らいばる・ざ・ろっく!   作:ベーシストベーシストベーシスト

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初投稿です。


わたし・の・らいばる

「私なんかが、あの指にとまって良いのかな……」

 

 みんなが無邪気に遊ぶ中、そうやって一人で悩んで、気づいたらそのままひとりぼっちになっている。

 それが私の幼馴染、後藤ひとりという少女だ。

 そして、そんな彼女の隣でヘドバンをしていたのが私、園田(そのだ)千尋(ちひろ)だ。あの頃はやんちゃだった。

 

 彼女との付き合いは長い。

 幼稚園の時に先生と二人で遊んでいたのも知っているし、小学校の遠足では私と先生以外とはおかずの交換をしなかったのも知っている。

 中学校の時にいたっては、部活に所属していないどころか放課後に遊ぶ友達もおらず。ロインの登録先は公式アカウント以外、彼女の家族と私だけだった。私ですらもう二、三人いたぞ。

 

 ……お察しの通り、私も友達が少なかった。ゼロじゃないからな、そこは強調させてもらう。

 まあ、友達がいないもの同士、波長も合ったのだろう。小中高と彼女とは同じ学校に通っているし、よく一緒にいる。彼女以外に一緒にいる友達がいない訳じゃない。

 

 そんな彼女だったが、中学の時から欠かさず練習していることがある。

 ギターだ。

 

 その執念は凄まじく、毎日少なくとも六時間は練習している。今まで見たこともない程に熱中していて、昔から彼女を知っている私からしたら人が変わったかのようだった。

 今までの要領の悪さが嘘のように上達していき、同じくギターを嗜む私ですらその実力がプロ顔負けだと認めざるを得ない。そう、私より上手いのだ!悔しい!

 ギターの演奏動画を動画投稿サイトにアップしているが、そのアカウントの登録者はそろそろ三万人に達する。くそっ、私のアカウントよりも多い!さらに悔しい!

 

 そんな彼女に一度、ギターを始めた動機を聞いてみたことがある。

 

『あっ、えっと……せ、世界平和を伝えたくて!』

 

 と言われた。

 

 世界平和。

 なんということだろう。彼女は孤独だった過去を乗り越え、自分のような人を増やさないために世界にメッセージを送るつもりなのだ。

 『私の次は君の番だ』と、平和を説くことによってより多くの人に伝えるつもりなのだ。

 途方もなく壮大な夢。きっと、実現するためには数多くの壁が立ちはだかるのだろう。けれど、彼女なら乗り越える。()()()の彼女を知っている私が確信を持って言う。

 彼女はきっと、これからいくつもの壁を破り、試練を乗り越えて、夢を叶えるのだろう。

 

 でも。

 そんな彼女が歩むであろう覇道に私がいないのは。

 イラついた。

 

 ので、彼女と友達を辞めるところから始めた。

 

 

 

 

 私の朝は早い。毎朝5時くらいには起きる。

 学校まで片道二時間かかるから、というのもあるがそれともう一つ。

 

「おーい、ひとりー!私が来たぞー!」

 

 私の幼馴染である後藤(ごとう)ひとりと一緒に通学するためだ。

 中学の頃からの習慣だが、最近は朝に後藤家に行かないと落ち着かなくなってきた。ひとりには責任を取ってもらいたいくらいだ。

 

「あら、千尋ちゃんおはよう。毎朝ありがとね」

「おはようございます。まあ日課なんで」

「ひとりー!千尋ちゃん来たわよー!」

「は、はーい」

「うる“……」

「ほーら、噛みつこうとしないの」

 

 いつも通り玄関でひとりを待つ。

 もともと家族ぐるみの付き合いである後藤家だが、ひとりの迎えを始めてからさらに仲良くなった。

 最も、例外として犬には嫌われている。後藤家のペットであるジミヘンとも長い付き合いになるが、会ってこのかた懐かれた覚えがない。私以外には直ぐに懐くというのに……。改めて考えるとやっぱりショックだ。

 

 美智代さんの呼びかけに返事をしたし、ひとりもそろそろ来るだろう。

 少しした後、私のショートカットの黒髪とは違って目立つピンクの髪が見えてきた。

 ……そこまでは良かったが、階段から重武装をしたひとりが降りてきたのは想定外だった。両腕にラバーバンドを大量につけ、トートバッグにも缶バッジが大量についている。全体的にゴチャついているし、背負っているギターがより奇抜感を演出している。本人がやる気と自信に溢れた目をしているのが謎だ。何故それがイカしていると思ったのだろうか。

 総じて、私的後藤ひとりクソダサファッション第二位に決定だ。流石に一位の一日ゲーミングサングラス巡査部長には敵わない、というか二度と一位を更新して欲しくない。

 

「おっおはよう、千尋ちゃん」

「あ、ああおはよう。……ところでひとり、そのユニークな服装は一体……?」

「あっこれはね……」

 

 よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりのひとり曰く。

 大量のバンドグッズを纏うことにより、自分がバンド少女であることをアピール。さらにギターを持っていくことにより、ギターを弾けることもクラスの人にアピールする。

 その後、たまたま同じクラスで偶然ギターを弾ける人を探しているクラスメイトにそのことが奇跡的に知られ、天文学的確率でそのままバンド入り。

 ……するための重装備だそうだ。

 

「ひとり。お前……」

「どっどうかな。やっぱり存在感ありまくりかな?」

「ありまくりだし、天才的な発想だ!どうして私は思いつかなかったんだ!」

「えへへ、やっやっぱりそうだよね、いけるよね!」

 

 なんということだ、やはりひとりは進化する生物だったのだ!

 中学の時にも、バンドグッズとCDによるアピールはしたことがある。その時は何事もなく一日が終わってしまったが、今回のひとりは一味違う。前回よりも派手な武装にすることによってより存在感を高め、見間違えではないことを確信させる奇抜なファッション。クラスの注目の的にあるのは間違い無いだろう。

 さらにギターをアクセントとして加えることによって、ひとりがギターが弾けることも知らしめることが出来る。バンドグッズとの相乗効果によって音楽が分かる人だと伝わりやすくなっているのだ。

 

 なんということだろう。私的後藤ひとりクソダサファッション二位、その実態は私的後藤ひとりイケイケファッション二位だったのだ。

 ちなみに一位はノーマルのピンクジャージひとりだ。なんだかんだ言って、いつものひとりが一番イケている。私も制服の上にパーカーを羽織っているが、ひとりのジャージ姿には勝てない。あの謎の調和は一体何が原因なのだろうか。

 

「ひとり、今日こそお前がバンドを始める日だ!自信を持って私が言う、今日は記念日だ!」

「えへ、えへへ。よっよし、後は学校に行くだけだ!」

「行くぞ!我らが母校にして、お前がバンドに入る記念的な出会いの場、秀華高校へ!」

 

 この時の私はすっかり忘れていた。

 私がひとりに自信を持って『バンドに入れる』と言ったのが3回目だと言うことに。

 

 

◻︎

 

 

「……」

「こ、今回は上手くいかなかっただけだ。次も同じことをすれば絶対に行けるはずさ……恐らく」

「……」

 

 結局、ひとりはバンドに誘われるどころかクラスメイトにすら話しかけられずに一日を終えてしまった。

 何故なのだろうか。私にはその理由が皆目見当つかない。あんなにもイカしたファッションだったというのに。

 一応知り合いに聞いてみたら、『ダサい』の三文字が返ってきた。私だって最初はそう思ったが、ひとりの深謀遠慮を聞けばそんなことも言ってられないのだ。あのファッションに隠された一つ一つの想いが、ひとりという人間をさらなる次元へと昇華して……!

 

「……いや、やっぱりダサかったか」

「ヴァ」

「ひ、ひとりー!」

 

 なんということだ、改めて自分の作戦の拙さを振り返っていたひとりが、私という別視点からの意見に耐えられなくて液状化してしまった!

 すまないひとり、でも本心だ!冷静に考えてみると厳つくて話しかけづらい人になってた!というか、あの重装備の中にバンドTシャツは流石に詰めすぎだ。

 

 その後なんとか凝固したひとりだったが、視線の先にいたサラリーマンの絵に描いたような家族団欒を見てしまい、顔が悲しいことになっていた。

 安心しろ、あのサラリーマンが味方じゃなくても私が味方だ。なにせロインの登録先が家族とひとり以外二人しかいないのだ!

 ……自分で言ってて悲しくなってきたな。

 

「あー!ギターッッ!」

「うわぁぁぁぁぁ!」

「うわぁ!急に話しかけちゃってごめん!」

「……ア」

 

 急に話しかけられるからびっくりした!

 話しかけてきたのは、金髪のサイドテールが特徴的な少女だ。……いや、よくよく見るとアホ毛とリボンの方が目立つな。というかリボンが大きすぎないか?

 

 ひとりは……うめき声が微かに聞こえる。最後に初対面の人と喋ったの冗談抜きで十年以上前だからだろう、言葉も声も出てこない。

 仕方ない、ここは私が代わりに話そう。今こそ『サルでも分かるコミュニケーションの方法』を読んだ成果が花開く時だ!

 

「はじめまして!この子は後藤ひとり、秀華高校一年のギター少女だ!仲良くしてくれ!」

「おお、これはご丁寧に。あたしは下北沢高校二年の伊地知虹夏!……ところであなたは?ひとりちゃんの友達?」

「友達じゃない!」

「凄い食い気味!?」

「それと、私よりもひとりと仲良くしてくれ!ほら、ギターオーラがピカピカしてるいい子なんだ!ギターの腕前は私よりも上手いし、よくよく見てみると顔も可愛いんだ!」

「友達じゃないとは思えないほど世話焼き!」

「あっあの」

 

 おっ、ひとりが復活した。

 こちらにアイコンタクトを取ってきたので、私も頷き返す。虹夏はお前に興味を持っている。こんなこと滅多にないんだ、今のうちにひとりの魅力を叩き込め!

 

「そっその子は園田千尋ちゃんで、私みたいなミジンコと幼馴染をしてくれているすごくいい子です!ギ、ギター弾けるし私と違って初対面の人相手でも話せるし、顔はカッコいい系です!」

「私じゃなくて自分の紹介をしろ!」

「……本当に二人は友達じゃないの?」

「友達じゃない!絶対に!

 

 

 

私たちは、生涯のライバルだ!」

 

 

 後年、結束バンドのリーダーとして知られる伊地知虹夏はこう言った。

 今も互いをライバルと呼び合う後藤ひとりと園田千尋は、昔から距離感が親友のようだったと。




初投稿でした。
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