
でも次からは不定期に戻りますすみませんイキリました。


後藤ひとりには旅をさせる必要がある

ギター!と言い走ってきた女の子。

どなただろうか?

ていうか、後藤さんに対してそんな勢いでこられると絶対萎縮してしまう。ほら、声出てないし。

 

「それ、ギターだよね?弾けるの!?」

 

「あ、ぐぅ……!」

 

「後藤さん。変なダメージくらってるみたいな声出さない。えっと、あなたは?」

 

この調子だと復活まで少しかかると思い話を進めることにする。

 

「あ、いきなりでごめんね邪魔しちゃったよね?」

 

「いや、別に気にしてないんで大丈夫ですよ。こっちは驚いているだけなんで」

 

申し訳なさそうに謝るこの人に、後藤さんが驚いているだけだと軽く説明。少し困惑しながらも相手は話を進めることにしたようだ。

 

「え?そう?では改めて自己紹介を。私、下北沢高校二年伊地知虹夏」

 

「俺は天見音寧と言います。秀華高校の一年です。ほら、後藤さん」

 

「あっ、後藤ひとりです。同じく一年です」

 

「それでさっきの話なんだけどさ。ひとりちゃんはギター弾けるの?」

 

ビクッと後藤さんが驚いている。

……これは……チャンスなのでは?

俺の天才的頭脳が働き出した……気がする。

この先輩、何か焦っているのか懐への踏み込み加減は相当だし、こう言っては失礼だが後藤さんのコミュ障改善に良い起爆剤になるかもしれない。

獅子は我が子を千尋の谷に落とすという。

ならば俺もそれに倣おう。……後藤さん係を増やしたいわけではないよ?

 

「弾けるそうです」

 

「え!?」

 

「本当に!?」

 

「それも結構な曲数いけるそうです」

 

「ゔぇえ!!??」

 

「すごい!!」

 

「というわけで、ズバッとどうぞ」

 

「うん!」

 

「え、あっ、天見くん……!?」

 

すまない。

そんな目をされても俺はもう決めてしまったのだから……。大丈夫。ちゃんとフォローはするし今日は一日付き合うし、なんなら家の近くまで送るから。

 

「じゃあひとりちゃん!えーっとそのね?無理だったら大丈夫なんだけどね?……大丈夫なんだけどぉ。できれば助けてほしくてでも無理ならぁ」

 

「大丈夫じゃないやつですよねそれ」

 

思わず口にしてしまった。

俺の言葉に同意するように後藤さんは何度も首を縦に振っている。だよね?やっぱり大丈夫じゃなさそうだよね。

 

「そ、そうなんだけどぉ!!でも無理強いはできないというかぁ!わかんないかなぁこの感じ!……あぁ、もう!言っちゃおう!女は度胸!!」

 

そして伊地知さんは勢いよく手を合わせて頭を下げた。

 

「お願い!!今日だけ私のバンドでサポートギターしてくれないかなぁ!?」

 

「いいですよ」

 

「本当に!?」

 

「ゔぇ!?な、なんで天見くんが!?ていうか、さっきもこんな感じだった気が!!」

 

「後藤さん」

 

「は、はい?」

 

「ここで断るとね。帰ってふとした時に思い出すんだ。あー、あの人今日演奏できたのかな?私断っちゃったよなぁ。でもだっていきなりバンドとか言われても……でも……って」

 

「うぐっぅうぅ!!!!」

 

胸を押さえて大ダメージを負ったように蹲る後藤さん。

 

「でもここで助けてあげればさ。次に繋がる自信になるよね?そう、つまり新たな後藤ひとりの誕生だよ。おめでとう。今日から一人だけのギタリストではなくバンドマン後藤ひとりとしてのデビューだ。レベルアップだよ」

 

「レベル……アップ?」

 

「あ、天見くん?」

 

伊地知さんが少し引いている声を出しているが気にしない。ここで止めてしまうと、後藤さんが正気に戻……決意が鈍ってしまうだろう?

 

「そう。レベルアップ」

 

「新たな、私」

 

「そうだね。かっこいいよ」

 

「が、頑張ります……!」

 

「よしきた!では行きましょうか」

 

「なんか……すごい洗脳を見た気がするよ」

 

そんなまさか。

とても綺麗な友情と言ってほしい。

 

 

 

その後、後藤さんの気が変わらないうちに連行を開始した俺と伊地知さん。せんの……ゴホン。冷静に物事を考えれるようになってきた後藤さんではあったが、彼女の性格上もはや後戻りなんてできるはずもなく、俺の服を掴みながらも大人しく着いてきている。

そして道中、伊地知さんが置かれている状況についても聞いていた。

 

「大変ですね。本番前に居なくなるなんて」

 

「何か大変な事になってなきゃいいんだけどねぇ」

 

いい人だ!!この人すっごいいい人だ!

普通怒ると思うんだけど、相手を心配できるあたり後藤さんを任せてもいいんでないか?

俺の中で後藤さんバンド入り計画が着々と進んでいく……気がする!!

もう隠さないけどさ!いい加減に俺以外にも友達作ったほうがいいよね!!

 

「って、後藤さん?」

 

なにやってんだこの子?

自分の服を嗅いだと思えば、伊地知さんの髪を嗅ぎ始める。やめなさい。

 

「今日出演するライブハウスはSTARRYって言うんだけどね」

 

「ん?」

 

「ん?どうかした天見くん」

 

「あ、いや、なんでも」

 

姉さんの職場だ。

この間、姉さんに街を案内してもらっている時に外からだけ見たな。その時は荷物が多かったせいもあり、中には入らなかったけど。

うーん。手ぶらでは失礼か?

 

「伊地知さん。後藤さんをつれて先に行っててもらえますか?」

 

「え!?」

 

「え?うん、それはいいけど」

 

「な、どうして!?置いていかないでください!」

 

「大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫です。後藤さんも、すぐに合流するから」

 

後藤さんの手を伊地知さんに握らせて走り去る。

 

「あ!場所わかる!?」

 

「大丈夫でーす!」

 

「あ、天!天見くん!!」

 

いや、後藤さんよ。

そんな知らない人に預けられると死んでしまうとかじゃないんだから……。いや、後藤さんなら溶けたり粉になったりして飛んでいく可能性があるのか?

……伊地知さん。ちゃんと元に戻るから安心してください。

 

『溶けてる!!え!?なにこれ!!』

 

遠くから伊地知さんの叫びが……聞かなかったことにしよう。

 

 

 

〜伊地知虹夏サイド〜

 

天見くんが走り去っていった瞬間。

ひとりちゃんが溶けた。

何を言っているかわからないと思うけど私も何が起きているのかわからない。待って天見くん!どう対処すればいいのこれ!!!

あまりの怪奇現象に慄いていたが、次の瞬間には元に戻っていた。あれ?私疲れているのかな?実は結構緊張してる感じ?……ま、まぁ、気にしないでいこう!うん!!人は溶けない!!!!

 

「で、でね!私そこでバイトしててね」

 

目線を合わせようとするたびに逸らされる。

す、すごい反応速度だ。

 

「ひとりちゃんって実は運動結構できる?」

 

「い、いえ……あ、でも、ドッジボールだけは最後まで残っていたので、得意です。たぶん」

 

「そ、そっか」

 

それ、たぶん当てにくかったんじゃ……。

やめておこう。それよりだ。

一度ちゃんと謝っておかないと。

 

「あー。その、ごめんね。急にこんなこと頼んじゃって」

 

「え、あ、いえ」

 

「デート中だったんでしょ?」

 

「デート……」

 

「……ひとりちゃん?」

 

止まってしまった。

あれ?違うのかな?天見くんって結構遠慮なくひとりちゃんに接していたし、それはそれは親しい間柄なのかなぁってぇ!!!

 

「ちょっ!崩れてる!!あ、風が!!飛んでいかないでひとりちゃん!!」

 

「……あ」

 

「うわぁ!!いきなり戻らないで!!」

 

「す、すみません」

 

どうやら落ち着いてくれたようだ。

ひとりちゃんって不思議な生態してるんだなぁ……。頼む相手間違えたか?

 

「あ、天見くんはその、私の介護的な感じを」

 

「え?介護?」

 

「あ、その、私がこんな感じなので、気を遣ってくれていると言うか」

 

「なる、ほど?」

 

よくわからなかったが彼氏ではないらしい。

ひとりちゃんよく見れば可愛いし、天見くんも男の子とは思えない顔だし並んでると絵に……なってたかな?絵はひとりちゃん側が暗かった気もしてきた。

 

「へへへ。私は武道館をも埋めた女」

 

やはり間違えたのだろうか?

それからすぐにSTARRYについてひとりちゃんを案内する。ふぅ…………。

早く合流しにきて天見くん!!!!

 

〜伊地知虹夏サイドアウト〜

 

 

 

〜後藤ひとりサイド〜

 

まさか天見くんと付き合っていると誤解されるとは……。そんなの天見くんに失礼すぎるし……私なんかがあんな良い人に相手してもらえるだけ本当にありがたいと言いますかこの先の運全て使い果たしていると言いますかていうかあくまで介護をしてもらっていてとととと友達なんて恐れ多いと言いますか私なんかがががが。

 

「おーいひとりちゃーん!?」

 

「はぁあ!!!」

 

「あ、気がついた。ここがSTARRYだよ。おっはよーございまーす!」

 

あ、この暗さと圧迫感……。

 

「落ち着く。私の家」

 

「私の家だよ!?」

 

だ、大丈夫です。

すこし取り乱しただけ。うん。

バンドする人なんて私と同類。インドアの集まり私と同じ大丈夫。緊張なんてそんな……。

 

「あ、おはようございますPAさん。ひとりちゃん。この人がPAさん。最近何故か明るい」

 

「……あ、おはようございます……」

 

どこが明るいの!?

なんかどんよりした暗いオーラが!!人のこと言えないけど!!それになんかこう、こう凄いから迫力が!!

 

「ひぃう!イイキってましたごめんなさい」

 

「あれ?なんかありました?」

 

あれぇ!?虹夏ちゃん!私を放っておかないで助けて!!

 

「いえ、ちょっと今日、家族の帰りが遅いというか、高校生活一ヶ月で彼女とか作ってたらとか、でもあの子可愛いしあり得るというかそんなの相手を軽く死……いえなんでも、チョコでも食べます?」

 

なんか怖いこと言ってますけどぉ!?

あ、あああ天見くん!やっぱり私には早かったんじゃ!!いや、場違いだったんだぁ!!

 

「食べまーす!」

 

「どうぞ」

 

す、すごい!

虹夏ちゃん、この人にも物怖じしないなんて!!

あ、私にもチョコありがとうございます。……いい人だ。

 

「やっと帰ってきた」

 

「あ、リョウ!」

 

!?

また新しい人が!?え?睨まれてる!?

 

「ご、後藤ひとりです!大変申し訳ありません!」

 

先手で謝ることにしてしまった。

 

「だ、大丈夫だよ!?リョウは表情が出にくいだけだよ。ちなみに変人って言ったら喜ぶよ」

 

「嬉しくないし」

 

嬉しそうだ。

……ベーシストかな?

それからはスタジオに移動して今日やるセットリストとスコアをもらった。……うん。これならできる。

まだ少し怖い。

だけど、これからまだまだ楽しいことがたくさん待っている気がする。

ドキドキとしながらも開始した演奏。

私はこれでもギターヒーローだ。それなりに上手い自覚もあるし、うん。大丈夫だいじょ……。

 

「「……ド下手だ」」

 

あれぇ!?!?

助けて天見くん!!!

 

〜後藤ひとりサイドアウト〜




今回で主人公がSTARRYにたどり着くはずでした。
でもやっぱりぼっちちゃん達の出会いはそれなりにちゃんと書いておこうと思い、主人公の出番を遅らせました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。