「――リーマスが闇の魔術に対する防衛術の教授?」
ルイスが森から帰ると、ダンブルドアは既に出て行った後だった。そして、ルイスが自分の正体をダンブルドアが見破っていなかったかどうかという確認をするより先に、その驚愕の事実を押しつけられて、ほとんど絶叫するようにそう叫んでいた。
「それ、本当? 本当に? 本当なの?」
ルイスは口をあんぐりと開けて、リーマスの顔を凝視した。すると、リーマスは困ったような笑みを浮かべ、大きく一度頷いた。
「ああ、そうみたいだよ」
「そうみたいだよって、そんな他人事みたいに」
ルイスは唖然としたままソファに腰を下ろした。隣に座ってくすくすと笑っていたラウルは、ルイスの髪についた小さな葉っぱを丁寧に払っていく。
「ルイスは反対なの? リーマスが人狼だから?」
ラウルはそう言って意地の悪い笑みを浮かべた。ルイスはそれを聞くと、心外だとばかりに顔を顰める。
「賛成か反対かと聞かれたら、もちろん大賛成だよ。それに、人狼が教授になってはいけないという法律はどこにもないでしょう? それに今は脱狼薬もあるし、何の問題もない」
「そんなにむきにならなくても、冗談だよ」
くつくつと喉の奥で噛み殺すような笑い声をあげるラウルを一瞥し、ルイスはもう一度、まだ困惑の表情を浮かべているリーマスを見た。ルイスにもその表情が伝染したように、眉根をきゅっと寄せる。
「でも、本当に? 本当にリーマスが闇の魔術に対する防衛術の先生なのね?」
今度はその事実を確かめるようにルイスが言うと、ラウルが呆れたように隣でため息を吐いた。
「だから、そうだって言っているよ」
「だったら、あたし、なんて言ったらいいのか分からないけれど……」ルイスはそう言うと、青黒い目をきらきらと輝かせてリーマスを真っ直ぐに見つめた。「本当におめでとう、リーマス」
するとその時、ずっと困惑したような顰め面だったリーマスの顔が、照れたような笑顔に変わった。
「ありがとう、ルイス。まさか、またホグワーツに戻れる日が来るなんて思ってもいなかったよ」
それからというもの、リーマスは新学期の準備やら何やらで、ジュリアードの屋敷から外出することが多くなった。ラウルも時々ふらっとどこかへ出掛けることはあったが、ほとんど家にいたので、まるでホグワーツへいく前の生活に戻ったような気がしていた。
そして、アニメーガスに対する興味関心は、自身がアニメーガスになることで解消されてしまったので、今度はそれとは別のことに対して興味を傾けてみようと、ルイスは考えていた。
目下の目標は、魔法薬についてだった。脱狼薬の作り方を覚えたかったし、それに自分が飲む薬の調合方法だって知らなくてはならないと思っている。しかし、家にいる誰かに聞こうにも、ラウルとリーマスは学生時代から最も薬の調合を苦手としてきたようなので、ルイスはまた地下室にこもって自分で調べるしかなかった。
脱狼薬の煎じ方とその材料が載っている本、それは既に知っている。以前ホグワーツの魔法薬学教授、セブルス・スネイプのところで何日か世話になっていたときに読んだ、最も高度な魔法薬という本に書いてあるのを見つけていた。それと同じものがジュリアードの屋敷にもあったので、ルイスはそれを手に取り、リビングまで戻った。
「ねえ、ラウル」
ソファに腰を下ろし、テーブルいっぱいに羊皮紙を広げて何やら書き込んでいるラウルに、ルイスは最も高度な魔法薬の本を読みながら声をかけた。図書室の整理が済んでからというもの、ラウルはルイスが去年のクリスマスにプレゼントした、天文全集の改訂版や改訂前の天文全集を見比べたりしながら、終始この調子だった。
「ん?」
本当に人の話を聞いているのかと疑いたくなるほど間の抜けた返事をしたラウルは、羽ペンを走らせる手を止めようともしない。何を言っても無駄だと思いながら、ルイスは用件だけを言うことにした。
「あたしが飲んでいる薬の調合方が書いてある本って、どこにあるの?」
するとラウルは考える素振りも見せず、簡潔に答えた。
「地下二階の一番奥の棚の上から三段目」
「……ありがとう」
図書室の中身を移動する以前は、それなりにどの本がどこにあるのかを把握していたルイスだったが、今はもうどこに何があるのかが分からなくなってしまっている。あの数えきれないほどの書物すべてを、どこに何があるのか既に把握しているラウルの頭の構造が知りたいと、ルイスは純粋にそう思った。
ルイスは迷った挙げ句、結局持ってきた本を手に持ったまま、また地下へと降りていった。地下二階の一番奥、確か前は、そこに薬草学に関する本が並んでいたはずだ。しかし、整頓後の棚を見てみると、そこには古代ルーン文字で記された本がずらりと並んでいた。
三段目の棚に手を伸ばし、ルイスはそれらしい本を抜き取るとページを捲った。
「――封鎖薬、これかな」
しかし、ルイスは古代ルーン文字で記されているその材料を見て、後悔の念が押し寄せてきた。蛇の頭蓋骨、蛇の目玉、蛇の心臓の薫製――蛇尽くしだと思っていたら、今度は犬の舌だ。これにはさすがのルイスも絶句をしてしまう。
ベラドンナは土星の位置を計算した上で収穫しなければならないようだったし、満月草は以前ポリジュース薬を作ったときと同じように、必ず満月の日に収穫しなければならない。他にも様々なものがぶち込まれた薬を飲んでいたのかと思うと、今更ながら気分が悪くなってくるような気がした。だが、その中にあるいくつかの材料は、とても高価で、手に入れにくい希少価値の高いものだ。そのように高価なものを、あのセブルスが自分の為に使っていたのかと思うと、何だか信じられない思いでもあった。しかも、その煎じ方がすこぶる複雑で難しい。これは、あの魔法薬学教授に御教授願うのが一番かもしれないと思いながら息を吐いて、二冊の本を手にまた階段を上った。
その本には、他にも色々な用途の薬の作り方が記されていた。一時的にだが魔法力を向上させる薬――しかし、その後数時間から一日は、一切魔法が使えなくなる――や、逆に一定時間魔法力を失わせる薬、体から魂を抜き取る薬――ただしこれも一定時間――というものまである。記されているほとんどの魔法薬がとても危険なものばかりで、ある意味門外不出の書物だ。けれど、そのすべてが古代ルーン文字で記されているので、誰かに見られてもそう読める人はいないだろう。
「そういえば、セブルスの家ってどこにあるのかな……」
まさか、ずっとホグワーツの地下室にこもって仕事をしたり、大鍋を掻き混ぜたりしているわけではないはずだ。ルイスがラウルの邪魔をしないようにダイニングテーブルに座り、読んでいた本から顔を上げてそう呟くと、リビングに散乱した本と羊皮紙を片付けながらラウルがこちらを向いた。
「セブルスがどうしたって?」
「え? ああ、うん、ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと? それなら学校が始まってからでもいいだろう?」
「うん、そうなんだけれど……」
別段、それほど急ぐことでもないので、今すぐ聞きたいというわけではない。ルイスは学校が始まってからでもいいかと、そう思い直していると、ラウルが、そういえばと声を上げた。
「正確な日時は分からないけど、近いうちにセブルスが家にくるかもしれないよ」
どうして? と聞こうとして、思い直した。おそらくセブルスはラウルの脱狼薬とルイスの封鎖薬を持ってきてくれるのだろうと、そう思ったからだ。
「聞きたいことがあるのなら、そのときに聞けばいいよ。それより、学校の宿題は終わったの?」
学校の宿題なんてとうの昔に終わってしまった。ルイスがそう言って苦笑すると、ラウルは何も記入されていない星図表と本を二冊手渡して、星の時間と距離のずれを調べて記入するのを手伝ってくれと言ってきた。他に何もすることのないルイスは断る理由も見つからず、二つ返事でそれを引き受けた。
その翌日のことだ。珍しく早起きしたルイスは、日刊預言者新聞を配達しに来たふくろうに窓辺でお金を持たせてすぐ、その一面を見てキッチンにいるラウルの元へ駆けていった。朝食の準備をしていたラウルの前に新聞を突き付けると、ラウルはルイスの興奮具合に納得して頷いた。
「凄いじゃないか」
ラウルはそう言って料理の手を休め、ルイスの手から新聞を受け取った。
日刊預言者新聞の一面はこうだった。
――魔法省官僚、グランプリ大当たり
魔法省、マグル製品不正使用取締局長、アーサー・ウィーズリーが、今年の日刊預言者新聞、ガリオンくじグランプリを当てた。喜びのウィーズリー氏は記者に対し、「この金貨は夏休みにエジプトに行くのに使うつもりです。長男のビルがグリンゴッツ銀行の呪い破りとしてそこで仕事をしていますので」と語った。
ウィーズリー一家はエジプトで一ヵ月を過ごし、ホグワーツの新学期に合わせて帰国する。ウィーズリー家の七人の子供のうち五人が現在そこに在学中である。
ルイスはラウルが読み終わった新聞を受け取り、テーブルに座ってそれをもう一度読み始めた。
記事の他には、ウィーズリー家九人全員が大きなピラミッドの前に立って、こちらに手を振っている写真も記載されていた。ウィーズリー夫妻、パーシー、双子のフレッドとジョージ、ロン、ジニーの他に、二人の男の人が一緒に立っていた。恐らく、それがロンの話に良く出てくるビルとチャーリーなのだろう。チャーリーに直接会ったことはなかったが、ルイスたちが一年生のとき、ハグリッドが卵から孵してしまったドラゴンを引き取ってくれたことがある。
家族の真ん中に立っているロンは、肩にペットのネズミ、スキャバーズを乗せ、腕をジニーの肩に回してとても楽しそうに笑っていた。しかし、ルイスはその写真を見てあることに気付き、思わず苦笑を浮かべてしまった。見間違いでなければ、トルコ帽を小粋に被ったパーシーが、そこにHBという文字のバッジ――首席のバッジを止め付けている。双子のウィーズリー兄弟にしてみれば、これ以上不幸なことはないだろう。そして散々、パーシーを馬鹿にしているに違いない。
「ルイス、リーマスを起こしてきてくれないか。多分まだ寝ていると思うから」
「うん、分かった」
ルイスは日刊預言者新聞を丁寧にたたんでテーブルの隅に置き、椅子から滑り降りると階段に向かった。リーマスの部屋は二階の西側にある。ルイスの部屋は三階の一番東側なので、寝惚けてベッドから落ちたとしても、その音で驚かせてしまうこともない。
部屋の前まで辿り着くと、こんこんとノックをし、返事を待たずに扉を押し開いた。
「リーマス、起きている?」返事はない。ルイスはベッドに歩み寄り、寝具の上からリーマスの体を揺さ振った。「リーマス、朝だよ。起きて」
「……ああ、おはよう、ルイス」
このところ忙しいせいか、リーマスの顔色はとても悪かった。この調子で教授職など始めたら更に身体を悪くするのではないかと思うのだが、当の本人に断るつもりがないのなら、周りがいくらとめても無駄だろう。それに、ルイスはリーマスがホグワーツの教授になることが嬉しくて堪らないのだ。
「朝食の仕度ができたって」
「うん、分かった。すぐに行くよ」ルイスは部屋を出ると、後ろ手に扉を閉めた。「……そういえば、昨日の服のままだったな」
相当忙しいのか、相当疲れているのか、きっと両方だろうとルイスは思う。着替える間もなくベッドに倒れこむ姿が、容易に想像することができた。
「少しは休んだほうがいいのに」
あれは単に体調が悪いだけではなく、脱狼薬の副作用もあるはずだ。
ルイスが独白しながら階段を降りていくと、森のほうから屋敷に向かって飛んでくるふくろうの姿が見えた。ただの森ふくろうかとも思ったが、足に何かを括りつけていたので、配達のふくろうだろう。ルイスが窓を開けてやると、ふくろうはその枠にとまった。
「お疲れさま」
ルイスがそう言って足から手紙を外してやっていると、ふくろうは刺々しい目付きでこちらを見て、お疲れだよ、とでも言いたげに低く鳴いた。手紙を取り終えるとふくろうはそのまま飛び立ち、帰っていった。
「手紙? 誰から?」
「ちょっと待って、差出人は――」
ルイスはそう呟きながら、几帳面に端々を揃えて折り畳まれた羊皮紙を開いた。そして、あまりに短文なことと、意外な人物からの手紙だということに、きょとんと目を丸くする。
「――セブルスから」
――約束の時間にそちらに到着する。 S.S
ルイスがセブルスにそっくりな顰め面でそれを読み上げると、ラウルは苦笑した。
「リーマスが今日も忙しければいいけど」
「どうして?」
あの様子だと、今日は一日休みを取った方がいいように思える。むしろ休むべきだ。ルイスがそう思いながら非難するように見ると、ラウルは小さく肩を竦めた。
「ここにリーマスが住み着いていることをセブルスが知ったら、それはそれは大変なことになると思うよ」
「リーマスがここにいると、セブルスには都合が悪いの?」
「うーん、そうだな、まずは、多分もう二度と僕に脱狼薬を作ってくれなくなるかもしれない」その発言とは裏腹に、ラウルはどこか楽しそうに続ける。「それに、グリフィンドールから百点くらい減点されて……」
「ちょっと待ってよ、どうしてそこにグリフィンドールの減点が関係してくるの?」
「冗談だよ、冗談」
ルイスが顔を顰めてじろりと睨むと、ラウルは扉の閉じる音が聞こえてきた階段のほうを見やり、唇に人差し指を添えた。
「ふたりは――いや、リーマスを含む彼らは学生時代、セブルスとは馬鹿みたいに仲が悪かったからね。今もそのわだかまりが解けていないんだ。セブルスはリーマスがよく家に来ている、とは思っているだろうけど、まさか一緒に住んでいるとは思っていないだろう。しかも、自分が煎じた脱狼薬をリーマスも飲んでいると知ったら、どんな顔をするか」
「でも、ホグワーツではリーマスの薬はセブルスが煎じるのでしょう?」
「だから尚更だよ。これから苦痛がはじまるというのに、これまでも知らない間にリーマスを助けていたと知ったら相当お冠さ。だから、セブルスの前でリーマスのことを話すなとは言わないけど、絶対に一緒に住んでいるなんて言ったら駄目だよ」
結局、その日はラウルが心配していたような、ふたりが鉢合わせをするという事態には見舞われなかった。リーマスに今日の予定を訊ねると、まだしばらくは忙しいだろうと言った。
「夕食までには帰れると思うから」
リーマスは青白い顔で頼りなく微笑むと、そう言って姿くらましで出掛けていった。ふたりはどれほど険悪な間柄なのだろうと思いながら、ルイスはリビングで紅茶を飲んでいた。
セブルスがやってくるからといって日常に変化が表れるわけでもないルイスは、相変わらず地下室に降りて読書をし、ラウルはリビングに本と羊皮紙を広げていつものように作業を行っていた。
確認しなかったが、セブルスのいう約束の時間とは一体何時なのだろう、ルイスはランプの灯りのなかで本に没頭しつつ、そのようなことを考えた。ほぼ暇潰しのために読み始めた変身術の本だったが、それが予想外に面白く、なかなかやめることができない。リビングに上がってじっくり読もうと思い、ランプを片手に階段を上った。
ルイスは一階に上がってくるなりすぐに本を開き、歩き慣れた場所を本に目を落としながら進んだ。家の中ならば、例え目隠しをしていたとしても歩き回れる自信があったので、そのままソファに移動することなど造作もないことだった。
「――まあまあ、いいじゃないか、セブルス。それがダンブルドアの決めたことなんだよ」
「しかしあいつは――」
「あ、ルイス。お待ちかねのセブルスが――ルイス?」
「……え? 何か言った?」
確かにソファへ移動することは造作もないことだったが、本にばかり夢中になっていたルイスには、ふたりの会話がまったく耳に入っていなかった。ソファに座ったちょうどそのとき、ラウルの呼び掛けがやっと耳に入ったのだ。
ルイスがいつもと同じ場所に腰を下ろすと、向かい側には苦笑いを浮かべたラウルが座っている。しかし、なぜか横からも視線を感じてその方向に目をやると、そこには全身黒尽くめで、ローブに薬草の匂いをそこはかとなく香らせるセブルス・スネイプその人が、まるで当たり前のように座っていた。
「ああ、セブルス。いらっしゃい」
ルイスはすぐ隣にセブルスが座っていたのだという事実にそのとき気づき、少し目を丸くして言った。そのようなルイスを見てセブルスは呆れたようにため息を吐くと、テーブルの上に置いていた薬瓶のひとつをぐいっと押しやった。
「次の分の薬だ、飲み忘れるな」
「うん、どうもありがとう」
これは本を読んで分かったことだが、ルイスの飲んでいる封鎖薬という薬は、それほど長く作り置きができないようなのだ。それなので、今でも休み中に飲む分はセブルスに煎じてもらっているが、セブルスはその度に薬をふくろうに持たせてくれていた。
「それで?」
「なに?」
「私に何か聞きたいことがあるのではないのか?」
「ん? ああ、そうだった。ちょっと待ってて」
ルイスはそう言うと、膝の上に置いていた変身術の本をテーブルの上に置き、自分の部屋まで駆け上がった。ベッドの上に放っていた二冊の本を掴み取ると、また同じように階段を駆け下りてリビングに戻る。
「これ」ルイスはまたセブルスの隣に腰を下ろし、二冊の本を差し出した。「煎じ方を教えてほしいの。前にも言っていたでしょう? 自分で煎じられるようになりたいって。もしよかったらでいいのだけれど、本を読んだだけでは心配だから」
「脱狼薬か?」
「うん。それと、あたしが飲んでいる薬も」
セブルスは最も高度な魔法薬の本を手に取り、それを指先でぱらぱらと捲った。もう一冊は、全文古代ルーン文字で書いてある本だったので、手に取って眺めて見てもセブルスにはあまり意味のないことだった。
「別にそれは構わないが」
「本当?」
「ああ。だが、新学期が始まってからだ」
その一言に少しだけ落胆してみせると、セブルスは眉根を寄せて、私にも新学期の準備というものがあると最もらしく口にするので、ルイスはそれ以上何も言えなくなった。急ぎはしないものの、できれば早く薬の作り方を覚えたいし、誰の迷惑にもならないようにしたい。しかし、自分がここで我儘を言うこと自体が他人の迷惑になるので、ここは大人しく引いておくことにした。
「宿題は終わったのかね?」
「うん」
「では、Miss.ジュリアードには魔法薬の宿題を追加させていただこう」
「……追加?」
「新学期が始まるまでに、こちらの本に書いてある封鎖薬の記述をすべて英文に訳し、薬に必要な材料をすべて揃えておくように」
分かったか? と言うセブルスに、ルイスが分かったと言って頷いているのを、テーブルを挟んだ向かい側から、ラウルが少し意外そうに見ていた。
そのあと、セブルスがダイアゴン横丁にある薬問屋に用事があるというので、ルイスはハリーの誕生日プレゼントを買うために一緒についていくことにした。それに、ハリーのプレゼントを買うのが第一の理由ではあったが、封鎖薬に必要な材料も揃えなければならない。ハリーのプレゼントは後からゆっくり見て回ることにし、まずはセブルスと一緒に薬問屋に行くことにした。
封鎖薬の記述は何度も読み返し、どのような材料を使うのかはすべて覚えていたので、ルイスは店主に向かって必要なものの名前を空で読み上げていくだけでよかった。しかし、在庫が残っていないものも多くあり、仕入れ次第連絡をするという約束を取り付け、店を後にする。
「私は仕事があるのでもう戻るが」
「あたしはまだ用事があるから、気にしないでいいよ」
もしどこかで同じ店の袋を抱えたホグワーツ魔法魔術学校魔法薬学教授兼スリザリン寮監のセブルス・スネイプと、学校でもそれなりに有名なグリフィンドールのルイス・ジュリアードが並んで歩いているところをホグワーツの生徒に目撃されてしまったら、きっと学校ではおかしな噂が立つに違いない。しかし幸い、ホグワーツの生徒には出会わなかったので、そういった心配はしないで済みそうだ。
ルイスとセブルスは薬問屋の前で別れた。セブルスは漏れ鍋の方へ向かい、ルイスはダイアゴン横丁の中心部へと繰り出していった。