始まりの街に降り立ち、早速産声を上げる。
「俺はァ...戻って来たぞぉぉぉ!!!!」
両手を高らかに突き上げながら、喉にダメージがいきそうなレベルで叫ぶ。発売を情報公開から待ち望みにしていた上にβ版まで攻略しつくしていたレベルのゲーマーとして当然だ。最も。これCODMW2の発売日にもやってたんだよな。
鼻歌を歌いながら街を軽やかなステップで駆ける。吹く風を、聞こえる声を、まるで現実のように感じることが出来る。
そんな感じに広場まで進んでいると、突然目の前にチュートリアルらしきものが出現する。
「へぇ、前は無かったけど製品版だとちゃんとチュートリアルを作ったみたいだな」
ホロライブ・オルタナティブの世界へようこそ!と書かれたよくあるチュートリアルが現れた。ふむふむ、まずはギルドに行って役職を決めに行けとな?いやーこういうの前からあればよかったんだけどなぁ!初心者の人達がオドオドしながら俺に話しかけてきて「僕はそこに行けばいいんでしょうか...」なんて聞かれた日には心の底からチュートリアル作れやって思ったからね。
チュートリアルのOKボタンをタップすると目的地までの記される。こういうのは前からあったのに何でチュートリアルは無かったんだか。
ジャケットのポケットに手を突っ込みながらギルドへと向かう。
「確か始まりの街のギルドって結構広かったんだよな。賑やかでよかったんだけど...今ではどうなってんだろうな」
広すぎて少し不便って苦情も来てたしな。出来れば縮まってりゃいいんだが、どうだか...
「あっ、あそこのパン屋のパン旨そうだなぁ...今度買いに行こうかな」
気付けばすぐ別の物に目移りしてしまい、さっきまで考えていたことが吹き飛んでしまった。あー、ダメダメ。せめてギルドに着くまで我慢しないと...でも歩いてるだけなのも暇だな。
ギルドに着くまで暇なのでアイテム欄を漁っていたら見つけたSSRBの人形(デコイ)を見つけてもふり始める。囮人形のくせにふわふわ過ぎではありませんかね?
「いいなぁ...俺もあのデコイが欲しいぃ....」
「誰かあれをショップに売り出してないかしら...」
他のプレイヤーが物欲しそうな目でこちらを見ている。それを見て自分は生肉を持って猛獣の群れに突っ込んでしまった事を自覚した彼はデコイをインベントリに戻してギルドへとせっせと走る。
「まさかSSRBの人形がここまで人々を焚きつける魅力があったとはな...いやぁ驚き驚き」
若干の気まずさという物を覚えた彼は、もう人前で二度とあの人形を持ち出さないことを誓った。
ぜぇぜぇと息を切らしながら、ギルドの前に立ち、看板を見上げる。
「あ、案外近かったな...ハハハ...」
乾いた笑い声を上げながらフラフラとギルドの中に入っていく。それと同時に、探索者ギルドへようこそ!という文字が目の前に出現する
「ああ、冒険者、じゃなくて探索者になったのか。なるほどね」
チュートリアルを進め、説明を読み進める。ざっくりと内容をまとめると、ギルドでは探索者登録をして自分の役職を決める他、クエストを受けたり料理を食べたりすることが出来る。
役職にはそれぞれ、アタッカー、タンカー、サポーターなどがあり、最初は下級職の中から自分に見合った役職を選んでいく。
下級職はアタッカー4種類、タンクが3種類、サポーターが2種類とかなり少ないが、上級職の数は多く、全て言おうとすればかなりの時間がかかる程だ。だから面倒なので言わないが。
他にも探索者たちを支援する生産職や、レベルキャップの存在、スキルについてなど様々なことが書かれていた。
「で、ステータスが適応されてもレベルは1。β版の時のレベルに到達するまでステータスは上がらない...か。てことはスキルポイントが割り振れないってことか」
そんでジョブも下級職からっと。まぁそれはそこまで苦じゃないから別にいいが。上級職の解放条件はレベル30の到達だからな。
「まずは、探索者登録を済ませないとな。今回の役職は何にしようかな~」
チュートリアルを閉じ、カウンターに向かって歩いていく。偶にはタンクもいいが...やっぱりアタッカーだよな!
「...にしても、やっぱこの場所は変わらないな」
ギルドの内装を見渡しながら安心したように微笑む。広さは前よりも少し狭く感じるが、騒がしさは変わらない。
周りを見れば同士が酒を飲んで元気に語り合ったり、ナンパしようとして思いっきりぶっ叩かれてそのまま泣いてる奴もいたり、ロールプレイで恰好つけてる奴もいたりで、本当、十人十色って言葉が似合う場所だよ。ここは。
そんな事を考えているうちに、何かにぶつかる。前を見てみると、既にカウンターに到着していた。
「こんにちわ。探索者志望の方ですか?」
カウンターに着くと、受付のNPCが話しかけてくる。
「その通り!」
「それでは、まず貴方のお名前と種族をここにお書きください」
受付の人がそう言うと台の上に紙が出現する。プレイヤーネームは勝手に書かれるので種族を書くだけだ。名前はCrossって書いてあるから後は種族を書いて...オーケー。
「はい、お名前はクロス。種族はヒューマンで間違いありませんね。それでは、次にご自身の職業をお選びください」
次はそれぞれの役職が簡単な説明と共に記された紙が出現する。どれどれ...アタッカーの下級職は剣士、槍兵、狩人、傭兵、暗殺者、か。前も傭兵だったし、別にここは傭兵でいいかな。
「傭兵で間違いありませんね?」
「勿論さぁ☆」
ふざけながら答える。一部の人が吹きかけていると言うのにこのNPCは表情を崩さず探索者を登録していた。泣きそうなんだけど。
「はい、それではクロス様。貴方の行く末に幸があらんことを」
「...あい」
表れたステータス欄に記された傭兵という文字とレベルを見ながら、覇気も無く答えていた。せめて反応くらいしてくれてもいいじゃんかよ...
さて、探索者登録は済ませたんだ。もうここに用はない。だから別にここを去ってもいい...のだが。
後ろに何者かの気配を感じ、振り返る。目の前にはオドオドしながらこちらを見る高身長な金髪の美人さんの姿が...
こういう時、どうしても胸に目が行ってしまうが、それよりもクロスは彼女の装備を見ていた。胸も見ていたが。
(装備を見るに、支援職の賢者か...じゃなかったらわざわざアルディート装備何て着ない)
シスターの衣装のような装備を着た女性は「あ、あの...」と口をもごもごさせながらこちらに何かを伝えようとしている。
「すいません、俺に何か用ですか?」
「ひゃ、ひゃい!そそそそその!」
がくがくと震えながら女性はメニューを操作し、パーティーに誘ってくる。え、急にどうした?
「わ、私の周回を手伝ってください!」
頭を下げられ、周回の申し出のお供を頼まれてしまった。別にいいのだが...俺今レベル1なんですけど。
それに、この段階でアルディート装備を持っているという事はかなり手慣れのプレイヤーだ。あの装備は神龍討滅戦のVIP報酬の筈だからな。初めてすぐに探索者登録を済ませて、神龍をレイド戦でフルボッコにしたんだろう。そんな奴が手助け何て必要ないと思うんだが...
まぁ、ここは流れと相手に任せよう。
「ああ、別にいいんだけど...俺のレベルって1だぞ?ほら」
相手に自身のステータスを見せる。ステータスはレベル70台だがな。
「そ、それでもいいんです。その...ステータスとかレベルとか関係ありませんし、それに、も、もしもの時は守りますから」
「えーでもそれって俺単なる足枷...」
「...ぅあ」
クロスがそう言うと女性は彼の腰に引っ付いて泣きついてきた。これでは傍から見ればクロスは美人を泣かせた最低なクズ男である。
「待て待て待て!誰も手伝わないなんて言ってないだろ!?だから泣き止んでくれって!な?」
取り敢えず泣きついてきた女性を引き剥がし、泣き止ませる。
「そ、それじゃあ手伝ってくれるんですか?」
「ああ。そうだとも」
パーティー勧誘を受託し、女性のパーティーに入った。
「そんじゃ、自己紹介するか。俺はクロス。レベル1の傭兵だ。アンタは?」
「わ、私はムール・キルベルトでしゅ...レベル31の、賢者です...」
「OKムール。それじゃあ取り敢えず...アンタが何で急に俺を周回に誘ってきたのか聞こうじゃないか」
クロスはムールの腕を引っぱり、テーブル席へと向かった。
登録カウンター前で出会った二人は、互いに向かい合う形で椅子に腰を掛ける。テーブルにはセルフで水が置いてあり、置いてあったコップに水を注いでムールの方に置く。
「そんで...何でアンタは急に俺に集会の手伝いなんて申し込んだんだ?あ、勿論答えてくれなくてもいい。ただ俺が個人的に聞きたいだけだからな」
「はい...3時間くらい前の話になるんですけど、4時くらいに起きてゲームを始めたんです」
「ダウンロードが早かったのか...いいなぁ」
「それで、私はギルドで探索者登録を終えた後にフレンドの人たちを呼んで偶然来てた神龍討滅戦を手伝ってもらったんです」
「へぇ。一発で?」
「はい。あくまでフレンドさんのお陰ですが」
ギミックとか全体防御率とかで色々面倒くさかった神龍を一発。しかもそれでVIPを取るとは...恐れ入るな。
「それで、フレンドさんと解散した後、私は他のプレイヤーさん達を手伝おうと思ったんですけど...私、ゲームとかで知らない人が味方の時とか緊張しちゃって...」
あー...何か嫌な予感がしてきた。
「それで...ギミック処理とかで沢山ミスしちゃって...パーティーの人に迷惑かけちゃって...」
「うん,,,大体読めたからいいよ。つまりはそれを克服したいから目の前にいた俺を誘ったんだろ」
「その通りです...」
そっかそっかあぁ。うん。取り敢えず。
「お前はバカなのか?」
「うぐっ」
「いや、赤の他人が味方の時緊張しちゃうからそれを直したいってのは分かるよ?でもね、そういうのってまず事情を話して女性とやった方がいいし何処の世界に男を泣きついてまでパーティーに誘おうとする馬鹿がいるんだよこの戯けが」
「こ、ここにいます!」
「喧しいわ!デカい胸を張っていう事じゃねぇんだよ!」
机を思いっきりぶっ叩き、盛大に突っ込む。ダメだ。初対面なのに面を一発ぶん殴りたくなってきた。
熱くなる頭を冷やしながら、困った表情を浮かべる。
「...もう過ぎたことだしこの件は忘れるとして、周回ってアンタは言ってたけど具体的には何処で?」
「は、はい!この古城遺跡跡で集まる『古びた動力源』ってアイテムの回収ルートなんですけど」
「終盤に発見されたモンスターのレアドロップ集め用のルートか...そうと決まれば、早速行くぞ」
インベントリを開き、中にあった大剣を装備する。
「おっと、あとこれも」
フレンドメニューを開き、パーティーの項目からムールにフレンド申請を送る。
「え...私でいいんですか?」
「正直、アンタは危なっかしくて目を離せないんでな」
苦笑しながらクロスは言う。それを聞いたムールはあはは...と笑いながらフレンド申請を受託した。
「それじゃあ、早速出発するか」
椅子から立ち上がり、蹴って戻してからギルドから出る。その背中を、ムールは慌てて追いかけて行った。
今回の基礎知識解説 ステータス
ステータスとそれに関連する能力
STR(筋力) 物理攻撃力、一部作業の成功率
AGT(敏捷) 素早さ、反射神経、動体視力
INT(知識) クラフト成功率、解読能力
VIT(生命力) HP、防御力、ノックバック耐性
DEX(器用さ) クラフト成功率、クリティカル発生確率、クリティカル補正、武器の扱い
LACK(幸運) 回避時の無敵時間継続、アイテム発見確率、クリティカル発生確率。
今回の装備解説
アルディート装備とマーセナリー装備(主人公の着てるぱっと見ししろん装備の名前)
アルディート装備 防御力 580
セット装備時、魔法攻撃力75%アップ。魔力容量20%アップ。魔力回復効率100%アップ
装備スキル 知恵の泉 魔法スキルのクールタイムを50%短縮し、魔法支援スキルの効果を75%上げる。また、魔法スキルを使う度に光の槍が敵を攻撃する。
祝われた者 幸運ステータスを1.5倍し、クリティカル倍率を2倍に上げる。一回だけHPを超えるダメージを受けても死なない。
賢き者 賢者が装備した時、セット効果を2倍にし、常に自身の周りに魔力防壁が張られるようになる。
豆知識 今の所、1章をクリアした後の賢者の最強装備。というかこれくらいしか賢者は強い装備が無い。(2章以降は別)
マーセナリー装備 防御力 328
セット装備時、敵エネミー。もしくはPKプレイヤーからの視認性を大きく下げる。敏捷が1.8倍される。
装備スキル 傭兵の知恵 格闘、ダガー、ナイフ系統の武器の攻撃力を1.5倍。器用さを2倍する。また、自らが出す音をかなり消音する(90%)
手慣れた殺生 モンスターを倒した際の経験値が2倍になる