ようこそ成敗至上主義の教室へ   作:もうすぐ死にます

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デデデーン! デンッデンッデンッデーン!




第三回

その後の入学式は恙なく終わった。と言っても誰かが何かをする事は無かった為、皆特に疲れる事もなく無事に教室に帰っていた。

 

 そして現在、1年Ⅾクラスの教室にて。

 

 今日の予定はこれだけだった様で、茶柱先生は明日の予定を簡単に伝えると放課後となり、各自帰り支度を始める。耳を澄ませれば、仲良くなった者同士何処かで遊ぼうかと計画している声が聞こえる。思い返せば辰五郎やめ組の者達ととよく飲んでいた頃を思い出す。よく親睦を深めようと酒に誘われ、振り回されていたが、時が経つたびに色々悩むことが多くなり、気が付けば彼らと酒を交わす一時が私にとって気が楽にある貴重な時間となっていた。

 

 俺もこの際、学校の造りや敷地の立地も気になる事だし、見て回ってみるか。このまま何もせずに寮に向かうと言うのも些か味気ないだろう。誰か共に誘ってみようか……俺は覚悟を決めると、物は試しにと考え、隣の席で今日知り合ったばかりの佐倉に声を掛けた。

 

「は、はいっ! な、何でしょう?」

 

 読書中だった佐倉は俺の声を聴くなり、ビクリと体を跳ね上がらせた。怖がられるのは覚悟の上だったが、実際にこう言った反応を見せられると、少し申し訳なく感じてしまう。果たしてこの状態で俺の我儘を聞いてくれるだろうか。

 

「これから少し敷地内を見て回ろうと思うのだが‥‥良ければ一緒に来ないか?」

 

「えっ? その‥‥二人で‥‥ですか?」

 

「ああ、そのつもりだが、他に誰か誘いたい者が居るか?」

 

「い、いえ‥‥…」

 

 すると佐倉は目を逸らしそっぽを向いてしまった。その姿は何故か萎縮している様にも見える。やはり彼女は人と話すのが苦手の様だし、少し厳しいか。

 

「その……どうだろうか?」

 

 取り敢えず彼女の意見を確認する為に再び問い掛けて見る。正直断られる事は最初から覚悟していた、これでだめなら今日は素直に諦めるつもりだ。だが佐倉から返って来た台詞は予想外の物だった。

 

「その‥‥良い、ですよ。」

 

「む、良いのか?」

 

 無理をしていないか心配になりつつ、彼女の様子を伺ってみるが、やはり無理をしているのか手が震えており、少々表情も強張っている。

 

「俺から誘って何だが‥‥いいのか? 無理強いするつもりはないが。」

 

「は、はい。 大丈夫‥‥です。」

 

 やはり佐倉は目を見て会話する事は難しいらしい。だが彼女の声は震えておらず、何処か自信を感じられるものだった。しかし彼女の様子からして、無理をしているのではないかと少々不安になるが、誘いに乗って来るなら有難い。早速参るとしよう。

 

「そうか、では行こうか。」

 

「は、はい。」

 

 

学校を出た後、一人敷地内を散歩する様に見て回る。知らぬ場所を冷やかしながら見て回るのは前世でもよくやっていた事だ。しかし俺の隣に居る佐倉は何やら挙動不審に周りをキョロキョロと見渡している。

 

「どうかしたのか?」

 

「い、いえ‥‥」

 

 やはり俺が苦手なのか、緊張気味の佐倉。もしや夫婦でない者と共に外を歩いている事に後ろめたさを感じているのか? いや、江戸の旗本の娘なら解かるが、今はもうそのような事を咎める者も居ないし、何よりこの時代にはもう武士は居ない。友達同士で外出する等ざらにある話の筈だ。

 

「疚しい事は無いのであろう? 何もそこまで萎縮する必要ないのだぞ?」

 

「で、でも……その……周りの……視線が……」

 

 佐倉の言葉を聞き、辺りを見渡してみれば、確かに周りの者達から妙な視線を受けている事に気付いた。耳を澄ませてみれば俺達の事を話しているだろうコソコソとした噂話も聞える。だが特に殺意や害意はない。疚しい事は何もしていない筈だが、一体何が眼を引いているのだろうか。正直この様な目で見られるのは止めて欲しいのだが。

 

 だがこんな大通りで『こちらを見るな』と声を上げるのは少々はしたない。そこで周りの者達に目配せし、眼でその意を伝えてみる。現代で俗に言う『アイコンタクト』という奴だ。

 

「―――ッ!」

 

「も、もう行こ!」

 

 すると上手く意思が伝わったのか、俺と佐倉を見ていた者達は一目散にこの場から離れて行き、残った者もこちらには顔も向けず、皆明後日の方向を見始めた。これで佐倉も少しは気が楽になるだろう。

 

「あ、あの……」

 

すると視線が感じられなくなったお陰か、佐倉が話し掛けてくる。だがその様子は少し怪訝そうに見えた。

 

「む? どうした?」

 

「今、何処かで『カーン!』って音が聞こえませんでしたか?」

 

 

「佐倉、この建物は何だ?」

 

「あの、それ、カラオケボックス‥‥です。」

 

その後も俺と佐倉は敷地内を見て回った。偶に雑談を挟みつつ、スーパーマーケット、レンタルビデオ店、電化製品店など江戸に無かったような建物を見て回る。

 

「ほう、これがカラオケボックスか!」

 

「あ、あの……行った事、無いんですか?」

 

「うむ、どのような物かは知っているが、縁が無かったからな。」

 

 佐倉は俺が興味を向けた物や、聞いてきた質問にしどろもどろになりながらも答えてくれた。だが彼女の反応から見るに、俺は現世の娯楽関係について無知である様であり、改めてこの時代での俺の知識不足を痛感した。否、この場合は知識ではなく現世での経験が無いと言うべきか。

 

しかしカラオケボックスか。これは余から見ればとても興味深い施設だ。個室と音曲が流れる場を提供し、民達の日々の不安や不満を歌に変えて発散させる施設。江戸に有ればめ組の者達が一日中籠っていても可笑しくはない代物だ。

 

「……む?」

 

 だが電灯の上に付けられた絡繰りの機械を見つけ、一瞬足を止める。確かアレは防犯カメラだったな。思えばこれも便利な物よ。何処かで聞いた話だが、このカメラの有無で治安が大いに変わるらしい。もし江戸にこの様な代物が在れば、かつて余が成敗してきた官僚共の汚職や犯罪なども大いに減らす事が出来たであろうに、ここまで差を見せられれば、少々悔しく思ってしまう。

 

 だがこの通りで何個目だ? 大都会の大通りならまだしも、この小さな道で数個もの防犯カメラが設置されている。この学校に来た時から思っていたが、少々多すぎる。 やはり朝方に茶柱先生が言っていた『生徒を実力で測る』に関する事なのだろうか。

 

「あの…今度はどうかしたんですか?」

 

「いや、何でもない‥‥」

 

もし今朝の事が本当だとしても、下手に吹聴させれば混乱するのみだ。確信が持てない以上この事は余の胸にしまっておこう。

 

 

 そして敷地内を一通り見終わった後、俺達は商店街を離れ、これからの学園生活で世話になるであろう学生寮へと来ていた。

 

 ‥‥やはり監視カメラが多いな。学生らが住まう所ならば当然だろうが。

 

「あの……私はこちらなので…」

 

「む、ああ。今日は有難うな。佐倉。」

 

「い、いえ…その、失礼します…」

 

どうやら男子寮と女子寮で別れている様であり、佐倉はそう言うと俺とは別の道を歩み始める。しかしこの寮は俗に言うマンションの様な形らしく、江戸で言う長屋に近い物だ。ここに入学する前は一軒家に住んでいたし、こういった集合住宅に身を置くのはめ組の長屋に滞在して以来だ。

 

 そして佐倉と別れた後、俺は寮へと入り、エントランスを過ぎ、エレベーターで自分の部屋が有る階へと向かう。

 

「……俺の部屋は…ここか。」

 

 ロビーに寮全体の見取り図が有ったお陰か、存外部屋は早く見つかった。これから生活する寮の部屋はどんな様子なのだろうか。遂に辿り着いた部屋を前に、俺は期待を胸にしながらドアを開く。

 

 其処には備え付きのベッドや机など、生活最低限に必要な家具が設置されており、人が一人住むには十分のスペースが用意されていた。ここが今日から俺の部屋になる場所か。

 

「存外住み良さそうなものだな。」

 

 やはり国立の学校という事も有り、寮の部屋は埃一つ無い程綺麗であり、家具まで用意してくれているとは思わなかった。広さは流石に前世に住んでいた城の寝室よりは狭いが、特に荷物も無いし、必要な家具は全て揃っている為、俺としては丁度いい。

 

 荷物を置き、俺は窓から外を眺めてみれば、遠くに見えるのは先程佐倉と共に歩き回った商店街。余が死んでから250年。め組の者達ももう居らず、見知った顔は一人も居ない。

 

 家族も居ない一人暮らし、前世でも余には如何なる時もめ組の者達が、越前などの家族が居た。学校での寮生活とは言い、こうして一人で生活するのは初めてだ。正直寂しいと言えば嘘になる。

 

「新生活……か。」

 

 聞えは良いが、本当に俺にとって経験のない全く新しい事だ。こう言った事は前世でも縁が無かった。

 

 明日から始まる新し日々に期待を寄せると同時に、これから巻き起こるであろう不安を胸に感じながらも、入学初日の太陽は徐々に沈んで行くのだった。

 




 更新遅れてすいません。

 実は別の転生モノの小説も考えており、誰を転生さようか考えています。個人的には平清盛で行こうかと思っているのですが、色々候補もあるため、アンケートを実施しようと思います。

ご感想お待ちしています。

別の小説に転生させるとしたら誰が良い?

  • 平清盛
  • 安倍晴明
  • 坂本龍馬
  • 斎藤一
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