裏ボスはメアリー・スー 作:後書きは信用するな
技の元ネタはわからなくても何も問題ないようには書いてるつもりです。
「対個性最高警備特殊拘置所、通称タルタロス・・・・・・か。馬鹿馬鹿しいね、裁判なしに永久に犯罪者を閉じ込めるために拘置所を名乗ってるただの監獄じゃないか。国が法の抜け道探すなよ」
そこには危険人物を閉じ込めるために必要な全てが揃っていた。
誰一人として侵入も脱走も許したことがないという実績があった。
過剰なまでの警備があった。
最新式のプログラムとロボットがいた。
それら全てが生み出す自信が警備員の胸にはあった。
だが、そんな幻想はたった一夜で崩壊する。
『セキュリティレッド発令。侵入者アリ、セキュリティレッド発令。各フロア封鎖、職員はただちに厳戒態勢に移行して下さい』
「セキュリティレッド?あぁ、確かあったねそういうの。随分と手荒い歓迎じゃないか、嬉しいよ」
当然許可はなく、仲間はいない。
女はただ一人で鉄壁の監獄に踏み入った。
本土川通行門、通称『青銅の門』とも呼ばれる場所の真正面から。
立ちはだかるロボットを破壊し尽くし、悠々自適に女は足を進める。
その様子はさながら『この程度のロボットでは足止めすらできないよ?』と挑発しているようだった。
「待て!そこで止まれ!」
「待て?今更何を?もう既に俺は君たちのロボットを破壊してるんだぜ?これは紛れもない敵対行為だ、君たちにできることは────」
武装スーツに身を包んだ警備員の一人が大声で叫んだ、当然数多のロボットを引き連れて。
警備員の声は時間稼ぎに過ぎない、そして行われるのは機銃の掃射。
全てのロボットは大口径の銃弾に適した装備を保持しており、彼らの一斉射撃を喰らえばどんな生物だろうが原型を止めることなく血と臓物を撒き散らす。
はず、だった。
「ネウロより借用、魔界777ツ
松井優征による生み出された漫画作品、『魔人探偵脳噛ネウロ』に登場する道具の一つである醜い姿見。
飛んできた物体をそのままの速度で返すカウンター能力であるそれに似たナニカが女の周囲に展開された。
当然のことながら、撃ち込まれたロボットの肩に付けられた機関銃より撃ち込まれた銃弾は全て跳ね返りロボットの回路を破壊して機能を停止させた。
一発二発じゃびくともしない装甲も、連射全てが跳ね返されれば壊れてしまう。
それこそとてもあっけなく、後に残されたのはただの鉄屑だけ。
「さて、運良く生き延びた警備員さん。少しお喋りでもしようじゃないか。くだらない話でいいよ、ポップコーンは塩かキャラメルかなんてものでいい。それで時間があればレディナガンの場所を教えてくれると助かるよ」
明らかに後者が本命の目的であることを隠しもせず、ただただ薄っぺらい言の葉が宙に舞う。
気持ちの悪い笑みを浮かべながら、女は警備員に近づいた。
彼は運良く生き残った、生き残ってしまったというべきか。
前方には化け物のような能力を見せつけた女、辺りには壊されたされたロボット、手には配備されたライフル銃。
「恐怖で声も出ない?おいおい自覚あるのかな?ここが突破されれば日本中に凶悪犯罪者が解き放たれる、当然この国は大混乱に陥るだろう。君はその防衛ラインにいるんだぜ?あ、そういえばここで俺を倒せばある意味英雄だね。ボーナス出るかもよ?」
怯える警備員が長々と自らの過去と信念を脳内で独白し、その胸に正義を携えライフル銃で侵入者の女に一矢報いる。
なんて展開は訪れることはなかった、あろうことか警備員は恐怖で失神してしまったのだ。
彼の名誉のために言うとすれば、彼は決して臆病者ではなくむしろ勇敢で男気に溢れる人間だった。
まあ、それもこれも転生者である女の異質さを醸し出すための
「気絶?・・・・・・まあいいさ。頭の中だけ見るとしよう。少年漫画の法則に則るなら『戦意喪失して気絶した格下の敵を殺す』なんて格が下がる要因にしかなれないしね。裏ボスとして相応しい格を保たないと」
そんなことを考えてる時点で『格が高い』と言えるのだろうか。
なんて思考が彼女の脳内によぎったかどうかは彼女のみが知る。
「──────投降しろ」
何かが女の足を貫いた、羽だ。
続いて声がした、それは紛れもなくヒーローであるホークスの声だった。
「おー流石は速すぎる男。駆けつけるのも早いね。惚れ惚れするスピードだ、でも空気抵抗とか大丈夫なのかい?あ、だからそのでかいメガネつけてるのか」
映画や漫画ならいざ知らず、ここは現実。
足を貫かれれば痛みを感じるはずだし、それほどの激痛を感じればまともに喋ることができないはずだ。
『個性』か『薬物』、ホークスの脳に浮かんだのは二つの可能性だった。
「襲撃の目的は刑務所で聞く、今投降すれば悪いようにはしない」
テンプレートな定型文、相手の性格も目的も思想もわからない以上下手に刺激するのは逆効果だと彼は長年の経験で知っている。
そして今までの道筋で
「それにしても早すぎる、そのスピードを以てしても出動までの初動が早すぎる」
ヒーローの警告など意にも介さず一人思考に耽る女、その隙にホークスは翼を各所に仕込んでいた。
一斉に全方向から襲撃できるように。
「あぁ、そっか公安か!タルタロス襲撃なんて大事件真っ先に公安に情報がいくのは当たり前だ!なんだそういうことか」
まるで世紀の大発見をした子供のようにはしゃぐ女、この場所に於いてそれはあまりに異質だった。
何故、どこでそれを、公安、さまざまな言葉がホークスの脳内を駆け巡る。
彼が公安に所属していると言うのは機密情報だ、知っているとなればかなり情報通なヴィランであることは間違い無いだろう。
「さて、『月牙天衝』でカッコよくキメてもいいけど流石に避けられるか。飛び回る相手なら同じく俺も翼つけたほうがいいかもしれないな。その方が紙面映えする。で、時間稼ぎは十分?」
バレた、目論見がバレた。
だがさほど問題はない、今目の前にいるヴィランは足を負傷している。
不確定要素は多いが、このまま戦闘になっても勝てる可能性は十分ある。
勝ちではなく足止めに戦闘スタイルを切り替えてもいい、彼が柔軟な思考を持つヒーローだからこそできる思考。
「────治した」
女はどこからか取り出した
いつのまにか意識を取り戻した警備員なんか微塵も理解していないに違いない。
「いや、『なかったことにした』といったほうがいいかな?」
「・・・・・・治療と破壊?複数個性持ち・・・・・・?」
なんでもなかったかのように立ち上がる女を見てホークスは思考を重ねる。
実際のところ女自身の実力はそれほど高く無い、この場でホークスが勝つ可能性も十分にあった。
原作知識というこの世で最も大きなアドバンゲージを保持している女に対して、ホークスが保持する女の情報は得体の知れない個性を持つヴィランであるということだけ。
だがそれをもってしても十分すぎるほどにホークスは強い。
だがまあ、ただそれだけのこと。
転生者という化け物を相手にするのは、少しばかり準備不足だったようだ。
「砕蜂より借用。二撃決殺『雀蜂』一応説明しておくけれどこれに同じ箇所を二回刺されると死ぬ。注意して避けた方がいいぜ?」
いつの間にか女の背中に生えていた翼を使い彼女は上空へと飛び上がる。
「どれだけ個性を持ってるか、聞いたら答えてくれます?」
あまりの無法に思わず苦笑いを浮かべながら、この状況にふさわしくない表情で問いかけるホークス。
「たった一つさ、もちろん転生特典なんてものはない」
嘘だ、きっと誰もがそう思った。
クロスタグつけたほうがいいんですかね
技だけですが。