らいばる・ざ・ろっく! 作:ベーシストベーシストベーシスト
長い間が空いてしまったので、簡単なあらすじ載せときます。
《前回までのあらすじ》
後藤ひとり大好き幼馴染の園田千尋。彼女のバンドメンバーである西雪双葉はイジメられていた過去から救ってくれた千尋に執着しており、千尋とひとりが一緒にいられないようにしていた。
そんな中、偶然出会った山田リョウに言われた言葉が気になり、単身で彼女に真意を聞こうとしていた。
「はい、雑草」
「スポドリのノリで渡されても食べないよ」
「そう……」
そんな悲しそうな顔でしょげないでよ、雑草を食べたくなってくる。後、手に持ってた雑草を早速ムシャムシャ食べるな。……まさか最初からここで食べる気だったんじゃ。
山田と遭遇した後、彼女に用があると伊地知に伝えたところ何を察したのかは分からないが山田をボクに貸してくれた。結構スムーズに事が進んで拍子抜けだが、都合がいいことに変わりはない。とりあえず、ボクは山田をその辺にあった適当な公園のベンチに腰掛けながら会話しようとして……。
「はぐっ……それで、もぐっ……用って」
「食べ終わってから話せ」
山田が食べ終わるのを待っている。
リスみたいに雑草を頬張り始めた山田を尻目に、ボクは空を見上げた。彼女に文句がめちゃくちゃあるけど、それを言うのもバカらしくなってくる。
まず、これから人と話すのになんで一掴みの雑草を持ってきてるんだよ。食うなとまではいかないけど、せめてタイミングを見計らってくれよ。それに食べるにしても体に悪い気がする。
次に、なんでそんなに雑草取れてんだよ。下北沢って田舎じゃないし、野草が取れる場所は限られてるはずなのにスーパーの袋くらいの雑草採れてるの異常でしょ。
最後に。
「ごちそうさ『ぐぅ〜』……までした」
「……」
こいつの食事はどうなってんだよ。雑草食べるのもだけど、あんなに頬張ってたのにまだお腹が空いてるって。元気そうではあるから食べても問題のない雑草を食べてるのだろうけれども。
……なんかここまで来ると不憫だ。今度差し入れでも持って行った方がいい気がしてきた。
「で話って」
「ああ、今度君に差し入れでも……って違うそうじゃない!?」
「差し入れくれるなら欲しいけど」
せっかく話す機会を設けてもらったのに、彼女のマイペースさに毒されては本末転倒だろうに!目的を見失うな、西雪双葉!
「差し入れはない!そうじゃなくて」
「前の話の続き?」
「……話が早いね」
まあ、ボク達の間での話なんてそれ以外ないしね。山田も予想はしていたのだろう。
前の話。ボクが園田を縛っていて、その事はバンド自体を殺すような行為だと山田が忠告してきた話。未だに山田の言いたいことは掴めてない。大事なことなのだろうとは朧げながらもわかるけど、余計な口出しだと感じる自分もまだいる。
だって、園田がいなければボクは一人ぼっち。誰とも喋らず、誰とも演奏できず、誰とも繋がらない。可哀想な一人ぼっちの子。
執着する自分を醜く思うのも事実だ。新しい友達を見つければいいだけのことかもしれない。新しい環境に馴染めばいいだけかもしれない。
でも多分、いや絶対無理だ。あの日、園田に会った日からボクは。
「……ボクは、園田の眩さが目に焼きついて離れないんだ」
一人で孤独に過ごしてた、出口のない時間。
一人で寂しく歩いていた、光のない時間。
一人で悲しく泣いていた、真っ暗闇の時間。
それを全て払ったのは、園田千尋というたった一つの
あの日からボクは盲目になった。目に見える
目に見える
でもその
「だから、ボクは」
「千尋を手放したくないし、渡したくもない」
「……そういうこと」
そう、と山田は短く呟いた。彼女が下に俯く姿は、夕方の斜光も相まって彫像の様だった。救いを求める人によって解釈が変わる、素晴らしい偶像の彫像。ボクの場合は、彼女の顔に哀れみの感情を見出していた。
ただそれは彼女のことを知らない人間、例えばボクのような人間が勝手に作り出したイメージだった。彼女が何を感じ、何を考えるかを知らないから彫像のように感じたんだと思う。
次の瞬間には山田は笑顔でボクの頭を優しく撫で始めた。
「よしよし」
「……ボク、もしかして今犬みたいに撫でられてる?」
「犬というよりかは赤ん坊」
「どっちしろ馬鹿にしてない……?」
「でも体は正直だね」
「エロ親父みたいなことを言わないでよ」
イタズラっぽく笑う山田の顔が見える。呆れたような、仕方ないなとでも言いたげな顔をしている。眼鏡が曇ってるせいで顔がよく見えないけど多分笑ってる。
「笑わないでよ」
「ようやく
「泣いて……?」
はっと気づいた。眼鏡が曇ってる訳じゃないし、急に眼鏡の度が合わなくなった訳でもない。
溢れる涙のせいで、山田の顔がよく見えないんだ。
「え、なんで……別に悲しい訳じゃ」
「悲しくなくても泣くことはあるよ。怒ってる時とか、嬉しい時とか」
「……まさか、ボクは君に撫でられて嬉しいの?」
「私に聞かれても分からないよ」
さっきから視界がぼやけてるせいで周りの光景が朧げにしか見えない。山田が怒ってるのか、泣いてるのか、それとも笑っているのかも分からない。
声が嬉しそうだな、とは思った。
「……昔、虹夏とぼっち以外の人とバンドを組んでたんだ」
泣き続けるボクを撫でながら、山田が昔語りを始めた。
嬉しそうな顔をしているのか、泣きそうな顔をしているのか、はたまた苦しそうな顔をしているのか分からなかった。
声が苦しそうだとは思った。
「私はあのバンドが好きだったんだ。青臭くて、まっすぐで。自分たちの音楽に向き合ってた。……でも、段々と売れ線の歌詞を書くようになっていって」
なんとなくだけど、山田がその時どう思ったのかを少し分かった。
困惑してたんだろう。ボクの時と同じだ。違和感に少しずつ気づいて、でも理解したら今までの積み重ねが崩れ去る予感。ボクの場合は受動的に底に落ちていったが、山田の場合は能動的に落ちた。だからこそ感じた孤独は、誰かに自分の個性を潰されかけた不安はボクよりも大きかっただろう。
「結局バンドはやめた。……そうやってバンド活動自体が嫌になっていた時に、虹夏に誘われたんだ」
「伊地知に?」
意外、ということはない。今日会ったばかりだし、数分しか話してない仲ではあるものの彼女の優しさは理解している。もともと知り合いだったのなら、励まそうとしていてもおかしくはないのだけれども。
「……断らなかったの?」
「うん」
力強い肯定だった。
ボクは純粋に山田のことを尊敬した。
だってボクだったら、例え相手が園田だったとしても断ったと思う。
正直なことを言えば、ボクがバンドを始めたのは『逃げ』だった。バスケを再び始めようと思えなかったし、続けたいとは欠片も思えなかったための『逃げ』。
きっと山田は、伊地知が拾ってくれたという事実もあるだろうけど、一度挫折したとしても再び始めようと決心するくらいにはバンド活動が好きなんだろう。
だから彼女は、余計に理解したんだろう。
「バラバラの個性が集まって、一つの音楽になる。それがバンドの音楽。だから誰かを縛ってたら、それはバンドの音楽じゃなくなる」
園田の個性を殺そうとしていたボクは、バンドメンバー失格だったんだ。
「……じゃあどうすれば」
「西雪は千尋のこと、信じられない?」
「そんな訳ない。あいつは誰よりも優しくて、だから……」
「だったら話せばいい」
山田はまるで駄々をこねる子供をあやすような雰囲気で、ボクに言った。そう感じた時、ようやく自分が泣いてる理由が分かった。
誰かに叱って欲しかったんだ。あの時、誰とも繋がらなくなった時から周りにいなかった、ボクを嗜めてくれる人。園田とはまた違った
「私のことを虹夏が受け止めてくれたみたいに、千尋も
「……ありがとう、
園田が道先を照らす誘導灯だとしたら、今のボクにとってのリョウは側にある焚き火みたいな存在だ。
お陰で自分の影がより鮮明に見えた。
ボクはなんだかんだと言って、結局のところ園田を信じてなかっただけだ。後藤がどうとか、本当は関係ない。園田が、あの時の人達みたいにボクを裏切るんじゃないかって心配してただけだ。
これは園田の問題じゃなくて、最初からボクだけの問題だったんだ。
だからリョウは、昨日ボクにあんなことを言ったんだ。
リョウも
先人からのアドバイスを無駄には出来ない。
「色々とごめん。迷惑かけた」
「じゃあお礼に『ぐるるぅ』」
「……。まあ、なんか奢るくらいならいいよ。コンビニでなんか」
「……ごめん、ちょっと待って」
先程とは打って変わって弱々しいリョウの声が聞こえる。顔を見てみると青ざめてる上に、両手でお腹を押さえてる。体に力が入らないのか徐々にうずくまり始めた。
「えっちょ、どうしたの!?」
「雑草が
「結局、雑草は体に悪いのかよ!」
どうやらリョウは見事なフラグ回収をしたようだ。コンクリートジャングルに生えてる植物が体に良いか悪いかで言ったら結果は瞭然だけど、だとしてもそこまで体に影響があるのか。
「ほら立って!幸いトイレはすぐ近くにあるから……」
「あっやばい何か口から出そう」
「全力で蓋して!ボクが運ぶから大人しくしててよ!」
……会った時から雑草抱えてたり、このタイミングでキラキラしそうになったり。
リョウってふざけないと気が済まないのか?
早く続き書きます……。期待せずお待ちください。