ろっく?いや、ギターすら持ったことないけど?   作:クウト

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休み。休みだよ。
昨日帰ったら気を失ったように寝てたよ。
床で…………。体バキバキで痛い。
とりあえずFGOしよ。


こうしてバイトをする事になったのだ

「逃げたんだよねぇ〜……」

 

「多分どこかで行き倒れて今はもう……最近は毎日手を合わせてる」

 

「勝手に殺さない!!」

 

……あ、死んでないのね。

なんかそんな感じの空気感だったから、ボーカルについて聞いたのはまずかったかと……。はぁ、地雷原はここにはなかったようで安心した。

 

「あ、えっと」

 

「おかえり」

 

「あ、はい。えっと」

 

「後藤さんボーカルやってみる?」

 

「無理です!!」

 

元気でよろしい!!

コーラに口をつけて一度喉を潤す。

さっきの空気感のせいで変に緊張してしまったが、炭酸のおかげもあり少しスッキリとする。

さて、話を続け

 

「じゃあ天見に歌って貰えばいい。少し低めだけど高音もいけそうな声も綺麗だし、きっといける」

 

「は?」

 

「あ、それいいね!って事でどうかな!?」

 

「普通に嫌です。後藤さんそんなに首ブンブン振らない。そんなに同意してもやらないからね?ほら、首痛めるよ?」

 

後藤さんの頭を掴んで首を固定。

あ、いや、だから力強っ!!

俺が首振り人形後藤さんと格闘している中、虹夏さんは気にする事なく尋ねてくる。

 

「音痴とか?」

 

「いやぁ、どうでしょうか。それなりに上手いとは言われますが」

 

「だったらやってみる」

 

山田さんまで……。

仕方ない。家のことだから話すつもりはなかったが、話さないことには納得してもらえなさそうだ。

 

「あー。実は俺って姉と二人暮らしなんで、あんまり長時間拘束されるようなことは出来ないんですよね。ほら、バンドなら練習とかしっかりあるでしょう?」

 

「え、うちもお姉ちゃんと二人で暮らしてるよ」

 

「え?マジです?」

 

虹夏さんは店長と二人暮らしなのか。

あまりそんな人が周りにいたことがないので新鮮である。まぁ、俺も姉さんとこの春から二人暮らしなんで、周りにいても割とどうでもよくて気にもしなかったんですけどね。

……ん?あれ?条件が一緒の人がいるし、断りにくくなってない?

 

「虹夏と条件一緒だし大丈夫」

 

「いや、家事とかがですね」

 

「天見くんのお姉さんは全くできない感じなの?」

 

「そう言うわけでは」

 

「ちなみにうちは基本できない」

 

「マジかよ」

 

「ご、ごめんなさい。私もできないです」

 

「あ、うん」

 

「大丈夫ぼっち。私も基本しない」

 

何故か後藤さんと山田さんが自爆してしまったが、気にしている場合ではない。これはマズイ。実にマズイ。

だいたい、俺は家に帰って色々としたいの……ダメだ、虹夏さんのせいで何を言っても言い訳にしかならない。ならばなんとか話題を変えていくしかない!

 

「に、逃げたボーカルについて聞きたいなぁって!」

 

「「目の前にいる」」

 

「俺じゃねぇよ!!」

 

「あはは。まぁギターボーカルとしてやってくれるはずだったんだけどねぇ。だからうちのバンド、本当はギターもいなくなってて、あの時ぼっちちゃんに会えて本当に幸運だったよ」

 

「虹夏、一生分の運使ったんじゃ?」

 

「え?うっそ、もう運使い切ったの?それは嫌なんだけど……うん、まぁ今はいいや。天見くんもいきなり言われても決められないだろうし、気にしないでいいよ」

 

「甘い、虹夏。さっきも言ったけど男なのにこのビジュアル、話題性もバッチリ。あ、あと声も高くしてみて?どこまで出る?」

 

「こ、このっ」

 

と、とにかく!俺は歌いません!!

だって正直、俺はみんな程の熱量があるわけでもなく、バンドを続けれる自信がないもん!昔から引っ越しが多かった俺は、色々な環境の変化のせいで長く続く趣味というものがなかった。だからというか、その辺の熱量という物を持つことがなかなかできないのだ。……まぁ、この辺りの昔話はまた語るとしよう。

 

「とにかく、臨時でもいい。ボーカルしてく「ダメですよ〜」ムグゥッ!……PAさん?」

 

「あ、姉さん」

 

姉さんが山田さんの口を優しく塞いでいた。

この姉、いつの間に現れたのだろうか?

俺がどう断るかを考えている間に見逃していた?いやいやいやいや!それにしても気配というか急に現れすぎてびっくりするよね!?

最近のこの姉、こういうところある。

 

「全く。無理矢理うちの弟を巻き込まれちゃうと困っちゃうんですよねぇ。ほら、主に姉である私の生活的に?」

 

「「「…………」」」

 

「どうしました?」

 

「「「お姉さん!?」」」

 

「はい。お姉ちゃんです」

 

「「「弟!?」」」

 

「はい。弟です」

 

「「「……姉弟!?」」」

 

「しつこいなこいつら」

 

「こらこら、こいつとか言わない」

 

ごめんなさい少しイラッとしました。

虹夏さんや後藤さんはともかく、山田さんまでそんなに驚くとは意外だった。でも確かに、姉さんと俺が姉弟だと知ってるのは今のところ店長さんぐらいか?この三人、この前はなんだかんだで一緒にいる所は見ていないだろうし。

 

「それにしても姉さん。いきなり出てきてこの場を混乱させるとか、流石だよね」

 

「褒められても……今日は私がお皿洗いしますね」

 

褒められても何も出ない的な流れだと思った。

これからは積極的に褒めていこうかな?それはそれで調子に乗りそうで困るな。

 

 

 

その後、後藤さんが歌詞を書くことになったり、ライブに出る為のノルマの話が行われた。これはバンドとして売れるまでお金がかかるわけなのだ。

そしてそんなわけで、俺は虹夏さんに手を合わせられてものすごく押されている状態だった。

 

「バイトかぁ……」

 

「そうそう、天見くんも居てくれたらすっごく、それはもうすっっっごく助かるんだよね」

 

「……うーん」

 

虹夏さんの言っている事もわかる。

だってなぁ。

 

「バババ、バイトッッ!!しけ、死刑!あ、ああああ天見くん!私、私これ、これ出すから天見くんが代わりに!」

 

「出さなくていい」

 

「じゃあ私が」

 

「渡そうとしなくていい」

 

「リョウも何度も受け取ろうとしない!」

 

バイトをすることになりそうで、親が貯めた結婚費用まで出してバイトを回避しようとする後藤さん。そんな大事な物、なんで自分で持ってるのだろうか?

 

「お、お母さんが、お世話になっている人に見捨てられない様にって」

 

いやいやいや!!

後藤さんのお母様!?何考えているんでしょうか?てか結婚費用じゃないの?……まさかとは思うが、これで将来ずっと面倒見てもらえとかじゃないよね?

 

「そんなのなくても見捨てないよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「あーでも」

 

「?」

 

「いつか将来、バンドで売れて調子に乗って酒カスヤニカスとかになったら見捨てるね」

 

「ひぃ!!」

 

「天見くん!それはバンドマンに対する偏見!」

 

「少なからずいるのは事実」

 

「だから一言余計なの!」

 

酒も煙草もダメとは言わないが依存のようになるならダメである。お前のことだぞ酒カスきくりちゃん。

ほぼ毎日のように連絡してきやがって……!

今日も飲んでまーすじゃねぇしらねぇうっとおしい!!音寧ちゃんのお弁当食べたーい!じゃない!一度、昼休みに食べれなかった弁当をせがまれて食べさせてしまったせいだが、いい大人がたからないでほしい!!……落ち着け俺、うん。大丈夫。

その後もわちゃわちゃとしたが、ひとまずの落ち着きを取り戻した俺たち。そして思い出したように虹夏さんが姉さんに話しかけた。

 

「そういえばPAさん。どうして天見くんにボーカル頼んじゃダメなんですか?」

 

「乗り気じゃない人にやらせても長続きしませんからね。音寧くん、意外と飽き性なところもありますし」

 

「広く浅くでごめんね」

 

「いえいえ、今までのことを考えると仕方ないでしょう?」

 

あー。まぁうん。

小さい頃の生き方というか、引っ越し続きだったから趣味が合う友達というのを作るのも大変だったのだ。一つの事にハマっては引越しでやめるを繰り返してしまっていた時代があった事で、いつの間にか飽き性になっていたのだ。

 

「でも意外と楽しいかも「それに」!?」

 

「ファンができたりしたらどうするんですか?軽い気持ちで音寧くんに近づこうとか、邪な気持ちで擦り寄ろうとする奴が現れたりしたら……ね?」

 

やけに迫力がある姉さん。

こらこら、そんな雰囲気出したら虹夏さんが怯えるし、後藤さんは消し飛ぶぞ?まったく、本当に最近暴走気味で困る。ただでさえイケイケェな感じなんだから迫力がすごいからね?

 

「ご、ごめんなさい」

 

「ひぃ!!あ、あの、私!」

 

「こら姉さん。みんなびっくりしてるからやめてね?ハウス」

 

「……わん」

 

「あ、PA席に戻って行った。さすが弟、手綱握ってるんだ」

 

「最近暴走気味なのが悩みですね。ていうか山田さんは驚いてないんですね」

 

「どちらかというと面白い方が勝ったね」

 

それはなんとも。

この人のこんなメンタルは後藤さんに少しでも分けてあげてほしいものだな。

 

「あ、言い忘れてました」

 

「姉さん?どうしたの?」

 

姉さんが戻ってきた。

そしてこんなことを言い出してしまったのだ。

 

「音寧くん。バイト採用です」

 

「へ?」

 

……き、急に何を言い出すんだこの姉は!!

これはマズイ!本気でマズイ!!

この人が本気を出してしまうと俺は断る事ができない!どうにかして諦めさせなければいけない!

 

「え、いや、待って、少し待って」

 

「待ちません。だって待っちゃうと、すぐに上手い事言って逃げちゃうでしょう?」

 

「カレー!」

 

…………ん?

何言ってんだおれぇ!!!

 

「「「「?」」」」

 

急に出てきたのは今日の晩御飯。

何故出てきたカレー……いや、なんとかここから修正せねば!!みんなが不思議そうな顔をしている間に逃げる為の手を叩き込んでいくとしよう。

いける。俺ならできる!!

 

「ほら、煮込むのに時間がかかるでしょ?だから早く帰って作らないといけないでしょう?」

 

だ、だめだぁ!

表情がピクピクしちゃう!いきなりすぎて誤魔化せない無理!あーもうバレるなこれ!!

 

「そうですねぇ。それで?余裕の表情が崩れて可愛いですねぇ」

 

うぐっ!!

こ、この!ニヤニヤとしやがってからに!!

 

「だからバイトしたらご飯作る時間がなくなっちゃうし。ね?おかず減っちゃうよ?」

 

「食事の一品が無くなるよりも!音寧くんと仕事がしたいです!!というわけで採用です!!!」

 

「あれぇ?」

 

姉の理不尽に俺は完全な敗北だった。

長くなったが、これが俺のバイトデビューの理由である。このあまりに理不尽な姉の決定に喜ぶ後藤さんと虹夏さん。そして、笑いを我慢しようとして吹き出している山田。笑ってるんじゃないよ!

その後、出勤してきた店長が

 

「あれ?私が店長だよね?」

 

と言っていたのが少し悲しい。

仕事のボイコットをちらつかせる姉さんに、後藤さん一人だと溶けるとか、知らない人が聞くと訳の分からない事を言って店長を混乱させる虹夏さんに押されて敗北した店長。そして俺の採用が決まってしまったのだ。

 

「まぁ、男手が増えるのはありがたいよ」

 

「ほんと、姉がごめんなさい。精一杯頑張ります」

 

「いや、うん。ありがとうね。……あと妹が迷惑かけてほんとごめん」

 

「……お互い、頑張りましょう」

 

「……何か困ったら言ってね」

 

店長と、少し距離が縮まった気がした。

というわけで、天見音寧。ライブハウスのスタッフとして頑張ります。……なんか、このままだと高校卒業してもずっとSTARRY働いてそうな気もするが、今は気にしないでバイトを楽しむ事にしよう。




音寧
急遽理不尽に襲われバイトをする事に。
まぁ、頑張るしかないよねと諦めモード。

PAさん
音寧と一緒に働ける可能性を察知し暴走。
帰宅途中、暴走気味になって弟の意思を無視した事で自己嫌悪中。
なんとか姉としての威厳を取り戻せないか脳をフル回転。

ぼっちちゃん
音寧とバイトをする事になり少し安心。
だがしかしそれとこれとは別なので氷風呂に入って扇風機にあたることは変わらない。

虹夏
バンドには誘えなかったが、ぼっちちゃんの通訳として音寧を確保完了。
苦労を分け合う事ができると一安心。

リョウ
面白くなってきました。
ただライブハウスのダークな雰囲気は死んだ。
音寧でなんとかお金儲けができないか思案中。

星歌さん
音寧と同じく色々と諦めモード。
だけどまぁ妹が楽しそうだしもうなんでもいいや。


各キャラたちの今の状況はこんな感じかな?
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