東都のミドリさん   作:ラグ

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叱咤

 

 

どうやら意識不明で熱傷、裂傷、打ち身に骨折と怪我のオンパレードではあったものの不思議と致命傷になるようなものはなかったらしい。

診てくれた先生には真顔で、ご本人ですよね?って言われた。

どうにも被害の状況とかから考えたらこの程度で済んでいることはあり得ないらしい。

 

退院したら神社にでもお礼を言いに行くべきですね、だって。

ほんと部屋に逃げ込んだとはいっても、あの爆発を間近かつ生身で受けてバラバラにもならずによく生きてたな、俺。

 

 

俺が爆発に巻き込まれてから5日。

つまり5日ぶりに目が覚めたんだけど、やっぱりまだ休養が必要だったらしくてすぐにまた寝てしまった。

 

ということで爆発から6日目。

 

 

すぱぁん!という物凄い音がして目が覚めた。

思わず反射的に体を起こそうとしたらすっげぇ痛かった。

そのおかげでもうはっきりと目が覚めたけど。

うめきながら音の原因の方、つまりドアの方を見ると異様な雰囲気を醸し出す松田サンが立っていた。

 

 

…………。

 

 

いや!無言!!

怖いって!

 

 

「……お?松田?」

 

 

 

…………。

 

 

 

やっぱり無言。

 

これほんとに松田か?

 

松田(仮)はしばらくフリーズしていたものの、口角がにやりと引き上がったなと思ったら、こちらへつかつかと近寄ってきた。

 

あ、なんかこめかみピクピクしてる…

 

 

え。なんか。…怒ってたり、されます??

 

 

 

そうこうしている間にベッドの傍、つまり俺の隣に。

仁王立ちで見下ろす松田(仮)。いや、やっぱ松田だな。

 

 

 

「…………。」

 

言葉でない。俺が。

 

起き上がれないので、逃げようにも逃げられない。

逃げるつもりもないけど。

長い付き合いなのだ。こうなった以上、1発くらい殴られるだろうな~ということは考えなくても分かる。

 

ただ問答無用で怒られると思ってたから、この状態が恐ろしい。

 

え?え?なに?

 

 

 

 

「いよぅ。住居不法侵入者サン。遅いお目覚めじゃねぇか。あぁん。」

 

 

ピシリと固まった。

 

あぁ、そういえばね。入ったね。人ん家。

 

いや、でもあれは緊急事態だったかんね!

 

情状酌量の余地ありっしょ!?

 

 

「え、あ、ま、松田?」

 

 

ますます引き上がってくる口元が恐ろしい。

 

怒ってる。怒ってるよ!

 

もう後ろに闇背負ってるよ?むしろ燃えてる?修羅かな??

 

 

「よくも間抜けに爆発させやがってよぉ…。しかも防護服も着ずに現場に戻るたぁどういうことだ?おい。」

 

 

怒鳴りながら殴り飛ばす方が性にあっているだろう松田から淡々と紡がれるその言葉から、どれだけ怒っているかが察せられた。

 

どれだけ心配させたかも。

 

静かに、でも熱量が込められた声。

 

 

「遠隔操作の可能性に気付いたのはいいとしても、他にやりようがあったよなぁ…。まぁ言っちまえばそんなん無線で伝えりゃ一発だろうよ。今さらだけどよぉ。」

 

 

間に挟む言葉もない。

 

 

「まぁ?俺も?ちょっとでも解体を進めたいってのは分かるけども?…最後のアレは何だ。」

 

「さ、最後…?」

 

「確か?後頼むわ?だったか…?」

 

 

 

爆発直前の会話が思い出された。

 

 

『死ぬなよ』

『だーれにもの言ってんの。ま、何かあったら後頼むわ』

『ざけんな!』

 

 

「っ…」

 

「あんな遺言みたいな事言いやがってよぉ…。

 

ハナっから死ぬ気ならこんな仕事辞めちまえ!!!」

 

 

 

空気がビリビリと震えた。

 

それほどの大喝だった。

 

 

 

「今、生きてんのは奇跡だぞ」

 

 

あぁ、知ってるさ。

経験は浅いとはいえ、爆処に所属になった時点で嫌ほど聞かされている。実際にそれを見たことはないけれど。

 

 

 

「班長も先輩も怪我はあれど、おまえより近距離で被爆したがなんとか生きてる。

防護服越しでお前よりちょっとマシって程度だけどな。

これ聞くとつぐづくお前が生きてることが信じらんねぇよ。

 

…慢心すんな。油断すんな。

用心なんざいくらしたって足んねぇよ。

自分の命も守れねぇやつが他人なんざ助けられる訳ねぇだろ。

 

今回はブツがタチ悪かったってのもあるんだろうが、お前の怪我は自業自得だ。

余裕ぶっこいてんじゃねぇぞ」

 

 

 

ぐっと言葉がつまる。

今考えれば爆弾の解体の時くらいは真面目にやってるって思ってたけど、心のどっかで俺なら出来るって、大丈夫だろって思っていたんだと思う。

今まで失敗も無く上手くいってたから考えが甘かった。

ほんっとに最初の方なら絶対に防護服無しで爆弾の近くになんか行こうとも思ってなかっただろう。

 

 

 

「…ごめん」

 

 

 

ぼすり。と唐突に顔の隣に衝撃。

横目に見ると松田の拳がシーツに突き刺さっていた。

 

 

「まあ、なんだ。生きててよかったじゃねえか。ぶっ飛ばされても死なねえくらいに体が戻るの楽しみにしてるぜ。……覚悟しとけ?」

 

 

最後だけものすっごいドスの聞いた声で言われた。

 

 

 

…治るまでに時間かかんないかな?

こんなん思っちゃうこともあんまないよな。

 

ま、生きてるだけで儲けものってね。

ごめん、ありがとな松田。

 

……でも、あの、できればお手柔らかにお願いします…。

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