ようこそ成敗至上主義の教室へ   作:もうすぐ死にます

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白い原チャリに乗った上様が海辺を走っているOPを脳内で再生した私は間違っていない筈。


第四回

翌日

 

 午前6:00頃、前世の様に爺に起こされる事は無く、余は自力で目を覚ます。今世に転生して16年、この世には目覚まし時計なる便利な物が在り、お陰で遅刻する事もなく起床できたが、どうにも目覚めが悪い。やはり昨日余り眠れなかった事が大きいのだろうか。

 

 余は前世から、大きな催しや行事の前だと眠れなくなる悪癖が在り、転生してからもそれを引き継いでしまっている。現に中学の頃に有った修学旅行というイベントでは前日に一睡もする事ができず、寝不足に苦しんだ事もあったものだ。

 

 その後、朝食を摂り、身支度を整えると寮のドアを開く。すると隣の部屋の者も同じ考えだったのか、がちゃりと同じタイミングでドアが開かれた。

 

 「……あ。」

 

 「‥‥む?」

 

 互いの顔を暫し眺め合う余と寮の隣人。見た所この者は同じクラスであったか。名は覚える限りでは‥‥

 

「確か、君は綾小路清隆だったか。」

 

「ああ、そう言うお前は、徳田新之助であっていたか?」

 

 良かった。どうやら間違えてはいなかったようだ。記憶力が落ちていない様で胸を撫で降ろす。余も江戸で伊達に将軍を務めていた訳ではない。1日に何十人もの旗本や公卿の名を覚えていたのだから。

 

  しかし綾小路清隆か、昨日個別で自己紹介をした時に名を知ったが、思えばそれっきりだった。この際だ、少々話してみるか。

 

 「なぁ、良ければだが、同じクラスのよしみだ。一緒に登校しないか?」

 

 「良いのか?」

 

 自分が誘われる事が意外だったのか、怪訝そうな顔を浮かべる綾小路。そんな彼に俺は『うむ』と頷く。すると綾小路はたちまち嬉しそうな顔になり、快く誘いに乗ってくれた。

 

 

そして綾小路と共に学生寮を出た後、俺は雑談を挟みながら彼と共に学校内へ向かっていた。

「そういえば綾小路……お前、過去に何か武道でもやっていたのか?」

 

学生寮を出て5分程が経った頃、話題も丁度弾んでいた事も有ってか俺は綾小路に初めて会った時から気になっていた事を質問してみる。

 

「いや、特には……習い事はピアノと書道位だったな。」

 

 嘘だ。これでも余は柳生新陰流を修めている故、対面した相手の力量はある程度分かる。この男、綾小路清隆はこの時代ではかなりの手練れだ、流石に越前や御庭番の皆にはまだまだ及ばぬが、徳川の世であればこの者の腕で立派な侍となり活躍できたであろう。

 

「ふふふ……そうか? だがお前体格や歩き方等の僅かな動き、武術に手慣れていると見たが……」

 

「そう言うお前はどうなんだ。 体格はオレよりもガッチリしているだろう。」

 

「む? そうか? まぁ色々嗜んでいたからな。」

 

「因みに何をやっていたんだ?」

 

「む? 柳生新陰……剣道と、柔道、あとレスリングも少々習っていた。」

 

 柳生新陰流と言っても、今の時代の者はあまりパッとしないだろうし、解りやすいように剣道と言い換えて綾小路の質問に答える。

 

 思えば転生してから随分武芸を嗜んだ。この時代では鎖国が解かれた為か、海外の武術や格闘技を習える。それ故か余は江戸の頃より腕を上げる事が出来た。

 

「それで、どうなんだ? 何か習っていたのか?」

 

「だからピアノと書道しか習っていないと言っただろう。」

 

「ふむ……そうか……」

 

しつこく追及するのは流石にはしたないと思い、大人しく引き下がる。だがこの者は相当な逸材だ、あと10年ほど鍛えれば御庭番にも成れるであろう力量、江戸であれば俗に言う『ヘッドハンティング』とやらをしていたかもしれぬ。

 

 そう考えつつ、談笑を挟みながら歩いていると、気が付けば校舎内に入り、教室へと入っていた。1-Dの教室ではまだ来ている生徒は少ないらしく、まだ静かだ。

 

 「…人が少ないな‥‥早く来すぎたか。」

 

 「うむ、だが余裕があるのは良い事だ。……暇だし少し話すか?」

 

 「ああ、オレでよければな。」

 

 その後、綾小路とテレビの好きな番組や好きな本など、他愛のない話題を交わす。どうやら綾小路はテレビはあまり見ないらしく、本を読む事が多いらしい。しかもかなり硬派の読書家の様だ。こうして話していれば、世界的に有名な小説家の本から、余が読んだ事もないような本の名まで綾小路の口から出て来る。

 

 余もそれなりに今世の本に触れ合ってきたが、綾小路は随分博識の様だ。やはり現代人の方がこういった書物を知っているらしい。

 

「綾小路君、友達が出来たのね。」

 

 すると突如綾小路の後ろから女子が話しかける。この女子も昨日出会った佐倉や一之瀬に勝るとも劣らない美しさだ。長い黒髪に赤色の瞳、確かこの者、昨日自己紹介を拒否してそのまま帰った女子であったか。

 

「ああそうだぞ。堀北、こいつは徳田だ。」

 

 何処か誇らしげに女子に俺を紹介する綾小路。ふむ、俗に言う『ドヤ顔』とはこの事か。

 

 「徳田新之助だ。よろしく頼む。君は?」

 

 「拒否しても良いかしら。」

 

 こちらから名乗ったは良い物の、女子は名乗る事は無くそっぽを向いてしまった。この者、佐倉同様人見知りかと思ったが、違う。この者、自ら他人から距離を置いているな。

 

 「同じクラスメイトなんだ、名くらい良いだろ?」

 

 「……堀北鈴音よ。」

 

 「そうか、宜しく頼むぞ、堀北。」

 

  挨拶のつもりでそう言うが、堀北は完全に俺の話を聞いていない。この者、少し心配だ。これでは全く他人と関わらず年月を過ごす羽目になってしまうぞ。

 

 そのご、堀北は席に座り、本を読み始めた。どうやら俺と綾小路の事を完全に居ない者として認識し始めたらしく、本の世界に没頭し始めた。教室には少しづつだが生徒が入り始めている。そろそろ丁度いい時間なのだろう。

 

 「綾小路、それではまたな。」

 

 「ああ、また。」

 

 席が離れている綾小路と別れ、俺は自分の席に着いた。するとドアから佐倉が教室に入り、同様に席に着く。

 

「と、徳田君! お、おはよう。」

 

「ああ、おはよう。佐倉。」

 

 来て早々俺に挨拶してくれたが、昨日に比べて僅かだが落ち着きが感じられる。やはり昨日余が申した『疚しい事が無ければ堂々としておれ。』という言葉が聞いているのであろうか。

 

 

 

 そして時は流れ授業中。

 

 教員が黒板に文字を書き、それをノートに書き写す中、俺は心の中で大音量で叫んだ。『喧しい!』と。

 

  そう、このクラス少々どころではない。授業中に私語は当たり前、居眠りをする者も多く、隠れてスマホを弄る者も居る。教師は何故この状況で生徒達を叱らない? 

 

 正直このままでは埒が明かない。下手をすれば1年このままかも知れない。だが今は授業中、声を荒げれば私語をしている者と同類になってしまう。この際止む負えない。眼で訴える他ないだろう。

 

 眼とは心を移す鏡。誠意をもってすれば自然と相手の感情は伝わるものだ。一番私語が酷く、スマホも弄っている茶髪の生徒……確か軽井沢恵であったか。彼女に伝えてみよう。

 

「―――ッ!」

 

「そうそう、だからさー……っ!」

 

 どうやら伝わった様だ。目に感情を込めて目配せしてみみれば、彼女は此方側を勢いよく振り返り、私語を止めて、スマホをポケットに閉まってくれた。

 

 「今、何処かで『カーン!』って音しなかったか?」

 

 誰かが昨日の佐倉と同じ質問をしていたが、きっと気のせいだろう。どうやら軽井沢がこういった私語の元凶であったようで、教室は少し静かになった。

 

 これで少しは集中できる。さて、どこまで書いたか…

 

 その後、授業中の皆であったが、やはり私語や居眠りが多く、やはり集中するには騒がしかった。だが私語が多くなる度に、余がその元凶となる者に眼で訴えれば、忽ち静かになってくれた。

 

 やはり人は余程の悪人でない限り、誠意をもって訴えれば、取り入ってくれるものだ。

 

 ◇

 

 そして昼休み。

 

 「さて、昼飯時か。」

 

 俺は授業が終わる鐘の音を聞くと、真っ先に席から立ち上がり、食堂へと向かう。余は前世から一日二食の習慣であり、今日は朝食を食べていない。それ故か腹が減った。だが一人で食うのも些か味気ない。佐倉はチャイムが鳴るなり教室から出て行ってしまった事だし、綾小路を誘おうか。

 

 「綾小路、食堂に行かないか?」

 

 「ああ、そうだな。」

 

  その後、綾小路と共に学校の食堂に来てみれば、多くの学生がテーブルを囲み、食事や雑談に勤しんでいた。

  

  前世でもめ組の者達と呑みに行った時もこんな雰囲気だったか。だが俺は券売機の隣には丁寧に掲示された食堂のメニューや、その料理の写真を見ると、少しこの食堂に苦手意識を感じた。

 

 「……どうした、料理の写真を見て。気に入らないのか?」

 

 「いや、気に入らない訳ではない。菜が多すぎるのだ。」

 

 そう、この食堂の写真を見て思ったが、その料理も菜が多すぎる。俗に言う『ボリューム』という奴なのだろうか。それが余りにも大きい。特にこの『スペシャル定食』など体を壊す様なものだ。

 

 「菜? ああ、お前少食だったのか。 俺は決めたが、お前は何にするか決めたか?」

 

 綾小路はもう何を食うか決めているらしく、食券を此方に見せて来る。ふむ、菜が控えめで健康的な物…お、コレだ!

 

 

 ◇

 

「本当にそれでよかったのか? 徳田。」

 

「ああ! コレが一番しっくり来る。」

 

 席に座り、俺と綾小路は昼食を摂り始める。

 

 綾小路が食するのはハンバーグ定食、ハンバーグは確か牛の肉を団子状に固めて焼いた物だったか。確かにハンバーグは旨い、今世に転生してからこの料理は俺の中でも1、2を争う程美味だ。それに価格も手ごろであり、現代人にとっては素晴らしい物なのであろう。

 

 だが江戸の世から記憶を継いでいる余からすれば少々豪勢すぎる。余が求めるのは質素さ、素朴さ、そして手ごろさだ。

 

 それに関しては余が食しているこの『山菜定食』に勝てる物は無いだろう。この山菜の濃すぎない味、そして丁度いい菜の多さ、これだけでも十分に余の胃袋は満たされる。しかもこの食堂での値段は0p、何と無料なのだ。

 

 この味、思い出す。江戸でめ組に居候していた時もこんな物を食べていたか……

 

 「0pの食事なんて、ずいぶんポイントを節約するのね。何か欲しい物でも有るのかしら?」

 

 すると綾小路の隣に座っている黒髪の女子生徒に突如話し掛けられた。今朝会った生徒の堀北鈴音だ。

 

「いや、少しポイントについて気掛かりな事があってな。」

 

「それって昨日茶柱先生に言っていた事か?」

 

こちらをじっと見つめながら尋ねる綾小路に、俺は『うむ』と頷く。

 

「昨日? 貴方茶柱先生に何か話していたかしら?」

 

「聞いてなかったのか?」

 

「私、他人に興味はないもの。」

 

髪をかき上げながらそう言う堀北に、俺は『そうか』としか返せない。『他人に興味はない。』やはりこの女子は自分から他人と距離を取っている。詳しい理由は解らぬが、もしやこの者、孤独と孤高を履き違えているのではないか?

 

今日初めて会ったばかりだが、何となくそう思えてきたぞ。

 

「確か、昨日の徳田は『来月も同じポイントが貰えますか?』みたいな事を聞いていたな。」

 

「そうだ、あの時茶柱先生は『毎月支給される』と言っていたが、その後に俺が聞いた事は覚えているか?」

 

「ああ、確か『この学校は実力で判断すると言っていたが、実力がもし実力が無い者と判断した場合、このポイントは貰えなくなるのか』だったな。」

 

「そうだ、だがその質問に対して茶柱先生は『時と場合による』とはぐらかした。これがどういう意味か解るか?」

 

「まさか、『実力なし』と判断されえればポイントがもらえなくなるって事?」

 

  僅かに目を潜めて答える堀北に、俺は静かに頷いて、肯定の意を顕わにする。

 

「ああ、もし貰えなくても、減少する可能性は高いぞ。その証拠に昨日茶柱先生は来月分の支給されるポイントの額を言っていないだろ。」

 

「そうね……ポイントが連動……」

 

 何か思い当たる節があるのか、顎に手を当て考え込む仕草をする堀北。

 

「あくまで俺の憶測の域を越えないし、深く考える事は無いさ。」

 

 そう、この話はあくまで余の推測、ポイント云々やカメラになどに関しては証拠がない以上、下手に吹聴すれば生徒の混乱を呼ぶだけだ。完全に確証を持てるまではまだ口に出すべきではないだろう。

 

 そうだ、今日の放課後、茶柱先生にこの事を聞いてみようか。上手く行けば言質を取れるかもしれん。

 

 俺はそう考えると、山菜定食の味噌汁を口に運ぶ。だが直後、俺のスマホが『ブー、ブー』と震えた。どうやらとあるネットニュースを通知した様だ。

 

 何か…胸騒ぎがする。飯の最中に別の事をするのは少々行儀が悪いが、ひどく嫌な予感がする。

 

 俺は恐る恐るスマホを点け、先程通知されたネットニュースを見た瞬間、余は思わず味噌汁を吹き出しそうになってしまった。

 

 これは…これは誠の事か?!

 

 「…‥‥徳田、どうした?」

 

 怪訝そうに俺を見つめる綾小路だが、最早その様な事を気にする余裕はない。

 

 『徳川幕府8代目将軍徳川吉宗の刀、来国俊盗まれる!』

 

 俺が見たスマホには、前世で余が愛用していた刀が盗まれた事が、ニュースとなって知らされていた。

 

 

 

 




 アンケートの結果、結構激戦だな……少し人数を減らします。一応この中から書きたいと思っていますが、やっぱりヤケクソになって宗教関係の入れるのは不味いよな‥‥どうしよ。

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