裏ボスはメアリー・スー   作:後書きは信用するな

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今回性犯罪を軽く見るような発言をオリ主がしますが作者にそのような思想は一切ありませんのでご了承を。
今回は轟夏雄・オリジンです


つまり彼女は他者の不幸を比べ自らを慰める、どうしようもなく幼い小物なのだ。

 道を踏み外すという表現がある。

 客観的に見れば愚かな選択でも本人にとっては正しい道を行っている事もあるし、主観的に見れば誤った道筋でも周りから見れば順風満帆な正規ルートを辿っているという事もある。

 だから一概には言えないが、あくまで客観的であり社会一般的な価値観で断ずるとするならば、轟夏雄は既に道を踏み外しているのだろう。

 そしてそれはもう手遅れだ、どうしようもないくらいに、彼は。

 

 

 

 

 

 

 

 始まりは遠い昔のこと、轟夏雄が幼稚園に通っていた頃のこと。

 季節は夏、もうもうと熱気が篭る室内から逃げ夏雄は校庭のブランコに座っていた。

 珍しく自分の他に遊具を使っている園児はいなく、そのため彼は落ち着いた時間を過ごしていた。

 その時だった、災厄が訪れたのは。

 

 「ケレン味のある漫画ってよく言うけど実際ケレン味ってなに?って思ったことはないか?エンデヴァーの実子、轟夏雄」

 

 いつのまにか目の前にその少女は立っていた、深紅のランドセルを背負い派手な柄のTシャツを着て。

 無論、轟燈矢は未だ失踪しておらず轟冷も入院していない現在ではその言葉の本質は誰にもわからないだろう。

 

 「えっと・・・・・・誰?」

 

 当然のことながら彼らは初対面、夏雄の口から困惑と共にそのような言葉が飛び出すのは必然だった。

 

 「誰?俺が誰かって?そりゃもちろんメアリー・スー、愛されるべき少女であり嫌悪されるべき転生者であり忌むべき異物さ」

 

 随分と回りくどくわかりづらい喋り方、間違いなく彼女はメアリだ。

 姿こそ幼子のようだが、彼女は確かに転生者だ。

 夏雄からすれば『だからなに?というかここ幼稚園なのになんで小学生が?』といった至極真っ当な感想を抱く他ないのだが。

 

 「不審者を見るような目で俺を見るなよ、いたいけなJCに失礼だとは思わねぇのか?転生者が不審者だった言われたら頷くしかないけどさ」

 

 ケラケラと、なにが可笑しいのかわからないがそれでも彼女は笑っていた。

 一方の轟夏雄といえばメアリの独特なセンスのTシャツに少し引いていた。

 メタル系バンドのことなど知りもしない夏雄だが、真っ黒のシャツにドクロの絵が描かれているのは不気味に思ったわけなのだった。

 もしもそれを口に出してれば「ドクロが不気味だとかそれが異形個性差別に繋がったり繋がらなかったり云々」などと一ミリも思っていない言葉で道化ておちょくるだろう、それがメアリである。

 

 「・・・・・・すいません、それそろ昼寝の時間なので」

 

 プロヒーローエンデヴァーの息子である彼は何かと不審者に出会うことが多い、父親の過激アンチは過激ファンなどが多数だ。

 エンデヴァーの名前を出したことから目の前の少女も同じようなものだと思い、とりあえず距離を取ることにしたのだ。

 単純に喋り方がウザかったから逃げたと言ってもいい。

 

 「昼寝?大して描写されたわけじゃねぇけどそんなキャラじゃ……ああ!そういえばたまにあるよねみんなで昼寝する幼稚園!成る程、あるのは知ってたけどここがそうだってことは初耳だぜ」

 

 当然昼寝の時間なんてものはない、方便である。

 この前どこかの幼稚園で昼寝の時間がある、と言うことを耳にした夏雄の嘘だ。

 ペラペラと喧しいメアリを置いて彼はブランコから降り、建物へと歩いていった。

 

 「そうか、時系列的なアレからして俺のジャンプ紙面初登場は轟家過去編になるかもしれないのか」

 

 じわじわと、彼を恐怖が包み込んでいく。

 

 「となるとインパクトのある描写が欲しいよね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんなのもいいかもしれない」

 

 幼稚園生である彼にもその女の危険性は十分に伝わった、その言葉は彼に恐怖を植えつけた。

 

 「いや、こんな発言してる時点で『安心院なじみ』的なキャラ付けはされてるんだから変に狙った演出は要らないか?」

 

 単純な悪意など彼はいくらでも知っている、エンデヴァーに恨みを持つものに誘拐されそうになった事もあった。

 だが、悪意すらない狂気など彼は知らない。

 理解を超えた存在、それが転生者。

 

 「じっくりとお話したいとこだけど子供捕まえてアレコレはキャラ的にまずいよね。謝罪の果てに殺人は許されてもレイプ等の性犯罪は絶対に許されず、読者から人気が出る事もないのが週刊少年ジャンプなんだから」

 

 走る、走る、疾る。

 とにかく大人に助けを求めようと夏雄は走っていた。

 相手はただの小学生、現状何かされたわけではない。

 だと言うのに形容できない恐怖が彼を包んでいた。

 『幼稚園を焼く』なんてこと子供が言ったところでただの冗談にしか聞こえないはずなのに、悪意は感じないはずなのに。

 

 「実際性犯罪とかメシを粗末にする敵キャラってヘイトを溜めやすいんだよね、最近では犬猫への殺傷行為とかもかな?だから俺も裏ボスとして性犯罪やってる奴は仲間に入れねぇし、飯は極力大事にする様にしてる。本編に描写されてなくともファンブックで明かされるとまずいからさ」

 

 もうメアリの声は彼に聞こえてはいない、もう彼は幼稚園の建物の中へと辿り着いていたのだから。

 

 「おっと自語りがすぎたね、喋りすぎないようにしないと。情報は小出しに、暗躍はたっぷり、それが裏ボスの冥利だろ?」

 

 違和感、普段見ている幼稚園と何かが違う。

 だというのになにが違うのか夏雄にはわからなかった、彼がもう少し歳を取り経験を積んでいれば話は違ったかもしれないが。

 

「手術ベース、植物型『チョウセンアサガオ』、イワン・ペレペルキナより借用」

 

 いつのまにか、赤毛の少女が目の前に立っていた。

 自分の横を通ったわけでもないのに、本当にいつのまにかブランコからここまで一瞬で移動してきたのだ。

 不可解な事象、されど彼はまだ気づいてはいない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 メアリは再び口を開き戯言を吐き出す、ゆっくりと夏雄に近づきながら。

 ここで漸く彼は違和感の正体に気づく、誰も建物の中にいないのだ、

 メアリ以外誰も。

 

 「先生は……?」

 

 「いないさ、何故ならここは夢の中。永遠の眠りの中。チョウセンアサガオに含まれる幻覚作用を持つ毒から作り上げた専用のカプセルを君に飲ませた。合わせ技で他者の夢へと入り込んだりしてここにきたというわけさ」

 

 夢の中へ入り込むのは恐らく女の個性だろう、そう当たりをつけた夏雄。

 何故だかは彼にはわからないが、この時の夏雄は異様なまでに落ち着いてた。

 

 「どうしたら……目が覚めるの?」

 

 「話が早いね、やっぱり干渉しといて良かったぜ」

 

 あまりにもリアルな夢、当然メアリの干渉によって具体化され安定化された世界だ。

 故にメアリはその中にいる夏雄に多少であれば干渉できる、それゆえに夏雄がパニックに陥らないように彼の思考を一時的に弄ったのだ。

 洗脳とは程遠い干渉、現実に戻れば解ける干渉、そこまで便利なものではない。

 

 「俺は常々思ってる、果たして『地獄の轟くん家』は本当に地獄なのかと」

 

 単純明快簡単簡潔に言ってしまおう、メアリの感覚はバグっている。

 それだけのことだ。

 

 「うちの家が地獄?」

 

 「ああ、これからそうなるらしいぜ。でもさ、考えてみろよ『燈矢がヴィランになって』『家族仲は良好じゃなくて』『虐待紛いの指導を焦凍にしてて』『エンデヴァーはオールマイトを超えるための道具としか息子を見なくなって』『母親は精神を病んだ』」

 

 十分すぎるほどに悲劇的で、複雑な家庭だ。

 だが、メアリにとっては違った。

 

 「ただ、それだけじゃないか。燈矢を除いた轟家は、たったそれだけじゃないか」

 

 真剣極まりない声で彼は静かに叫ぶ。

 

 「薬漬けになったわけでも」

 

 転生者は見てきた、苦難に折れてクスリに手を出した人間を。

 

 「借金を返せなくなったわけでもなく」

 

 とりあえずで金を借りて返せなくなり、雪だるま式に借金が増える人間。

 メアリは見てきた。

 

 「明日喰うものに困ってるわけでもねぇ」

 

 メキシコ、インド、中東戦線、アフリカのスラム、メアリは見続けてきた。

 

 「ちゃんと教育を受けられて、しっかり偏差値の高い高校大学に行けて、奨学金を借りることすらない」

 

 金がないから進路を諦めた、塾に通う余裕がないから夢を目指せなかった、誰も彼もをメアリは見てきた。 

 

 「何より毎日あったかいご飯が食べられるこれが地獄だ?ふざけんな!」

 

 ずっと、ずっとメアリは見てきた。

 誰も彼もを救えずに、彼は生まれ変わった。

 後悔無念、そして諦め。

 かつて抱いた感情、今のメアリにどれほどそれが残っているのか。

 

 「あァ……ごめんね、君に言うことじゃなかった。つい興奮しちゃってさ、本当にごめん。別に君はなにも悪くないし君が不幸を嘆いたかどうかなんて俺は知らない、知るはずもない。お門違いの怒りだ」

 

 申し訳なさそうにメアリは謝る、彼女が心から謝罪するというのは本当に珍しいことだ。

 上っ面の謝罪ならいくらでもしているが。

 夏雄は困惑しながらその叫びを聞いていた、話の内容がそこまで理解できたわけじゃないが彼女の声に魂が宿っていることだけは理解できた。

 下手に刺激したらまずい人間、いわゆるヤバいやつだということも理解した。

 だがそれに対する対処法がわかるほど彼は大人ではなかった、故にとった方法は沈黙。

 

 「そもそも不幸の下を見続けてたらキリがない、明日デートに着ていく服がないってのも立派な『地獄』だ。拡大解釈すればね。でも何故だか気に要らない」

 

 だが彼女は目の前にいる夏雄が何故黙っているかまで思考を及ばせずに、ただただ喋り続けていた。

 

 「だからさ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 メアリの気持ち悪い笑みが浮かぶ、醜悪なそれすらも様になっているのは美少女ゆえか。

 

 「一見まともでも、中はぐちゃぐちゃ。修復しようがないほどに壊してしまおうよ」

 

 ファーストコンタクトは最悪、夏雄からのメアリの印象も最悪。

 

 「ねぇ、轟夏雄」

 

 されど彼は堕ちていく、ゆっくりゆっくり堕ちていく。

 

 「俺の仲間にならないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応言っておくとオリ主の主張はあくまで悪人のものです、正しくないです。
そもそも作中人物が轟家のこと地獄だなんだ言ったことって多分なかったと思うのでオリ主の勘違い的なアレです。
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