チリちゃんは草タイプに弱い   作:たんたんたらたん

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まいど〜


第6話

 

 

「洞窟の調査ぁ?」

 

いつも通りの昼下がり。

例の如くチリと談笑をしていた俺は顔を顰めながら聞き返した。

 

「せや。なんでも最近北の方にある洞窟の中から夜中に変な音がするらしいんよ。しかもその洞窟はかなりのポケモンが住み着いているから迂闊に近寄れない。

そこで四天王であるチリちゃんとポピーがその調査に駆り出されることになったって訳や」

 

どうやらチリとポピーちゃんに洞窟調査の依頼が入り、俺は今その同行に誘われている状況らしい。

 

チリの説明は概ね理解した。確かにポケモンが多く住んでいる洞窟に入るのはそれ相応の危険を伴う為、四天王に依頼が来るというのも納得できる。

 

しかし一つだけ気になることがある。

 

「それさ…俺いる?」

 

俺いらないだろそれ。

 

戦力的にはポピーちゃんとチリという四天王が2人もいるからもはや過剰戦力だとして、調査にしてもポピーちゃんだけなら危ないかもしれないがチリがいるならさして問題ないように思えるんだよな。

 

「ポピーは四天王いうてもまだ子供やからな。それにチリちゃんが調査してる間はポピーの相手できないやん。そこで自分の出番っちゅうわけや。」

 

しかしチリは俺の反応を予想していたようで、すかさずそれっぽい理由を提示してくる。

 

「…正直、ポピーがこの依頼にめっちゃ乗り気やねん。

なんか『どうくつたんけんですわ!そしてポピーはおくにささっている でんせつのけんを うっかりぬいてしまうんですの!』

とか言いよりながら目ぇキラキラさせとったわ。」

 

チリが若干疲れたような顔をしながらため息を吐く。

意外なことにポピーちゃんはアウトドアな性格らしく、今回の洞窟調査に姿勢を前のめりにしているようだ。子供は外で遊んでなんぼだよね。

 

「せやからチリちゃんの手が離せない時の見守り役としてソウに来てもらいたいわけなんやけど。」

 

まぁ、俺としてもなんだかんだ立場上チリと仕事をしたことがないし一緒に行くのもやぶさかではないがそんな唐突な思いつきで行動できる時間がないのが社会人の辛いところである。

 

「でも、そんな勝手についていっていいもんなのか?せめてオモダカさんから許可ぐらい取らないと行けなくね?」

 

「あぁ、それならもうオーケー貰てるから心配ないで。

…てか、まさか断る気じゃないやろうな。この前の口紅の件、チリちゃん忘れてへんで?」

 

至極真っ当なことを言った俺に対してチリがジト目で口を尖らせながら問題ないと伝えてくる。流石チリ、仕事が早い。

 

というかあの時のことまだ根に持ってるんかい。これはどの道断ることができなさそうだな。

…それにしてはなんか必死な気もするが。

 

「わかったわかった。そんなに言わなくてもちゃんと行くよ。俺としてもお前と過ごせる時間が長くなるのは嬉しいからな。」

 

そういえば思い返してみると昔色々なところを駆け回ったがお互いの親から止められて洞窟は入ったことがなかったっけか。

 

俺が笑いながら了解の旨を伝えると、チリが顔を少し紅くしながら頷く。

 

ほんまこいつは急にそないなことを……!まぁええわ…。

じゃあオモダカさんとポピーにソウが一緒に来ること伝えとくさかい、当日はよろしく頼むわ。調査行くんは明日やから汚れてもいい服で来てな。」

 

チリが立ち上がってオフィスへと戻っていく。おもむろに腕時計を見ると、丁度もう少しで昼休みが終わる時間に差し掛かっており俺も慌てて自身のオフィスへと戻った。

 

どうやら俺にとっても数年振りの幼馴染とのパルデア探検になりそうだ。

 

 

ーーーー

 

 

翌日の深夜。俺とチリ、そしてポピーちゃんは件の洞窟の前へと足を運んでいた。

その入り口は広大で奥は暗闇に包まれており、その姿はまるで巨大な怪物が俺たちを飲み込もうと大口を開けているようである。

 

「おぉー…結構迫力あるな。そりゃたくさんのポケモンが住んでいるわけだわ。」

 

「すごくおおきいのです!これからポピーは このなかにはいって でんせつのまおうと あいまみえてしまうのかもしれません!」

 

ポピーちゃんが目を輝かせながら暗闇を見つめている。どうやらポピーちゃんには若さ故なのかは知らないが割と怖いもの知らずな一面がありそうだ。

 

「そんじゃまぁ、パパッといって終わらせますか。チリとポピーちゃん、行こうぜ。

 

…チリ?」

 

俺とポピーちゃんが入り口に向かって始めるがチリがついてこない。というかさっきから一言も発さずにその表情を固まらせてる。

…なにやってんだあいつ?

 

「…はぇっ!?あ、いや、なんでもあらへんよ!うん、せやな!こないな仕事、はよ終わらせて帰ろか!ほないくで!」

 

チリが再起動をしたようで俺たちを急かすように背中を押してくる。

なんかやたらと俺の背中に引っ付いてくるんだけどそんなに急がなくてもいいだろう。

 

 

そうこうしてる間に気がつけば俺たちは洞窟の中へと足を踏み入れていた。

持ってきたロトム電灯を点けると外からは暗くてわからなかった洞窟の中がある程度見えるようになる。

 

来たのが深夜ということもあり、数多く住み着いているポケモンの姿は見当たらない。

おそらく土の中や俺たちの登れない崖の上で寝ているのだろう。

 

「ポピーたんけんたい、しゅっぱつです!めざすはこだいのおたから エクスレッグカリバー!」

 

するとさっそくポピーちゃんが意気揚々と奥に向かって進軍を始めた。

 

「あっ、ポピーちゃん危ないって!あんま1人で進みすぎないで!」

 

早足で奥へと進んでいくポピーちゃんを静止すべく俺も駆け足になってポピーちゃんを追いかける。体格差があるためポピーちゃんはあっさりと俺に手を掴まれ出端を挫かれたような顔で俺を見つめる。

 

「ちょっ、まってぇ!置いてかんといて!」

 

俺がぶーたれながら文句を言ってくるポピーちゃんを宥めているとチリが走って追いかけてきて、俺の袖をガッチリ掴んだ。

なんか今日やたらと距離近い気がするんだけど気のせいだろうか。

 

「あぁ、チリすまん。ポピーちゃんが先いっちゃいそうだったんだよ。てか、俺がポピーちゃんのこと見とくから先に様子見てきてもいいぞ?お前なら1人でも大した危険ないだろ。」

 

絶 対 嫌 や!

そんな怖…じゃなくて、ソウ1人に押し付けるなんてするわけないやん!みんなで一緒に、離れないでいくねん!てかチリちゃん1人にしたらマジでいてこますからな!?」

 

なんかめっちゃ怒られたんですけど。

俺の負担を気にしてくれてるのはわかるがそんなに声を張ることでもないだろうに。

 

「お、おう。わかった。んじゃさっさと奥進んで行こうぜ。明日が休日とはいえもう深夜だからな。」

 

引き千切れそうな程の強さで俺の袖を掴みながらチリがコクコクと頷く。

再度集まった俺たちは永遠に続くとも思える暗闇へと足を進めていった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

そこからは割といろんなことがあった。

 

どうやら俺たちが入ってきたことによって多少のポケモンたちが目を覚ましたようで、俺たちはちょくちょくポケモンたちにちょっかいを出された。

 

しかしちょっかいとは言っても彼らからしたら悪戯のようなものだったようで身の危険を感じるようなことは一度もなく、こちらには四天王が2人もいたので簡単に対処できた。

 

例えば洞窟の壁からゴースが出てきた時はーーー

 

『ゴースさんですの!いち、に、さん…とにかくいっぱいますわ!ゴースさんたち、なにかごようですか?』

 

『おーこりゃまた随分沢山出てきたな。ゴースは悪戯好きでよく変なことしてくるって聞くからポピーちゃんはあんまり近寄らない方がいいよ。

チリ、ちょっと追っ払ってくれ。』

 

『ちょっ、ポピー、頼むわ。

チリちゃんソウを守らなあかんから離れられないねん。…ソウもチリちゃんから離れたらあかんで。ホンマに。冗談抜きで。』

 

『え?いや俺は平気だよ。それよりもいくら四天王とはいえポピーちゃん1人に任せるのは「ヌチャン!」ーーーえ?』

 

『デカハンマーですわ!!』

 

『ちょっ!?地面揺れてる!ポピーちゃんやりすぎだって!ほらゴースたち震えてるじゃん!』

 

ポピーちゃんが一撃で大量のゴースを吹き飛ばしたり。

 

 

 

例えばユキメノコが何処からか近づいてきた時はーーー

 

『あれ、ユキメノコだ。へぇ、こんな洞窟にもいるんだな。』

 

『うわぁ、とってもびじんさんです!キレイなおはだがすてきですわ!』

 

『うん、確かにユキメノコって綺麗だよな。サーナイトとかムウマージもそうだけど美人なポケモンってそこに居るだけで映えるよな。

おっ、こいつ結構人懐っこいな。よしよし、可愛いなぁお前。』

 

チッ…あんのクソ草タイプが…!

ドオー!隆起せえ!あの色ボケ雪女をしばき回したれ!』

 

『あーっ!おいチリなにもそこまですることないだろ!せっかく仲良くなったのにビビって逃げちゃったじゃん!』

 

『チリちゃんもすなおじゃありませんの。』

 

チリが青筋を浮かばせながら攻撃したり。

 

 

 

ーーーーと、まぁそんな感じで諸々のトラブルはあったものの無事に俺らは洞窟の最奥まであと少しのところまで来ていた。

 

しかし今日は一度も噂の異音がしてこない。また出直すことにならなければいいが。

 

「あ!むこうにだれかいますわ!」

 

するとポピーちゃんが奥を指差して声を上げる。

釣られて暗闇の先を照らして目を凝らすと確かに誰かがいる。

 

「…本当だ。なにしてるんだこんな時間にこんなとこで。明らかになんかありそうだな。」

 

俺がその人物に近づくと、向こうもこちらに気づいたようで振り返りながら話しかけてくる。

 

「…おや?誰だ貴様は。こんな夜更けの洞窟に出没する人間など碌なものではあるまい。」

 

眼鏡をかけ、水色の服を着た髪の長い女性が高圧的な態度で俺のことを見てくる。

…どっちかというと怪しいのはそっちなんですけど。

 

「あれ、誰かと思ったらレホール先生やないですか。何してはるんですかこないなとこで。」

 

チリが俺の後ろからひょっこり顔を出して女性に話しかける。先生ってことはアカデミーの教師の1人なんだろうな。

 

「そういう貴様は四天王のチリか、久しいな。それに後ろのは確かポピーといったか。そっちのヌボーッとした鈍そうな男のことは知らんがな。

…ふむ、私がここで何をしているのかと言われれば古き災いを封印から解き放とうとしているのだよ。」

 

「ふういんってなんですか?もしかして エクスレッグカリバーですの!?」

 

「エクスなんとかが何かは知らんが、どうやら太古の昔に封印された災いのポケモンを縛り付けている杭が何処かの洞窟に刺さっているらしくてね。とある女生徒にも頼んでいるのだが、なにせ数が多いのでこの私自らも探しにきたと言うわけだ。」

 

チリが訪ねるとレホール先生とやらは何やら不穏なことを説明してきた。災いとか封印とか聞こえたけど大丈夫なのかそれ。

 

「あぁ…歴史とはなんて素晴らしいものか。災いの封印を解けばきっと古代のポケモンたちの生態やそれに関わった先人たちの知恵が紐解ける。ウッヒョー!興奮してきた!」

 

どうやらかなりマッドな人だったようだ。恍惚とした表情で歴史について語ったかと思えば急に興奮して叫び始めた。この前のキハダ先生しかりこの人しかり、個性強くないかあの学校の先生。俺がいた頃はもっと普通の教師が多かったぞ。

 

「あ、あはは。そ、そうっすね。…あ、そうだ。なんか夜中にこの洞窟から異音がすることがあるって聞いて俺たち見に来たんですけど、なんか知りません?」

 

「ふむ、異音か。…もしかしたらこやつが原因かもしれんな。」

 

ふと何かを思いついたのか、レホール先生がハッサムを繰り出す。光沢のある赤い体に鋭い目付きは少し見ただけでその実力の高さが分かる。

 

「こやつのバレットパンチで壁に穴を開けて空洞と繋げていたのだが恐らくその音だろう。この洞窟はやたらと音が響くようだし、なにより私が今まで調査して来た中で異音とやらも聞いたことがない。」

 

うーむ。なんとなくわかってはいたけどやはりこの人が原因だったらしい。てか、壁に穴開けるって…やたらと脇道が多かったのもそのせいか。

 

「あー…トップらにはいい感じに報告しとくさかい、周りの人がビビってまうんで申し訳ないんやけど控えてもらってもええやろか?」

 

「ふむ…。まぁこの洞窟に杭はなさそうだし、私もそろそろここから手を引こうと思っていたところだしな。了解した、すまなかったな。」

 

やはり教師ということもあり話が早く、早々に俺たちの抱える異音問題は解決することとなった。大したことじゃなくてよかったわ。

 

「ほんじゃ、任務達成ってことでさっさと帰ろうか。だいぶ遅くなっちゃったな。」

 

「まだでんせつのエクスレッグカリバーをみつけていませんが…まぁしょうがないのです。」

 

ポピーちゃんは己の任務達成とはならなかったようで不満そうにしながらも納得してくれた。さっきから思ってたけどエクスレッグカリバーってなんだよ。どこかの王様の剣とかか?

 

「せやな。チリちゃんもはよこないな辛気臭いこと出たいわ。レホール先生も一緒に来はります?」

 

「私は後片付けなどもあるのでもう少し残っていくから先に帰りたまえ。」

 

「了解ですわ。ほな早いとこ入り口まで戻ーーー

 

『あぁそれと、ある生徒によるとこの洞窟はどうやら心霊スポットと言われているらしいぞ。なんでも天に行けない死者の霊がいるとかなんとか。一応帰り道も気をつけることだ。

…だからこそ杭を探しにきたのだが噂など当てにならなかったな。』

 

ーーーへ?」

 

レホール先生がさっさと行けというような仕草をする。

それにしてもそんな噂ってまだ有るのか。生憎俺は心霊とか幽霊は信じてないからノーダメージなんだけどな。ポピーちゃんもそんなこと全く気にしないようでなんなら既に来た道を戻り始めてるし。

 

俺がポピーちゃんを追いかけるとチリも駆け足でこちらへ向かってきており、それを見たレホール先生がクスクスと笑う。

こうして俺とチリの数年振りのパルデア探検は大成功という形で幕を引くこととなった。

 

 

 

ちなみに帰り道も行きと同様にチリが袖を、というか腕を掴んで離してくれなかった。ポピーちゃんがそれを見てニヤニヤしてたけど何故だったんだろう。

 

 

 

 




ユキメノコとムウマージとサーナイトは私の性癖なので気にしないでください。
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