ハロウィーンの月がやってきた。十月に入ると生徒たちの間では風邪が流行しはじめ、医務室のマダム・ポンフリーは大忙しだった。元気爆発薬を飲めば風邪は一発で治ったが、それを飲むとしばらくの間は耳の穴から煙を出し続ける羽目になるのだ。
ある週末、ルイス・ジュリアードは目を覚ますと、典型的な風邪の症状を引き起こしてしまっていた。くしゃみに過剰反応を起こしたハーマイオニーは朝食もそこそこに、ルイスを医務室に引っ張り込み、マダム・ポンフリーの餌食にしようとした。
「ちょっとハーマイオニー、あたしなら別に大丈夫だったら」
「今は大丈夫でも、あとでこじらせたら大変じゃない! 風邪は早いうちに治さないと駄目なのよ!」
ハーマイオニーはぴしゃりと言って、そうしないと逃げ出すとでも思っているのか、ルイスの腕をぎりぎりと掴んだ。
ルイスが元気爆発薬なんて飲みたくない、耳から何時間も煙を出し続けるなんてごめんだとハーマイオニーを説得しながら医務室の中に引っ張り込まれると、そこにはまだ朝早いというのに先約がいた。ジニー・ウィーズリーが、兄のパーシーに連れられて、椅子に座らされていたのだ。
「ジニーも風邪?」
そういえば、最近は元気がなかったようだと思いながらルイスが問うと、ジニーは少し青白い顔でルイスを横目に見た。どう考えても、ルイスなんかよりジニーのほうがずっと重症だと、誰の目から見ても明らかだった。ハーマイオニーもジニーを心配そうに見ている。
ルイスは最後まで元気爆発薬を飲むことを渋ったが、結局はジニーの隣に座らされて、マダム・ポンフリー特製の薬を飲む羽目になってしまった。体中がぽかぽかと暖まっていく感覚と同時に、耳から煙が吹き出し、ルイスはそのまま数時間、ジニーと一緒に医務室で安静にしているようにとマダム・ポンフリーどころか、ハーマイオニーやパーシーにも言い付けられてしまった。
ハリーたちクィディッチチームのみんなは、物凄い豪雨のなかだというのに、中止することなく練習を行なっていた。その次の週末もハリーはクィディッチの練習に向かったが、なぜかいつもよりずっと帰りが遅かった。
ルイスは、これでは試合の前にメンバー全員が過労死でウッドに殺されてしまうのではないかと心配になったが、遅くなった理由は練習時間の延長が原因ではなかった。
ルイス、ロン、ハーマイオニーは談話室のテーブルで頭を突き合わせて魔法薬の宿題をやっていた。しかし、ルイスとハーマイオニーが宿題を終えても、案の定ロンだけは半分しか終えていない。
「絶命日パーティですって? 生きているうちに招かれた人って、そんなに多くないはずだわ。凄くおもしろそうじゃないの!」
クィディッチの練習から帰ってきて着替えを済ませ、男子寮から戻ってきたハリーが、ここに来るまでのことをみんなに話して聞かせると、ハーマイオニーが少し興奮気味に言った。どうやらハリーはグリフィンドール塔にくる途中で、ほとんど首無しニックに会い、ハロウィーンと同じ日に開かれるほとんど首無しニックの絶命日パーティに招かれたらしい。あなたの友達も一緒にどうぞと言われたらしいが、ルイスとロンは少し気乗りがしなかった。
「自分の死んだ日を祝うなんて、どういう気持ちなんだろうな?」
しかし、ハロウィーンが近付いてくるにつれて、ハリーはほとんど首無しニックとの約束を後悔し始めたようだった。大きく育ったハグリッドのかぼちゃはくりぬかれ、中に大人三人が座れるような巨大な提灯になったし、大広間には生きたコウモリが飾られ、ダンブルドアがパーティの余興用に骸骨舞踏団を予約したという噂まで流れたからだ。
「でも、約束は約束でしょう? 絶命日パーティに行くって、あなたそう言ったんだから」
七時になってハリー、ルイス、ロン、ハーマイオニーの四人は、ざわざわと騒がしい大広間の前を素通りして、人の流れに逆らって地下牢に向かっていた。うじうじと後悔の言葉を漏らしているハリーに向かって、ハーマイオニーが呆れたように言っている。大広間ではきらきらと輝く金の皿やキャンドルの輝きが人を誘うのに対し、ほとんど首無しニックのパーティへ続く道は、何とも言いがたい、おどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
ひょろりと長い蝋燭は黒く、青い炎を灯している。隣を歩いているハリーに目をやると、顔色が物凄く悪く見えた。階段を一段下りるたびに温度が一度ずつ下がっていくような気がするのは、おそらく気のせいではないだろう。ぶるりと身震いをし、四人で身を寄せ合うようにしながら移動していると、巨大な黒板を爪で引っ掻くような、耳を覆いたくなる音が聞こえてきた。
「あれが音楽のつもり?」
「あれが音楽と言えるのなら、ファングのいびきのほうがよっぽど音楽っぽいと思う」
ロンが遠慮気味に囁いたので、ルイスがうんざりして息を吐き出しながら、それに便乗した。
角を曲がると、ほとんど首無しニックがビロードの黒幕を垂らした戸口のところに立っているのが見えた。
「親愛なる友よ」ニックがこれ以上ないくらい悲しげに挨拶をした。「この度はよくぞおいでくださいました」
ニックは羽飾りの帽子をさっと脱いで、四人を中に招き入れるようにお辞儀をした。四人は笑えば良いのか悲しめば良いのか分からず、複雑な表情を浮かべてお辞儀を返した。
そこに広がっていたのは、今までに一度だって目の当たりにしたことのない光景だった。地下牢は何百という半透明のゴーストたちでいっぱいだった。特に混みあっていたのはダンスフロアで、何組ものゴーストがワルツを踊っている。黒幕で飾られた壇上では、オーケストラがノコギリで不協和音以上に不快な音楽を奏で、頭上のシャンデリアの炎はさっきの蝋燭と同じく青かった。まるで冷凍庫に押し込まれたように寒く、吐く息は白く立ち上った。
「見てまわる?」
ルイスが恐る恐る周りを伺いながら切り出すと、ハリーがぎこちなくガクガクと震えているのか頷いているのか――恐らく頷いているのだろうが――分からない動きを見せた。
「誰かの体を通り抜けないように気を付けろよ」
四人は身を寄せ合い、ダンスフロアの端の方を回り込むようにして歩いた。ハッフルパフに棲む陽気なゴースト、太った修道士や、スリザリンの全身銀色の血にまみれている血みどろ男爵の姿もある。どうやら、この城中のゴーストをパーティに招いたらしい。
自分だったら、全身血みどろの男を自分のパーティに招待したいとは思えないと、テーブルの上に置かれたワインをじっとりとした目で見下ろしている血みどろ男爵を横目に伺いながら、ルイスは考えていた。
「あっ、嫌だわ」
ハーマイオニーか突然立ち止まり、ルイスのローブを後ろから引っ張った。
「待って、戻って、戻ってよ。嘆きのマートルとは話したくないわ」
「マートル?」
ルイスはきょろきょろと辺りを見回し、嘆きのマートルの姿を探した。ハーマイオニーは声が大きいと言って、ルイスの口を塞いだ。
「なに? 誰だって?」
ずいぶん前まで進んでいたハリーが、ルイスとハーマイオニーの所に戻ってきて言う。
「あの子、三階のトイレに取り憑いているの」
「トイレに取り憑いてるって?」
「ええ、そうなのよ。去年一年間は、彼女のせいでトイレは壊れっぱなしだったわ。あの子が癇癪を起こして、そこら中水浸しにするんですもの。私、壊れてなくたってあそこには行かなかったと思うわ。あの子が泣いたり喚いたりしているトイレに行くなんて、とっても嫌だもの」
「ハーマイオニー、それは少し言いすぎだと思う。マートルには、マートルの事情があるのかもしれないし」
いくら相手がゴーストだからといって、傷つかないわけではない。ルイスがそう言ってみせると、ハーマイオニーは少し面食らったような顔をした。
「あ、ほら、見て。食べ物だよ」
地下牢の反対側には長テーブルがあり、それにも黒いビロードが掛けられていた。ルイスは興味津々の三人の後ろに付いていったが、料理にはまるで期待をしていなかった。ゴーストたちのパーティで、生きた人間の食べられる料理が出るとは思えなかったからだ。
案の定、テーブルの上に並んでいた料理は異臭を放ち、洒落た銀の盆に置かれた魚は腐り、せっかくのケーキは真っ黒に焦げている。肉料理には蛆がわいていた。チーズはふわふわのカビで覆われ、ある意味芸術的だ。やはり、生きた人間が食べられそうな料理はどこにもなかった。
あまりのことに耐えられなくなり向きを変えようとしたとき、小男がテーブルの下から突然ぬっと現れて、四人の前でぴたりと止まった。
「やあ、ピーブズ」
周りのゴーストたちとは対照的に、ポルターガイストのピーブズだけは色鮮やかな格好をしていた。橙色のパーティ用の帽子を被り、少し洒落た蝶ネクタイをつけ、顔いっぱいに嫌な笑いを浮かべている。
ルイスは去年、あまりピーブズと接触することがなかった。ホグワーツに入学したその日に目撃したが、それだけだ。次に見かけたときは目くらまし術をかけた状態だったため、姿を見られることはなかった。他の三人は何かと悪戯をされていたようだったが、ルイスは今まで直接的に悪戯をされたことはない。
「やあやあ、おつまみはどうだ?」
ピーブズは猫なで声で深皿に入ったカビだらけのピーナッツを差し出した。
「い、いらないわ」
ハーマイオニーがそう言うと、ピーブズはにやりと笑った。
「お前がかわいそうなマートルのことを話してるの、聞いたぞ。お前、ひどい事を言ったな」すると、ピーブズは深く息を吸い込み、大声を出した。「おーい、 マートル!」
「あっ、ちょっと、ピーブズ、駄目よ。私が言ったこと、あの子に言わないで。そうしないと、とっても気分を悪くするわ。私、あの子が――あ、あら、こんにちは、マートル」
ずんぐりとした体格の、レイブンクローの制服を着た女の子のゴーストだ。猫っ毛と分厚い眼鏡の影に陰気臭い顔を隠している彼女が、女子トイレに取り憑いている嘆きのマートルだった。
こちらにやってきた嘆きのマートルは酷い仏頂面で、むすっとした顔のままそこにいる者たちをぐるりと見回した。
「何なの?」
「お、お元気? トイレの外でお会いできて嬉しいわ」
ハーマイオニーは無理に明るい声を喉から絞り出していた。しかし、それが逆にマートルの癇に障ったようだ。
「Miss.グレンジャーが、たった今お前のことを話していたよ、マートル」
ピーブズは全員に聞こえるように、こそこそとマートルに耳打ちをした。その酷くあからさまな様子にハーマイオニーは慌て、何とかピーブズを止めようとしている。だがしかし、ハーマイオニーが慌てれば慌てるほど、ピーブズはうきうきとして嫌らしい笑みを深めていった。
「わ、私は、あなたのことを、ただ――ええ、そうよ、今夜のあなたは、とっても素敵だって言っていただけ」
ハーマイオニーはピーブズのことを鋭く睨み付けている。マートルはそのような態度のハーマイオニーを見て、嘘だろうとでも言いたげな表情を見せた。鼻の頭にくっきりとしたしわを寄せ、まるでパグかブルドックのような顔になる。
「あなた、私のことをからかっていたんだね。そうでしょう? 他の生徒たちと同じように」
マートルは双眸にたっぷりと涙を溜め込んで、ハーマイオニーをぎろりと睨んだ。
「そ、そうじゃないわ。本当よ、マートル。ね、ねえ? 私さっきマートルが素敵だって言ったわよね?」
ハーマイオニーは三人の脇腹を痛いほど突いた。
「ああ、そうだとも」
「そう言ってた」
「――さあ、どうだったかな」
ハリーとロンは無理やりハーマイオニーに同意させられたが、ルイスはどんなに脇腹を小突かれようと、首を縦には振らなかった。ハーマイオニーは目を見開いて、裏切り者を見るようにルイスを睨めつけた。
「ほら、嘘を言っても駄目よ!」マートルは喉を詰まらせ、涙をぼろぼろと零している。ピーブズは満足そうにけらけらと笑っていた。「みんなが影で私のことをなんて呼んでいるか、知らないとでも思っているの? 太っちょマートル、ブスのマートル、みじめ屋、うめき屋、ふさぎ屋マートル!」
「ああ、抜かしたよ、にきび面っていうのをね!」
ピーブズはまた、マートルの耳元で全員に聞こえるようにそう言った。マートルはしゃっくりをあげ、地下牢から逃げるように出ていった。ピーブズはカビだらけのピーナッツをマートルの体に投げつけながら――実際にはぶつからないが――にきび面、にきび面! と叫び、マートルを追い掛けていってしまった。
四人がそれを見送りながら呆然と立ち尽くしていると、 今度はほとんど首無しニックが人混みを擦り抜けながら、ふわふわと漂ってきた。
「みなさん、楽しんでいますか?」
「ええ」
いいえ、と言おうとしたルイスの脇腹を、またハーマイオニーが小突いた。先ほどよりもかなり強い力が込められていたので、一瞬息が詰まった。
「ご覧になってください、ずいぶん集まってくれました」
ニックは誇らしげに言ったが、しかし、それもすぐに苦々しげな顔に変わった。地下牢の壁から十二騎の馬に乗ったゴーストが飛び出してきたのだ。すると、観衆が熱狂的な拍手を送った。
ルイスはあまりの寒さと料理の異臭に、耐えられなくなってきていた。それなので、四人とニックの周りにパトリック卿がやってきても、たいして気にする余裕もなかった。
ニックはどうやら、首無し狩りクラブへの入会を断られたせいで、首無し狩りクラブのことをあまり好ましく思っていないということは、何となく分かった。
「ねえ、僕、もう我慢できないよ」
「うん、あたしも」
ルイスの唇は、あまりの寒さに紫色に変色しかかっていた。ロンも歯をがちがちと鳴らしている。
「もう行こう」
どうやら、ハリーも同じ気持ちだったようだ。四人は誰かと目が合うたびに愛想よくにっこりと笑って会釈をしながら、地下牢から逃げ出すように立ち去った。
「大広間に行こう。あそこならあたたかいだろうし、デザートがまだ残っているかもしれない」
玄関ホールに通じている階段を上りながら、ロンが祈るように言う。しかし突然、ハリーがぴたりと足を止めた。何を思ったのか石の壁に縋って、壁にぴたりと耳を寄せている。そして、何かを警戒しているように周りを見回し、目を細めた。
「ハリー? どうしたの?」
「またあの声なんだ」
「あの声?」
ルイスは首を傾げた。しーっとハリーが口元に指を立てる。
「ちょっと黙ってて」
【……だぞ……長い間……】
「ほら、聞こえる!」
ハリーが、君たちにも聞こえるだろう? とでも言いたげに三人を見た。ロンとハーマイオニーはそのようなハリーを見つめて、棒立ちになっている。
三人の様子を見て首を傾げていたルイスだったが、ハリーが言うように何かが聞こえたような、聞こえていないような、不可解な現象に見舞われていた。
【……してやる……殺すときが……】
「こっちだ!」
ハリーはそう叫ぶと、階段を駆け上がって玄関ホールに出た。すぐ近くの大広間では、まだハロウィーン・パーティが続いている。それなのに、ハリーは大広間には入ろうとはせず、大理石の階段を全速力で駆け上がっていった。ルイス、ロン、ハーマイオニーは急いでそのあとに続いた。
「待ってよ、ハリー。何が聞こえるって言うんだ?」
ハリーは先ほどよりも興奮した様子で、ロンに向かって人差し指を立てた。
【……がする……血の臭いがするぞ!】
ルイスは一瞬きょとんとした。何か、確かに声を聞いたような気がしたからだ。その次の瞬間、ハリーは弾かれたように走りだした。
「誰かを殺すつもりだ!」
ロンとハーマイオニーは互いに顔を見合わせ、困惑した表情をルイスに向けた。どうやら、あの声は二人には聞こえていないらしい。遠くなっていくハリーの背中をルイスが追い掛けると、ロンとハーマイオニーもそれに続いた。
ハリーは三階の廊下を走り回った。三人はハリーの後ろをついて回ったが、ルイスは自分の聞いた声が空耳だったのではないか思い始めていた。聞こえた気になっていただけなのかもしれない。ハリーは角を曲がり、突き当たりの誰もいない廊下に出たとき、やっと走ることをやめた。
「ハ、ハリー、一体これはどういうことだい? 僕には何も聞こえなかったよ?」
ロンが額から吹き出した汗を拭いながら言った。しかし、ハーマイオニーははっと息を呑んで、廊下の隅を指差した。
「ねえ、あれを見て!」
向こう側の壁に、何かが見えた。四人は暗い中目を凝らしてそろそろと近付いていく。窓と窓の間の壁、高さ三十センチほどの位置に、血文字のような字が、松明に照らされててらてらと鈍い光を放っている。
秘密の部屋は開かれたり
継承者の敵よ 気をつけよ
「ねえ、見てよ。あれは何だろう。あの、下にぶらさがっているやつ」
ロンの声は恐怖のせいで微かに震えているようだった。
じりじりと床に足の裏を擦りつけるようにして歩みを進め、ぶら下がっているものを確かめようとルイスが目を凝らすと、前を歩いていたハリーが突然何かに足を滑らせた。ルイスもならんで倒れそうになるのを、ロンとハーマイオニーが支えてくれた。足元には水溜まりがあった。
「ルーモス!」
ルイスはすぐに杖を取り出して、杖明かりを灯した。途端に辺り一帯が明るくなる。そして、そこにぶら下がっているものが何なのか、四人は一瞬にして理解した。
「……ミセス・ノリスだ」
誰かがそう呟いた。もしかしたら自分の声だったかもしれないと、ルイスは思った。
ミセス・ノリスはホグワーツの管理人をしている、アーガス・フィルチの猫だ。松明の腕木に尻尾を絡ませてぶら下がっている。石のように硬直して、目は驚愕したように見開かれたままだ。
四人はしばらくの間何も言えず、その場から動くことさえできなかった。
「……ノックス」
ルイスは明かりを消した。
「ここから離れよう」
「だけど、助けてあげるべきじゃないかな」
「いいから、僕の言う通りにして。ここにいるところを見られない方がいい」
しかし、もう既に遅かった。ザワザワとした人の声と、何百という足音がこちらを目指して階段を上ってくる。その声がとても楽しそうで、ルイスはそれをとても恨めしく思った。
次の瞬間、生徒たちが四人のいる廊下にどっさりと現われた。そして、松明の腕木にぶら下がっているものを見つけると、話し声どころか、囁き声も何もかもが突然消えてしまった。
生徒たちはぶら下がっているミセス・ノリスをもっとよく見ようと押し合っているのに、四人の周りには不自然に空間がある。誰も四人に近づこうとはしないなかで、突然誰かが叫んだ。
「後継者の敵よ気をつけよ! 次はお前たちの番だぞ、穢れた血め!」
ドラコ・マルフォイの声だった。ドラコは父親に恐ろしい程よく似た冷たい視線を、ルイス以外の三人に向けた。あえて、ルイスを見ないようにしている。ぶら下がったままぴくりともしないミセス・ノリスを見て、にやりと気味の悪い笑顔を浮かべていた。